弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人弁護士細野三千雄の上告理由について。
 再審は民訴四二〇条一項に列挙された事由に限つて許されると解すべきである。
蓋し一旦判決が確定した以上これによる解決を尊重し、紛争の蒸し返しを認めない
ことを原則とするのであるが、飽くまでもこの原則を貫くときは具体的正義の要求
に背馳する場合もあり得るので、特に特定の事由ある場合に限つて例外としてその
判決の取消と事案の再審判を求め得ることとしたのが、再審制度の認められている
所以であり、民訴はその例外たる事由として四二〇条一項一号乃至一〇号を列挙し
たのであつて右事由は単なる例示的なものと解し得ないからである。而して本訴に
おいて上告人が再審を求める理由は被上告人は昭和二〇年三月一九日上告人に対し
秋田地方裁判所横手支部に建物収去土地明渡請求の訴を提起し、同裁判所は同庁昭
和二〇年(ハ)第四号事件として審理の結果昭和二二年一二月一六日上告人敗訴の
判決を言渡し右判決に対して上告人から秋田地方裁判所に控訴を提起したが右控訴
は控訴期間経過後の提起であるという理由によつて却下となり第一審判決は確定し
たのであるが(一)右訴訟については昭和二二年五月一二日上告人から被上告人に
対して秋田地方裁判所横手支部に右訴訟の目的土地につき小作権存在確認の調停申
立を為し、右調停事件は同庁昭和二二年(セ)新第二号事件として同裁判所に繋属
していたのであるから同裁判所は小作調停法九条によつて当然右訴訟手続を中止す
べきであるのにこれを看過して訴訟手続を進行して判決を言渡した違法がある。(
二)上告人は前記訴訟の目的土地に対し自作農創設特別措置法第一五条一項二号に
よつて自作農創設のためa農地委員会に政府買収の申請をなし、同委員会は昭和二
三年三月六日政府買収の裁決を為し、同二四年二月五日上告人に対して売渡決定が
あり、上告人は同年三月一日その代金を納入し右土地は上告人の所有に確定した。
即ち前記判決確定後において行政処分によつて上告人は該訴訟の目的土地の所有権
を取得したから民訴四二〇条一項八号によつて再審の事由があるというのであるが
右(一)の事由は民訴四二〇条一項列挙の事由の何れにも該当しない。また、右(
二)の事由は民訴四二〇条一項八号に該当しないし、他の法定の再審事由にも該当
しないと解すべきであるから、同一趣旨に出でた原判決は正当である。なお論旨は
違憲を云々するが結局名を違憲に籍りて原審の民訴四二〇条一項に関する解釈適用
を争うに過ぎず、而も右解釈適用に誤りの存しないこと上記のとおりであるから論
旨は採用に値しない。
 よつて民訴四〇一条、九五条、八九条により主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    霜   山   精   一
            裁判官    栗   山       茂
            裁判官    小   谷   勝   重
            裁判官    藤   田   八   郎
            裁判官    谷   村   唯 一 郎

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