弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 本件控訴の趣意は控訴趣意書と題する別紙書面記載のとおりで、これに対する当
裁判所の判断は次のとおりである。
 論旨第一点について。
 <要旨>しかし、労働基準法第六条は、その見出しにもあるようにいわゆる中間搾
取を禁止しようとするもので、その違反は直接労働者の利益を害するものと
していわば自然犯的性質を多分に帯びているのに対し、職業安定法第三十二条第一
項は、その窮極の目的は労働者保護にあることもちろんであるけれども、直接に
は、職業紹介事業は政府がこれを無料で行う建前から、有料の職業紹介事業を原則
として禁じようとするものであつて、その違反はいずれかといえば法定犯的色彩が
濃く、これによつてみれば、この両者の規定を全然同一性質のものと解することは
できず、むしろ両者はそれぞれその独自の存在理由を有するものと考えなければな
らない。のみならず、この両個の規定は、その適用の範囲においても一をもつて他
を覆うという関係にはないのであつて、労働基準法第六条に違反する行為がすべて
職業安定法の前記規定に違反するものでないことは所論のとおりであるし、また後
者に違反する行為のうちでも、たとえば労働基準法の適用を受けない家事使用人の
職業紹介を行う事業とか営利を目的としない実費職業紹介を行う事業のごときは、
労働基準法第六条には違反しないのである。しからば原判決が被告人の原判示所為
を一個の行為で右職業安定法及び労働基準法の二個の法条違反の罪名にあたるもの
としたのは正当であつて、職業安定法第三十二条第一項は労働基準法第六条の特別
法であるから前者の違反のみをもつて論ずべしとする所論は採用することができな
い。論旨は理由がない。
 (その他の判決理由は省略する。)
 (裁判長判事 大塚今比古 判事 早野儀三郎 判事 中野次雄)

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