弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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       主   文
 被申請人は、本案判決確定に至るまで、申請人らをいずれもその従業員として仮
に取扱い、かつ昭和四二年三月二七日から、申請人P1に対しては一カ月金二万五、
七三二円の、申請人P2に対しては一カ月金二万五、五〇八円の各割合による金員を
いずれも前月二一日から当月二〇日までの分につき毎月二五日限り仮に支払え。
 申請人らのその余の申請をいずれも却下する。
 訴訟費用は被申請人の負担とする。
       事   実
 第一、当事者双方の求める裁判
一、申請人ら
 被申請人(以下、会社ともいう。)は、本案判決確定に至るまで、申請人らをそ
の従業員として仮に取扱い、かつ昭和四二年三月二七日から、申請人P1に対しては
一カ月につき金二万九、〇七二円を、申請人P2に対しては一カ月につき金二万七、
四七七円を、いずれも毎月二五日限り、仮に支払え。
二、被申請人
 申請人らの申請をいずれも却下する。
第二、申請人らの主張および答弁
一、申請の理由
(一)会社は、昭和三九年四月二五日から同月二七日までの間に開催の日本中国友
好協会(以下、日中友好協会という。)第一四回全国大会における「日中両国民間
の貿易、経済、文化の交流を発展させ相互理解を深め日中友好をより増進させるた
めに訪中友好視察団の旅行斡旋、団体、個人の訪中斡旋を行うことを目的として旅
行社をつくる。」旨の決定に基づき同年九月一一日に設立された株式会社で、肩書
地に本店を、昭和四〇年六月一日以降大阪市<以下略>内に関西営業所を置いてき
たものであり、申請人P1は昭和四一年二月一四日会社に雇用され同年四月一日正社
員となり同年七月一日以降同社関西営業所(以下、関西営業所という。)に勤務し
て主に渡航手続業務に従事し、申請人P2は昭和四〇年一一月一日会社にアルバイト
として雇用され、昭和四一年四月一日正社員となり同年七月一日以降同営業所に勤
務して総務、渡航手続、募集等の業務に従事していた者である。
(二)会社は昭和四二年三月二六日付内容証明郵便を以て申請人らに対し、「経営
不振に加え、日本国際貿易促進協会関西本部(以下、関西国貿促という。)から関
西営業所について渡航斡旋業者の指定を取消され、今後同営業所において中国渡航
斡施業務を取扱うことが事実上不可能となつたので同営業所を昭和四二年三月二六
日限り閉鎖することを決定し、営業所長P3をはじめ所員である申請人らおよびP
4の全所員を同日解雇する。」旨の意思表示(以下、本件解雇という。)をなすとと
もに、予告手当名下に金二万三、〇〇〇円をそれぞれ送付し、翌二七日以降申請人
らの就労を拒否し、かつ賃金を支払わない。
(三)右解雇の意思表示は後記二の理由によつて無効である。
(四)申請人らは毎月二五日に会社から一カ月分の賃金の支払を受けていたもの
で、昭和四一年一〇月から昭和四二年三月まで六ケ月間の平均賃金月額(賞与は含
まない。)は、申請人P1について金二万九、〇七二円、申請人P2について金二万
七、四七七円であるが、申請人らはいずれも会社から受ける賃金を唯一の収入源と
する労働者で他に資産収入はなく、本案判決の確定を待つていては回復し難い損害
を蒙る。
二、本件解雇の無効理由
本件解雇は次の理由によつて無効である。
(一)日中友好協会の分裂
 昭和三九年二月一三日本邦各界の代表的な人物二五氏によつて「日中国交回復の
呼びかけ」がなされこれによつて日中友好協会の運動方針が決定されたが、昭和四
一年九月二六日右二五氏のうち一部の者が半数以上の者を意識的に排除し、新に本
邦各界の知名人三二氏を糾合のうえ前記呼びかけを引継ぐものとして「内外の危機
に際し再び日中友好の促進を国民に訴える」という呼びかけ(以下、「三二氏の呼
びかけ」という。)をなし、同年一〇月一二日北京においてこれに基づいて日中友
好協会中華人民共和国成立一七周年祝賀代表団と中国日本友好協会(以下、中日友
好協会という。)代表団との共同声明に調印された。右共同声明は日中友好協会に
おいて事前の打合わせがなく代表団によつて無権限に調印されたものであつたた
め、同月二五日開催の同協会第一三回常任理事会において右共同声明の全員一致の
承認が得られない情勢となつたことから、その一部の者らは議事半ばで退場して記
者会見し、同協会の別組織を結成することおよび既に用意していた新事務所の所在
地等を公表し、ここに日中友好協会正統本部(以下、正統本部という。)なる分裂
組織が誕生し、同年一一月二七日には日中友好協会大阪府連合会常任理事会におい
ても理事長P5はじめ一部の者らは共同声明を支持しない者とは一緒にやれないと退
場し正統本部大阪府本部をつくつた。
(二)右分裂と本件会社
 会社の取締役会長P6、取締役社長P7、常務取締役P8、取締役P5ら殆んどの取
締役は正統本部に走り、会社は昭和四一年一〇月末の常務会において、共同声明お
よび正統本部を支持し日中友好協会とは一切の関係を断つことを決定した。
(三)右分裂と申請人ら
 申請人らはいずれも昭和三七年四月日中友好協会に入会し、同協会が同年設立し
た日中友好学院の普通部および高等部に学び、会社の取締役であり右学院の院長で
あつたP5の推薦により会社に入社した者で、右分裂後このことに関しては一定の見
解を持つていたが、従業員としては会社の業務方針に従うという態度で従来どおり
担当業務に専念してきた。
(四)申請人らに対する思想改造工作
1 会社は昭和四一年一二月上旬申請人らほか全従業員に対し業務命令として共同
声明に関するレポートの提出を命じた。
2 関西営業所長P3は同月二六日申請人ら外一名の全所員に対し日中友好協会を脱
会して正統本部に入会し登録するように勤めた。
3 正統本部大阪府本部事務局員P9は昭和四二年一月九日関西営業所において申請
人ら外一名の全所員に対し正統本部への登録申込書を交付して登録を促した。
4 前記P3は同月一一日申請人P1に対し重ねて右登録を勧めた。
5 右P3は同年二月七日関西営業所会議の席上、会社の基本方針として同営業所に
正統本部の班をつくることを提唱した。
6 会社の常務取締役P8は同月二〇日関西営業所において、申請人らが日中友好協
会員であることを確認し、会社の方針を侮辱している同協会から出ないことには会
社としても放置できないから近く常務会において結論を出すことになる旨言明し
た。
7 会社の取締役P5は同月二一日日中友好学院の院長としての資格で教え子である
申請人らに話したいと前置きして、「日中友好協会に入つているのは誤りであるか
ら、よく考えて正統本部に入らなければこれが最後の機会になる。」と語つたのに
対し、申請人らは、「日中友好協会に入つているのは入社以前からのことであり、
会社の業務にはその方針に従つて忠実に働いている。」と答えたところ、激怒して
席を立つた。
8 前記P8は同日申請人らに対し、同日のP5の話、前日の自分の話についての見
解をレポートにして翌二二日に提出することを命じたので、申請人らは大要、「P
8、P5らの述べた政治的見解については社員として意見を述べる必要はないものと
考える。今後とも社員として会社の営業方針には異議なく従つて業務を遂行す
る。」旨のレポートをそれぞれ提出した。
9 P8は同年三月二日P5ら数名立会の下に申請人らおよびP4に対し、(1)直ち
に各自担当業務を営業所長に引継ぐこと、(2)引継完了次第自宅で「三二氏の呼
びかけ」と共同声明を学習するため休職を命ずること、(3)学習の結果をレポー
トにして同月一〇日までに郵送すること、(4)レポートを検討したうえ常務会で
出す指示に従うこと、等を申渡した。
10 P8は同月七日申請人らおよびその所属する大阪商業労働組合幹部と団体交渉
をした際、(1)申請人らに対する休職は教育休職でいわば自宅勤務の業務命令で
あるから賃金は全額支給する、(2)教育休職を必要とする理由は、申請人らが会
社の営業方針に従うと言いながら、日中友好協会の会員であり、このことによつて
会社の存立が脅かされ客に不安を与えるからである旨言明した。
11 P8は同月一四日の第二回団体交渉において、(1)関西営業所は今後とも閉
鎖しない、(2)申請人らの労働条件、身分等に著しい変更を行う場合は予め組合
と協議する、(3)この争議解決のために暴力は一切使わない、(4)休職中の学
習テキストは共同声明、日中両国人民の友好貿易促進に関する議定書、中国通信と
し、レポートは書いても書かなくてもよい、との諸点を明らかにし、第三回団体交
渉を同月二八日に開くことを申合わせた。
(五)関西営業所の偽装閉鎖
1 関西営業所長P3は右団体交渉の継続中である同月二五日夕刻会社の委任状を携
えて同営業所の事務所を賃借している大興ビルの管理者と秘かに会つて同事務所の
賃貸借契約を合意解除し、敷金一三〇万円の返還を受けこれを一切の備品什器とと
もに何処かに運び去り、翌二六日同営業所を閉鎖した。
2 会社の取締役会長P6は前記「三二氏の呼びかけ」に名を連ねたうえ正統本部の
顧問、取締役P10は右「呼びかけ」に名を連ねたうえ共同声明に調印した日中友好
協会代表団長で正統本部理事長、取締役P5は正統本部大阪府本部理事長、取締役社
長P7は正統本部全国理事、取締役P11、同P12、同P13、同P8ら取締役の殆んど
が正統本部常任理事で、いずれも正統本部の結成に中心的な動きをした者である。
3 以上、会社の役員は殆んど正統本部を支持しその主要役員となつているもので
あるが、同じく正統本部を支持する関西国貿促がたやすく関西営業所について渡航
斡旋業者としての指定を取消す筈がない。
4 会社の独自の企画による訪中参観団募集は会社創立以来一貫して行われてお
り、関西国貿促と無関係な団体が主催する大型訪中参観団については昭和四一年以
来関西営業所で渡航斡旋業務を行なうことになつており、同営業所の閉鎖は会社に
大損失をもたらすものである。
5 してみると、関西営業所の閉鎖は申請人らを教育休職によつて日中友好協会支
持から正統本部支持へと思想転換させようとした会社がその不可能であることを知
つたことから、同人らを解雇で企業外に排除することを企て、これを一見理由あら
しめるために偽装してなしたものである。
(六)本件解雇の無効
 以上、会社は申請人らが自己と異なる思想信条を有することの故を以て同人らを
解雇できないことを十分に知つていたため、営業所の閉鎖を偽装してこれをなした
ものであるところ、元来労働者の思想信条は使用者のそれと異なる場合においても
その自由は保障されなければならないものであつて、このことは憲法一四条、労働
基準法(以下、労基法と略称する。)三条に照らし明らかであるから、本件解雇は
右各法条に違反し公序良俗に反するものというべく無効である。
三、被申請人主張の解雇事情に対する反論
関西国貿促の関西営業所に対する渡航斡旋業者としての指定取消の実情は次のとお
りである。
(一)右指定取消は専ら申請人らが日中友好協会に所属し同協会の方針を支持する
立場にあることを理由とするものであつて、このことは右指定取消の通告書に、
「貴社関西営業所職員の中の三名は口で日中友好を唱えながら実際には日中友好の
発展を妨害し、日中関係を破壊している反中国団体のいわゆる日中友好協会なるも
のに属し、反中国活動を積極的に推進している立場にあるので当方会員をはじめ利
用者に不安を与えている。」旨述べていることからも明らかである。
(二)右指定取消の原因の一つとして日中青年大交流に参加予定者の名簿が関西営
業所から日本共産党大阪府委員会に洩れたことを挙げるが、右は真の原因ではな
い。もともと右名簿の漏洩は申請人らと何の関係もなく、その不在中に右名簿が机
の上に開かれていたのを日頃よく出入りしていた同党大阪府委員会のP14がこれを
写して帰つたものであるが、このことについては本件指定取消の決定をするまでに
関西国貿促において事実の調査をした形跡はなく、したがつて右決定をなすについ
てこれが問題としてとり上げられていたことはないのであつて、本件仮処分申請後
会社において右指定取消を理由づけるために持出したものである。
(三)関西国貿促は正統本部と密接な関係があり、また正統本部支持の会社とも不
即不離の関係にあるのであるが、会社は関西営業所を多大の犠牲を払つて開設し、
昭和四二年度からようやく営業成績も好転し将来の発展を期待できるまでになつて
いたものであるから、会社と右関係にある関西国貿促が関西営業所の発展を妨げ会
社に不利益をもたらす指定取消を真実なす筈がない。果して右指定取消後間もない
同年八月一五日同営業所の身代わり企業として「株式会社日中観光」なる商号で設
立準備会を発足させ業務担当者に関西営業所長のP3を充て、設立登記前に早くも本
件会社発行名義の「新中国の旅」と題するパンフレツトを店頭に備えて営業活動を
開始し、その後同年一一月一七日商号を「株式会社関西国際旅行社」と変更して設
立登記して現在に至つている。
(四)しかも右指定取消は関西国貿促の正規の意思決定機関の決定によることな
く、その権限を有しない友好商社部会の常任理事会の決定によつてなされている。
 以上の事実を総合すると右指定取消なるものは、申請人らの思想信条を理由に同
人らを企業から排除するための関西営業所の偽装閉鎖を理由づけようとして、会社
が日中問題について密接な関係にある関西国貿促内の一部積極分子と共謀してなし
たものであつて真実のものではない。
四、抗弁に対する答弁
 抗弁事実はすべて争う。会社の定款によると、その事業目的は、(1)海外から
日本を訪問する者の旅行の斡旋、(2)海外および国内旅行の斡旋、(3)人事往
来に伴う施設の経営、(4)日本および中国事情紹介のための文化センターの経
営、(5)中国事情紹介のための出版、販売、(6)観光土産品の輸出入、(7)
保険の代理業、(8)以上各項に付帯する事業、となつているのであるが、右
(1)は殆んど行つておらず、(2)のうち国内旅行の斡旋、(3)、(4)と
(5)のうち出版はいずれも行つておらず、(2)の海外旅行の斡旋は中国以外は
殆んど扱つていないのであるから、仮に中国渡航の斡旋業務ができなくなつたとし
