弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
本件申請を却下する。
申請費用は申請人の負担とする。
       理   由
第一、申請人は、
 「被申請人は、申請人所属セントラル硝子支部党員等が勤務時間外若しくは休憩
時間中に、『学習の友』を読んだり、セントラル硝子労働組合の役員選挙に立候補
したり、被申請人堺工場従業員に対して『赤旗』拡大のために接触すること、及び
右工場従業員が『赤旗』を購読する等申請人に対する政治的関心を高めることにつ
き、被申請人堺工場所属課長・係長・班長等の職制又は従業員をして、『申請人は
企業破壊者だ』などと虚偽の風説を流布し、且つ公然と侮辱し、或いは上司として
の立場を利用して『右支部党員とはつき合うな』などと威圧を加えたり等して、申
請人所属右支部の『赤旗』拡大の業務を妨害してはならない。」
との裁判を求めた。
 その申請の理由は別紙一及び二記載のとおりである。
第二、当裁判所の判断は次のとおりである。
一、申請人の当事者能力及び当事者適格
(一) 疏明によれば、申請人は、日本共産党の大阪府下泉州地区における各支部
から選出された地区委員数名をもって構成され、同党中央委員会の指令に基き、地
区内の各支部党員の活動を指導統括する機関であるが、組織的にみれば、政治資金
規正法による届出団体であって同法所定の組織要件を具え、定期的に開かれる地区
委員会において選出される地区委員長をもって代表者とし、その構成員(即ち地区
委員)の交替によって同一性を失うことなく、またその財政面についてみれば、各
支部党員が拠出する党費や大衆募金、党機関紙「赤旗」購読代金等を党本部と配分
取得してその財産的基礎とし、これによって固有の土地建物・備品・自動車等の財
産を有する団体であることが認められる。右によれば、申請人は民訴法四六条にい
う法人に非ざる社団にあたるとして一応差支えないものと思われる。
(二) 次に、本件申請は、申請人の統括下にある「日本共産党セントラル硝子支
部」の所属党員(被申請会社の従業員であって右支部に属するもの、以下支部党員
と略称する)が、党活動のゆえをもって被申請会社から主張のような非難攻撃を受
けたということを契機とするものであるが、申請の趣旨及び理由を総合して判断す
れば、申請人としては、支部党員各人の個人的法益を云々するのではなく、支部党
員に対する非難攻撃を通じて同支部ないし申請人自身の「赤旗」購読者拡大の業務
が妨害されたと主張してその妨害の排除を求めるものであり、かつまた、主張によ
れば、同支部には未だ独立の訴訟当事者となるべき社団の実体はないというのであ
り、これに反する疏明もないから、結局申請の趣旨との関連において、申請人に当
事者適格を肯認してさまたげないものと解される。
二、被保全権利
 本件申請は、右にもふれたとおり、申請人の「赤旗」購読者拡大活動の自由に基
く妨害排除請求権をもってその被保全権利と主張するものと理解される。およそ人
格的、社会的活動の自由(「自由権」と観念することもできよう)に対して他から
妨害がなされた場合、直ちにその妨害の排除を求め得るか否かについては見解の対
立がないわけではないけれども、当裁判所は、一般的に、自由権が違法な態様によ
って侵害せられた場合、被侵害者は不法行為として生じた損害の賠償を求め得るは
勿論、更にその侵害が継続する場合は、権利の本来的な姿を維持回復するため、進
んでその侵害状態の排除を求めることが許される場合があって然るべきものと考え
る(最高裁昭和三九年一月一六日判決民集一八巻一号一頁参照)。このことは、自
由権の主体が法人に非ざる社団であっても(自然人のみが持ち得る自由権は別とし
て)もとより同様であろう。
三、違法な侵害の有無
(一) 疏明によれば、昭和四二年から四三年にわたり、被申請会社堺工場内にお
いて、次のような事実があったことが一応認められる。
(1) 被申請会社堺工場労働組合の昭和四二年度役員選挙に際し、支部党員P1ら
