弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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        主    文
       原判決を破棄する。
       本件控訴を棄却する。
         理    由
 検察官の事件受理申立て理由について
 原判決には,破産法374条3号の解釈適用を誤った違法があり,刑訴法411
条1号により破棄を免れない。その理由は,以下のとおりである。
 1 原判決が是認した第1審判決の認定によると,被告人は,有限会社Aの債権
者であり,Aの代表取締役BからAの債務整理について相談を受けていたところ,破
産宣告が確定したAの破産宣告がされる前,被告人及びBの利益を図り,Aの一般債
権者を害する目的をもって,Bと共謀の上,C事務所において,情を知らない同事務
所の従業員をして,同事務所内に設置されているパーソナルコンピュータで処理す
るフロッピーディスクに記録されたAの総勘定元帳ファイル(以下「本件総勘定元
帳ファイル」という。)に,Aが架空の債務を負担し,実際の金額より減額した賃
料債権を有する旨虚偽の情報を入力させ,本件総勘定元帳ファイルに不正の記載を
するとともに,内容虚偽の協定書,賃貸借契約書,清算貸借対照表を作成し,その
清算貸借対照表を破産申立書と共に千葉地方裁判所に提出して,Aの破産財団に属
すべき金銭債権,固定資産を隠匿したというのである。
 第1審判決は,破産法374条1号の罪の成立を認めたほか,同条3号の罪につ
いても,同号にいう「商業帳簿」には電磁的記録である本件総勘定元帳ファイルが
含まれると解して,その成立を認め,これらが包括一罪の関係にあるとして,被告
人を懲役3年に処し,5年間その刑の執行を猶予した。
 これに対して,被告人から控訴があり,原判決は,上記事実のうち,Aの破産財
団に属すべき金銭債権,固定資産を隠匿した点については,破産法374条1号の
罪の成立を認めたが,本件総勘定元帳ファイルに虚偽の情報を入力した点について
は,昭和62年法律第52号による刑法の一部改正の趣旨に徴して,電磁的記録は
刑法の適用上文書の概念に包摂されないものであり,そのことは特別刑法の解釈適
用でも尊重されるべきであるから,電磁的記録を帳簿と認めることはできず,本件
総勘定元帳ファイルは同条3号にいう「商業帳簿」に当たらないと解して,犯罪の
成立を否定し,第1審判決を破棄して,被告人を懲役2年6月に処し,4年間その
刑の執行を猶予した。
 2 しかしながら,破産法374条3号は,同号が定める「商業帳簿」に不正の
記載をするなどの行為が行われることによって債務者の財産状態を把握することが
著しく困難になり債権者の利益が侵害される危険が大きくなることから設けられた
ものであり,「商業帳簿」が刑法上の文書の概念に含まれることを前提として設け
られたものではないと解される。したがって,刑法上の文書の概念と電磁的記録の
関係を明確にした昭和62年法律第52号による刑法の一部改正は,破産法374
条3号にいう「商業帳簿」に電磁的記録が含まれるかどうかの解釈と関連するもの
ではない。
 【要旨1】さらに,破産法374条3号にいう「商業帳簿」は,商法32条1項
にいう「会計帳簿及び貸借対照表」をいうと解されるところ,【要旨2】電磁的記
録であっても,直ちにプリントアウトできることなどによって,可視性,可読性が
確保されている限り,これらの規定にいう「商業帳簿」ないし「会計帳簿及び貸借
対照表」として欠けるところはなく,破産法374条3号が定める行為が行われた
場合,債務者の財産状態を把握することが著しく困難になることにおいて,帳簿の
外形を備えた「商業帳簿」と差異はないというべきである。
 そうすると,破産法374条3号にいう「商業帳簿」には,可視性,可読性が確
保されている電磁的記録が含まれると解するのが相当であり,本件総勘定元帳ファ
イルは,そのような電磁的記録であるから,同号にいう「商業帳簿」に当たると解
される。
 3 したがって,原判決には破産法374条3号の解釈適用を誤った違法があり
,この違法が判決に影響することは明らかであって,原判決を破棄しなければ著し
く正義に反するものと認められる。
 よって,刑訴法411条1号により原判決を破棄し,上記1の事実を認定して被
告人を破産法374条1号,3号の各罪で有罪とした第1審判決は,本件総勘定元
帳ファイルへの賃料債権の過少入力が同時に同条1号の罪の一部を構成するとした
点を含め,維持すべきものであって,被告人の控訴は理由がないから,刑訴法41
3条ただし書,414条,396条により,これを棄却することとし,裁判官全員
一致の意見で,主文のとおり判決する。
 検察官松永榮治公判出席
(裁判長裁判官 濱田邦夫 裁判官 千種秀夫 裁判官 金谷利廣 裁判官 奥田
昌道)

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