弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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              主 文  
被告人を懲役3年6月に処する。
未決勾留日数中120日をその刑に算入する。
理 由
(罪となるべき事実)
被告人は,平成7年10月12日明石簡易裁判所において住居侵入,窃盗の各罪
により懲役2年(3年間刑の執行猶予,平成8年10月4日その猶予取消し)に,
平成8年9月10日神戸地方裁判所明石支部において窃盗罪により懲役1年に,平
成12年5月31日神戸地方裁判所において同罪により懲役2年にそれぞれ処せら
れ,いずれもそのころ前記各刑の執行を受け終わったものであるが,更に常習とし
て,平成14年9月3日午前零時20分ころ,神戸市a区b通c丁目d番e号所在
の西日本旅客鉄道株式会社a駅下りホームにおいて,同所西寄りの3番ホーム側に
向けて設置されたベンチで仮眠していたA(当時63歳)のズボン左後ろポケット
から同人所有の現金約2万1000円及びメンバーシップカード1枚在中の財布1
個(時価合計約10
00円相当)を抜き取り窃取したものである。
(証拠の標目)-括弧内の数字は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号
省略
(補足説明)
1 弁護人は,被告人は判示の窃盗に及んでいない旨主張し,被告人もこれに沿う
供述をするところ,前掲関係各証拠によれば,判示犯罪事実は疑いの余地なく認定
できるのであるが,その理由につき,補足して説明を加える。
2 前掲関係各証拠並びに司法警察員作成の捜査復命書(検察官請求証拠番号6。
ただし,不同意部分を除く。),司法巡査作成の捜査復命書(同7。ただし,不同
意部分を除く。),司法警察員作成の捜索差押調書(同8)及び司法警察員作成の
現行犯人逮捕手続書(同1。ただし,不同意部分を除く。)によれば,兵庫県警察
本部刑事部捜査第3課所属の警察官であるBはいわゆる旧国鉄の鉄道公安職員時代
を含め30年以上すり捜査に従事した経験を有する者であるが,平成14年9月2
日,C,Dほか1名の警察官とともに,2班に分かれ,C警察官とペアになって,
すり捜査(「要撃捜査」)に従事中,同日午後11時ころ,西日本旅客鉄道株式会
社(JR)f駅下りホーム上に被告人を発見し,前記チームで連携しながら,JR
電車に乗車して,J
Rf駅から同g駅へ,同駅から同h駅へ,同駅から同g駅へ,同駅から同a駅へと
順次移動する被告人を追尾したこと,B警察官は,被告人がJRa駅で下車したた
め,同駅で下車して反対側上り線ホームから同駅下りホーム上の被告人の動静を観
察したこと,同月3日午前零時20分ころ,B警察官は,被告人において,同駅下
りホーム西端から二つ目の3番ホーム側に向けて設置された3人掛けのベンチの左
(東)端に座って仮眠していたAの隣りに座り,右手で同人のズボンの左後ろポケ
ットをまさぐり,財布様のものを引き上げ抜き取るのを目撃したこと,その際のB
警察官の目撃態勢は,同警察官において上り線ホーム上の売店裏に身を隠し,腹這
いになって,所携の単眼鏡(倍率7倍のもの)を用いて線路を挟んで約25.8メ
ートル前方の被告人
を観察するというものであったこと,B警察官は,その後ホームから階段を下りる
被告人を追い,途中,D警察官に被害者の確保を依頼した上,連絡通路において被
告人を発見し,同通路に降りる階段付近から,同人が同所に設置されているゴミ箱
内に右手に持った財布らしき物を捨てるのを目撃したこと,引き続き被告人は手元
で札を数えながら同所付近の男子トイレに向かい同所に入ったこと,B警察官は同
トイレ出入口付近でしばらく待機しD警察官を待ったが,あらわれないため,一人
で同トイレ内に入り,同日午前零時25分ころ同所において被告人を現行犯逮捕し
たこと,他方,D警察官は被害者と接触して同人から財布が盗まれていることを確
認したこと,被害者はその後前記ゴミ箱内から発見された財布が盗まれた同人所有
の財布であることを
確認したこと,以上の事実が認められる。
3 判示事実は前認定の経過でB警察官により現認されているところ,前認定のと
おり,その目撃供述は誤りの生じる余地のない正確なものと認められる。そして,
同供述の正確性は,犯行直後,D警察官により被害者から被害確認がとれたことや
B警察官において被告人がゴミ箱に財布を投棄したのを現認し,そのゴミ箱から投
棄された被害品である財布が発見されたことその他の前認定の犯行直後の諸事実に
よっても裏付けられているというべきである。
  弁護人は,証人Bの公判供述は,予断と偏見をもって被告人を監視追尾した同
警察官において被告人の行動を仮睡者への物色行為と誤認したものであり,その目
撃供述は正確ではなく,判示事実は合理的な疑いを容れない程度に証明されていな
いと主張するが理由がない。
4 被告人は,犯行当日,かつてのすり仲間から貸金の返還を受けようとJR電車
に乗車してすり仲間の居りそうな各駅間を移動していたものであり,尿意を催しJ
Ra駅で下車し,被害者がその東端の席に座っていた3人掛けのベンチに座ったこ
とは事実であるが,西端の席に座ったのであり,被害者から財布を抜き取ったこと
はない旨供述するのであるが,犯行当日の電車による頻繁な移動の理由に関するそ
れを含め被告人の弁解供述はいずれも不自然で信用性の乏しい供述といわざるを得
ず,被告人の犯行に及んでいない旨の弁解は採用の限りではない。
5 以上のとおり,被告人が判示犯行を行ったことにつき証明は十分であり,弁護
人の主張は理由がない。
(累犯前科)
 被告人は,(1)平成7年10月12日明石簡易裁判所において住居侵入,窃盗の各
罪により懲役2年(3年間刑の執行猶予,平成8年10月4日その猶予取消し)に
処せられ,平成11年4月22日その刑の執行を受け終わり,(2)その後犯した窃盗
罪により平成12年5月31日神戸地方裁判所において懲役2年に処せられ,平成
14年3月31日その刑の執行を受け終わったものであって,これらの事実は検察
事務官作成の前科調書(検察官請求証拠番号36)及び判決書謄本2通(同41,
43)によって認める。
(法令の適用)
 罰条 盗犯等の防止及び処分に関する法律3条,2条(刑法235条)
 累犯加重 刑法59条,56条1項,57条(同法14条の制限内で3犯加重)
 宣告刑懲役3年6月
 未決勾留刑法21条(120日算入)
 訴訟費用刑事訴訟法181条1項ただし書(負担させない。) 
(量刑の理由)
 本件は常習累犯窃盗(手口は仮睡盗)の事案であるが,被告人は,格別の理由も
ないのに,最終刑の執行終了後約6か月で本件犯行に及んだものであり,その盗癖
は固着化しているといわざるを得ず,被告人が本件犯行につき不合理な弁解に終始
して恥じるところがないこと,前記累犯前科のほか多数の同種前科があることを併
せ考慮すると,被告人の刑事責任は重いというべきところ,被害額は比較的少額
で,被害は回復されたことなど被告人のために酌むべき事情を十分に考慮し,主文
のとおり量刑した次第である。
 よって,主文のとおり判決する。
平成15年3月26日
神戸地方裁判所第11刑事係甲
裁 判 官   杉 森 研 二

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