が立候補したことに関し、同工場P2課長、P3班長、P4班長らが、多数従業員に対
し、「共産党は企業をつぶす」とか、「アカに入れるな」「打倒民青」などと宣伝
したこと。
(2) 右選挙に際し、P4班長が支部党員P5に対し、「代議員に出るのはもう
一、二年待ったらどうか」と立候補について再考するよう申し入れたこと。
(3) P3班長が従業員某に対し、「P1とつき合うな」「会社はアカのブラック
リストを作っている」とか、「P1から何か教えて貰ってもそれは共産党がやってい
るのだから信用するな」などと述べたこと。
(4) P2課長が女子従業員某に対し、「P6はアカだからつき合ってはいかん」
と言ったり、課員の会議の席上で折にふれて「共産党は企業をつぶす」などと発言
したこと。
(5) 係長、班長等の職制が従業員に対し、「P7が赤旗をすすめに来たが、君は
とったか、彼らが来たらすぐ連絡せよ」などと言ったこと。
(6) P8課長代理が「恐るべき民青」なる書物を買い入れて一部に廻し読みをし
たこと。
 その他の個々の主張事実は疏明によってもなお認めるに足りないものも少くない
が、右認定の事実からも看取されるように、被申請会社堺工場においては、総じて
いわゆる職制等発言権の強い者が日本共産党に対して批判的であって、同工場内に
おける同党勢力の拡大をきらう言動があり、ことに組合役員選挙において党勢を拡
張しようとする支部党員らの企図に対しては強力な反対運動がなされたこと、その
ため支部党員らは同工場内における党活動(「赤旗」の頒布拡大等を含む)に著し
い困難を感じていることは、優にこれを窺うことができる。
(二) しかしながら、右のような日本共産党ないし支部党員に対する攻撃的言動
が、申請人の主張するように、被申請人自身が(即ち被申請会社の決議執行機関が
企業経営の方針として)、現場の職制等をして行わせているものであるとの点につ
いては、にわかにこれを肯定するに足る疏明はない。却って被申請人の疏明によれ
ば、被申請会社堺工場の労働組合は、課長代理以上の者らを除く従業員(したがっ
て係長・班長等を含む)をもって構成されているが、同組合はかねて「日本社会党
を支持し、日本共産党とは一線を画する」との活動方針を打ち出し、昭和四三年一
〇月の定期大会においてもこのことを決議したこと、したがって支部党員らは組合
内におけるいわば少数派の立場にあり、ひとしく組合員とはいいながら社会党支持
の多数派との間に相対立・反目するところがあったこと、現に同組合としては、会
社に対する本件仮処分申請を知るや、これを共産党による組合内部への干渉と受け
とり、これをはね返そうとの宣伝活動をしていることが窺われるのであって、これ
らの点からみれば、前認定のような批判攻撃の言動は、多くは組合の前記方針に基
き、組合員としての立場においてなされたものとみることがむしろ自然であると解
される。もしそうだとすれば、これを被申請人自身に帰せしめることはできないか
ら、本件申請はその前提を欠き、排斥を免れない。
(三) もっとも、前認定の事実のうちには非組合員たる課長等の言動も含み、ま
た、会社従業員としての立場と組合員たる立場とをしかく明瞭に区別し得るもので
もないから、進んで右のような言動が被申請人自身の方針に副ってなされたもので
あることを想定して考える必要もあると思われる。
 もともと、「赤旗」が日本共産党の機関紙であることからも明らかなように、事
柄は政党の活動の対象となる個々人の思想の自由ないし表現の自由とも深くかかわ
る問題であり、これらの基本的人権が公共の福祉に反せざる限り最大限に尊重され
ねばならぬことは改めて言うまでもない。公けの政党に対し、人がその思想信条に
基いて批判を加えまたは攻撃的言論をなすことは、それが思想信条の表明であるか
ぎり原則的に許されて然るべきであって、このような批判攻撃に耐え、自らの思想
と実践により批判を克服して一般大衆を教化し、支持者を獲得して行くことにこそ
政党の生命があると思われる。申請人について言えば、「赤旗」頒布の実践や各般
の党活動を通じて、無関心層に対してはその関心を換起し理解を深めさせ、批判層
