弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する
     控訴費用は控訴人の負担とする。
         事    実
 一、 控訴の趣旨並びにその答弁。
 (一) 控訴代理人は、「原判決を取消す。被控訴人東京商工会議所が昭和二十
五年六月二十八日の議員総会においてなした『A1を同会議所の会頭に、A2、A
3、A4、A5を同副会頭に、A6、A7、A8、A9、A10、A11、A1
2、A13、A14、A15、A16、A17、A18、A19、A20、A2
1、A22、A23、A24、A25、A26、A27、A28、A29、A3
0、A31、A32、A33、A34、A35、A36、A37、A38、A3
9、A40、A41、A42、A43、A44、A45を同理事に、A46、A4
7、A48を同監事に選任する。』旨の決議は無効であることを確認する。被控訴
人A2、同A3、A4、同A5は被控訴人東京商工会議所の副会頭でないことを確
認する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人等の負担とする。」との判決を求め
た。
 (二) 被控訴人等代理人は、控訴棄却の判決を求めた。
 二、 当事者双方の事実上の主張。
 (一) 控訴代理人は、(イ)原判決事実摘示(1)の(二)の主張に附加して
次の主張をなす、即ち本件会員総会においては代理人によつて議決権を行使し得る
ものとしても、その代理権は招集通知に予め示された付議事項にのみ局限されるも
のであるところ、右総会の招集通知には役員選任に関する事項は記載されていたか
つたから、この議案については代理権は及ばない、従つて本件会員総会の決議は適
法なる代理権のない者の代行によつて議決されたものであつて、法律上無効であ
る。(ロ)原判決事実摘示(4)の(イ)の主張の趣旨は次の如くである。即ち本
件議員総会には、原判決事実摘示(記録第三百一丁裏五行目以下三百二丁表四行
目)の如き十三名の者が出席して議決権を行使したが、同人等は被控訴人東京商工
会議所の議員でもなく、又届出済の代表者でもない、かかる無資格者が参加してた
した決議は、右会議所の公的本質に照すも、はた又民法第一条の精神から考えてみ
ても、当然無効であるといわなければたらない。(ハ)本件会員総会の決議が無効
であるとする理由として次の主張を附加する、即ち本件会員総会当時における正会
員の総数は三千八十八名であつたところ、右総会に出席して議決権を行使したもの
は合計千四百六十九名(会員自身出席した者九十一名、代理人による者千三百七十
八名)に過ぎないから、定款第十八条但書に定める定足数を欠如するものであつ
て、かかる構成の下にたされた会員総会の決議は、定款の規定に違反し無効であ
る、もつとも被控訴人等は右正会員総数の内、六百八名については当時会員権が停
止せられていたと抗争するけれども、かかる事実は争う、元来会員権を停止するに
は議員総会の議を経なければたらないのに、その決議のあつた事実はたい、かりに
会員権停止の処分が行われたとしても、正会員の資格は存続せしめ、会費負担の義
務のみを残留させながら、その地位に当然随伴する権利即ち本件においては表決権
のみを停止するが如きは、憲法第二十九条の精神に違背し無効である。(二)その
他の主張はすべて原判決事実摘示の通りであると述べた。よつてこれを引用する
 (二) 被控訴人等代理人は、(イ)控訴人の主張する前掲(ハ)の事実に対し
て次の通り述べた、即ち本件会員総会当時における正会員の総数並びに右総会に出
席した会員数が控訴人主張の通りであることは認めるが、当時右正会員総数の内、
六百八名については、定款の規定に従つて、昭和二十二年一月二十九日開催の議員
総会の決議に基き昭和二十五年二月十六日の理事会において会員権停止を決議した
ものであるから、定款第十八条但書の規定によつて、本件会員総会における定足数
を定めるについては、右正会員総数り内から前示会員権を停止された者六百八名を