ても、他の事業目的に力を傾けることによつて存立を続けることができる筈であ
る。また関西営業所の昭和四一年一月から同年一二月までの間における中国渡航斡
旋は春秋各季広州交易会、経済友好代表団等一四一名、会社独自の企画または関西
国貿促と無関係のもの七三名と、数の上では経済界即ち関西国貿促関係のものが多
いが、営業収益の面からみると、前者は二割にみたず、後者は七割を超えるものと
考えられるのであつて、同営業所の関西国貿促への依存度は特に大きくはないので
あるから、これを中国渡航斡旋業務だけについてみても、仮に関西国貿促およびそ
の関係商社等から不信をかつたとしても、会社の存立を脅かされる程に重大な影響
があるものとは認められない。
五、被申請人の法律上の主張に対する反論
 労働力の取引につき労働者をその思想信条によつて差別することは憲法一四条、
労基法三条に照らして許されないところであるから、政党加入の有無およびその活
動状況等を雇用契約の要素としてはならないし、またこれを重視することが許され
ないのであるが、ただ例外としてこれが許される場合がある。政党本部や支部の職
員または宗団職員の雇用契約においてはその性質上、政治的または宗教的信条をそ
の要素とせざるを得ないからである。しかしながら右例外的取扱はこの限度にとど
めるべきである。そして右例外の場合においてもその信条を以て差別的取扱をなし
得るためには右契約中に信条が従業員の資格要件として明定されていることが必要
であるとされなければならない。これを本件についてみるに、会社は営利を目的と
する株式会社であつて右にいう政治団体や宗教団体でなく、しかもその従業員の資
格要件として政治的信条が明定されているものでもないから、申請人らをその政治
的信条を理由に解雇することは前記各法条に照らして許されない。
第三、被申請人の答弁および主張
一、申請理由に対する答弁
(一)申請理由(一)の事実中、申請人P2の関西営業所勤務の始期を除き、すべて
認める。右始期は昭和四一年七月一日以前である。
(二)同(二)の事実は認める。
(三)同(三)の事実は後記二のとおり否認する。
(四)同(四)の事実中、申請人らが毎月二五日会社から賃金の支払を受けていた
ことは認めるが、その余は否認する。申請人らの基本給は一カ月金二万三、〇〇〇
円であつた。
二、解雇の無効理由に対する答弁
(一)無効理由(一)の事実中、昭和四一年九月二六日P6、P15、P16ら三二氏に
よつていわゆる「三二氏の呼びかけ」がなされたこと、同年一〇月一二日北京にお
いてこれに基づき日中友好協会中華人民共和国成立一七周年祝賀代表団と中日友好
協会代表団との共同声明に調印されたこと、正統本部およびその大阪府本部ができ
たことはいずれも認めるが、その余は争う。共同声明については日中友好協会第一
三次代表団が出発する前の同年九月二七日右協会の常務会議でこれを出す方針は討
議ずみであり、賛成九、反対一を以て決定されていた。同年一〇月二五日同協会の
第一三回常任理事会において右共同声明の承認が求められた際、大多数の常任理事
四三名がこれを承認したにもかかわらず、表面では日中友好を唱えながら裏面では
反中国活動をなし、日中友好を阻害することを意図する日本共産党の追随分子であ
るごく一部の常任理事一三名がこれに反対したため、創立以来の伝統を正しく受け
継ぎ総国民的立場から日中友好運動を推進して行こうと願う者らが反対者を排除し
右共同声明の線に副つて大同団結を目指し正統本部を結成した。したがつてこのよ
うにして排除された共同声明の反対者らは日中友好協会の名を僣称しているが、実
際は日中友好を妨害する反中国集団として残存しているにすぎない。また正統本部
大阪府本部を組織したのは会長P17、副会長P18、理事長P5、事務局長P19をはじ
め常任理事の主な者らであり大阪において日中友好運動の伝統を正しく継承できる
者達であつた。
(二)同(二)の事実は認める。会社は国交未回復の状態の下で中国側の渡航斡旋
業務取扱に関する国営機関である中国国際旅行社総社と特約を結び真の日中友好を
基本として日中両国民の相互理解と友誼を増進し文化経済の交流と貿易の発展を促
進し日中両国人民間の旅行従来を発展させるため双方が同意して相互の間に団体お
よび個人の旅行斡旋を行つているのであるから、日中友好運動の成果に立つて両国
双方の友好協会の間で調印発表された共同声明を会社の営業活動の指針として採択
し正統本部支持の立場をとり日中友好協会と一切の関係を断つたのである。
(三)同(三)の事実中、申請人P1がP5の推薦によつて入社したことは認める
が、日中友好協会の分裂後申請人らが会社の業務方針に従つて従前どおり担当業務
に専念してきたことは否認し、その余は不知。
(四)同(四)の各事実中、
1 その1の事実は認める。申請人らからは共同声明を支持する旨の意見の表明が
あつた。
2 同2の事実は認める。
3 同3事実は不知。
4 同4の事実は認める。
5 同5の事実は認める。
6 同6の事実中、P8常務において申請人らが日中友好協会の会員であることを確
認したことは認めるが、その余は争う。P8は日中友好を経営の基本方針とする会社
にとつて日中友好はその存立にかかわる重大問題であるところ、日中友好協会は表
面では日中友好を唱えながら裏面では反中国活動を行い、日中友好を阻害する組織
であるため申請人らもこの点をよく理解してもらわねば困る旨述べたのである。
7 同7の事実は不知。
8 同八の事実中、P8が申請人らに対してレポートの提出を命じたことは認める
が、申請人らの提出したレポートの内容は否認する。P8は申請人らが先に共同声明
を支持する旨の意思を表明しながら、共同声明に反対の立場をとる日中友好協会の
会員であることは矛盾するのでその見解を質したのに対し、申請人らはどこの会に
加入していようとそれは勝手であるとして会社の営業の基本方針に対して反対の意
見を持つことを明らかにした。
9 同9事実は認める。P8は関西国貿促から関西営業所に対する渡航斡旋業者とし
ての指定取消通告について、それが会社の存立にかかわる重大なものであることを
強調して説明し、会社の営業方針と真の日中友好について理解を深めてもらうため
自宅勤務の業務命令を出した。
10 同10の事実中、P8が昭和四二年三月七日申請人らおよびその所属組合の幹
部と団体交渉をしたこと、休職中賃金を支払う旨言明したことは認めるが、その余
は争う。自宅勤務の業務命令を必要とする理由として、会社の営業方針、真の日中
友好、中国事情、前記指定取消による会社の重大な経営危機等について十分勉強し
てもらうものである旨述べた。
11 同11の事実中、P8が同月一四日に第二回の団体交渉を持つたこと、自宅勤
務中のテキストとして申請人ら主張の資料を挙げたこと、第三回の団体交渉を同月
二八日に開くことを申合わせたことは認めるが、その余は争う。その際P8は、関西
営業所は閉鎖しないように努力したいが、会社の経営上やむを得ない場合のあるこ
とをほのめかした。当時関西国貿促に対して指定取消の撤回について種々運動中で
あつたが見通しは極めて困難であつた。申請人らの身分変更等について組合と事前
協議する旨の約束はしていないし、この争議解決のための暴力は使わない旨言明し
た事実はない。同月二日の自宅勤務申渡直後申請人らは所属組合の組合員ら約三〇
名とともに関西営業所に押し寄せ数時間に亘り同所を占拠し、翌三日同じく数十名
の者らが同所を占拠して団体交渉を迫り布団を持ち込み長期占拠の構えを示し、そ
の後事実を曲げて誇大宣伝ビラの配布を始め、同月一四日の団体交渉においては当
初実力を以て正統本部員で会社の嘱託P9を席上から押し出す等暴力行使の兆が見え
たので、暴力を使わない旨申請人らや組合員に確約させたのである。自宅勤務中の
テキストは中国事情を知るための資料として例示したにすぎない。
(五)同(五)の各事実中、
1 その1の事実中、同月二六日関西営業所を閉鎖したことは認める。
2 同2の事実は認める。
3 同3の事実は否認する。
4 同4の事実中、会社独自の企画による訪中参観団の募集が行われていたことは
認めるが、その余は争う。右募集は関西営業所の業務全体からみれば微々たるもの
であつた。
5 同5の事実は否認する。
三、本件解雇に至つた事情
(一)日中友好協会の設立と運動経過および本件会社の設立
1 日中友好協会は昭和二五年一〇月一日、(1)日本国民の誤つた中国観を反省
しその是正に努力する、(2)日中両国民の相互理解と協力の下に文化交流に努力
する、(3)日中両国の経済建設と人民生活の向上に資するため日中貿易促進に努
力する、(4)日中両国民の友好提携により相互の安定と平和を図り世界平和に貢
献する、ことを目的とし一党一派に偏した狭い範囲の国民に限らず階級、職業、政
治的信条を問わず会員になり得るものとして設立された。
2 その後日中友好協会は全面講和、日中貿易の促進、文化学術の交流等に積極的
にとり組み、日中関係は国交未回復のまま民間ベースにおいて注目すべき進展を遂
げたが、岸内閣の対中国政策と長崎における中国国旗侮辱事件発生等のため日中貿
易も一時中断した。
3 しかしながら日本間の友好を期待する中国は日中関係打開の方法として、
(1)中国を敵視しないこと、(2)二つの中国をつくり出す陰謀に加担しないこ
と、(3)日中国交回復を妨げないこと、といういわゆる政治三原則を日中友好協
会代表者に示し、この立場に立つた貿易三原則と政経不可分の原則による友好貿易
を提唱したので、日中友好協会をはじめ日中貿易促進会、日中国際貿易促進協会等
は右諸原則を承認した友好的な貿易商社を中国国際貿易促進委員会に紹介し、ここ
にこれらの商社によつていわゆる友好貿易という形で日中貿易が再開された。そし
て右友好貿易は次第に発展し、その後いわゆるLT貿易協定も結ばれるに至り、右
友好貿易とLT貿易とによる日中間の貿易は年間総額六億ドルを超え、貿易高によ
る相手国順位では米、加、豪に次いで第四位となつた。
4 ところで昭和三九年一月中仏間の国交樹立が契機となり同年二月一三日本邦各
界の代表的人物二五氏によつて日中国交回復の呼びかけがなされ、これに副つて日
中友好協会の同年度の運動方針が決定され、同年九月中国訪問希望者が友好的に中
国を訪問できるよう旅行斡旋の組織をつくることとなり本件会社が設立された。
(二)日中友好協会分裂の経緯と実情
1 日本共産党は昭和四一年四月同党P20書記長の訪中帰国後、対中国方針に急激
かつ決定的な変更をなし、党本部支部の建物から毛沢東の肖像を撤去し、中国映画
の上映禁止、中国関係雑誌の購読禁止、同年度に実施予定の第二次日中青年大交流
の実施妨害、中国青年代表団の入国妨害等の反中国活動をなし、これによつて原水
禁大会および日中貿易に波瀾を生ぜしめるとともに、当時全国に四〇〇支部、六万
会員を擁する日中友好協会内においても運動妨害を始めた。ここにおいて右事態を
憂慮する者らによつて前記「三二氏の呼びかけ」がなされた。
2 中国各界の五二氏は同年一〇月五日右「呼びかけ」を支持する声明をなし、同
月一二日には日中友好協会と中日友好協会との共同声明がなされ、次いで日中友好
協会内で同月二五日右共同声明承認のための常任理事会が開かれるや、日本共産党
系の常任理事一三名は議事妨害を重ね、四三名の常任理事が承認するにもかかわら
ず採決反対を怒号し、ここに日中友好協会は分裂した。
3 日本共産党はその後ますます反中国路線を強力に推進し、北九州、名古屋両市
における中国展を妨害し、中国研究に対する妨害活動を強化し、学術交流にも不当
な干渉を加え、日中間の交流を妨害するため中国への渡航者に対しては極力これを
阻止することに努め、正統本部に登録した者には除名の制裁を加えるなどしたが、
一方同党所属分子の残存団体となつた日中友好協会も本件会社で取扱中の第一次教
職員訪中参観団員一三名に対して旅行の取消を強制するほか、会社で編成実施を計
画中の訪中参観団に対して妨害活動をしたため岐阜県既製服業者外一七団体による
訪中参観団の編成実施ができなくなり、会社は甚大な損害を蒙つた。このような日
本共産党の反中国路線は遂に昭和四二年二月二八日から同年三月二日にかけて東京
善隣学生会館における同党員の在日中国人学生に対する暴力による流血事件を惹起
するに至つた。
(三)関西国貿促の関西営業所に対する渡航斡旋業者としての指定取消
1 関西国貿促とその所属の友好商社は、対中国貿易および旅行斡旋が前記諸原則
を承認する友好的な企業に限つて中国から認められている状態の下で、日中間の貿
易や人事の交流を拡大するについて、表面では日中友好を装いながら日本共産党の
反中国路線に同調し反中国活動を支持推進している日中友好協会に関西営業所勤務
の申請人らが所属していることを重視した。
2 昭和四一年夏の第二次日中青年大交流に際し、これに参加予定の日中友好学院
代表団および関西各界青年代表団の渡航申込者名簿が関西営業所の従業員から日本
共産党大阪府委員会に洩れるという事態が発生した。同党はその立場上右渡航者に
対し渡航妨害の措置に出ることは十分に予想されるのであるから、右名簿について
はこれが同党に洩れたりしないように十分注意をしなければならないにもかかわら
ず、これが洩れたということについて、関西国貿促は関西営業所の中に同党に同調
し日中友好協会に所属する申請人らのいることが問題であると考えた。
3 よつて関西国貿促は昭和四二年三月一日関西営業所について中国渡航斡旋業者
としての指定を取消した。
(四)関西営業所の業務内容と経理状態
1 関西営業所は開設以来欠損を続け、昭和四〇年六月から昭和四一年三月までの
間金二六七万六、九六七円、同年四月から昭和四二年三月までの間金二九二万一、
五四七円の赤字を計上した。
2 右営所業所開設初期の欠損はやむを得ないとしても、第三年度を迎え日中友好
の基本的方針に立つて中国国際旅行社総社、日本国内の友好商社、対中国関係貿易
団体諸機関等の信頼と支持を得て採算のとれる営業活動を行わなければならない時
期にさしかかつていた。
3 右営業所の業務内容は、関西国貿促関係の経済人等の渡航斡旋と個人の渡航斡
旋とに大別できるが、前者は参観団客、渡航手続客を合わせて全体の約六八パーセ
ント、営業収益の面からみると五〇パーセントを越えていたばかりでなく、毎年春