に対しては説得によりその批判の理由なきを自覚させて共鳴者に変え、もって「赤
旗」の需要拡大の実を挙げるべきものであり、このような不断の努力を何者にも妨
げられずなし得ることこそが「赤旗拡大の自由」の内容なのであって、たとえ批判
攻撃が急でありかついわれなきものであるからといって、批判者の任意・自発的な
意思によらずして沈黙させることまでは、申請人の自由の範囲にはないというべき
である。この見地から前認定の職制等の言動をみるとき、その内容が日本共産党に
対する批判として当を得ているか否かはさて措き、少くとも右にいう表現の自由の
範囲を逸脱したものとは考えられず、未だ申請人の自由権を違法に侵害するものと
は認め難いから、その禁止を求めるに由なきものといわなければならない。
 なお、上述したところは、申請人が政党の下部機関であることに基く判断であっ
て、批判攻撃が一私人を対象としてなされた場合は、自由権に対する違法侵害の成
否につきやや異る観点から判断さるべきであろうし、また、従業員が党員たること
を理由に差別扱いを受けた場合は、その効力を争い或いは労働法上の救済を求める
ことができることは勿論であるが、さきにもふれたとおり、右のような主張は本件
申請の範囲にはない。
四、結語
 以上のとおり、本件申請に被保全権利について疏明なきに帰し、また、保証をも
って疏明に代えることも相当でないと解するから、その余の主張につき判断するま
でもなく失当としてこれを却下することとし、申請費用の負担につき民事訴訟法八
九条を適用して、主文のとおり決定する。
(裁判官 田川雄三)
別紙一
 申請の理由
はじめに
 日本共産党は日本の独立、民主、平和、中立、生活向上を目ざして活動している
労働者階級の前衛政党であり、優れた政策を数多く発表し、党員、機関紙読者も拡
大し、大きな前進を遂げ国際的にも積極的に評価されている。先進的労働者、勤労
市民はその発展を期待し、保守反動勢力はその発展を憂慮する。その発展を心から
喜ぶ人もおれば数あるなかには無関心な人も、また嫌悪する人もある。滅びゆく保
守反動が日本共産党を嫌悪する。それはそれでもよろしい。然し嫌いだからと云つ
て謂れなき中傷非難や高圧的差別は許されない。自由平等は西欧民主主義の理念で
あり、思想信条の自由、政治活動の自由は基本的人権として憲法の保障するところ
である。この憲法の人権、規定を真向うからふみにじり、申請人所属支部党員の政
治活動と生活を危殆におとそうとする企業があらわれた。セントラル硝子株式会社
(以下会社という)の堺工場(以下工場と云う)である。
 ここでは職制が共産党非難をする。あること、ないこと、そして朝から晩まで。
 ここでは職制が申請人所属セントラルガラス支部党員に対し村八分の扱いをす
る。くり返しくり返しそして相手かまわず、工場では党員は全く人間扱いされな
い。その実態は正しく伏魔殿とも云うべきである。
 それを容認し憲法じゆうりんを放置するか、思想信条の自由をまもり、民主主義
を擁護し、憲法の平和的民主的条項を完全実施するか、本件の争点はここに在る。
一、会社従業員の耳のたこ
 会社は本社が宇部市に在り、堺市外数ケ所に工場があり数千人の労働者が働いて
いる。そのなかの先進的労働者は階級的立場に目覚め、日本共産党に入党し、同党
セントラルガラス支部に結集し、P9を代表者として、組織拡大、機関紙拡大に積極
的に活動してきた、申請人は泉州地方の日本共産党の指導組織として、右セントラ
ルガラス支部の上部組織であり、P10を代表者地区委員長とする権利能力なき社団
である。
 会社は申請人セントラルガラス支部所属党員の活動を嫌悪し事ある毎に党を中傷
非難してきた。最近の事例を歴年毎に例記する。
(1) 昭和四一年
 会社宇部工場P11係長は右支部党員P1を自宅に於て堺工場では共産党が煽動して
いるから注意せよそんな活動はするなと申しつけた。
 会社宇部工場P12課長は右P1の実兄をよびつけて弟P1に意見して共産党の活動
をさせないようにせよ。そうでないと、何時まで経つても班長になれないぞと云つ
