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平成16年4月15日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成15年(少コ)第1787号 損害賠償請求事件(通常移行)
口頭弁論終結日 平成16年3月18日
          判    決
          主    文
1 被告は,原告に対し,4万5848円を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は6分し,その5を原告の,その余を被告の負担とする。
4 この判決は,主文1項に限り,仮に執行することができる。
          事実及び理由
第1 請   求
被告は,原告に対し,29万7101円を支払え。
第2 事案の概要
 1 請求原因の要旨
(1) 被告従業員Aは,平成15年3月10日午前10時30分頃,JR東京駅   丸の内
方面の改札口を出て数メートル付近において,前記改札口から出て歩   いていた原
告に対し,Aが手に持っていたカートを衝突させ,原告に2週間   の通院加療を要す
る左足甲,足部挫創の傷害を負わせた。
(2) 原告は,被告の前記衝突によって,次の損害を被った。
① 治療費      4210円
②文書代   5440円
③休業補償  14万1251円
④慰謝料14万6200円
(3) 前記事故はAが被告の業務中に起こした事故であるから,被告に前記損   害
を賠償する責任がある。
 2 争点
(1)事故態様と過失割合  
(2)被告の使用者責任 
(3) 損害の範囲
第3 当裁判所の判断
証拠並びに弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
 1 争点1(事故態様と過失割合)について
(1)事故態様
  Aは,平成15年3月10日午前10時55分頃,東京都千代田区ab丁   目c番d
号所在のB株式会社東京駅丸の内中央口改札口の外側7,8メート   ル付近におい
て,左手に黒色書類入れカバン,右手にキャリーバッグ(高さ   約60センチメートル,
横幅約50センチメートル,車輪付きで地面に置い   た状態)を後方に引いて持ち,上
司Cと約2,3分立ち止まって話をしてい   た。その後,Aは,左側に向かって歩こうと
して身体と右手で引いていたキ   ャリーバッグを左側に動かした。その際,前記キャリ
ーバッグの車輪(コロ   の部分)で前記改札口から歩いて来た原告の左足甲の部分
を轢いた。前記車   輪は引いて戻したため2回原告の左足甲を轢いてしまった。その
ため,原告   は11日間(11回)の通院加療を要する左足甲,足部挫創の傷害を負っ
た。
 (2)過失割合 
   事故当時,本件事故現場は混雑している状況ではなかったこと,原告は本   件
事故に遭うまでAとキャリーバッグの存在には全く気付いていなかったこ   と,Aも原
告には全く気付いていなかったこと,本件事故はAがいきなりキ   ャリーバッグを左側
に向けようとした際に瞬間的に発生していることが認め   られ,その過失割合は原告
2割,A8割と認めるのが相当である。
2 争点2(被告の使用者責任)について
本件事故は,被告従業員のAが,被告の得意先を訪問し,前任者を引き継い  だ
ことの挨拶のために広島から東京に出張してきた際の事故である。前記出張  自体に
被告の業務遂行性が認められ,Aが出張のために東京駅構内を歩行して  いたという
事実は,その行為の外形から観察して,被告の職務の範囲内の行為  と解されるか
ら,本件事故は,被告の職務行為の機会に発生したものと認める  のが相当である。
したがって,被告には,本件事故の使用者責任(民法715  条1項本文)がある。
3 争点3(損害の範囲)について
(1)治療費,文書代
  診断書(甲3),請求明細書兼領収書(甲6の1ないし11)によれば,本件事故
による治療費のうち原告が治療を受けたD整形外科の医療費総額は 1万3280
円であり,そのうち原告の負担額は4210円であること, 文書料(診断書代)は3
100円であることを認めることができる。前記 過失割合によれば,その8割であ
る5848円が被告の責めに帰すべき部 分となる。
  その余の事故後のうつ状態に関する請求部分(甲1,2)については本件 事故と
の相当因果関係がないので認められない。
(2) 休業補償
原告の本件傷害は,キャリーバッグの車輪に轢かれたことにより生じた圧   挫
創であり,11日間(11回)の通院加療を要するものであったと認めら   れる。しかし,
通院期間中,足部痛はあるも,日常生活や社会保険労務士の   職務にさほどの支
障を来すものではなかったこと,その間,原告は,事務所   を出発して戻るまで1回に
つき平均約1時間を要して通院加療を受けていた   が,ほぼ普段どおり社会保険労
務士の仕事をしていたこと(原告本人)が認   められる。
    そうすると,前記通院中に原告が休業していたとは認められないから,原   告
の休業補償の主張は失当である。
 (3) 精神的損害(慰謝料)
診断書(甲3),請求明細書兼領収書(甲6の1ないし11),証明書(甲   9)によ
れば,原告の受けた傷害は,全治13日間の左足甲,足部挫創であ   ることが認めら
れる。この事実に,「本件の傷害によって,正座もできなく,   仕事や日常生活にも少
し不自由であった。」という原告の供述を総合判断す   ると,本件傷害による慰謝料と
しては5万円が相当である。前記過失割合に   よれば,その8割である4万円が被告
の責めに帰すべき部分となる。
なお,原告のその余の慰謝料に関する主張は,主張自体失当である。
 4 以上によれば,原告の請求は,主文1項に記載の限度で理由があるが,その  余
の請求は理由がないので棄却することとし,主文のとおり判決する。
     東京簡易裁判所民事第2室
         裁 判 官   堀 田  隆  

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