秋の広州交易会に参加する客および経済視察団等を取扱つていたが、それは何時渡
航希望者があるか判らない一般の客と異なり特定した固定客であり、しかも年を追
つて増加し、近い将来同営業所収益の大部分を占めるものとみられていた。
(五)前記指定取消の関西営業所に及ぼした影響
1 前記指定取消により関西国貿促友好商社部会訪中代表団の渡航斡旋業務は停止
となり、春季広州交易会渡航斡旋業務は取消され、取扱予定の天津科器展参観団、
友好商社部会参観団の斡旋も不能となり、よつて金五八五万八、五六二円の営業収
益を失つたほか、昭和四二年度訪中参観団の特色をなすものとみられていた業種別
参観団の編成計画もすべて実施不能となり、同営業所が関西国貿促関係の渡航業務
を主に取扱つていたところから、右取消によつて受ける経済的打撃は決定的であ
り、その社会的信用の失墜も大きく、もはやその存立は不能とみられるに至つた。
2 会社も全般に経営基盤が弱く当時収支がようやく償う程度であつたところか
ら、将来大きな負担となる同営業所を抱えていくことは困難であつた。
(六)関西営業所の閉鎖
1 会社は前記指定取消が同営業所にとつてその存立にかかわる重大事であるとこ
ろから、関西国貿促にその意図のあることを知つた昭和四二年二月末頃関西国貿促
に対し申請人ら従業員に対する教育や、特に問題となつていた申請人P1の担当換に
よつて不信の念を除去してもらうように働きかけ、また取消問題の発端となつた友
好商社部会の役員にもP8常務をして働きかけ、東京の国貿促にも口添えを頼み、指
定取消にならないように、また取消後はその撤回方を懇請し、同営業所の存続には
努力を傾けたが、遂に右指定取消を撤回させるに至らず、やむなく閉鎖することと
なつた。
2 会社は当時日中関係の団体である日中貿易促進会においてその解散後従業員に
よつて事業場が占拠され、また大阪の友好商社である東邦商会においても倒産後従
業員によつて事業所が占拠されたことを聞知しており、右閉鎖決定の事実が外部に
洩れると、申請人らやその所属の労働組合員によつて事務所を占拠せれることが確
実であると考えられたので、やむなく抜き打ち閉鎖の措置をとつた。
3 そして会社は各取引先に対して右閉鎖の旨を通知するとともに、陸運局に対し
て営業所廃止の届出をした。
(七)申請人らの解雇
 会社が関西営業所の閉鎖によつて申請人らを東京本店に配置転換することなど解
雇以外の措置をとらず同人らを解雇したのは次の事情による。
1 申請人らは勤務態度が悪く業務に不熱心であつた。申請人らは友好商社である
東邦商会から受領した金一七万円の小切手につき直ちに呈示の手続をとらず同商会
の倒産後まで放置していたため取立不能となり会社に損害を与えた。また業務上の
秘密である昭和四一年夏の第二次日中青年大交流に参加予定の日中友好学院代表団
および関西各界青年代表団の詳細な資料を日本共産党大阪府委員会統一戦線部員P
14に洩らして同党の渡航妨害に便宣を与え、更に資料の郵送依頼をしてきたP21が
正統本部に属していることを依頼発信人名義から察知して同党に通報して同党の同
人に対する除名処分の根拠を与えるなどして、会社の信用を失墜させた。
2 東京本店では申請人らを受け入れる余裕がなく、また同人らを本店に配置換す
ると国貿促、関西国貿促および友好商社等から東京本店についても中国渡航斡旋業
者としての指定を取消される危険が極めて大きかつた。事実、日綿実業ではその直
後東京本店について渡航斡旋業者の指定から外して他の旅行社に切換えた。
3 中国側においても中国国際旅行社総社が渡航斡旋業者であつた株式会社富士国
際旅行社に非友好的な行動があつたとして昭和四二年四月同社との間の渡航業務に
関する特約を破棄しており、国交未回復の下での対中国関係諸団体はその従業員に
非友好的言動があればとうていその存立は不可能であり、申請人らを東京本店に配
置換すると会社についても中国国際旅行社総社から右措置に出られる恐れが大きか
つた。
4 会社には中国渡航斡旋以外の事業目的もあつたが、そのいずれも未だ現実には
これに着手しておらず、将来主たる事業活動が充実安定しある程度の蓄積ができた
後これに着手する予定であつたのにすぎないから、申請人らを東京本店において中
国渡航斡旋以外の業務に就かせるという措置をとることもできなかつた。
四、抗弁
 仮に、本件解雇が申請人ら主張のとおり、日中友好協会に所属する申請人らを会
社から排除するため関西営業所の閉鎖を偽装してなされたものであるとしても、右
解雇は次の理由によつて有効である。
(一)会社は前記のとおり、元来日中両国間の友好関係を深めることを目的として
設立されたもので、その目的からして反中国的言動をとることは許されず、また事
実上中国渡航斡旋の専門企業で、右渡航斡旋は中国の国営企業である中国国際旅行
社総社との間に特別な契約を締結してはじめて可能であり、しかも右契約は日中間
のいわゆる政治三原則、貿易三原則および政経不可分の原則を承認したうえその基
盤の上に成立しているものであるから、その後右各原則を敷衍した共同声明を支持
することもまた右契約を存続させるために欠くことのできないものである。もし右
立場をとらないならば右立場をとる中国渡航者から渡航斡旋の依頼を受け得ないだ
けでなく、中国国際旅行社総社から契約を破棄されることは必定で、その存立は全
く不能である。したがつて会社としては中国との友好を目的とし前記諸原則および
共同声明を承認支持する正統本部を積極的に支持していかねばならず、これがその
存立の条件である。
(二)よつて会社は申請人らを含めその従業員を雇用するに際しては、右趣旨を説
明し十分納得させて雇用しているのであるから、その従業員においても反中国的言
動をしたりまた反中国的団体を支持することは許されない。しかるに申請人らは、
昭和四一年四月のP20書記長の訪中帰国以来中国の文化大革命に対し独自の評価を
して反中国路線をとり日中間の交流について妨害をなし中国に離反した日本共産党
の党員であり、また日中友好協会の分裂後は正統本部に所属せず同党傘下の一団体
となつて中国から敵視されている日中友好協会に残留している。
(三)会社はその特殊な目的、形態、存立基盤からして、右各団体に所属すること
によつて関西国貿促その他日中友好を建前とする団体、商社等から不信をかつてい
る申請人らをそのまま受け入れておくことは事業の遂行に支障を来すというにとど
まらず、その存立自体を脅かされるものであるから、自らの存立を全うするために
同人らを排除することには合理的理由があるものということができる。
五、法律上の主張
 申請人らは、申請人らが日中友好協会を支持し正統本部の方針や行き方に反対す
るのは憲法一四条および労基法三条にそれぞれ定められた信条に該当するので、こ
のことを理由に解雇するのは右各法条に違反する旨主張するのであるが、右見解は
正当でない。
(一)そもそも信条は主として宗教的な信仰ないし信念を意味するものであるが、
そのほかにも社会ないし世界に関する根本的な考え方、見方即ち世界観または人生
観といわれるような信念をも含むものである。民主主義は個人の尊厳をその根本原
理とするものであるから、その根本的な考え方、見方はそれが宗教的信仰に基づく
ものであると否とを問わずそれをどこまでも尊重すべきものとしそれを理由とする
差別的取扱を不合理とみるのである。しかし信条についてはそれ以上に出て政治的
意見即ち個々の具体的な政治問題についての意見ないし主張をも含むものと解すべ
きではない。各人は政治的な信念の自由を有し、また政治的意見の自由を有する
が、政治的意見は人生観や世界観と違つて常に国の具体的な政治の方向について実
践的な志向を有するものである。したがつて特定の政治的立場をとる憲法体制はそ
の政治的立場そのものを破壊しようとする政治的意見を持つ者に対しては自らの存
立を防衛するために多かれ少なかれ差別的取扱をする必要に迫られることがある。
その場合にそうした政治的意見を信条に含まれると解し、それによる差別的取扱が
全面的に禁止されると解することは、憲法そのものを暴力で破壊しようとする意見
を主張する者を国の統治組織から排除することさえできなくなるのであつて、これ
は憲法の自殺を要求することにほかならず、極めて不条理である。そして憲法一四
条の直接適用を受ける公務員関係を律する国家公務員法二七条および地方公務員法
一三条によると、そこでは信条と政治的意見とを区別し、信条についてはその差別
的取扱を全面的に禁止するが、政治的意見については原則として差別的取扱を禁止
し、ただ憲法またはその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党そ
の他の団体を結成し、またはこれに加入した者については官職につく能力がないも
のとして例外的に差別的取扱を認めているのであつて、このことは信条の中には政
治的意見は含まれず、したがつて政治的意見による差別も合理的理由がある限り許
されるものとする立法者の態度を明らかにするものであり、右態度は憲法一四条に
適合し是認されるべきである。これを要するに憲法一四条にいう信条とは専ら宗教
的倫理的ないしは政治的な基本的信念を指すものであつて政治的意見はそれに含ま
れないと解すべきであり、したがつて合理的な理由がある限り政治的意見による差
別は憲法上許される。そして右差別はこれを禁止すべきであるか、またどのような
方法と程度において禁止するかはすべて立法に委ねられているものと解すべきであ
る。
(二)労基法三条は憲法一四条の定める法の下の平等の原理を私人間の関係として
の労働関係に適用したものであるから、特別な理由のない限り、そこに規定された
信条は憲法一四条所定の信条と同一であり、原則として政治的意見を含まないと解
すべきである。そしてその理由は前記国家公務員法および地方公務員法(以下、両
公務員法という。)の場合よりも一層強いものである。それは、まず両公務員法に
おいては前記のとおり例外を認めながらも原則としては政治的意見による差別的取
扱を禁ずる旨を定めているが労基法には政治的意見による差別的取扱を禁ずる旨の
規定がないこと、そして私人間の関係である労働関係においては労働者の政治的意
見の自由が尊重されるべきであるのと同じく使用者の政治的意見の自由も尊重され
なければならず、ここでは労働者の政治的意見の自由と使用者のそれとが矛盾衝突
する場合を生ずるが、私人間の雇用関係は契約に基づく結合であるから、労働者と
使用者との間にそうした矛盾衝突を生じた場合には一方を尊重して他方を否定する
ことによつてではなく、双方を等しく尊重することによつて、即ちこの場合につい
ていえば解雇の方法を以て双方を隔離することにより解決するほかはないこと等に
よつて明らかである。したがつて憲法一四条の直接適用を受ける公務員関係を律す
る両公務員法にいう信条に政治的意見が含まれないとすれば、一層強い理由を以て
私人間の関係を律する労基法三条所定の信条には政治的意見を含まないと解すベき
である。そうだとすると仮に使用者が労働者の政治的意見を理由として差別的取扱
をしたとしても、それだけでは直ちに労基法三条に違反するものではなく、そして
右にいう差別的取扱に解雇を含むものとすれば、政治的意見による解雇もそれだけ
で直ちに同条の違反になるとは限らない。
(三)思想、良心および表現の自由が認められ、かつ営業の自由が認められる以
上、特定のイデオロギーの承認、支持を存立の条件とする事業を営む自由も当然に
認められる。これらの事業にあつては、それぞれのイデオロギーが存立の条件であ
るから、その存立を保持するためには、右イデオロギーを否定し破壊しようとする
者をその事業から排除することが必要となる場合がある。たとえば、特定の宗教的
イデオロギーの宣布をその目的とする事業がその宗教的イデオロギーを否定する者
即ち異端者または宗教否定論者をその事業から排除し、平和主義の宣伝を目的とす
る事業が戦争主張者ないし軍国主義者をその事業から排除し、出産調節による人口
問題の解決を目的とする事業が出産調節反対者をその事業から排除したりする場合
がこれに当る。これらの場合右排除が信条による差別的取扱として一般に禁止され
るとすると、これらの事業の存立そのものが否定されることになり、それらの事業
を営むこと自体許されないという結果になるのであるが、このような解釈は憲法の
精神の適合しない。これらの場合の排除は信条によるものではなく、その実践的、
具体的発現としての宗教的非宗教的な意見によるもので、右意見は信条に含まれな
いとみるベきである。事業の存立が特定の政治的イデオロギーである場合もこれと
同一に考えるベきである。各人が政治的意見の自由を有する以上、特定の政治的イ
デオロギーの承認、支持を存立の条件とする事業を営むことも自由であり、右事業
においてその存立の条件とされる政治的イデオロギーを否定ないし破壊し、これに
よつて事業の存立そのものを著しく妨害しようとする者を、そうした政治的意見を
理由として、その事業から排除することは常に必ずしも労基法三条に違反するもの
ではなく、仮にこれが違反するとすれば同条はそのような事業の存立そのものを許
さない趣旨と解するほかはないが、このような解釈が不合理であることは明白であ
る。右排除が解雇という方法をとつたとしても同様である。同条は信条による解雇
を禁じているが、このことは常に必ずしも政治的意見による解雇を禁じているもの
ではない。これを要するに特定の政治的イデオロギーの承認、支持を存立のための
不可欠な条件とする事業にあつては、このような政治的意見による解雇が合理的な
理由を持つと解される場合が多い。
(四)これを本件についてみると、申請人らおよび会社の日中友好に関する態度は
いずれも個々の具体的な政治問題についての意見ないしは主張で優れて実践的な志
向を有するものであるから前記意味における政治的意見というベく、しかも会社は
その政治的意見を存立の条件としているものであるから、右条件と相容れない政治
的意見を特つ申請人らを解雇することは憲法一四条、労基法三条に違反するもので
はなく、かつ十分に合理的根拠があるものということができる。
第四、疎明関係(省略)
       理   由