控除して、これを判定すべきものであつて、かく解するときは、右会員総会におい
ては何等定款所定の定足数に欠けるところはない。(ロ)控訴人主張の前掲(イ)
及び(ロ)の事実は争う。(ハ)その他の主張はすべて原判決事実摘示の通りであ
ると述べた。よつてこれを引用する。
 三、 証拠
 (一) 控訴代理人は、新に甲第十二号証を提出し、乙第八、九号証の成立を認
めると述べた。
 (二) 被控訴人等代理人は、新に乙第八、九号正を提出し、甲第十二号証の成
立を認めると述べた。
 (三) その他当事者双方の証拠の提出、援用並びに認否は、すべて原判決事実
摘示の通りであるから、これを引用する。
         理    由
 一、 被控訴人東京商工会議所が昭和二十一年十二月二十日設立認可をうけた社
団法人であること、昭和二十五年二月二十四日開催された被控訴人東京商工会議所
の第四回定時総会(本件会員総会)において、右会議所の役員選任を同会議所の議
員総会に委任する旨の決議をなしたこと並びに同年六月二十八日開催された被控訴
人東京商工会議所の第十回議員総会(本件議員総会)が右定時総会の決議による委
任に基き、「A1を会頭に、A2、A3、A4、A5を副会頭に、A6、A7、A
8、A9、A10、A11、A12、A13、A14、A15、A16、A17、
A18、A19、A20、A21、A22、小林寅次郎、A24、A25、A2
6、A27、A28、A29、A30、A31、A32、A33、A34、A3
5、A36、A37、A38、A39、A40、A41、A42、A43、A4
4、A45を理事に、A46、A47、A48を監事に選任する。」旨の決議をし
たことは、本件当事者間に争いがない。
 二、 よつて本件決議が無効であるという控訴人の主張について、左に順次に検
討を加える。
 (一) 原判決事実摘示(1)の(イ)主張について。
 本件会員総会招集の通知に、被控訴人東京商工会議所の役員の選任に関する件が
議題として記載されていなかつたことは当事者間に争いがたく、原本の存在並びに
成立に争いのない甲第一号証によると、右会議所の定款第十七条には、会員総会を
招集するについては会議の目的事項を示して通知を発すべきものなる旨規定されて
いることが認められるから、本件会員総会は、役員選任についての決議に関する限
り、会議の目的外の事項につき決議したことに帰するとともに、右会員総会の招集
手続にも定款の定めに違反する瑕疵ありといわたければならない。
 よつて叙上の如く瑕疵ある招集手続の下に開催された会員総会において会議の目
的外の事項についてたされた決議が法律上当然無効となるものであるかどうかにつ
いて考える。
<要旨第一>右会員総会は民法に定める社団法人の社員総会に該当するものである
が、民法は社員総会の招集に関して、第六十二条に、会議の目的たる事
項を示してこれを招集すべき旨を定めるとともに、第六十四条には、総会は予め通
知した事項についてのみ決議をなし得る旨が規定されているにとどまつて、該法条
に違反して招集された社員総会の決議の効力については、民法には何等定めるとこ
ろがない。惟うにかかる決議の効力を全面的に否定し去ることは、いたずらに手続
の繁瑣と社団の紛争を招来し易き結果となるから、にわかに首肯し得ないところで
あつて、結局は招集手続の瑕疵の種類、程度その他総会における提案並びに決議の
方法等諸般の事情に照して、法が総会を通じてする社員(本件においては会員)の
社団管理の権限を確保しようとした趣旨を著しく没却することになるかどうかによ
つて判断することが妥当であると解する。
 これを本件についてみるに、前記会員総会の招集通知には、会議の目的事項とし
て、「五、その他」なる記載のあつた事実(当事者間に争いなし)及び右会員総会
には会員の過半数が出席したものである事実(後段(五)の認定参照)を前掲甲第
一号証、原本の存在並びに成立に争いのない甲第三号証、成立に争いのない乙第一
号証の一、四、五、同第三号証の四、原審証人B1、A19、A34の各証言と併
