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平成14年(行ケ)第512号 特許取消決定取消請求事件
口頭弁論終結日 平成15年6月19日
判      決
原      告    富士ゼロックス株式会社
訴訟代理人弁理士    早 川   明
被      告    特許庁長官 太田信一郎
指定代理人       市 野 要 助
同    松 縄 正 登
同    涌 井 幸 一
同    高 木   進
同    高 橋 泰 史
主      文
1 特許庁が異議2002-70175号事件について平成14年8月20
日にした決定を取り消す。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
1 原告の請求
(1) 主文1項と同旨。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 当事者間に争いのない事実
(1) 特許庁における手続の経緯
原告は,発明の名称を「シート処理装置」とする特許第3191492号の
特許(平成5年6月14日出願,平成13年5月25日設定登録,以下「本件特
許」といい,その発明を「本件発明」という。)の特許権者である。
本件特許に対し,請求項1につき,特許異議の申立てがあり,その申立て
は,異議2002-70175号事件として審理された。原告は,この審理の過程
で,平成14年6月24日,本件特許の出願に係る願書の訂正の請求をした。特許
庁は,上記事件につき審理し,その結果,平成14年8月20日,この訂正(以下
「本件第1訂正」という。)を認めた上で,「特許第3191492号の請求項1
に係る特許を取り消す。」との決定をし,同年9月7日に,その謄本を原告に送達
した。
(2) 決定の理由
決定の理由は,要するに,本件発明は,特許法29条2項の規定に該当し,
特許を受けることができないものであり,本件特許は,この規定に違反して登録さ
れたものである,とするものである。
(3) 原告は,本訴係属中の平成15年4月9日,本件特許の出願の願書に添付さ
れた明細書の訂正をすることについて審判を請求した。特許庁は,これを訂正20
03-39070号事件として審理し,その結果,平成15年5月22日に上記訂
正(以下「本件第2訂正」という。)をすることを認める旨の審決(以下「本件訂
正審決」という。)をし,これが確定した。
3 本件第1訂正前の本件特許の特許請求の範囲(甲第2号証・特許公報に記載の
もの)
「【請求項1】下記の構成要件(A01)~(A08)を備えたことを特徴とするシ
ート処理装置,
(A01)一側面に配置されたシート搬入口,
(A02)前記一側面の反対側の他側面に配置された中綴じシート排出口,
(A03)前記シート搬入口から搬入された複数のシートを揃えて収容する中綴じ用
コンパイルトレイ,
(A04)前記一側面と他側面との距離を短縮するために急傾斜させて配置した前記
中綴じ用コンパイルトレイ,
(A05)前記中綴じ用コンパイルトレイ内の複数のシートを中綴じする位置と中綴
じされたシートセットを折り曲げる位置との間で移動させるシート位置調節部材,
(A06)前記中綴じ用コンパイルトレイに収容されたシートを中綴じするサドルス
テープラ,
(A07)中綴じされたシートの中綴じ部分を前記急傾斜した中綴じ用コンパイルト
レイの前記他側面側に配置された一対の折りローラ間に垂直に押付けるナイフエッ
ジを有するシート折曲装置。
(A08)折曲げられた中綴じシートを前記シート排出口に搬送するシート排出路を
有する中綴じシート排出装置。」
4 本件第1訂正後の本件特許の特許請求の範囲(下線部が訂正された箇所であ
る。)
「【請求項1】下記の構成要件(A01)~(A09)を備えたことを特徴とするシ
ート処理装置,
(A01)一側面に配置されたシート搬入口,
(A02)前記一側面の反対側の他側面に配置された中綴じシート排出口,
(A03)前記シート搬入口から搬入された複数のシートを揃えて収容する中綴じ用
コンパイルトレイ,