一、本件会社が昭和三九年四月二五日から同月二七日までの間に開催の日中友好協
会第一四回全国大会における、「日中両国民間の貿易、経済、文化の交流を発展さ
せ相互理解を深め日中友好をより増進させるために訪中友好視察団の旅行斡旋、団
体、個人の訪中斡旋を行うことを目的として旅行社をつくる。」旨の決定に基づき
同年九月一一日に設立された株式会社で、肩書地に本店を、昭和四〇年六月一日以
降大阪市<以下略>内に関西営業所を置いてきたものであり、申請人P1が昭和四一
年二月一四日会社に雇用され同年四月一日正社員となり同年七月一日以降関西営業
所に勤務して主に渡航手続業務に従事し、申請人P2が昭和四〇年一一月一日同社に
アルバイトとして雇用され昭和四一年四月一日正社員となり少くとも同年七月一日
以降同営業所に勤務して総務、渡航手続、募集等の業務に従事していた者であるこ
とは当事者間に争いがない。
二、また会社が昭和四二年三月二六日付内容証明郵便を以て申請人らに対し、「経
営不振に加え、関西国貿促から関西営業所について渡航斡旋業者の指定を取消さ
れ、今後同営業所において中国渡航斡旋業務を取扱うことが事実上不可能となつた
ので同営業所を昭和四二年三月二六日限り閉鎖することを決定し、営業所長P3をは
じめ所員である申請人らおよびP4の全所員を同日解雇する。」旨の意思表示をなす
とともに予告手当名下に金二万三、〇〇〇円を送付し、同月二七日以降申請人らの
就労を拒否し、かつ賃金を支払わないことも当事者間に争いがない。
三、申請人らは右解雇の無効を主張するので、その無効理由について判断する。
(一)日中友好協会の設立と運動経過および本件会社の設立
 成立に争いのない甲第六、第七号証、同第一二号証、乙第一、第二号証、弁論の
全趣旨によつて真正に成立したものと認めることができる甲第四〇号証および証人
P19、同P22の各証言ならびに弁論の全趣旨を総合すると次の事実を認めることが
できる。日中友好協会は昭和二四年一〇月一日に中華人民共和国が建国されたこと
を契機に、日本国民の誤つた中国観を反省しその是正に努力すること、日中両国民
の相互理解と協力をうち立てて文化交流に努力すること、日中両国民の友好提携に
よつて相互の安定と平和を図り世界の平和に貢献すること等を目的とし一党一派に
偏せず、また階級、職業、政治的信条を問わず会員になり得るものとしてその設立
が準備され、昭和二五年一〇月一日に設立され、全面講和、日中貿易の促進、文化
学術の交流に積極的にとり組み日中関係は国交未回復のまま民間ベースにおいて注
目すべき進展を示したが、政府の中国政策の対米追従の強化によつて日中関係は悪
化し貿易も一時中断した。その後昭和三七年に至り中国側から、中国を敵視しない
こと、二つの中国をつくり出す陰謀に加担しないこと、日中国交の回復を妨げない
こと、といういわゆる政治三原則とこの立場に立つた貿易三原則(政府協定、民間
契約、個別的配慮)および政経不可分の原則を承認する友好的な貿易商社による日
中貿易の再開が提唱されたことから、日中友好協会をはじめ日中貿易促進会、日本
国際貿易促進協会、関西国貿促等において右諸原則を承認するいわゆる友好商社を
中国国際貿易促進委員会に紹介し、右商社によつて友好貿易という形で日中貿易が
再開され、これが次第に発展するとともに、これと並行して中日友好協会長P23と
P24との間において日中間の貿易協定が締結されることによつていわゆるLT貿易
が開始され、右各貿易はいずれも順調にその規模を拡大した結果、その貿易総額は
年間六億ドルを超え、貿易高による相手国順位では米、加、豪に次いで第四位とな
るまでに至つた。しかしながら日中間の国交回復については何ら具体的な進展もな
く経過する間、昭和三九年一月中仏間に国交が樹立するに及んで、にわかに日中間
の国交回復を求める声が高くなり、同年二月一三日本邦各界の知名人である二五氏
(P25、P15、P26、P6、P27、P28、P29、P30、P31、P32、P33、P34、P
35、P16、P36、P37、P38、P39、P40、P41、P42、P43、P44、P45、P
46)によつて日中各階層に対し、中国との国交を即時回復して貿易、経済、文化の
交流を拡大すること、日台条約を破棄し台湾との不正常な関係を清算すること、中
華人民共和国の国連における正常な地位の回復のために努力することを日本政府に
対し要求するために広範な運動を展開するよう呼びかけがなされ、これに副つて日
中友好協会の第一四回全国大会において同年度の運動方針が決定され、希望者が容
易にまた友好的に中国を訪問することができ、両国間の交流を盛んにするための旅
行斡旋の組織として本件会社が設立された。以上の事実を認めることができる。
(二)日中友好協会の分裂
 成立に争いのない甲第八、第九号証、その様式態様からして真正に成立したもの
と認めることができる甲第一三号証、同第一八、第一九号証、同第二〇号証の二、
同第二一ないし第二三号証、乙第三、第四号証、同第六号証、同第三五ないし第三
八号証および証人P19、同P22の各証言、被申請人代表者本人尋問の結果ならびに
弁論の全趣旨を総合すると次の事実を認めることができる。中華人民共和国におい
ては昭和四〇年頃から国の基本路線に重大な変更があり、対内対外の両面に亘り自
らの路線に反する勢力に対しては激しく対決する方針をとることとなつた。日本共
産党は昭和四一年二月書記長P20を団長とする使節団を中国に派遣したが、同年四
月初めその帰国後、同国の新路線による対日政策は自主、平等、互恵、相互不干渉
の原則に反する大国主義の誤りを犯しているので、右原則に立つ同党としては従来
どおりの同国との関係を維持することは不可能であるとして、その方針の決定的な
変更をなし、党本部支部の建物から毛沢東の肖像を撤去し、中国映画の上映禁止、
中国関係雑誌(人民中国、中国画報、北京周報等)の購読禁止をするほか、既に前
年度に引続いて実施準備中の第二次日中青年大交流については、その招請状に現代
修正主義との戦いという政治課題が付されていたところから、これは自国の政治路
線をわが国の民主運動に押しつける手段を利用しようとしている動きが明白である
とし、当面党としてはベトナム戦争反対闘争など日本国内の平和、独立、民主主義
を守る戦いの緊迫した情勢の中で果さなければならない任務があるとの理由を以て
傘下の民主青年同盟員の不参加を決定してこれを表明した。中国は右決定に対して
は当然厳しくこれを非難してきたのであるが、このことから同党は右日中青年大交
流の実施についてはもとよりその他日中間の諸種の交流往来についてもかなり積極
的に妨害活動をするに至つた。そしてこのような同党と中国との間の対立は日中友
好運動の中に二つの流れを生ぜしめたのであるが、更にこのことが契機で原水爆禁
止国民協議会、日本アジアアフリカ連帯委員会、日本ジヤーナリスト会議、宗教者
平和懇話会、大阪中小企業同友会等の諸団体においても日本共産党派と反日本共産
党派とのイデオロギーの対立を生じ右二派による抗争を惹起した。このような動き
の中でこれが現実の日中関係を単に悪化させるにとどまらず日米反動勢力を助長し
その反中国政策に手をかしアジアの平和と解放を妨げひいてはわが国の将来を危く
するとの考えに立つわが国各界の知名人三二氏(P47、P48、P25、P26、P6、P
15、P49、P30、P32、P50、P51、P17、P52、P53、P54、P55、P35、P
16、P56、P37、P57、P58、P59、P39、P60、P61、P62、P63、P64、P
10、P65、P33)は昭和四一年九月二六日「内外の危機に際し再び日中友好の促進
を国民に訴える」という標題の下にいわゆる日中友好について、「日中友好のとり
でを守り広げていくことは日中両国人民の利益だけでなくベトナム人民に対する大
きな支援となりアジアの平和と解放にとつて重大な貢献となること、その運動はこ
れまで以上に厳しくなりアメリカ政府に追従する勢力が妨害、圧迫を強めてくると
同時に運動の内部にも既にさまざまな口実を設けて友好発展を妨げようとする傾向
が生じているが、右傾向は米日反動勢力を喜ばせその反中国政策に手をかすものに
ほかならないこと、その運動はどのような圧力にも屈せず策謀にも欺されず、また
どのような妨害にもかかわらずますます発展していく歴史の流れであること」等日
本共産党の日中友好に対する態度を正面から非難する見解を表明したうえ、各層各
界の国民に対し右見解に従つて日中友好運動を前進させよるように訴える旨の呼び
かけをなし(右呼びかけのなされた事実は当事者間に争いがない。)これに対応し
て中国側では同年一〇月五日各界人士および人民団体責任者ら五二氏によつて右呼
びかけの趣旨を支持する旨の声明がなされた。日中友好協会は同月一日の中華人民
共和国成立一七周年の国慶節を祝賀するため訪中代表団を派遣することになつたの
であるが、その際中国において中日友好協会代表団と右「三二氏の呼びかけ」の線
に副つた共同声明を出すことについては出発前の同年九月二七日の常務会において
討議を終え、圧倒的多数を以てこれを可決していたので、P51、P10、P66、P
67、P68、P69、P70、P71、P72、P73らを以て構成する右代表団は同年一〇月
一二日北京において前記P23ほか九名を以て構成する中日友好協会代表団との共同
声明に調印した(右共同声明調印の事実は当事者間に争いがない。)。そして右共
同声明は、「中国の文化大革命は中国人民が革命の正しい進路を保障するため長期
に亘る革命途上避けることのできない重要な一過程であり、既にその明瞭な成果を
あげつつあることについて双方十分に理解したこと、日中の友好交流は一貫して両
国人民の共通の願望と利益に基づいて相互尊重、平等互恵、相互支援の立場から行
つてきたしまた今後も行つていくものであり、これに対するさまざまな中傷と誹謗
は根拠がなく日本の日中友好運動を内部から破壊しようとするものであることを双
方一致して指摘したこと、日中両国人民のあらゆる分野における交流は相互理解を
深め友好と団結を強めるために必要なものであり、また相互理解の深まりと友好と
団結の強化は各分野での次の新な発展を促す力となるものであるから今後ますます
各分野の交流を拡充発展させる必要があることを認め、したがつて日本側はあらゆ
る妨害を排除して第三回日中青年大交流に参加する日本青年の中国訪問の実現に努
力し中国側はこれを歓迎すること、双方は現在日本国内外においてさまざまな勢力
が日中友好運動に対して陰に陽に妨害を加えている状況の下において日本側三二氏
の呼びかけと中国側各界人士および人民団体責任者五二氏の声明の発表は重大な意
義をもつものであることを双方確認したこと。」等日本共産党の対中国路線に反対
しこれを明らかに非難するものであつた。右共同声明は同月二五日に開催の日中友
好協会第一三回常任理事会においてその承認が求められるや、これを支持する者と
これに反対し日本共産党の対中国路線に同調する者との二派に分れて紛糾し、支持
派は四三名と数の上では反対派一三名を大きく上回つたが、このような基本的な問
題について多数決でことを決しても反対派を包含して組織を維持していくことはと
うてい不可能だと判断したことから、反対派を排除し共同声明の線に副つて大同団
結を企図して正統本部を結成し、ここに日中友好協会は分裂した。中国側の中日友
好協会では同月二七日残存日中友好協会との関係を断ち、正統本部を支持する旨を
宣明した。そしてこれに伴つて日中友好協会大阪府連合会においても同年一一月二
七日に開催の常任理事会において二派に分裂し、会長P17、副会長P18、理事長P
5、事務局長P19その他の常任理事ら正統本部支持の者らによつて正統本部大阪府本
部を組織した。以上の事実を認めることができる。
(三)右分裂が会社に及ぼした影響
 日中友好協会の分裂に伴い、会社の取締役会長P6、取締役社長P7、常務取締役
P8、取締役P5ら殆んどの取締役が正統本部に移り、会社も昭和四一年一〇月末の
常務会で共同声明および正統本部を支持し日中友好協会とは一切の関係を断つこと
を決定したことは当事者間に争いがない。そして証人P8の証言、被申請人代表者本
人尋問の結果および弁論の全趣旨を総合すると、右役員ら個人の行動はイデオロギ
ーそのものによるものであつたが、会社の決定には右イデオロギーに加えて同社が
国交未回復の状態において希望者が友好的に中国を訪問できるよう同国の国営企業
である中国国際旅行社総社と特約を結び同国渡航についての斡旋業務を行つている
ところから、日中双方の友好協会代表団の間で調印発表された共同声明を会社の営
業活動方針として採択し正統本部支持の立場をとることが企業存続のために不可欠
の条件であるとする現実的な考慮も大きく働いていた事実を認めることができる。
(四)会社の正統本部支持が従業員に及ぼした影響
 会社が、正統本部支持を決定した後、(1)昭和四一年一二月上旬申請人らを含
む全従業員に対し業務命令として前記共同声明に関する所信についてレポートの提
出を命じたこと、(2)関西営業所長P3において同月二六日申請人ら外一名の全所
員に対し日中友好協会を脱会して正統本部に入会し登録の手続をとるように勧めた
こと、(3)右P3において昭和四二年一月一一日申請人P1に対し右登録を重ねて
勧めたこと、(4)右P3において同年二月七日同営業所会議の席上、会社の基本方
針として同営業所に正統本部の班をつくることを提唱したこと、等の事実はいずれ
も当事者間に争いがなく、申請人P2本人尋問の結果によると、正統本部大阪府本部
事務局員P9が同年一月九日関西営業所において申請人ら外一名の全所員に対し右登
録申込用紙を交付して登録を促した事実を認めることができる。そして右各事実を
総合すると、会社は日中友好協会との関係を断ち正統本部の支持を決めて後、全従
業員に対して会社と同じく正統本部を支持しこれに登録するようかなり強力に働き
かけていた事実を認めることができる。
(五)前記分裂後の申請人らの態度
 申請人P1がP5の推薦によつて会社に入社したことは当事者間に争いがなく、証
人P8の証言および申請人P1(第一回)、同P2各本人尋問の結果を総合すると、申
請人P2もP5の推薦で会社に入社した者であり、P5は会社の取締役であるだけでな
