弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件控訴を棄却する。
     控訴費用は控訴人らの負担とする。
         事    実
 控訴代理人は原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二
審とも被控訴人の負担とする。との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を
求めた。
 当事者双方の事実上の陳述と証拠関係は、
 控訴代理人において控訴人日本不動産株式会社、同A両名の主張として、
 一、 訴外B(原審脱退被告)は昭和三七年五月二日控訴人Cとの間に極度額金
八、〇〇〇万円の継続的金銭貸付契約を結びその担保として本件不動産に付同日売
買予約による所有権移転請求権保全の仮登記並に停止条件付賃借権設定の仮登記を
なしたるうえ、同日金五、〇〇〇万円を貸与した。右五、〇〇〇万円は昭和三七年
五月一二日金三、〇〇〇万円、同月一四日金五、〇〇〇万円を夫々控訴人Cが被控
訴人から借入れた金員を以て弁済を受けたけれども訴外Bは前記継続的金銭貸付契
約に基き同年六月二日控訴人Cに対し改めて金五、七〇〇万円を貸与しているので
右訴外人の所有権移転請求権保全仮登記は金五、〇〇〇万円の返済により抹消すべ
きではなく継続的金銭貸付契約が解除せられるまで有効に存続する。加之後に貸付
けられた金五、七〇〇万円は返済された事実がないから仮登記権利者訴外Bの地位
を承継した控訴人日本不動産株式会社、同Aの各登記は有効であつて被控訴人の請
求は理由がない。
 二、 仮に右仮登記が返済により抹消すべきもので失効したとしても当事者は六
月二日の五、七〇〇万円の貸付に際し従前の仮登記を抹消し新たに仮登記手続をな
す手数を省略することに合意し従前の仮登記を後日の貸付金の担保として生かした
ものであり被控訴人に於てその間に登記上何ら権利保全の行為もない以上被控訴人
の請求は失当であると述べ、
 被控訴代理人において右控訴人らの各主張事実を否認し、本件不動産の売買代金
は八、〇〇〇万円であつたが契約書には一億円と表示したものであると述べ控訴代
理人は右主張を争わないと述べ、
 証拠として
 被控訴代理人は甲第六、七号証を提出し、控訴代理人は当審証人Dの証言を援用
し甲第六、七号証の成立を認めた、外は原判決の事実摘示と同一であるから之を引
用する。
         理    由
 当裁判所も被控訴人の請求を正当と認める。その理由は控訴人の当審における主
張に対し次の通り判断を附加する外は原判決の理由と同一であるからこれを引用す
る。
 一、 控訴人日本不動産株式会社、同Aはその主張として訴外B(原審脱退被
告)は昭和三七年五月二日控訴人Cとの間に極度額金八、〇〇〇万円の継続的金銭
貸付契約を結びその担保として本件不動産上に売買予約による所有権移転請求権保
全仮登記並に停止条件付賃借権設定仮登記をなした。従つて右契約により同日貸付
けた五、〇〇〇万円は同月一二日金三、〇〇〇万円、同月一四日金五、〇〇〇万円
の二度に夫々弁済を受けたけれども継続的金銭貸付契約に基き同年六月二日更に金
五、七〇〇万円を貸付け未だその返済を受けていないから訴外Bが所有権移転請求
権保全仮登記等を抹消しなかつたのは当然であるというが右主張に吻合する当審証
人Dの証言部分は同証人の控訴人Cから八、〇〇〇万円の返済を受けると共に登記
抹消に必要な書類を交付したという証言と矛盾するのみならず原審証人E、同F、
原審における控訴人Cの本人尋問の結果に照し到底信用し難く乙第一号証その他控
訴人の全立証によるも控訴人Cと訴外Bとの間に昭和三七年五月二日控訴人主張の
ような継続的金銭貸借契約が締結された事実を認めるに足る証拠がないので右主張
は採用出来ない。
 二、 本件不動産につき訴外Bのために原判決別紙目録(一)、(四)記載の通
りの所有権移転請求権保全仮登記及び賃借権設定仮登記の存すること、右の各登記
は右Bが昭和三七年五月二日控訴人Cに金八、〇〇〇万円を貸与した際その担保と
して本件不動産につき売買予約並びに停止条件付賃貸借契約を締結したことによる
ものであること、及び控訴人CのBに対する右借入金債務は同年五月一二日同控訴
人が被控訴人に売渡した本件不動産の代金として同日及び同月一四日の二回に受領
した合計金八、〇〇〇万円をその頃Bに支払つたことにより全額弁済となつたこと
はいずれもさきに引用した原判決理由に認定する通りである。そうすれば右弁済に
よりBの本件不動産に対する担保権は消滅し同人名義の前記各仮登記は無効に帰し
たものというべきである。控訴人らは、同年六月二日Bから、控訴人Cに金五、七
〇〇万円を貸付けた際従前の仮登記を抹消して新たな仮登記手続をする手数を省略
し前記の各仮登記を右六月二日の貸付金五、七〇〇万円の担保として生かすことを
両当事者において合意したから右の各仮登記は右金五、七〇〇万円の<要旨>債権の
担保として有効であるというけれども、債権担保のためになされた所有権移転請求
権保全の仮登記及び賃借権設定の仮登記が被担保債権の弁済により無効とな
つた後にその登記を他の債権担保の為に利用する旨を当事者間で合意しても、その
間に当該登記の目的である不動産につき所有権を取得した第三者に対する関係にお
いてはかかる合意は無効というべく、この場合右第三者の権利取得につき登記上権
利保全行為がその合意前になされていたかどうかは問うところでないと解するのが
相当である。本件において、被控訴人は昭和三七年五月一二日控訴人Cから本件不
動産を買受けその所有権を取得したことはさきに認定した通りであるから、たとい
その後である同年六月二日に控訴人ら主張の合意が当事者間に成立したとしても被
控訴人に対しその効力を生ずるに由なく、この点に関する控訴人らの主張は採用で
きな。
 三、 よつて被控訴人の請求を認容した原判決は相当であつて本件控訴は理由が
ないから民事訴訟法第三八四条に則り棄却し控訴費用の負担に付同法第九五条第八
九条第九三条を適用して主文の通り判決する。
 (裁判長裁判官 岸上康夫 裁判官 小野沢龍雄 裁判官 室伏壮一郎)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