せ考えると、本件会員総会において緊急動議として上程された役員選任に関する提
案について、役員の選任を議員総会に委任する旨の決議をなした事情は、先きに昭
和二十三年二月二十五日開催された第二回会員定時総会において、その招集通知に
議題として記載されていなかつた役員選任に関する事項が緊急議案として提案議決
された先例にならつたものであり、従来も招集通知に記載されていない事項につい
て会員総会においてこれを審議可決した事例も多かつたので、かかる事情をも考慮
して本件会員総会の招集通知にも議題として「五、その他」と記載して当日議場に
おいて緊急動議によつて、通知された事項以外の事項についても上程決議すること
のあるべきを予め示してあつたもりであつて、従つて本件会員総会には会員の過半
数を占める千四百六十九名が出席して緊急議案として上程された役員選任の議題に
ついて審議の結果格別異議を唱える者もなく、役員の選任を議員総会に委任する旨
の議案が可決されたものであるが、その席上には当時控訴会社の副社長であつたE
(現在控訴会社の代表者)も立会つていたけれども、同人は事業関係について一、
二発問を差したにとどまり、役員選任の件に関しては特別に発言をしなかつたもの
である事実を認めることができる。該認定を覆すに足る確証はない。
 叙上の事実に基いて、招集手続の瑕疵の種類程度その他総会における提案並びに
決議の内容、方法等諸般の事情から考えてみると、本件会員総会の右決議は、会員
が総会を通じてなす社団管理の権限を確保しようとした法律の精神を著しく阻害し
たものとは認められないから、これを無効とすべき根拠に乏しいものといわなけれ
ばならない。この点に関する控訴人の主張は理由がない。
 (二) 原判決事実摘示(1)の(ロ)の主張について。
 <要旨第二>被控訴人東京商工会議所においては、定款第十八条但書の規定によつ
て、役員の選任が会員総会の特別決議事項とされていることは、当事者
間に争いがない。ところが前掲甲第一号証によると、役員の選任その他定款第十五
条列記の事項については、会員総会の議決を経べきものとせられているが、同会議
所には、会員総会の外に、会員より選任された議員を以て構成する議員総会という
意思決定機関が設けられており、会員総会はその権限に属する事項を、定款第二十
条の規定によつて、議員総会に委任し得ることが認められる。従つて被控訴人東京
商工会議所においては、右定款第二十条の規定に準拠して、社団法人に関する民法
の規定に違反しない限り、会員総会において議決すべき事項を議員総会に委任し、
その決議によつて同会議所の意思決定をなし得るものであつて、しかも右定款第二
十条においては、その委任事項が特別決議事項たると普通決議事項たるとを区別し
ておらず、又控訴人主張の如く、これを区別して考えなければならないとする法令
又は定款上の根拠はなく、更に役員の選任というが如き事項は、その本質からみて
も、控訴人の主張するが如く、常に必ずしも会員の直接の議決にのみよることを要
し、定款の定めを以てするも、これを他の意思決定機関に委任し得ないものとは、
到底考えられない。されば被控訴人東京商工会議所の役員の選任が定款上会員総会
の特別決議事項となつていたとしても、固より定款第二十条の適用を妨げるもので
はないから、本件会員総会において、被控訴人東京商工会議所の役員の選任を同会
議所の議員総会に委任する旨の決議をなしたことは適法であつて、この点に関する
控訴人の主張は理由がない。
 (三) 原判決事実摘示(1)の(ハ)の主張について。
 被控訴人東京商工会議所の役員の選任が定款第十八条但書の規定によつて、会員
総会の特別決議事項と定められていること並びに本件会員総会の決議が右にいわゆ
る特別決議を以てなされたことは前段二の(一)において説述したところによつて
明かであるから、この点に関する控訴人の主張は理由がない。
 (四) 原判決事実摘示(1)の(二)並びに本判決事実摘示(一)の(イ)の
主張について。
 <要旨第三>本件会員総会においては、千三百七十八名の会員が、代理人によつて