く、分裂前の日中友好協会大阪府連合会理事長、同協会で設立した日中友好学院長
で、分裂後は正統本部に所属する者であつて、申請人らはいずれも昭和三七年四月
日中友好協会に入会し、右日中友好学院の普通部および高等部に学んでP5の教育を
受けた者であるが、日中友好協会の分裂に当つては、P5との特別な関係にもかかわ
らず、正統本部に移ることなく日中友好協会に残留し、前記(四)のとおり、会社
からしばしば同協会を脱退して正統本部に加入するよう勧められたがこれに応じな
かつた事実を認めることができる。
(六)会社の申請人らに対する正統本部入会の要請
1 証人P8の証言および申請人P1(第一、二回)、同P2各本人尋問の結果を総合
すると、会社の営業担当のP8常務は昭和四二年二月二〇日関西営業所を訪れ、申請
人P1を伴つて同所が渡航斡旋業務を行つていた関西国貿促の友好商社部会訪中代表
団に渡航事務手続を説明するため関西国貿促に赴きその団員総会に出席して右用件
を終えた後、同申請人とは別途同営業所に帰つたのであるが、同日午後五時頃から
数時間に亘つて申請人らに対し、まず同人らが末だ日中友好協会に残留している事
実を確認したうえ(右確認の事実は当事者間に争いがない。)、同協会は表面では
日中友好を唱えながら裏面では反中国活動を行つて日中友好を妨害し、日中友好を
経営の基本方針とする会社を侮辱している組織であり、会社にとつて日中友好はそ
の存立にかかわるものであるから、この点をよく理解して早急に同協会を脱会する
ことを希望するが、そうでないと会社としては放置できないので申請人らに対する
措置について結論を出さざるを得ない旨言明した事実を認めることができる。
2 前顕各疎明によると、会社の関西営業所担当の取締役でありかつ正統本部大阪
府本部理事長、日中友好学院長であるP5は翌二一日P8常務とともに同営業所を訪
れ、まず同人に席を外させたうえ申請人らに対し、日中友好学院の院長として教え
子である申請人らに話すものである旨前置きして、日中友好を志す者として日中友
好協会に入つているのは誤りであるから、よく考えて正統本部に入るように勧め、
もし入らなければこれが申請人らと話合う最後の機会となるとして説得したが、こ
れに対し申請人らは、日中友好協会に入つているのは入社以前からのことであり、
また会社の業務にはその方針に従つて忠実に働いているので、そのことでとかく言
われる道理はない旨答えたところ、P5は色をなして席を立ち、次いでP8がこれに
引続いて申請人らに対し先に申請人らは共同声明を支持する旨のレポートを出しな
がら、右声明に反対の立場をとつている日中友好協会の会員であることは矛盾する
のではないかと質したうえ、右P5の話および前日の自分の話についての見解をレポ
ートにして翌二二日に提出するように命じたところ(右レポート提出命令の事実は
当事者間に争いがない。)、これに対し申請人らは、「P8、P5らの述べた政治的
見解については従業員として見解を述べる必要はないものと考える。従業員がどの
ような会に加入していようとそれは自由であるが、会社の営業方針には異議なく従
つて業務を遂行する。」旨、会社と日中友好についての考え方が異なることを認め
たうえ、それとは別に具体的な会社の業務については支障なくこれを行う意思のあ
ることを記載したレポートをそれぞれ提出した事実を認めることができる。
3 証人P8の証言および申請人P1(第一回)、同P2各本人尋問の結果を総合する
と、P8常務は同年三月二日午後二時頃関西営業所を訪れたうえ、全所員の集合を命
じ、たまたま社用のため神戸市内に赴いていた申請人P1については連絡して呼び戻
し、同日午後三時頃から申請人らおよびP4に対し業務命令を申渡した事実を認める
ことができる。そして右命令がP5ら数名立会いの下に行われ、その内容が、(1)
直ちに各自担当業務を営業所長に引継ぐこと、(2)引継が完了次第自宅で「三二
氏の呼びかけ」および共同声明を学習するため休職を命ずること、(3)学習の結
果はレポートにして同月一〇日までに郵送すること、(4)レポートを検討したう
え常務会で出す指示に従うこと等を内容とするものであつたことは当事者間に争い
がない。
以上の各事実を総合すると、会社は正統本部成立後同本部への入会を全従業員に対
し一般的に勧誘していたのと異なり、昭和四二年二月二〇日以降は申請人らに対
し、個別的に、強力に、しかも拒否するときは解雇に至ることが予想できる方法で
右入会を強く要請している事実を認めることができる。
(七)右要請に対する申請人らの態度
1 証人P74の証言および申請人P1(第一回)本人尋問の結果を総合すると、申請
人らに日中友好協会の分裂とそれに伴つて会社内部に起つてきた既に認定の諸般の
状況から自分らが同協会にとどまる以上会社との間に諸種の紛争は避けられず、ひ
いては従業員としての権利を侵害されるような事態になることもあり得ると判断し
たことから、昭和四二年一月初め大阪商業労働組合に加入していたのであるが、前
記同年二月二〇日、二一日の会社の申請人らに対する強い態度からして近く申請人
らに対して解雇が行われることも十分予測されたため、一応弁護士に相談しておく
べきであると考え、同月二三日頃申請人P2が右組合の委員長P74とともに申請人ら
の本件代理人である佐藤弁護士の事務所を訪れ同弁護士とその対策について協議し
た事実を認めることができる。
2 前記(六)の3のとおり、申請人らは同年三月二日P8常務から教育休職ともい
うべき業務命令を受けたのであるが、証人P74、同P8の各証言および申請人P2本
人尋問の結果を総合すると、申請人らは、当時の日中友好に関する二つのイデオロ
ギーの尖鋭的な対立という状況を背景に右命令を考えるとき、申請人らにおいてイ
デオロギーの変更を肯じない限り、これを前提として解雇処分の行われることは必
至であると考えたため、右命令を受けた後直ちに前記労働組合に連絡して善処を求
めたところ、間もなくして委員長P74が十数名の組合員とともに関西営業所を訪
れ、P8常務との団体交渉を要求したが、同人が不在であつたため所長のP3に対し
てその要求書を交付して約二時間後に引き揚げ、翌三日再び組合員約七〇名位を動
員して同営業所を訪れて団体交渉を申入れ、同日午前一〇時頃から深夜にかけてP
8と話合つた結果、結論は後日の団体交渉に委ねることとし、とりあえず会社は申請
人らに対して休職期間中も任意の就労を認めることとしたのであるが、その間右組
合員らの中には正統本部から訪れた前記P9が同営業所の中に入るのを妨げたり、ま
た交渉が深夜に及ぶや布団数組を運び込み同営業所の一部を占拠して長期交渉の構
えを示すなどかなり険悪な雰囲気となつた事実を認めることができる。
3 申請人らおよび前記組合の幹部が同月七日P8常務らと団体交渉したことは当事
者間に争いがなく、前顕各疎明によると、右団体交渉は午後一時頃から同五時頃ま
での間大坂府立労働会館で行われたのであるが、組合側は約三〇名の組合員を動員
し、当初会社側の参加者として訪れた前記P9を実力で排除し、一方会社側では組合
に対し交渉員を限定して多数の応援の組合員の退場を求めるなど騒然とした雰囲気
の中で団体交渉が開始された後、P8は申請人らに対する休職中は賃金を全額支給す
る旨を約したうえ(この事実は当事者間に争いがない。)、同人らを教育休職にす
る理由について、同人らは会社の方針に従うと言いながら日中友好協会員である
が、このことによつて会社の存立が脅かされ客に不安を与えているので、会社の営
業方針、真の日中友好、中国事情等について更に勉強してもらうためである旨言明
したのに対し、申請人らおよび組合側はそれが不当であることを主張して会社側と
激しく応酬したが、結論をみぬままに当日の団体交渉を終えた事実を認めることが
できる。
4 申請人らおよび前記組合の幹部が同月一四日P8常務らと更に団体交渉をしたこ
とは当事者間に争いがなく、証人P74、同P8の各証言を総合すると、右団体交渉は
午後一時頃から同四時半頃までの間前同様大阪府立労働会館で行われたのである
が、このときも組合側は多数の組合員を動員しており、かなり緊迫した雰囲気の中
で行われた事実が認められ、その交渉の結果、P8において休職中の学習テキストは
共同声明、日中両国人民の友好貿易促進に関する議定書、中国通信等であるとした
ことは当事者間に争いがなく、したがつて教育休職によつて申請人らに要求するイ
デオロギーが正統本部のそれであることを団体交渉の席上で認めたほか、前顕各疎
明(但し、証人P74の証言については後記信用しない部分を除く。)によると、右
団体交渉の結果、P8において関西営業所は今後とも閉鎖しないように努力する旨を
約しただけで、紛争解決への具体的な進展はみられず、日を改めて続行することと
なつたが、ただ従来の経過からみると、組合側は多数の組合員を動員しており、か
つことの成り行き次第では何時組合員による営業所の占拠や会社役員に対する有形
無形の圧迫が加えられかねない状況にあつたし、一方正統本部支持を決した企業内
においては日中友好協会支持の従業員に対する実力による追放行為がしばしば行わ
れており、会社も申請人らを実力で企業外に排除する恐れがないとはいえなかつた
ため、双方この紛争が何らかの形で解決するまでは一切の暴力を使わないことを約
した事実を認めることができ、次回の団体交渉を同月二八日に開くことを申し合せ
たことは当事者間に争いがない。申請人らはこの際、P8において申請人らの労働条
件、身分に著しい変更を行う場合には予め組合と協議することを約した旨主張する
が、前顕各疎明によると、組合からP8に対して右約束の要求はかなり執拗になされ
たが、結局同人は言葉を濁してこれに応じなかつた事実を認めることができるので
あつて、証人P74の証言中には右認定に反して申請人らの主張事実に副う部分があ
るが、右は前顕各疎明に照らしたやすく信用できない。
 以上の各事実を総合すると、会社の申請人らに対する正統本部入会の要請につい
ては、申請人においてたやすくこれに応じないばかりか、むしろ組合の応援を得て
その撤回を求める行動に出、交渉を重ねたが互に譲らず、早急に解決の見通しもた
たず、またことと次第によつては双方実力行使が予想されるような事態にまで発展
した事実を認めることができる。
(八)右状況後の会社の行動
1 証人P3(但し、後記信用しない部分を除く。)、同P8の各証言および申請人
P2本人尋問の結果を総合すると、会社はその後関西営業所の閉鎖とこれに基づく申
請人らを含む全所員の解雇を決定し、P8常務に対し、右閉鎖を命じたので、同人は
同年三月二五日下阪して同営業所に赴き同所においてP3所長に対し右閉鎖の決定を
告げ、同日夕刻同人をしてその事務所の賃貸借契約を合意解除するため委任状を携
えてその賃貸人である大興ビルの管理人方に赴かせ、右契約を合意解除して敷金一
三〇万円を受領してこれを持ち帰らせたうえ、同事務所から一切の備品什器を運び
出してこれを賃貸人に対し明渡した事実を認めることができる。そして証人P3の証
言中には右認定に反する部分があるが、右は前顕各疎明に照らし信用できない。
2 会社は翌二六日関西営業所を閉鎖するとともに、申請人らを含む全所員を解雇
しており、右事実は当事者間に争いがない。
3 被申請人代表者本人尋問の結果によつて真正に成立したものと認めることがで
きる乙第二三号証、成立に争いのない同第二四号証および右本人尋問の結果による
と、会社は前記閉鎖と同時に同日付の「関西営業所の閉鎖にあたつてのお詫びとご
挨拶」と題する印刷文を関係方面に配布し、同年四月二六日旅行斡旋業法に基づき
陸運局長に対し同営業所廃止の届出をした事実を認めることができる。
 以上の各事実を総合すると、会社は申請人らおよびその所属組合の幹部と申請人
らのことについて団体交渉を継続中、交渉妥結の余地は全くないものと判断したこ
とから、申請人らおよび右組合に隠密裡にしかも周到な準備の下に関西営業所を閉
鎖して申請人らを解雇した事実を認めることができる。
(九)本件解雇の原因
 以上認定の各事実を更に総合すると次の事実を認めることができる。会社はその
成立の経緯からして日中友好の基礎に立つ企業で、しかも現実に日中間に交流がな
ければその存立を全うし得ないところから、日中友好に関するイデオロギーの相違
による日中友好協会の分裂に当つては、そのイデオロギー自体による選択に加え
て、より現実的な観点からともかく実際に日中間の交流を可能にする正統本部の支
持に決したものと認められるのであるが、右分裂後は正統本部と日中友好協会ない
しは日本共産党との間において次第に対立抗争が激化し、双方とも相手方に対する
非難、攻撃を繰り返し、憎悪を増大させて行つたところから、会社自体の心情とし
ても、また密接な繋りのある正統本部およびこれを支持する友好商社その他の諸団
体に対する関係からしても、従業員の中に日中友好協会員ないし日本共産党員がい
ることについてはこれを放任できない状態となつたので、当初全従業員に対し比較
的穏和な方法で正統本部への入会を勧誘していたのとは異なり、同協会に所属して
同党員でありしかも容易にその立場を変えない申請人らに対しては、右各所属団体
を離れて正統本部に入会するよう強く要求することとなつたのに対し、同人らにお
いてこれに応ずる気配が全くないのでやむなくその解雇を考慮中のところ、同人ら
が労働組合にその解決を委ねたこともあつて、たやすく解雇もできない状況となつ
たので、同人らを解雇し、しかも組合の攻撃をかわす方法として、関西国貿促の関
西営業所に対する渡航斡旋業者としての指定取消を好機に、同営業所を閉鎖しこれ
を理由に解雇することとしてその実行をしたものと認めることができる。してみる
と右営業所の閉鎖は申請人らの解雇を容易ならしめる手段としてなされたものであ
り、右閉鎖までして申請人らを会社から排除しようとした目的は同人らが会社と敵
対関係にある日中友好協会および日本共産党に所属しその政治的信条に同調したこ
とにあるものというべく、これを要するに同人らの政治的信条によつて同人らを差
別して解雇したものと認めることができる。
四、被申請人は申請人ら主張の本件解雇の無効理由について反対事実の主張をする
ので、この点について判断する。
