弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決および第一審判決を破棄する。
     本件を東京地方裁判所に差し戻す。
         理    由
 弁護人西村眞人、同宍倉秀男の上告趣意のうち、憲法三一条違反をいう点は、実
質は単なる法令違反の主張に帰し、その他の違憲の主張は、原審で主張および判断
を経ておらず、その余は、単なる法令違反、事実誤認の主張であつて、いずれも適
法な上告理由にあたらない。
 しかしながら、所論にかんがみ職権をもつて調査すると、原判決およびその維持
する第一審判決は、以下に述べるとおり、刑訴法四一一条一号により破棄を免れな
い。
 第一審判決が認定した罪となるべき事実は、「被告会社は、東京都中央区ab丁
目c番地に本店を置き、金銭貸付等を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社で
あり、被告人Aは、右会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているもので
あるが、被告人Aは、被告会社の業務に関し法人税を免れようと企て、受取利息収
入や手形割引料収入の大部分を脱ろうとする等の不正な方法により所得を秘匿した
上、昭和三七年一月一日より同年一二月三一日までの事業年度において、被告会社
の実際所得金額が八五六五万三三五七円あつたのにかかわらず、昭和三八年二月二
七日東京都中央区db丁目e所在の所轄日本橋税務署において、同税務署長に対し、
欠損金額一五万八七〇二円で納付すべき法人税額はない旨の虚偽の確定申告書を提
出し、もつて同会社の右事業年度の正規の法人税額三二四四万八二五〇円を法定の
納付期限までに納付せず、もつて同額の法人税を免れたものである。」というので
ある。同判決は、これに対し、法人税法(昭和二二年法律第二八号。同四〇年法律
第三四号による改正前のもの。以下単に「旧法人税法」という。)四八条および被
告会社につき、さらに同法五一条を適用し、被告会社を罰金七〇〇万円に、被告人
を同一〇〇方円に処したのであるが、右所得の計算については、同判決書別紙第一
「修正損益計算書」が「罪となるべき事実」欄末尾に引用されており、また、同計
算書記載の「貸金利息収入額」中、B建築助成株式会社を貸付先とするものについ
ての明細として同判決書別紙第二「B建築助成株式会社に対する貸付金受取利息明
細表」が「弁護人の主張に対する判断」欄に引用されている。そして、判文および
右の各別紙によれば、第一審裁判所は、被告会社の実際所得金額(修正当期利益金)
を認定するにあたり、履行期の到来した金銭消費貸借上の利息は、たといそれが利
息制限法(昭和二九年法律第一〇〇号)所定の制限を超過して私法上無効とされる
ものであり、かつ、未収であつても、債務者がこれを有効として取り扱い、同法に
よる保護を求めていないような場合には、税法上、当該未収利息も益金に算入すべ
きものであるとの見解を前提とし、本件の具体的事情のもとでは、前記B建築助成
株式会社に対する貸付金の利息に関し右のごとき状況が存在すると認め、当該事業
年度中に履行期の到来した利息全部につき、利息制限法による制限を超過している
ことの有無および未収既収の別を問うことなく、約定利率による金額をすべて益金
に計上したものであり、また、原審裁判所もこれと同旨の見解に立つて一審判決の
右認定を維持したことが明らかである。
 けれども、利息制限法所定の制限を超過する利息・損害金については、約定の履
行期が到来しても、なお未収であるかぎり、旧法人税法九条にいう「益金」に該当
しないと解するのが相当である(昭和四三年(行ツ)第二五号同四六年一一月九日
第三小法廷判決参照)。
 そうすると、右解釈にそわない見解を前提とした本件第一審判決および原判決に
は、法令の解釈適用を誤り、ひいて審理を尽くさなかつた違法があり、その違法は
判決に影響を及ぼし、破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。
 よつて、刑訴法四一一条一号により原判決および第一審判決を破棄し、同法四一
三条本文により事件を第一審裁判所である東京地方裁判所に差し戻すこととし、裁
判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 検察官大石宏 公判出席
  昭和四六年一一月一六日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    松   本   正   雄
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    下   村   三   郎
            裁判官    関   根   小   郷

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