(A04)前記一側面と他側面との距離を短縮するために急傾斜させて配置した前記
中綴じ用コンパイルトレイ,
(A05)前記中綴じ用コンパイルトレイ内の複数のシートを中綴じする位置と中綴
じされたシートセットを折り曲げる位置との間で移動させるシート位置調節部材,
(A06)前記中綴じ用コンパイルトレイに収容されたシートを中綴じするサドルス
テープラ,
(A07)中綴じされたシートの中綴じ部分を前記急傾斜した中綴じ用コンパイルト
レイの前記他側面側に配置された一対の折りローラ間に垂直に押付けるナイフエッ
ジを有するシート折曲装置,
(A08)折曲げられた中綴じシートを前記シート排出口に搬送するシート排出路を
有する中綴じシート排出装置,
(A09)前記シート搬入口から搬入された複数のシートを端綴じし,前記サドルス
テープラの上方に配置された端綴じ用ステープラ。」
5 本件第2訂正後の本件特許の特許請求の範囲(下線部が本件第1訂正後のもの
と比較した場合の訂正箇所である。)
「【請求項1】下記の構成要件(A01)~(A11)を備えたことを特徴とするシ
ート処理装置,
(A01)一側面に配置されたシート搬入口,
(A02)前記一側面の反対側の他側面に配置された中綴じシート排出口,
(A03)前記シート搬入口から搬入された複数のシートを揃えて収容する中綴じ用
コンパイルトレイ,
(A04)前記一側面と他側面との距離を短縮するために急傾斜させて配置した前記
中綴じ用コンパイルトレイ,
(A05)前記中綴じ用コンパイルトレイ内の複数のシートを中綴じする位置と中綴
じされたシートセットを折り曲げる位置との間で移動させるシート位置調節部材,
(A06)前記中綴じ用コンパイルトレイに収容されたシートを中綴じするサドルス
テープラ,
(A07)中綴じされたシートの中綴じ部分を前記急傾斜した中綴じ用コンパイルト
レイの前記他側面側に配置された一対の折りローラ間に垂直に押付けるナイフエッ
ジを有するシート折曲装置,
(A08)折曲げられた中綴じシートを前記シート排出口に搬送するシート排出路を
有する中綴じシート排出装置,
(A09)前記シート搬入口から搬入された複数のシートを端綴じし,前記サドルス
テープラの上方に配置された端綴じ用ステープラ,
(A10)前記一側面の反対側の他側面に配置された端綴じシート排出口,
(A11)前記端綴じ用ステープラは,位置決め部を有する端綴じ用コンパイルトレ
イの位置決め部の近傍に配置され,前記端綴じ用コンパイルトレイの位置決め部に
記録シートの一端が位置決めされた状態で,且つ前記端綴じシート排出口から排出
される記録シートの1部分が端綴じシート排出トレイに載置された状態で記録シー
トのコンパイラトレイ側の端綴じを行うようにしてなる。」
6 当裁判所の判断
上記当事者間に争いのない事実によれば,本件第2訂正前の本件特許の請求の
範囲(本件第1訂正後の特許請求の範囲)請求項1の記載に基づき,その発明を認
定し,これを前提に,特許法29条2項の規定に違反して登録された特許であるこ
とを理由に,請求項1につき本件特許を取り消した決定の取消しを求める訴訟の係
属中に,当該特許に係る特許請求の範囲の減縮を含む訂正の審判が請求され,特許
庁は,これを認める審決(本件訂正審決)をし,これが確定したということができ
る。
決定は,これにより,結果として,請求項1について判断の対象となるべき発
明の要旨の認定を誤ったことになり,この誤りが決定の結論に影響を及ぼすことは
明らかである。したがって,決定は,取消しを免れない。
7 以上によれば,本訴請求は理由がある。そこで,これを認容し,訴訟費用の負
担については,原告に負担させるのを相当と認め,行政事件訴訟法7条,民事訴訟
法62条を適用して,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第6民事部
裁判長裁判官  山  下  和  明
裁判官  設  樂  隆  一
裁判官  高  瀬  順  久

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