(一)関西国貿促の関西営業所に対する渡航斡旋業者としての指定取消
 被申請人は、関西国貿促が関西営業所に対する渡航斡旋業者としての指定を取消
したので、同営業所を閉鎖せざるを得なくなり、申請人らを本店に配置転換するこ
ともできない事情があつたので同人らを解雇した旨主張するので、まず右指定取消
の実情について検討する。
1 成立に争いのない甲第三一ないし第三三号証の各一、前顕甲第四〇号証、その
様式態様からして真正に成立したものと認めることができる甲第四三、第四四号証
および証人P22、同P75の各証言ならびに弁論の全趣旨を総合すると関西国貿促成
立の経緯と業務内容およびその日中友好協会分裂後の行動等について次の事実を認
めることができる。関西国貿促は昭和二九年九月日本国際貿易促進協会とは別に、
中国、ソ連、北朝鮮、北ベトナムおよび東欧諸国等共産圏諸国との間の貿易上の諸
障害を除去してその間に平等互恵を原則とする友好的な貿易を促進することを目的
として設立されたいわゆる権利能力のない社団で関西地区を中心に、主として国際
貿易振興のためこれを阻害している諸問題の解決および前記共産圏諸国との間の貿
易の仲介斡旋、貿易経済代表の派遣、受入その他の業務を行つてきたが、ソ連貿易
等については漸次ソ連東欧貿易会にその業務が移り、主として中国貿易関係につい
ての業務を行うようになり、その後日中間においていわゆる友好貿易が開始されて
からは、日本国際貿易促進協会、日中貿易促進会とともに、右友好貿易を担当する
日本側のいわゆる友好商社を中国国際貿易促進委員会に紹介する業務を取扱い、事
実上右日本側貿易促進二団体とともに日中貿易を希望する日本側商社についてその
いわゆる友好性についての資格審査権を有し、日中友好貿易の実施に関し主要な役
割を果してきた。元来、関西国貿促は政党政派にかかわりなく中国との友好的な貿
易を望む者をその会員とするもので、事実、日中貿易を望む関西の大手企業は殆ん
ど洩れなくその会員となつていたが、ただ日中貿易は中国との関係でいわゆる政治
三原則、貿易三原則および政経不可分の原則を承認する前記友好商社でなければこ
れを行うことができず、対米関係その他各種の事情から右諸原則を公然と承認でき
ない大手の企業についてはダミーと称する身代わり商社をつくりこれによつて右貿
易を行つている状況から、勢い日中友好協会とは密接な関係にあり、右協会の分裂
後は現実に中国との交流を行いその接触を保つことのできる正統本部の支持を明ら
かにし、特にその友好商社部会の常任理事会の会員は日中友好に関するイデオロギ
ー自体のほかに、日中貿易を維持発展させるという現実的な必要もあつて熱烈な正
統本部の支持者で、日中友好協会および日本共産党に対しては激しい敵意を抱き、
友好商社の中でも正統本部を支持しない者はもとより旗幟を鮮明にしない者につい
てもその中国国際貿易促進委員会への紹介をとりやめるように働きかけて、対中国
貿易を不能にするなどの措置をとつてきた。以上の事実を認めることができる。
2 既に認定の三の(六)の12の事実に、証人P22、同P3、同P8、同P75の各
証言を併わせ考えると、関西国貿促が関西営業所に対する渡航斡旋業者としての指
定を取消した事情として次の事実を認めることができる。関西国貿促はその所属商
社等の中国への業務渡航、視察団の渡航等については関西営業所設置以来主として
同所にその斡旋業務を依頼しており、昭和四二年に入つてからはその友好商社部会
の訪中代表団と春季広州交易会参加者の名渡航斡旋を依頼していたのであるが、同
年二月二〇日右訪中代表団の結団式後団員総会が行われた際、団員である友好商社
員の中から昭和四一年度の日中青年大交流に参加予定の日中友好学院代表団および
関西各界青年代表団の渡航申込者の名簿が関西営業所から日本共産党大阪府委員会
に洩れていることを問題とし、このようなことが起るについては同営業所内に日本
共産党および日中友好協会に属する申請人らがいることが原因であるから、右状態
にある同営業所に渡航の斡旋業務を委ねるべきではないとの意見が出され、右意見
が大勢を占めたので、たまたま右団員総会に出席していたP8常務に対して申請人ら
の善処を要望し、同人らが従来の態度を変えないなら、少くとも同団の渡航斡旋業
務は同営業所に委ねるべきではないとの結論に達した(但し、証人P3の証言、申請
人P1(第一回)、同P2本人尋問の結果によると、右名簿は昭和四一年八月頃日本
共産党大阪府委員会統一戦線部員P14が申請人らの不在中に同営業所を訪れた際、
机の上にあつた右名簿を写して帰つたことによつて同党に洩れたのであるが、当時
はまだ日中友好協会の分裂前でP14は同協会大阪府連合会の事務局員でもあつたと
ころから、申請人らが同営業所に勤務していたこととはかかわりなく、同所をしば
しば訪れていたのであるから、右名簿の漏洩については申請人らに何らの責任もな
い事実を認めることができる。)。そこでP8は既に三の(六)の12で述べたとお
り、直ちに同営業所において申請人らに対し日中友好協会を脱会して正統本部に入
会するように強く説得し、更に翌日P5取締役も加わつて右説得を続けたがその効な
く日時を経過する間、前記友好商社員の中において、もはや関西国貿促としては同
営業所に対して渡航斡旋の業務を扱わせるべきでなく、差当つて友好商社部会の訪
中代表団の渡航斡旋の依頼はこれを取消すべきであるとする強硬意見が出されてき
たので、関西国貿促では昭和四二年二月二七日頃友好商社部会の常任理事会を開催
して討議した結果、申請人らが日中友好協会に残留し日本共産党に籍を置く以上同
営業所に関しては渡航斡旋業者としての指定を続けることはできないとの理由でこ
れを取消すべきであるということになり、関西国貿促は右常任理事会の決定に基づ
いて右指定を取消すこととなつた。そして証人P75の証言によつて真正に成立した
ものと認めることができる乙第一四号証および証人P8、同P75の各証言によると、
関西国貿促は同年三月一日会社に対し、「関西営業所職員の中の三名は口では日中
友好を唱えながら実際には日中友好の発展を妨害し日中関係を破壊している反中国
団体のいわゆる日中友好協会なるものに属し反中国活動を積極的に推進している立
場に立つているので当方会員および利用者に不安を与えている。日中友好の増進と
日中貿易促進の事業を推し進めている当方としては、このような状態にある関西営
業所に対して中国への渡航業務を委ねることはできないので、今後中国への渡航業
務取扱業者としての推薦指定を関西営業所に限つて取消す。」旨の通知をなし、こ
れが同月三日会社に到達した事実を認めることができる。
(二)右指定取消の関西営業所に及ぼした影響
 被申請人は、右指定取消により関西営業所を閉鎖せざるを得なくなつた旨主張す
るので、次に右指定取消が同営業所に及ぼした影響について検討する。
1 証人P8の証言によつて真正に成立したものと認めることができる乙第二七号証
および証人P3、同P8、同P76の各証言、申請人P1(第一回)本人尋問の結果を総
合すると、関西営業所が昭和四〇年六月一日の開設から昭和四二年三月二六日の閉
鎖までの間に取扱つた業務の内容は、まず旅客別にみて参観団客と渡航手続客とに
二分され、前者は六二名、後者は一六九名であるが、うち関西国貿促関係の客は前
者で一六名、後者で一四一名の合計一五七名で全体の約六八パーセントを占め、こ
れを営業利益の面からみると参観団客の方が渡航手続客より一人当りの利益率が約
五倍も多いので、参観団客より渡航手続客の方が遥かに多い関西国貿促関係の客に
ついてはその収益の全体の収益に対する割合は右六八パーセントをかなり下回る
が、それでも約五〇パーセントを占めており、しかも関西国貿促関係の客は毎年春
秋の広州交易会の参加者や経済視察団等でその需要は安定し、しかも漸次増加の傾
向にあつたものであるから、関西営業所にとつて関西国貿促関係の業務はかなり重
要な部分を占めていた事実を認めることができる。
2 証人P76の証言によつて真正に成立したものと認めることができる乙第一五号
証および証人P22、同P3、同P8、同P76の各証言を総合すると、関西国貿促の関
西営業所に対する右指定取消により、同営業所はまず既に取扱中の関西国貿促友好
商社部会の訪中代表団の渡航斡旋業務を取消され、取扱が決まつていた春季広州交
易会参加者の渡航斡旋業務も取消され、また取扱予定の天津科器展参観団、友好商
社部会参観団の各渡航斡旋業務も取扱不能となつたほか、昭和四二年度訪中業種別
参観団の編成計画も実施不能となり、その結果同営業所の営業に相当な影響があつ
た事実を認めることができる。
3 しかしながら、証人P3の証言および申請人P1(第一回)本人尋問の結果を総
合すると、関西営業所は関西方面において中国渡航の斡旋業務や参観団の募集編成
業務等を本店と地域を分けて担当する面もあつたが、他方中国渡航の手続について
は渡航者が関西以西に居住の場合、香港通過の査証は必ず大阪または神戸の英国領
事館でとらねばならず、また旅券申請書に添付した写真と本人との照合確認が居住
地の都道府県庁で行われるため、その各手続という全社的な業務の必要上関西方面
に営業所の設置を余儀なくされていた事情もあるのであつて、同営業所は仮にそれ
自体の集客という営業活動が十分に行われずそのことによる営業成績が赤字であつ
たとしても、ただそれだけでこれを廃止するというわけにはいかない事情にあつた
ものと認められる。もとより、右各疎明によると、同営業所自体の集客によつて営
業成績の向上に努力していた事実はこれを窺うに十分であるが、そうだからといつ
て全体の約五〇パーセントの収益をもたらす旅客を提供してきたにすぎない関西国
貿促の右指定取消によつて右事情にあつた同営業所を閉鎖しなければならない必然
性はとうてい考えられない。このことは、証人P76の証言によつて真正に成立した
ものと認めることができる乙第一六号証、同第一八、第一九号証および同証人の証
言によると、同営業所は開設以来欠損を続け開設時である昭和四〇年六月から昭和
四一年三月までの第一営業年度において会社全体で金四四四万九、三九八円の利益
を挙げたのに対し金二六七万六、九六七円の損失を計上し、同年四月から昭和四二
年三月までの第二営業年度において会社全体で金七万四、二五二円の利益を挙げた
のに対し金二五八万八、四八〇円(右は全損失金二九二万一、五四七円から同営業
所の閉鎖に伴う支出金三三万三、〇六七円を控除したもの)の損失を計上してお
り、したがつて同営業所自体としてはいかに開設初期の特殊事情にあつたとはい
え、会社全体の営業規模からすると相当大きな赤字を出しながらもなお会社全体の
利益のためにこれを存続維持している事実が認められること、および成立に争いの
ない甲第二四、第二五号証、同第二八号証の一ないし三、同第二九号証、証人P
77の証言によつて真正に成立したものと認めることができる甲第三〇号証および証
人P22、同P3(但し、後記信用しない部分を除く。)、同P77の各証言ならびに弁
論の全趣旨を総合すると、関西営業所の閉鎖後昭和四二年九月中旬同営業所の所長
P3が業務担当者となり日中観光という商号を以て本件会社発行の「新中国の旅」と
題するパンフレツトを店頭に備えて中国旅行斡旋業の営業活動を開始し、同年一一
月一七日商号を株式会社関西国際旅行社とする会社を設立登記して現在に至つてお
り、その設立の経緯実体等からすると同社は関西営業所の身代わり会社であるもの
と考えられ、またそのように関係者から見られることを避けられないのに、なお必
要上これを設立発足させている事実が認められること(乙第四九号証の一、二、証
人P3、同P8の各証言、被申請人代表者本人尋問の結果中、右認定に反する部分は
前顕各疎明に照らし信用できない。)等からしても裏付けられるものということが
できる。してみると、関西国貿促の右指定取消は関西営業所の営業にかなりの影響
を及ぼすものであつたことは事実であるとしても、なおこれを閉鎖しなければなら
ない程の影響があつたものとは認められない。
(三)右指定取消と関西営業所閉鎖との関係
 既に認定の(一)、(二)の事実に弁論の全趣旨を併わせて考えると、関西国貿
促の本件指定取消と関西営業所の閉鎖との関係について次の事実を認めることがで
きる。関西国貿促の友好商社部会の常任理事会では同じく正統本部を支持する本件
会社の従業員の中に日中友好協会に残留し日本共産党に属する申請人らのいること
を重視し、これを排除することを望んだが、会社の自主的な措置に期待していては
とうていその成果が挙がらないと考え、本件指定取消によつて会社に同営業所閉鎖
の口実を与え、更に右閉鎖によつて申請人らを排除することを期待した。関西国貿
促の友好商社部会の常任理事会は当時最も過激な正統本部支持者らが主導権を握
り、所属の友好商社はもとよりその他の友好企業に対しても正統本部の絶対的な支
持を要請し日中友好協会員ないし日本共産党員の排除を強力に求めていたため、会
社に対しても当然右要求はなされたのであるが、会社を説得して申請人ら排除の途
を講じさせるというような迂遠な方法をとることなく、極めて直截かつ高圧的に指
定取消を行い、会社をしてその意図を察知して善処することを期待した。そこで会
社は右指定取消によつて右友好商社部会常任理事会の意図を察知して関西営業所を
閉鎖しこれを理由とする申請人らの解雇を行つたものと認めることができる。この
ことは、特に既に認定の関西国貿促と正統本部、同本部と本件会社との関係からし
ても考えられるところであり、また証人P3、同P8、同P75の各証言によると、関
西国貿促が関西営業所に対し中国渡航の斡旋業務を扱わせるについては事実その都
度これを依頼しており、全般的な取扱業者としての指定などしていないものと認め
られるから、将来これをやめるとしても事実上その取扱をさせなければすむし、既
に取扱中のものについても個々にその取扱依頼を取消せばたるのに、既に認定のと
おり、ことさら指定取消の意思表示をしかも書面を送付してなしているところから
窺われる右取消の作為的性質を以てしても十分に考えられるところである。結局会
社は関西国貿促の右指定取消の意図を察知して関西営業所を閉鎖しこれを口実にし
て申請人らを解雇したもので、被申請人主張のように右指定取消によつてやむなく