た。同年夏頃には会社宇部工場人事課長は右P1に対し堺工場では共産党が活動して
いるが、共産党は企業を破壊するからそんな活動はするなと云つた。そのとき前記
P11係長も同席し、共産党に入つていると赤い子ができるぞと脅した。
 会社宇部工場のP12課長はP1の実兄に数回に亘つて同様のことを告げ、それでも
効果がないと見るや、遂にP1の母親まで呼出して、右同様共産党を中傷誹謗し、申
請人支部所属党員の活動を抑圧しようとした。その頃、会社は日本共産党と同様、
マルクスレーニン主義を実践することを目的としている民主青年同盟につき中傷非
難した「恐るべき民青」という印刷物を配布した。
(2) 昭和四二年
 同年初め頃会社宇部工場人事課長は再びP1を呼びその後も活動を続けているよう
だが民青が動いているから活動はやめろとくり返した。
 同年夏頃、会社堺工場P13透板第二課製板係長は、右P1を堺駅前の食堂内で、共
産党はよくない、実例はいくらでもあると申し向けた。
 申請人セントラルガラス支部所属党員P14が、同年一〇月病気休養し、耳原病院
で治療をうけていた際、会社堺工場P15安全衛生係長は右病院は共産党が経営して
いるから思わしくない。会社は共産党が嫌いだ、他の病院を紹介してやるから、転
院しろといつて、病気の治療にまで思想問題をもち出した。更に職制はP14君の身
重な奥さんまで呼んで、国際共産党主義運動の問題を持ち出したり、家で会議をや
つているか、誰がよくくるのか等きいた。
(3) 昭和四三年
 会社堺工揚P2工務課長は、連日の如く、右支部党員P6を自分の机のそばへよび
つけ、共産党主義をどう思うかと論争をふつかけ、工務課内に於て毎日生産会議を
開く際、常に共産党は企業をつぶす破壊者だと広言して申請人を中傷した。
 同年一一月一〇日頃、会社堺工場P16透板第二課製板係長は右支部党員P5をよび
つけ、党の活動をやめろ、P17もP18も結局転向したではないか、程々にして早く
やめろと強要した。
 これらはホンの一例であり、このような事例は数限りなく、而も年々激しくな
り、最近に至つて、一体会社はガラス製造が目的なのか共産党非難が目的なのか疑
わしい状態を現出している。
 会社従業員は遂に耳にたこができた。会社が職制従業員をつかつて共産党非難を
何百回、何千回もくり返させたことによつて。
二、罪人扱いの村八分
 会社は堺工場に於て申請人に対する中傷誹謗のキヤンペーンを展開すると共に職
制、従業員をして、申請人セントラル支部所属党員とはつき合うなということを合
言業にさせてまるで罪人扱いの村八分の攻撃をかけその他数々のいやがらせをし
た。前記同様その事例を歴年毎に例記する。
(1) 昭和四一年
 会社堺工場P16主任は会社従業員P5に対し右支部所属党員P19とはつき合うな、
将来よくないからと申し向けた。
 前記P2課長は前記P6に対し、図面を書けと命令し、同女が図面を書いていく
と、誰がこんなものを書けと云つたか、図面はもういいから掃除をせよと云いつ
け、同女が掃除をしていると、今度は仕事をせよというように、まるでおもちやを
もて遊んでいるとしか思えない取扱いを繰返した。
 同年会社堺工場P20課長は、同課の従業員某に対して右支部所属党員P21とつき
あうな、寮でも絶対に同じ部屋に入るな、将来寮を出たら党員には住所を教えるな
と云つて、支部所属党員の活動を妨害しようとした。
(2) 昭和四二年
 右P2課長は会社堺工場従業員P22に対し右P6はアカだからつきあうなと、申し
向けた。同年六月頃、支部所属党員P6の机の上にわざわざP2課長の電話に直結す
る親子電話を設置し、盗聴しようとした。
 同年一二月頃右P2課長は、右P6に対し、P22がP6にいじめられると云つている
からいじめるなと、虚偽のことを告げ、P22に対してはP6が一緒に仕事をしたくな
いと云つているとこれ亦虚偽のことを申し向けて、支部党員P6が、会社従業員と交
流し難いよう手の込んだ妨害をした。
(3) 昭和四三年