議決権を行使したこと並びに定款第十九条には、会員は「別に定めると
ころ」により代理人を以てその表決権を行うことができる旨を定めているが、当時
同条にいわゆる特別の規定が存したかつたことは当事者間に争いがたい。
 しかしながら右定款第十九条の規定は、民法の規定によつて社団法人の社員に認
めている代理人による議決権の行使を制限する趣旨のものではなく、会員が代理人
によつて議決権を行使することを原則的に認容するとともに、この場合における代
理の手続方法等を統一的に劃定するための細則を別に定めるべき旨を規定している
ものと解するのが相当である。而して成立に争いのない乙第三号証の一ないし四、
原審証人B1の証言を綜合すると、被控訴人東京商工会議所においては、昭和二十
一年設立以来本件会員総会に至るまで、会員総会の招集通知には白紙委任状を同封
し、該委任状を代理人に持参させ或は右委任状に記名捺印の上受任者の氏名を白地
としたまま、これを送付させる方法で代理人により議決権を行使させることを慣例
としてきたことが明かである。従つて本件会員総会当時においては、右に説明した
定款第十九条による細則の制定は未だなかつたけれども、この規定の趣旨を実現す
る一定の方法が前述の如くすでに慣例として実際に行われていたものであつて、そ
のため不当な結果を生じたものとは認められないから、定款第十九条が未だ効力を
生じないものとはいい得ないのであつて、本件会員総会において会員が、右定款の
規定に準拠して代理人により議決権を行使したことは固より適法である。
 更に本件会員総会招集の通知に、被控訴人東京商工会議所の役員の選任に関する
件が議題として記載されていなかつたことは前述の通りであるが、右招集の通知に
も、議題として「五、その他」と記載されていたことは当事者間に争いがなく、従
つて右会員総会においても緊急動議によつて、通知された事項以外の議題が上程付
議されることのあるべきを予め告知しているものであるから、他に特段なる事情を
認むべき資料のない以上、会員が右会員総会における議決権の行使を代理人に委任
するに当つては、その代理権は、右招集通知に具体的に明示された議題にのみ局限
されるものでなく、広く会員総会において緊急動議として上程さるべきすべての議
題に関する議決権の行使についても代理権を付与する趣旨であつたものと解すべき
である。従つて本件会員総会における議決権の代理行使を以て、代理権の範囲を逸
脱したものであるとなす控訴人の所論は採用できない。
 されば会員が叙上の如く代理人によつて議決権を行使したことを以て本件会員総
会の決議を無効とする控訴人の主張は理由がない。
 (五) 本判決事実摘示(一)の(ハ)の主張について。
 本件会員総会当時において被控訴人東京商工会議所の正会員の総数が三千八十八
名であつたこと並びに右会員総会に出席した正会員数が、会員自身出席した者九十
一名、代理人による者千三百七十八名合計千四百六十九名であることは当事者間に
争いがない。
 ところが前掲甲第一号証によると、本件会員総会において提案された役員選任の
議決をなすに当つては、定款第十八条但書の規定によつて、いわゆる特別決議事項
として、正会員の半数以上が出席して議決権を行使することを要することとなつて
いることが明かであるから、前示出席会員数を会員総数に比して考えると、右定款
の規定する定足数を欠如するが如くみられる。しかしながら前掲甲第一号証、成立
に争いのない乙第八、九号証によると、被控訴人東京商工会議所においては、会費
の滞納三ケ月に及ぶ正会員に対しては議員総会の議決を経て会員権を停止すること
ができるものとなつているが(定款第十一条、第二十四条参照)、昭和二十二年一
月二十九日開催された議員総会において、会員権停止に関する事項を理事会に委任
する旨の決議をなし、昭和二十五年二月十六日開催された理事会では、右決議によ
る委任に基き協議の結果、二年以上にわたつて会費を滞納している会員六百八名に
対し会員権を停止する旨の決議をなしたことが認められる。
 従つて本件会員総会当時においては、正会員総数三千八十八名の内、六百八名は