同営業所を閉鎖し申請人らを解雇したものとは解せられない。そして証人P22、同
P8、同P75の各証言および被申請人代表者本人尋問の結果中、右認定に反し被申請
人の主張事実に副う部分は既に認定の(一)、(二)の事実および弁論の全趣旨に
照らし信用できない。
 そうだとすると、本件解雇の理由として既に認定した事実について、被申請人が
反対事実として主張した点はこれを認めることができず、結局右認定を覆えすこと
はできない。
五、以上、本件解雇は申請人らが日本共産党員として分裂後の日中友好協会を支持
し、正統本部を支持する会社と異なる政治的信条を有することを理由になされたも
のということができるところ、申請人らはこのような解雇は憲法一四条、労基法三
条に違反し公序良俗に反して無効である旨主張するのに対し、被申請人は仮に本件
解雇が申請人らの主張のとおりの理由によつてなされたものであるとしても、それ
は政治的意見即ち個々の具体的な政治問題についての意見ないし主張の相違によつ
てなされたものであり、右政治的意見は憲法一四条、労基法三条所定の信条には含
まれないので、これを理由に解雇しても右各法条に違反するものでなく、したがつ
て公序良俗違反の問題も起り得ないのであるから、右解雇は無効となるものではな
い旨主張するのでこの点について判断する。
(一)日中友好運動について日本共産党の見解に立つ日中友好協会を支持するか、
これと相対する見解に立つ正統本部を支持するかということが政治的信条の問題で
あることに疑いはない。そして政治的信条を実践的な志向の有無によつてこれを有
しない世界観即ち政治的基本信念と、これを有する政治的意見とに分けられるもの
であるとすれば、本件はまさしく優れて実践的な志向を有するものであつて政治的
意見の範囲に属するものである。しかして政治的信条が憲法一四条の信条に含まれ
るものであることはいうまでもないところ、被申請人は右政治的信条とは右にいう
政治的基本信念を指すものであつて政治的意見は含まれない旨主張するのである
が、このような解釈にはたやすく賛同できない。元来信条であつても宗教的倫理的
な信条についてはあくまで個人の内心の問題だけにとどまる場合も多いのであつて
必ずしも実践的な志向を有するものではないであろうが、政治的信条はこれとは本
質的に異なるのである。およそ政治的信条はそれが政治に関するものである以上、
政治そのものの性質からして当然に国の具体的な政治の方向について実践的な志向
を有するものであつて、これを有しない政治的信条などというものは、仮にあり得
るとしてもそれは極めて例外に属するものである。そもそも憲法一四条の信条がす
べて実践的な志向を持たない個人の内心の問題即ち宗教的倫理的な信念または世界
観、人生観といつたものに限られるというのであれば格別、それが政治的信条を含
むものであり、かつ右信条が原則として実践的な志向を有するものである以上、当
然右志向を有する政治的意見は憲法一四条の信条に含まれるものと解すべきもので
あり、右志向を有しない例外的なものに限つて憲法上の保障を与えようとすること
は著しく合理性を欠く見解といわねばならない。被申請人は政治的意見が憲法一四
条所定の信条に含まれそれによる差別的取扱が全面的に禁止されると解すると、特
定の政治的立場をとる憲法体制はその政治的立場そのものを暴力で破壊しようとす
る政治的意見をもつ者を自らの存立を防衛するために国の統治組織から排除するこ
とさえできなくなるのであつてこれは憲法の自殺を要求することにほかならず極め
て不条理である旨主張するのであるが、憲法一四条はたとえ被申請人主張のような
政治的意見をもつ者であつても、それが内心の問題としてとどまる限りこれに対し
て差別的取扱をすることを禁止しているのであつて、それを外部に発表したりまた
は実行に移すなどの行動がありそれによつて憲法またはその下に成立している統治
組織に明白かつ現在の危害を生ぜしめたときに限りその具体的言動をとらえて憲法
体制を防衛するために国の統治組織から排除できるものとしているものと解すべき
であるから、政治的意見が憲法一四条の信条に含まれそれによる差別的取扱が禁止
されると解しても、それによつて憲法の自殺を要求することにはならない。また被
申請人は憲法一四条の直接適用を受ける公務員関係を律する国家公務員法二七条お
よび地方公務員法一三条によると、信条と政治的意見とを区別し政治的意見につい
ては合理的な理由がある限りその差別を可能としており、右立法者の態度は憲法一
四条に適合し是認されるべきである旨主張するのであるが、憲法の解釈をその立法
の趣旨に従つてなし、これに則して法律の解釈をしてこそ正当であるところ、法律
の立法者の態度を以て憲法の解釈の指針とすることは論理の転倒であつて右主張は
この点からして既に承服できない。しかも両公務員法の右各条によると、「国民は
この法律の適用について、平等に取り扱われ、人種、信条、性格、社会的身分、門
地または政治的意見もしくは政治的所属関係によつて差別されてはならない」もの
とされ、ただ「日本国憲法またはその下に成立した政府を暴力で破壊することを主
張する政党その他の団体を結成しまたはこれに加入した者」については例外的に官
職につく能力を否定して差別的取扱を認めているのであるが(国家公務員法三八条
五号、地方公務員法一六条五号)、右例外の規定は政治的意見の一部について差別
的取扱を認めているものではなく、それが政治的意見としての範囲を超えて前記性
格の政党等を結成しまたはこれに加入するという具体的行動があつた場合にはじめ
てその団体等の性格からして行為者を国の統治組織に置くことは憲法またはその下
に成立している統治組織にとつて明白かつ現在の危害を生ぜしめた場合に当るもの
として排除を含む差別的取扱を認めているのであつて、未だ政治的意見の範囲内に
ある場合においてはその差別的取扱を許さないものであり、政治的意見も元来は信
条の中に包含されるベきところ、右意見に基づく言動によつて前記明白かつ現在の
危害を生ぜしめた場合の例外を定めているため、右意見が意見としての範囲内にあ
る場合における差別的取扱の禁止を注意的にしているもので、これを信条とは別個
のものとして規定しているものと解すベきでない。したがつて右各法条は政治的信
条について先に判示した解釈に何ら抵触するものではない。以上を要するに憲法一
四条の信条には国の具体的な政治の方向についての実践的な志向を有する政治的意
見をも含むものであり、同条が直接に適用される公務員関係においても右政治的意
見を有する者についてその意見の故に差別的取扱をすることを禁止しているものと
解することができる。
(二)労基法三条の規定は憲法一四条の定める法の下の平等の原理を私人間の関係
としての労働関係に適用したもので、そこに規定された信条は憲法一四条所定の信
条と同一で政治的意見を含むものであるから、使用者は労働者の政治的意見を理由
として差別的取扱をしてはならないものと解すベきである。被申請人は憲法一四条
の直接適用を受ける公務員関係を律する両公務員法にいう信条が政治的意見を含ま
ないとすれば、それより一層強い理由を以て私人間の関係を律する労基法三条所定
の信条には政治的意見を含まないと主張するが、両公務員法にいう信条に政治的意
見を含まないと解し得ないことは既に判示したとおりであるから右主張はその前提
を欠き正当でない。また仮にそのように解することができ、したがつて政治的意見
による差別的取扱が国または公共団体と公務員との間の特別権力関係においては例
外的にではあるが可能であるとしても、そのために私人間の労働関係においても政
治的意見と信条とは別であつて右意見による差別的取扱が可能であるということに
なるものとは考えられない。右特別権力関係における例外は、同関係では私人間の
労働関係と比ベて政治との関連性が強く、政治的意見がその関係秩序に及ぼす影響
も大きいものといえるので、それによる差別の必要を生ずる場合があるとしてその
合理性が肯認されているものと解するほかはないから、仮にそうであるとしても、
政治的意見の関係、秩序に及ぼす影響が特別権力関係の場合と比較して本質的に少
ない私人間の労働関係において同様に右意見による差別的取扱を認めることにはな
らず、ましてや差別的取扱がより可能だということにはならないものというベきで
ある。両公務員法によると政治的意見による差別的取扱を禁ずる旨の規定があり、
一方労基法三条には右規定のないことは被申請人主張のとおりであるが、既に
(一)で述ベたとおり、両公務員法については政治的意見が一定の具体的行動にな
つたとき差別的取扱が可能となる旨の例外規定があるところから一般的に政治的意
見による差別的取扱禁止を定める必要があつたものと解されることからすると、単
に右各法条の規定の形式からして私人間の労働関係において政治的意見が信条に含
まれず、したがつて右意見による差別的取扱が可能だということにはならない。ま
た私人間の労働関係において使用者と労働者との政治的意見が矛盾衝突した場合に
は双方の意見を尊重する方法として両者を隔離するほかはなく、そのためには労働
者を解雇せざるを得ないから、右意見を信条に含まれるものとして右解雇を不能に
することは正当でないとする被申請人の主張は、労使の法律関係の特殊性を無視し
当事者対等の市民法原理を以てことを決しようとする暴論であつて採用の限りでな
い。以上を要するに使用者が労働者の政治的意見を理由として差別的取扱をした場
合には、それは労基法三条に違反し、そして右差別的取扱には当然に解雇を含むも
のであるから、右意見によつて解雇したとすれば、それは同条に違反し、かつ民法
九〇条によつて無効ということができる。
 以上のとおりだとすると、被申請人が申請人らを分裂後の日中友好協会を支持す
るという理由で解雇したものであるとすれば、それは同人らの政治的信条を理由と
するもので、憲法一四条、労基法三条に違反し、公序良俗に反するものであるから
民法九〇条によつて無効というべきである。
六、被申請人は、仮に本件解雇が申請人らの政治的信条を理由とするものであつた
としても、なお右解雇は有効であるとしてその事由を抗弁として主張するのでこの
点について判断する。
(一)本件会社の存立の条件
 既に認定の三の(一)ないし(三)の事実に、証人P3、同P8の各証言および被
申請人代表者本人尋問の結果を併わせ考えると、会社は国交未回復の下で日中間の
友好を増進する方法として人事の交流を盛んにする目的の下に分裂前の日中友好協
会によつて設立された中国渡航の斡旋を主たる業務とする企業で、同国の国営企業
である中国国際旅行社総社との間に特殊な契約を締結してその業務を行つていたも
のであるから、実際に同国との間に友好関係を存続しなければ企業の存立を全うで
きず、したがつて同国側の提示した政治三原則、貿易三原則、政経不可分の原則を
承認しなければならず、日中友好協会の分裂後は前記諸原則を承認したうえ共同声
明の立場に立つて同国の支配的勢力と接触を続けている正統本部を支持し、同国と
の間に敵対関係を生じた日本共産党および分裂後の日中友好協会との関係を断つこ
とが会社の存立を維持するために必要であり、したがつて右日中友好に関する正統
本部の政治的イデオロギーの支持が存立の条件となつているものである事実を認め
ることができる。そして証人P3の証言および申請人P1(第一回)、同P2各本人尋
問の結果によると、現に、会社と同様に中国国際旅行社総社との間に特約を締結し
て中国渡航の斡旋業を経営していた株式会社富士国際旅行社が前記日中友好協会の
分裂に当り同協会に残留し日本共産党との関係を継続したため、昭和四二年四月頃
右中国国際旅行社総社から非友好的な行為があつたとの理由で特約を破棄され営業
の継続が不能となつている事実が認められるのであつて、このことからしても前記
認定の事実を裏付けることができる。申請人らは、会社の事業目的は中国渡航の斡
旋業務だけではなく、その他各種の業務を行うことになつているのであるから、仮
に日中友好に関し一定のイデオロギーをもたないと中国渡航の斡旋業務を行い得な
いとしても、それだけで企業の存立が脅かされるものとはいえない旨主張するので
判断するに、成立に争いのない甲第七号証によると、会社の定款に基づく事業目的
は、(1)海外から日本を訪問する者の旅行の斡旋、(2)海外および国内旅行の
斡旋、(3)人事往来に伴う施設の経営、(4)日本および中国事情紹介のための
文化センターの経営、(5)中国事情紹介のための出版、販売、(6)観光土産品
の輸出入、(7)保険の代理業、(8)以上各項に付帯する事業、となつているこ
と、また被申請人代表者本人尋問の結果および弁論の全趣旨によると、右各事業目
的については(2)のうちの中国旅行の斡旋しか行つていないこと等の事実をそれ
ぞれ認めることができるが、成立に争いのない甲第二七号証の一、二、乙第一七号
証の一、二、証人P76の証言によつて真正に成立したものと認めることができる乙
第一八、第一九号証および被申請人代表者本人尋問の結果ならびに弁論の全趣旨を
総合すると、会社はその設立の経緯からして日中両国間の旅行の斡旋が主な業務で
あるところ、中国から日本への旅行の斡旋は日本国政府が中国人の入国について厳
しい制限をするので業事上殆んど不能であるため、中国への旅行の斡旋が主な業務
となつており、その成否が会社の死命を制するものであつて、その余の業務につい
ては漸次手を延ばす計画ではあるものの創業後日が浅く経営の基礎が十分に固らな
い昨今これを拡充強化することなど全く不能で、いわんや前記中国旅行の斡旋業務
にとつて代わることなどとうてい考えられない状態にあつた事実を認めることがで
きるのであるから、会社としては中国旅行の斡旋業務ができないとなればその存立
を脅かされるものというべく、したがつて申請人らの主張はこれを認め得ない。
(二)申請人らと会社とのイデオロギーの離反
 既に認定の三の(一)および(五)の事実に、証人P8の証言、申請人P1(第一
回)、被申請人代表者各本人尋問の結果および弁論の全趣旨を併わせ考えると、申
請人らはP5を院長とする日中友好学院の卒業生で同人の推薦により日中友好に献身
する決意の下に会社に入社した者で、当時既に日中友好協会に入会しており、入社