 同年六月頃、堺工場P3班長は、会社従業員某に対し会社はアカのブラツクリスト
をつくつている。
 支部所属党員のP1とつき合うな、一緒に活動しているとすぐ判ると、脅した。
 同年八月頃、堺工場P23主任は会社従業員に対し支部所属党員P14はアカだから
つき合うなと申し向けた。
 同年夏頃から一〇月頃にかけて堺工場P24製品課長は会社従業員某女(特に氏名
は秘す)に対しP6はアカだから一緒に旅行すると危い。いくな若しいくのなら家ま
で出向いていくと脅した。
 同年一一月頃、右P3班長は会社従業員某に対して右P1から何か教えてもらつて
も、それは共産党がやつているのだから、信用するな、P1とはつき合うなと云つ
た。
 同年一一月頃、堺工場P25課長は右某に対し、支部所属党員P7とつき合うなと云
いつけた。
 このような会社の村八分攻撃は職場に一種の恐怖状態を惹き起し、同年一一月頃
P6が会社従業員某女を誘つて、行動を共にしようとすると同僚の某女が職制に何か
云われないか心配だというぐらいにまで高まり、申請人所属支部所属党員は厳重に
監視され、隔離され、全く罪人扱いされようとしている。
三、狂気じみた役選干渉
 会社はまた会社堺工場従業員で組織するセントラルガラス堺労働組合の役員選挙
に申請人所属支部所属党員及び支持者を当選させまいと狂気沙汰の干渉を行つた。
 昭和四二年七月評議員選挙では、P1ら五人の候補の当選を防害するために、班
長、P26、P27、P3、P28ら数名で集団を組んで「打倒民青」「アカに入れるな」
と各職場をふれ廻つた。職場を不安に落し入れた。
 昭和四二年八月党員P5が役員選挙で代議員に立候補したとき会社堺工場P26班長
はP5に対し直接に選挙に出るなと圧力をかけ、職場を民青を落せとふれ歩いた。同
年末頃、堺工場P20採断課長が堺工場長代理に昇格しその祝賀会として社員クラブ
に十数名の班長を集めたとき、同工場P29課長は班長等に対してP1のようなアカを
選挙で落せないのか、今度当選させたら、お前等は全部くびだと脅した。
 昭和四三年八月役員選挙のとき、堺工場工務課の主担者、P30、P31等は民青や
アカはいかんと部下に指示した。
 右P2課長は右選挙に於て、部下従業員を連日の如く、招集して民青やアカは落せ
とメモまで書いて指示した。
 堺工場P13透板第二課長は右支部所属党員、P21に対し選挙に出るなと干渉し、
更に班長を全員集めて、絶対にアカを出すなと指示した。
四、焚書の暴挙
 会社の申請人の活動に対する妨害は遂に印刷物の取上げまで至つた。昭和四一年
右P16主任は右P5に対し「学習の友」は共産党が出版している。将来によくないか
ら全部持つて来いと指示し同人から約二〇部の「学習の友」をとり上げた。
 またその頃、堺工場P32熔接係長、P33主任等は会社従業員であり赤旗読者であ
る、P34に対し、右同様「学習の友」を読んでいると将来よくないと脅し持つてい
たら提出せよと命じ同人が持つていないと答えると、持つていないという証拠を見
せよ、若し証拠を見せられないならスパイになれと無理難題をもちかけた。
 またP35(製板ーP5と同じ職場)はP16係長に「グラフ若者」をとり上げられ
た。
 会社の暴挙は遂に秦の始皇帝の焚書にも比すべき書物のとり上げ廃棄にまで及ん
だ。
五、躍進する党、高まる労働者の関心
 申請人の組織は、その正しい政策と献身的な活動により労働者勤労市民の支持は
増大し、その組織は発展している。セントラルガラス支部所属党員も亦、赤旗拡大
のため奮斗している。昭和四三年一〇月、一一月の赤旗拡大月間に当り、大いに成
果を挙げた。
 ところが会社は、多くの労働者がいま赤旗を求め、党に結集することを嫌悪し、
労働者に対して、P36係長、P37主任等、多数の職制は労働者を呼んで、P7が赤旗
をすすめに来たが、君はとつたか、彼等がきたらすぐ連絡せよ等、労働者の赤旗を
読む民主主義的権利を奪いとるため、公然と圧迫をつよめると同時に、前記のよう
に、各種の違法な手口を強化して、一層露骨に申請人セントラルガラス支部所属党
員の活動を妨害しようとしている。
