弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
       事   実
第一 当事者の求めた裁判
一 原告
1 特許庁が昭和五九年審判第一七一四九号事件について昭和六〇年六月二四日に
した審決を取り消す。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決
二 被告
 主文同旨の判決
第二 請求の原因
一 特許庁における手続の経緯
 訴外Aは、昭和五三年四月一一日、名称を「着色木材およびその製造方法」とす
る発明について特許出願(昭和五三年特許願第四二八二七号)をしたが、昭和五九
年五月二五日に拒絶査定がなされ、その謄本は同年八月八日同訴外人に送達され
た。
 原告は、同年九月七日審判を請求し、昭和五九年審判第一七一四九号事件として
係属した。
 原告は、訴外Aより本願発明につき特許を受ける権利を譲り受けた旨を、同年一
〇月一日被告に届け出た。
 前記審判事件について、昭和六〇年六月二四日「本件審判の請求を却下する。」
との審決がなされ、その謄本は同年七月二七日原告に送達された。
二 審決の理由の要点
 本願は、昭和五三年四月一一日に出願人Aより出願され、昭和五九年五月二五日
付で拒絶査定がなされたものである。
 一方、本件審判請求は、その拒絶査定に対する審判を昭和五九年九月七日に大建
工業株式会社(原告)が請求したものである。
 したがつて、本件審判請求は、請求人適格を有しない者によりなされた不適法な
請求であり、その欠缺は補正することができないから、特許法第一三五条の規定に
よりこれを却下すべきものとする。
三 審決を取り消すべき事由
 前一項に記載のとおり、原告は、訴外Aより本願発明につき特許を受ける権利を
譲り受けた旨を、昭和五九年一〇月一日被告に届け出たものであるから、被告主張
の欠缺は補正されたものというべく、原告は、本件審判請求につき請求人適格を有
するものである。
 よつて、本件審判請求は、請求人適格を有しない者よりなされた不適法な請求で
あり、その欠缺は補正することができないとして、これを却下した審決は違法であ
る。
第三 被告の答弁及び主張
一 請求の原因一及び二の事実は認める。
二 同三は争う。
 本件出願は、訴外Aの特許出願に係り、その拒絶査定に対する審判の請求は、拒
絶査定の名宛人である同訴外人がなすべきところこれをなさず、原告が同訴外人か
ら特許を受ける権利を譲り受けたものとして、拒絶査定に対する審判の請求をなす
べき期間内になされたものであるが、原告は、その期間内に同訴外人から特許を受
ける権利を譲り受けたことを被告に対し届け出ておらず、また原告の右特許を受け
る権利の承継が一般承継によるものとも認められないので、原告がなした右審判の
請求は、拒絶査定の名宛人となつていない者、又は拒絶査定の名宛人となつている
者から特許を受ける権利の譲渡を受けたことを主張しえない者、すなわち本件出願
に係る拒絶査定に対する審判の請求人になりえない者がなした不適法なものであつ
て、その欠缺は補正をすることができないものである。したがつて、右欠缺は、原
告が審判の請求期間後に、特許を受ける権利の譲受けを被告に届け出たことによつ
て補正されることはない。
 以上のとおりであつて、審決には原告主張の違法は存しない。
第四 証拠関係(省略)
       理   由
一 請求の原因一及び二の事実は、当事者間に争いがない。
二 そこで、審決を取り消すべき事由の存否について検討する。
 特許法は、「拒絶をすべき旨の査定を受けた者は、その査定に不服があるとき
は、その査定の謄本の送達があつた日から三〇日以内に審判を請求することができ
る。」(第一二一条第一項)と規定しているが、同法は、特許を受ける権利の移転
を認めており(第三三条第一項)、第三四条第四項において、「特許出願後におけ
る特許を受ける権利の承継は、相続その他の一般承継の場合を除き、特許庁長官に
届け出なければ、その効力を生じない。」と定めていることをも併せ考えると、特
許法第一二一条第一項の明文上は、拒絶査定を受けた者のみが審判請求人たる適格
を有するものとして定められているが、拒絶査定の名宛人である者から他の者に特
許を受ける権利が特定承継された場合に、前記法定の審判請求期間内に審判の請求
がなされ、かつ、右期間内に、特許庁長官に対し権利承継の届出がなされたとき
は、拒絶査定の名宛人でない者からの審判請求であるという欠缺は補正され、当該
特定承継人は、審判請求人たる地位を適法に取得するに至るとすべきであるが、特
許法第一二一条第一項において、審判を請求することができる期間を定めている趣
旨及び同法第三四条第四項において、特許出願後における特許を受ける権利の承継
(相続その他の一般承継の場合を除く。)は特許庁長官に対する届出をもつてその
効力発生要件としていることからすると、特許を受ける権利の承継(相続その他の
一般承継の場合を除く。)についての特許庁長官に対する届出が、同法第一二一条
第一項所定の期間経過後になされた場合には、もはや前記欠缺は補正されず、当該
審判請求は、拒絶査定に対する審判の請求人になりえない者がなした不適法なもの
と解するのが相当である。
 本件において、原告が、訴外Aより本願発明についての特許を受ける権利を譲り
受けた旨を被告である特許庁長官に対し届け出たのは、特許法第一二一条第一項所
定の期間経過後であることは、当事者間に争いのない請求の原因一の事実より明ら
かである。
 そうすると、右届出によつて、前記欠缺は補正されず、本件審判請求は、審判の
請求人になりえない者がなした不適法なものといわざるをえず、特許法第一三五条
の規定によりこれを却下すべきものであるとした審決には、原告主張の違法はな
い。
三 よつて、審決の取消しを求める本訴請求は理由がないから、これを棄却するこ
ととし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条の各規
定を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 蕪山嚴 竹田稔 濱崎浩一)

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