弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄し、本件を東京高等裁判所に差し戻す。
         理    由
 上告代理人山田滋、同柴田徹男の上告理由について。
 原判決の認定したところによれば、破産者D繊維株式会社(以下、破産会社とい
う。)は、昭和四四年一〇月現在、訴外E物産株式会社に対し二〇〇〇万円をこえ
る借受金債務を負担していたところ、その頃、E物産との間において、破産会社所
有の本件建物につき、右債務の担保のための根抵当権設定契約および右債務の不履
行を停止条件とする代物弁済契約を締結するとともに、右同様の事項を停止条件と
し、賃貸人の承諾を得ないで賃借権を譲渡しまたは転貸することができる旨の特約
を付した存続期間三年の賃借権をE物産のため設定する旨の賃貸借契約を締結し、
右条件付賃借権設定の仮登記を経由したこと(記録によれば、右仮登記がなされた
のは、同年一二月三日であることが明らかである。)、抵当権の設定とともになさ
れた右内容の賃貸借契約は抵当不動産の担保価値を保全することを目的とするもの
であること、破産会社は同年一二月二日不渡手形を出して倒産し、その結果E物産
に対する抵当債務が不履行となつて、同日、右賃貸借契約の停止条件が成就し、E
物産が本件建物につき賃借権を取得するに至つたこと、被上告人は、その後一五〇
万円の対価を支払つてE物産から右賃借権の譲渡を受け、同月二二日以降本件建物
を占有していること、破産会社は同月二四日午後一時破産宣告を受け、上告人が破
産管財人に就任したこと、以上の事実が認められるというのであるが、原判決は、
右の事実認定に基づき、被上告人が本件建物につき適法な賃借権を有するとして、
破産財団に属する本件建物の明渡を求める上告人の請求を棄却した。
 しかし、まず、原判決は、右契約時におけるE物産の破産会社に対する債権額を
右のとおり認定し、破産会社の倒産時にその債務不履行が発生したものとしている
が、右倒産時におけるE物産の債権の金額、内容、右債務不履行の態様を明らかに
していないばかりでなく、記録に徴しても、その事実関係を知るべき資料は見出だ
されないのであつて、破産会社の債務不履行により停止条件が成就し、E物産が賃
借権を取得した旨の原判決の認定・判断は、にわかに首肯することができない。
 また、E物産が賃借権を取得し、かつ、前示特約による破産会社の事前の承諾に
基づき、原判示のように根抵当権および被担保債権と別個に右賃借権を譲渡するこ
とができるものであつたとしても、右事実関係のみから、ただちに、被上告人が賃
借権の譲受をもつて破産債権者に対抗しうるものと解することはできない。すなわ
ち、停止条件の成就により賃貸借が効力を生じたのちに、破産会社が、賃貸借契約
に基づく義務の履行として、E物産に対し任意に本件建物の引渡をしたという事実
は、原判決の確定していないところである。原判決の認定によれば、本件賃借権の
設定は、もつぱら抵当不動産の担保価値を保全することを目的としてなされたとい
うのであつて、通常の賃貸借におけると異なり、停止条件成就後貸借人が現実に本
件建物を占有使用することを当然に予定していたものではないと解されるのである
から、被上告人が現に本件建物を占有している事実から、適法に占有を取得したも
のと推定しうるものではなく、しかも、記録に現われた弁論の趣旨および証拠関係
に徴するに、E物産ないし被上告人の占有は破産者の意思に基づかないで開始され
たものであると疑うべき状況も存するのである。そして、仮りに、破産会社がE物
産または被上告人に任意に本件建物の引渡しをした事実がないならば、被上告人は、
借家法一条に基づき、破産宣告前における賃借権の存在およびその取得をもつて、
破産債権者を含む第三者に対抗することができないものと解される。もつとも、E
物産のため条件付賃借権設定の仮登記がなされているが、右仮登記に基づく賃借権
設定の本登記および被上告人への賃借権移転の付記登記がなされた形跡はないので
あり、右仮登記のみをもつてただちに賃借権の設定および移転につき破産債権者に
対抗することができるものとは解されない。結局、原判決は、被上告人において、
賃借権を破産債権者に対抗し、したがつて上告人の請求に対しこれを占有権原とし
て主張しうるとする理由を明らかにしていないものといわなければならない。
 なお、原判決が右仮登記をもつて破産債権者に対抗しうるものと解した趣旨であ
るならば、前示事実関係のもとにおいては、上告人は破産法七四条、八三条に基づ
き右仮登記を否認することができるものと解する余地があり、さらに、右仮登記の
原因たる条件付賃借権設定の行為も、債権者を害することを知つてなされたものと
して否認の対象とする可能性も、皆無ではないと解される。そして、本件訴訟の経
緯および事案の性質に徴すれば、原審裁判所が、上告人に対し、本件賃借権の設定
および移転が有効になされたものと認定される場合のため、右賃借権設定行為もし
くは仮登記経由の行為に対する否認権行使の有無につき釈明することは可能であり、
また、適切な措置であつたと認められる。しかるに、原審は、なんらこの点につき
配慮した形跡がなく、たやすく第一審判決を取り消して上告人の請求を棄却したの
であつて、右の釈明を怠つたことについても、非難を免れないものというべきであ
る。
 これを要するに、原判決には、結論に影響を及ぼすべき以上の諸点につき審理不
尽または理由不備の違法があるものといわなければならない。よつて、原判決を破
棄して、さらに審理を尽くさせるため本件を原審に差し戻すこととし、民訴法四〇
七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    色   川   幸 太 郎
            裁判官    村   上   朝   一
            裁判官    岡   原   昌   男
            裁判官    小   川   信   雄

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