弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告人らの上告理由について。
 論旨は、本件土地が租税特別措置法にいう居住用財産に該当しないとした原審の
判断に事実誤認、採証法則違背、右法条の解釈適用を誤つた違法がある、という。
 おもうに、本件に適用されるべき旧租税特別措置法(昭和三八年法律第六五号に
よる改正前のもの。以下単に法という。)三五条四項一号の規定によれば、居住用
財産買換えの場合における居住用財産とは、「居住の用に供する家屋、当該家屋の
敷地に供される土地及び当該土地の上に存する権利」を指す、とされている。いま、
右のうち、譲渡に係る「居住の用に供する家屋の敷地に供される土地」についてい
えば、それが、譲渡の当時現実に居住用家屋の敷地に供されている土地であるのを
原則とするが、それのみに限られることなく、所有者が居住用家屋の敷地ほ供する
意図の下に所有している土地をも含むものと解すべきことは、まさに、所論のとお
りである。しかし、居住用財産買換えの場合において譲渡所得の課税を減免するた
めの要件として、法が、所定の期間内に、譲渡した財産に見合う財産を取得し、か
つ、その取得した財産を居住の用に供し又は供する見込みである旨の所轄税務署長
の承認を受けたことを必要としていることに徴しても、また、立証の難易・租税の
公平負担という見地からみても、所有者の右の意図は、近い将来において実現され
ることが客観的に明白なものでなければならないと解するのが相当である。
 ところで、原判決(その引用に係る第一審判決を含む。)の確定した事実によれ
ば、本件土地は、もともと第三者の所有であつて、その上に上告人らの亡父所有の
建物があつたところ、同建物が戦時中強制疎開で取りこわされて空地となり、昭和
二二年頃上告人A1がそのうちの合計三筆一六〇坪五合八勺を、また、昭和二六年
一二月上告人A2が残りの合計二筆九五坪六合八勺を買い受けたが、依然空地のま
まに放置されて近々の人達のごみ捨場になつていた、その間、上告人A1が本件土
地を利用して駐車場を経営すべく整地をはじめたところ、同人の経営に不安をいだ
く上告人A2としては、それを思いとどまらせるため、本件土地の約半分の上に上
告人ら両名の住宅を建てることを考えるようになつたが、その具体的運びにいたら
ないうちに、訴外D織物株式会社から本件土地を買い受けたい旨の申込みがあつた
ので、昭和三五年一一月三〇日上告人らは右各所有部分を同会社に譲渡した、そし
て、前記建物疎開後本件土地譲渡の日まで約一五年間にわたり、上告人らは、他よ
り家屋を賃借してそこに居住していたが、それは、「仮住居」と認められるべきも
のではなかつた、というのである。したがつて、所論のように、仮りに、本件土地
は上告人らが将来居住用家屋の敷地に供する目的で買い入れたものであるとしても、
前記事実関係の下においては、本件土地をもつて法三五条四項一号の規定する「居
住の用に供する家屋の敷地に供される土地」に該当するものとは、到底、認められ
ないというべきである。
 されば、叙上と同旨の結論に出た原審の判断は正当であり、その過程にも所論の
違法あるを見い出し難く、論旨は、独自の見解に立脚するか、原判示に副わない事
実に基づき、その違法をいうにすぎないものであつて、採用の限りでない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意
見で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外
            裁判官    色   川   幸 太 郎

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