会員停止の結果、右会員総会に出席して議決権を行使し得る権限を有したかつたも
のである。しかるところ前示定款第十八条但書に規定する定足数は、議決権を行使
し得る権限を有する会員数を基準としてこれを定むべきものであるから、本件会員
総会についても、会員総数の内から叙上の如く会員権停止の処分を受けた者を控除
した上において、果して定款第十八条但書に定める定足数を充たしているかどうか
を判定しなければならない。かく解するときは、本件会員総会に出席して議決権を
行使し得る会員数は、総会員三千八十八名より前示会員権停止の処分を受けた六百
八名を控除した二千四百八十名に過ぎたいところ、右会員総会に自身又は代理人に
よつて出席して議決権を行使した会員数は合計千四百六十九名であるから、本件会
員総会においては、定款第十八条但書に定める定足数を充たして余りあることが明
白である。
 <要旨第四>控訴人は叙上会員権の停止は憲法第二十九条の精神に違背し無効であ
ると主張するけれども、元来社団法人たる被控訴人東京商工会議所にお
いて、会費滞納久しきにわたる会員に対し会員権を停止する旨を定款に規定するこ
とは、法人内部の規律を維持する必要上当然の措置であつて、しかも会員たるべき
者は、右定款の規定を諒承の上、右会議所に入会したものと解すべきであるから、
同会議所が前述の如く定款に定めている手続に従つて適法に会員権停止の処分をな
したものである以上、該会員権の停止たるものが、控訴人主張の如く、会員たる資
格は存続せしめ、会費負担の義務のみを残留されたがら、その地位に当然随伴すべ
き表決権の行使のみを停止するものとしても、何等憲法第二十九条の精神に背馳す
る処置ではないといわなければならない。従つて叙上の会員権の停止が憲法の条規
に違反し当然無効であるとの控訴人の主張は理由がないばかりでなく、その他右会
員権の停止が法律上当然無効であるとの法令上の根拠を見出すこともできない。こ
の点に関する控訴人の主張は理由がない。
 (六) 原判決事実摘示(2)の主張について。
 本件会員総会の後、昭和二十五年五月二十日に推薦によつて六十名が、又同月三
十日に選挙によつて五十九名がそれぞれ新に議員に選任され、本件会員総会当時に
比して、議員総会の構成に変更があつたことは当事者間に争いがない。
 <要旨第五>しかしながら議員総会は、前述の如く、被控訴人東京商工会議所の一
の機関であつて、本件会員総会の決議も、議員総会を構成する個々の議
員を対象として、これらの者に右会議所の役員の選任を委任したものではなく、同
会議所の機関としての議員総会に委任したものであることは疑義の存しないところ
であるから、会員総会と議員総会との間における叙上委任に関する信頼関係を覆す
が如き特段の事情があれば格別、かかる事情の認められたい限り、ただ議員総会の
構成員が変更したという事由のみを以て、直ちに委任に関する信頼関係を覆滅させ
るものとして、本件会員総会の決議が効力を失うべきいわれはない。従つて本件議
員総会が法律上有効に委任を受けない事項について議決したものとは到底考えられ
ない。この点に関する控訴人の主張は理由がない。
 (七) 原判決事実摘示(3)の主張について。
 本件会員総会から議員総会までの間に、二百数十名の者が新に被控訴人東京商工
会議所の正会員となつたことは当事者間に争いがない。
 <要旨第六>元来会員総会の決議は、特段なる事由のない限り、その後の新入正会
員を拘束すべきものであることは当然である。而して前掲甲第一号証に
よると、定款第十六条の規定によつて、右会議所の会員総会の定時総会は毎年二月
に招集し、臨時総会は会頭が必要と認めたとき招集すべきこととなつていることが
認められる。この規定から考えると、本件におけるが如く、同会議所の前役員の任
期が昭和二十五年五月六日を以て満了する場合にあつては(弁論の全趣旨参照)本
件役員の改選をその時期の到来をまつて臨時総会を招集し、その間における新入正
会員の意思をも会員総会の決議に反映せしめることは固より妥当の措置というべき
