弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
       本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人大橋堅固,同佐野真の上告趣意のうち,判例違反をいう点は,所論の引用
する判例は所論のいうような趣旨を判示したものではないから,前提を欠き,その
余は,事実誤認の主張であって,いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 所論にかんがみ,被告人に対する特別背任罪の共同正犯の成否について,職権で
判断する。
 1 原判決及びその是認する第1審判決の認定によれば,本件の事実関係は,以
下のとおりである。
 (1) 被告人は,A株式会社審査部長等を経て,昭和57年12月に,株式の店
頭公開の準備を進めるため,不動産の売買,賃貸,仲介等を目的とするB株式会社
(以下「B」という。)に出向し,取締役,代表取締役副社長を経て,平成2年1
1月に辞任したCの後を受けて,同社の代表取締役社長に就任し,同社の創業者で
実質的経営者であり同社の発行済株式の過半数を所有するCの指示の下に,同社の
業務を統括していたものである。
 (2) Bは,住宅金融専門会社であるD株式会社(以下「D」という。)から,
事業用・販売用不動産の取得費用等として,多額の借入れをしていたものであるが
,昭和62年12月以降,毎月のように運転資金の不足を来し,その都度Dからの
融資により急場をしのいでいた。
 (3) その後,バブル経済の崩壊によりBの売上げが激減し,その資金繰りが悪
化する一方で金利負担が増大するにつれ,DからBに対する運転資金の融資が担保
割れを起こしたが,Dは,代表取締役社長Eの指示により,なおもBに対する運転
資金の融資を継続し,平成3年4月の時点で同社に対する融資金の残高は約270
億円に達した。Dは,同月以降も,実質無担保状態に陥ったBに対する融資を継続
したが,同社に対する融資が対外的に突出するのを避けるため,被告人の協力を得
て書類を整えた上,Dの関連会社やBの子会社を経由する迂回融資の方法を採った。
 (4) Bは,平成3年8月には,D以外の金融機関からの融資が受けられなくな
り,Dからの融資がなければ倒産に追い込まれる危機的状態に陥った。しかし,E
らDの融資担当者は,同社の貸出規定等の定めを遵守し,貸付金の回収に万全の措
置を講ずるなど,同社のために職務を誠実に実行すべき任務に背き,同月から同年
11月までの間,4回にわたり,上記の迂回融資の方法により,合計18億700
0万円をBに貸し付けた(以下「本件融資」という。)。Eらは,Bに対する上記
融資が焦げ付く可能性が高いことを十分認識していたが,これに応じないと,Bが
たちまち倒産し,巨額の融資金が回収不能となることが予想されたため,それまで
同社に運転資金として巨額の金員を放漫に貸し続けてきたことに対する責任が問わ
れることを懸念して,自らの責任を回避し,保身を図るとともに,Bの利益を図る
目的を有していた。
 (5) 被告人は,Bの代表取締役として,同社に返済能力がなく,D以外の金融
機関からの融資が受けられない状態であるにもかかわらず,本件融資が実質無担保
の高額な継続的融資であり,迂回融資の方法が採られるなど明らかに不自然な形態
の融資であることを認識しており,証券会社の審査部長等を務めた経験等に照らし
ても,本件融資がEらのDに対する任務に違背して行われたものであること,本件
融資がDに財産上の損害を与えるものであることを十分認識していた。しかし,被
告人は,抜本的な経営改善策を講じないまま,Dに対し繰り返し運転資金の借入れ
を申し入れて,Eら融資担当者をして任務に違背するよう仕向けた。その際,被告
人は,BがDに資金面で深く依存し,財務的に破綻状況にあったにもかかわらず,
Dからの継続的な運転資金の借入れにより倒産を免れているという状態にあったた
め,Eら融資担当者がBに対する過剰融資,貸付金の回収不能から生ずる自己らの
責任を回避し,保身を図る目的で本件融資に応じざるを得ないことを知っていた。
また,被告人は,Eら融資担当者と個人的に親密な関係にはなかったが,Cの意向
を体し,Eと個人的に親密なCと共同して,本件融資の実現に寄与した。
 2 【要旨】以上の事実関係によれば,被告人は,Eら融資担当者がその任務に
違背するに当たり,支配的な影響力を行使することもなく,また,社会通念上許さ
れないような方法を用いるなどして積極的に働き掛けることもなかったものの,E
らの任務違背,Dの財産上の損害について高度の認識を有していたことに加え,E
らが自己及びBの利益を図る目的を有していることを認識し,本件融資に応じざる
を得ない状況にあることを利用しつつ,Dが迂回融資の手順を採ることに協力する
などして,本件融資の実現に加担しているのであって,Eらの特別背任行為につい
て共同加功をしたとの評価を免れないというべきである。
 これと同旨の見解の下に,被告人に特別背任罪の共同正犯の成立を認めた原判決
の判断は相当である。
 よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,
主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 濱田邦夫 裁判官 金谷利廣 裁判官 上田豊三 裁判官 藤田
宙靖)

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