六、風雲極めて急
 会社は右拡大月間に於ける党員の超人的活動、並にそれにより会社従業員の間に
党に対する支持、赤旗に対する関心が、飛躍的に高まつてきたことに対して、それ
に冷水をかけ、この際右支部を壊滅させようとして、前記の如く職制を総動員し
て、圧迫を強める一方、右支部の拡大対象者に対して職制が酒食を提供する等、あ
らゆる手口を弄して右支部の活動を妨害し、その壊滅の為に狂奔している。会社の
違法行為を放置すれば右支部は重大な打撃をうけ、労働者の赤旗に対する関心は不
当に抑制され、職場の民主的権利は重大な危機にさらされる危険が大きい。
 申請人所属党員が、その提供する労働力行使に問題があるのなら格別、会社は全
く右党員等の思想信条の自由政治活動の自由を抑圧することにより、右支部を壊滅
させて、申請人の活動に重大な打撃を与えようとしている。憲法で思想信条の自由
が侵すべからざる永久の基本的権利として保障されていることは周知のことであ
り、労働基準法第三条、会社就業規則第三条でもそのことを確認している。
 再び日本国憲法の民主的条項の完全実施のために速かに命令を求める次第であ
る。
別紙二
一、被申請人の行為の違法性について
 被申請人は威力を用いたり、虚偽の風説を流布したり或いは申請人を侮辱したり
して申請人セントラルガラス支部の被申請人堺工場従業員に対する赤旗拡大の業務
を妨害している。これは犯罪行為若しくは犯罪的行為であり、不法行為である。こ
の被申請人の不法行為の継続により申請人の赤旗拡大の業務活動が妨害されている
から不法行為の差止請求を本案の権利とし、且つ回復し難い損害を生ずるおそれが
あるので本件申請に及んだ次第である。
 被申請人の行為は已に申請書で述べたが、その違法性を簡単に指摘すると次のと
おりである。
(一) 虚偽の風説を流布したり偽計を用いたりすること。
 宇部本社の人事課長、堺工場のP2課長等がP1、P6等に対し、申請人は企業破壊
者だ等と云い、その他それに類する言辞を弄し虚偽の風説を流布した。
 またP2課長はP22、P6に対しそれぞれ相互に嫌つている旨述べて偽計を弄し
た。
(二) 威力を加えたりすること。
 P2課長、P24課長、P25課長、P16主任、P23主任、P3班長等が、それぞれ、
その部下従業員に対し勤務時間中、職場に於て上司としての優位な立場を利用し
て、申請人支部所属党員とはつき合うな等と云つて威力を加えた。
 またP2課長、P29課長等はセントラル硝子労働組合の役員選挙で、アカを落せ、
落せないようではくびだ等と、右同様勤務時間中、職場に於て、上司としての立場
を利用して威力を加えた。
 右威力の加え方は間接的であるが、不法行為である点は直接威力が加えられた場
合と同様である。更にP16主任、P32係長等は、右同様威力を加えて部下従業員か
ら「学習の友」をとり上げた。
二、申請人に対する業務妨害について
 被申請人の右のような不法行為により、申請人セントラルガラス支部党員が被申
請人堺工場従業員に働きかけて赤旗購読をすすめようとしても、妨害され、場合に
よつては声をかけることさえ困難なことも生じている申請人右支部の拡大業務活動
は著しい妨害を受けている。
三、回復し難い損害について
 現在被申請人の不法行為の継続により、申請人右支部の業務は著しく妨害され困
難な状態になつている。
 赤旗拡大に対する妨害、読者の減少は後日金銭賠償を以ては回復できない損害で
あり、即時救済の必要がある。
四、当事者について
 被申請人の妨害行為、不法行為は特定の個人に対し向けられているのではなく、
申請人所属右支部党員に向けられ、右支部の業務活動に向けられている。
 従つて個々の党員というより右支部自体が本来申請人になるべきところ、右支部
は独自の社団性をもたないので申請人が申請に及んだのである。
 申請人は、その名に於て政治活動、財政活動、社会活動、文化活動を行つており
権利能力なき社団である。
 以上

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