したうえは会社の性格からしても反中国的言動をしたり、また反中国的団体を支持
したりすることなどは考えてもいなかつたものであるが、同協会の分裂後は会社と
異なり正統本部に所属せず、同協会に残留していること、同協会は日本共産党の対
中国路線に同調しているところ、同党は昭和四一年四月P20書記長の訪中帰国後同
国との間に対立状態を生じ、これと離反してその交流についても否定的態度をとり
同国から「日中人民の四つの敵」の一つとまできめつけられるに至り、したがつて
同協会も同国から厳しく敵視されていること、そして申請人らは同党にも所属して
いること等の事実を認めることができる。ところで日中友好なるものは、イデオロ
ギーとして正統本部、日中友好協会のいずれの主張するところが正当であるかはと
もかくとして、現実に中国の支配的勢力と交流をもつているのは正統本部であり、
右交流を基礎として本件会社の営業が成立している以上、申請人らが日本共産党に
属し日中友好協会に残留することは会社と相反する政治的イデオロギーをもちこれ
に基づく行動があつたものと認めることができる。
(三)イデオロギーの相違を理由とする解雇の成否
 被申請人は、特定のイデオロギーの承認、支持を存立の条件とする事業を営む自
由も当然に認められ、その事業にあつてはイデオロギーが存立の条件であるから、
その存立を保持するためには右イデオロギーを否定し破壊しようとするイデオロギ
ーを有する者をその事業から排除することが許されるところ、本件において会社は
前記のとおり日中友好に関し一定のイデオロギーを有しその承認、支持を存立の条
件とするものであるにもかかわらず、申請人らは右イデオロギーを否定し破壊しよ
うとするイデオロギーを有する者であるから、同人らを解雇することは許される旨
主張するので判断するに、憲法一四条および労基法三条によると、使用者が労働者
の信条即ちイデオロギーを以て差別的取扱をすることを禁じているものと解するこ
とができるから、イデオロギーを以て雇用契約の要素とすることはできず、したが
つて使用者が特定のイデオロギーの承認、支持を存立の条件とする事業を営むこと
は、右承認、支持が使用者側だけの問題であるならば格別、労働者に対してもこれ
を求めるものである以上、それは雇用契約の要素とせざるを得ないので、許されな
いものといわなければならない。しかしながら一方憲法二二条によると、国民は公
共の福祉に反しない限り営業の自由を認められているのであるから、公共の福祉に
反しないものである以上、特定のイデオロギーを存立の条件としかつ労働者に対し
てもその承認、支持を要求する事業を営むことも認められなければならないのであ
つて、この二つの相反する憲法上の要請を満たすためには、その事業が特定のイデ
オロギーと本質的に不可分であり、その承認、支持を存立の条件とし、しかも労働
者に対してそのイデオロギーの承認、支持を求めることが事業の本質からみて客観
的に妥当である場合に限つて、その存在を認められているものと解すべきである。
そしてそれはあくまで事業目的とイデオロギーとの本質的な不可分性にその特徴を
求められるべきもので、例えば政党や宗教団体または特定の宗教的政治的イデオロ
ギーの宣伝、布教を目的とする事業等にその例を見られるのであつて、イデオロギ
ーと事業目的との関連性は認められるが、それが本質的に不可分でない事業につい
てはそのイデオロギーを以て雇用契約の要素としてはならないものというべきであ
る。そしてイデオロギーの承認、支持を存立の条件とする事業において労働者に対
してもその承認、支持を求めるものである以上、それは前記のとおり憲法一四条、
労基法三条の例外をなすものであるところから、労働者の右資格要件は明確にすべ
きものであり、個別的雇用契約だけではなく労働協約か少くとも就業規則中の労働
条件を定めた部分にこれを明記しなければならないものと解する。これを本件につ
いてみるに、前記(一)で認定したとおり、会社は日中友好を目的とし、しかも特
殊な日中関係においてその交流を実現するためには政治三原則、貿易三原則、政経
不可分の原則を承認し共同声明を支持して日本共産党および分裂後の日中友好協会
との関係を断つべきであるとする政治的イデオロギーを承認、支持するもので、ま
た右承認、支持をその存立の条件としているものと解することができるが、ただ右
イデオロギーの承認、支持が事業の目的と本質的に不可分であるものとは認められ
ない。既に認定の三の(一)の事実に、被申請人代表者本人尋問の結果および弁論
の全趣旨を併わせ考えると、元来会社は分裂前の日中友好協会によつて日中間の人
事交流を円滑にし相互理解に基づく友好を目的として設立されたものであるが、同
協会より更に大衆的な組織として一党一派に偏せず政治的イデオロギーにかかわり
のないことを以てその建前とし、広範な各種株主の出資によつて設立されている営
利会社なのであつて、ただ設立当時日本共産党が日中友好とこれを目的とする人事
の交流に積極的であつたところから勢い同党員が多くその従業員として雇用されて
会社の事業方針に対する協力が事実上実現されていたものであるが、もとより従業
員の資格要件として特定の政治的イデオロギーの承認、支持や政党の支持、加入を
定めているのではなく、会社としては従業員とは一応かかわりなく、それ自体とし
て、また少くとも経営に関与する役員個人の問題として日中友好に関する一定の政
治的イデオロギーの承認、支持を決していたものと認めることができるのであるか
ら、申請人らが会社のイデオロギーと相反するイデオロギーを有する結果となつた
としても、そのことだけで申請人らを解雇することは許されないものというべきで
ある。したがつてこの点に関する被申請人の主張は理由がない。
(四)イデオロギーに基づく行為による解雇の成否
 次に被申請人は、仮に申請人らのイデオロギーが会社の存立の条件となつている
イデオロギーと相反しているだけでは同人らを解雇できないとしても、同人らには
右イデオロギーに基づく具体的な行動がありその行動によつて会社の存立に明白か
つ現在の危害を及ぼしたので同人らを解雇したものであるから、右解雇は有効であ
る旨主張するので判断するに、およそ憲法一四条および労基法三条に各所定の信条
中に実践的な志向を有する政治的意見を含むものであることは前記五の(一)、
(二)で判示したとおりであるが、右信条が信条として右各法条によつて差別的取
扱禁止の保障を受けるのはそれが内心の問題としてとどまる場合においてであつ
て、右信条に基づく具体的な行動があつた場合には既に右各法条による保障の範囲
外の問題として別個の観点から考慮されなくてはならず、右行動によつて事業に明
白かつ現在の危害を及ぼすべき具体的危険を発生させたときは、その行動によつて
解雇が可能となる場合もあるものということができる。
1 ところで既に六の(二)で認定のとおり、申請人らは日本共産党員であり、か
つ分裂後の日中友好協会に所属するものであるから、右政党および団体所属の事実
を以て同人らについてその政治的イデオロギーに基づく行動があつたものと認める
ことができるところ、被申請人は申請人らの右行動によつて関西国貿促その他日中
友好を建前とする商社や団体等からの中国渡航の斡旋依頼がなくなり会社の存立が
不能となることによつてその存立を脅かされる具体的危険が発生した旨主張するの
で判断するに、既に三の(三)で認定したとおり、会社はその方針として正統本部
の支持を決定しているだけでなく、その役員の構成からしても正統本部とはかなり
強度の密着性があるのであつて、このことからして同じく正統本部を支持しこれと
深い関係をもつ関西国貿促その他日中友好を建前とする商社、団体等が単なる従業
員にすぎない申請人らに前記政党や団体等に所属の行動があつたとしても、ただそ
れだけで会社への中国渡航の斡旋依頼を全面的にとりやめるなど同社の経営基盤を
揺がすような行動に出る恐れがあつたものとはとうてい考えられない。したがつて
申請人らの各行動によつて関西国貿促その他の団体、商社等との関係で会社の存立
に明白かつ現在の具体的危険が発生したものとは認められない。
2 次に、被申請人は、申請人らの存在によつて中国国際旅行社総社から渡航業務
取扱の特約を破棄される恐れが強く、そうなれば会社として中国渡航斡旋の業務を
行うことはできなくなり会社の存立は不能となる旨主張するので判断するに、既に
三の(三)で認定のとおり、会社は中国との国交未回復の状態において希望者が友
好的に同国を訪問できるよう同国の国営企業である中国国際旅行社総社と特約を結
び同国への旅行についての斡旋業務を行つている企業であるから、同社から右特約
を破棄されると業務の遂行は不能となりその存立を脅かされるものであるところ、
既に三の(一)ないし(三)および六の(一)で認定の事実によると、日中間の交
流は分裂前の日中友好協会と中日友好協会との間で昭和四一年一〇月一二日調印発
表された共同声明を支持することによつて可能で、右共同声明に反対し中国の現支
配勢力と敵対関係にある日本共産党および分裂後の日中友好協会に所属するときは
中国から反中国団体に属し反中国活動をするものとして、一切の関係を断たれる恐
れがあるものと認められ、また六の(一)で認定したとおり、現実に中国国際旅行
社総社との間に特約を締結して会社と同じく中国渡航の斡旋業を営んでいた株式会
社富士国際旅行社が日中友好協会の分裂に当り同協会に残留し日本共産党との関係
を継続したため右中国国際旅行社総社から非友好的行為があつたとの理由で特約を
破棄され営業が不能の状態となつた事実も認められるのであるから、本件会社にお
いても、会社自体が、またその経営権を掌握している主要役員らが分裂後の日中友
好協会に残留し日本共産党との関係を継続した場合には同じく中国国際旅行社総社
から特約を破棄されることは十分に考えられるのであるが、単なる末端の従業員に
すぎない申請人らが同党員であり同協会に残留するからといつて、そのことだけで
同社から特約を破棄される状況にあつたものとは考えられない。富士国際旅行社の
場合はまさに経営首脳部が日本共産党員として日中友好協会に残留し会社そのもの
が同党および同協会のイデオロギーを支持した場合に当るものであるから、本件の
場合とは事案の内容に本質的な相違があるものといわねばならない。結局申請人ら
の前記行動を以てしては、中国国際旅行社総社との関係においても、具体的な危険
は発生していないものと認めることができる。よつてこの点に関する被申請人の主
張は理由がない。
 してみると、被申請人が申請人らの日本共産党および日中友好協会所属の事実に
よつて会社の存立に具体的危険が発生したとの事実を前提とする主張はこれを認め
ることができない。
七、以上、被申請人の抗弁はすべて理由がなく、申請人らの主張について既に認定
したところによると、会社が申請人らに対してなした本件解雇は同人らの政治的信
条を理由とするもので無効というべきであるから、申請人らは昭和四二年三月二七
日以降においても会社の従業員としての地位を有すること、したがつてその就労を
拒否されることにより会社から同日以降賃金の支払を受けるべき権利を有すること
が一応認められるところ、成立に争いのない甲第四、第五号証の各一ないし三によ
ると、申請人らの本件解雇前三カ月間に支払われた賃金の合計額は、申請人P1につ
き金七万七、一九六円、申請人P2につき金七万六、五二四円であるから、その間申
請人らが支払を受けた賃金の一カ月当りの平均額は、申請人P1につき金二万五、七
三二円、申請人P2につき金二万五、五〇八円であること、および右賃金は毎月二〇
日締切で計算されること等の事実を認めることができ、右賃金が毎月二五日に支払
われていたことは当事者間に争いがないから、申請人らは被申請人から昭和四二年
三月二七日以降それぞれ一カ月右各金額の割合による賃金を前月二一日から当月二
〇日までの分につき毎月二五日に支払を受けるべき権利を有するものと一応認める
ことができる。申請人らは右賃金の平均月額を算出するにつき解雇前六カ月を対象
とすべき旨主張するが、解雇当時に妥当する賃金の平均月額を算出するについて余
り長期間を対象にすることは適当でなく、労基法一二条の趣旨を参酌して解雇前三
カ月を対象とすべきものと考えるので、右主張は採用しない。ところで申請人P
1(第二回)本人尋問の結果および弁論の全趣旨によると、申請人らはいずれも会社
から受ける賃金を唯一の収入として生活してきた者で、本件解雇後結婚し、配偶者
においていずれもなにがしかの収入は得ているがそれによつて申請人らの生活まで
支えるに足るものではなく、その他には資産収入もないので、本件解雇によつて賃
金が支払われないことにより申請人らおよびその結婚後は一家の生活に著しい支障
を生じ、本案判決の確定に至るまでの間このままの状態で推移すると回復し難い損
害を生ずる恐れがあるものと一応認められるので、本案判決確定に至るまで申請人
らが会社の従業員としての地位にあることを仮に定め、会社に対し前記賃金の仮払
を命ずる必要があるものということができる。
八、そうだとすると、被申請人は、本案判決確定に至るまで、申請人らをいずれも
その従業員として仮に取扱い、かつ昭和四二年三月二七日から申請人P1に対しては
一カ月金二万五、七三二円の、申請人P2に対しては一カ月金二万五、五〇八円の各
割合による金員を、いずれも前月二一日から当月二〇日までの分につき毎月二五日
限り仮に支払うべきものであるから、申請人らの本件申請については、右限度にお
いてはこれを正当とし保証を立てさせないで認容すべく、その余は失当として却下
すべきものとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法九二条、八九条を適用して主
文のとおり判決する。
(裁判官 高田政彦 大橋英夫 川畑耕平)

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激動の時代に
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残り応募人数(2019年5月1日現在)
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