であろうが、本件の如く僅々二、三ケ月を先きだつ会員定時総会において役員選任
について議決することは法律上違法なりと断定すべき根拠はない。
 従つて本件会員総会の決議がその後の新入会員を当然拘束すべきことは論をまた
ないところであつて、右決議に基いてなされた本件議員総会の決議が新入正会員の
役員選任に関する議決権を蹂躪するものとなすことはできない。この点に関する控
訴人の主張は理由がない。
 (八) 原判決事実摘示(4)の(イ)及び(ロ)並びに本判決事実摘示(一)
の(ロ)の主張について。
 原本の存在並びに成立に争いのない甲第二号証、同第四号証の一ないし十二、原
審証人B1の証言を綜合すると、被控訴人東京商工会議所の議員総会議事規程第四
条には、法人及び団体が議員てある場合においては、右会議所に届出済の代表者の
みによつて議決権を行使すべきものであつて、代理人を以てこれを代理行使するこ
とを許さない旨を定められているが、控訴人が代理人であると主張するC1、C
2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11並びにC12十
二名は、いずれも控訴人の主張する東京都繊維工業連合会外十一会社について、前
示談員総会議事規程第四条の規定による「右会議所に届出済の代表者」であつて、
代理人ではないことが認められる。又控訴人が株式会社明治屋の代理人であると主
張するD1についても、原本の存在並びに成立に争いのない甲第四号の十三による
と、同人がキリン麦酒株式会社の総務部長であることが認められるにとどまつて、
同人が株式会社明治屋の届出代表者D2の代理人として、右議員総会に出席し同会
社のため議決権を行使したものであるとの事実を認めるに足ろ証拠はない。その他
本件議員総会において控訴人主張の者が代理人によつて議決権を行使した事実を明
認するに足る確証はない。
 従つて右議員総会における決議が、表決権を行使し得ない無資格者の参加の下に
なされた違法ありと断定することはできない。控訴人のこの点に関する主張に理由
がない。
 (九) 原判決事実摘示(4)の(ハ)の主張について。
 前掲甲第一号証、成立に争いのない乙第一号証〇二、三、原審証人B1、A2
9、A34の各証言を綜合すると、被控訴人東京商工会議所においては、定款第二
十五条の規定によつて、会頭が議員総会の議長となるものであるが、本件議員総会
当時A1は会頭としての任期は既に満了していたけれども、従来の慣例に則の議員
総会の同意を得た上で、議長に就任したものである事実を認めることができる。而
して前掲各証処の外、原審証人B2、B3、A19の各証言、原審における控訴会
社代表者Eの本人訊問の結果を併せ考えると、本件議員総会においてA1が議長に
就任なることについての決議及び議員から提出された会頭、副会頭は留任、その他
の役員の選任は銓衡委員に一任するという提案についての決議をするに際し、議場
において多少の混乱があつた事実は認められるが、控訴人主張り原判決事実摘示
(4)の(ハ)の(b)ないし(e)の事実はこれを認めることはできない。原審
における証人B2、B3の各証言及び控訴会社代表者Eの供述の内、叙上の各認定
に反する部分は、にわかに措信し難い。その他本件決議が、控訴人主張の如く、不
当な情況の下になされたものであることを明認するに足る確証はない。従つてこの
点に関する控訴人の主張は理由がない。
 三、 叙上詳述した通り、控訴人が本件決議は無効であるとして主張するところ
は、すべて理由がないから、控訴人の本訴請求は爾余の判断をまつまでもなく失当
である。
 従つて控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がな
いから、民事訴訟法第三百八十四条、第九十五条、第八十九条に則り、主文の通り
判決する。
 (裁判長判事 渡辺葆 判事 浜田潔夫 判事 牛山要)

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