弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役一年以上一年二月以下に処する。
         理    由
 富山地方裁判所高岡支部は、平成七年二月三日、被告人に対する道路交通法違反、
業務上過失致死傷被告事件について、「第一酒気を帯び、呼気一リットルにつき〇・
二五ミリグラム以上のアルコールを身体に保有する状態で、平成六年四月一六日、
富山県東砺波郡a町内の道路において、普通乗用自動車を運転した。第二 前記日
時ころ、業務として前記車両を運転し、前記場所先の交通整理の行われていない交
差点を直進するに当たり、当時同交差点に設置された対面信号機が赤色の灯火を点
滅させていたのに、同交差点の停止位置で一時停止せず、かつ、左方道路の安全を
確認しないまま時速約八〇キロメートルに加速して同交差点に進入した過失により、
折から左方道路から進行してきたA(当時四二歳)運転の普通乗用自動車の右側部
に自車前部を衝突させて、その衝撃により自車及びA運転車両をそれぞれ田に転落
させ、よって、同人に全身打撲の傷害を負わせ、翌日、同人を右傷害に起因する外
傷性ショックにより死亡させ、同人運転車両の同乗者B(当時三一歳)に対し加療
約四六日間を要する脳挫傷等の、同C(当時四歳)に対し加療約一六日間を要する
顔面切創等の、自車の同乗者D(当時一七歳)に対し加療約四八日間を要する右足
関節内顆部骨折等の各傷害を負わせた。」旨の事実及び被告人が昭和五〇年一〇月
一〇日生まれであることを認定した上、第一の行為につき、道路交通法一一九条一
項七号の二、六五条一項、同法施行令四四条の三を、第二の行為につき、被害者ご
とにそれぞれ刑法二一一条前段を適用し、第二の業務上過失致死傷にっき、同法五
四条一項前段、一〇条により一罪として犯情の最も重い被害者Aに対する業務上過
失致死罪の刑で処断し、各所定刑中いずれも懲役刑を選択し、同法四五条前段、四
七条、一〇条により重い第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で処断すべ
きものとし、その他の関係法令を適用して、「被告人を懲役一年二月に処する。」
との判決を言い渡し、この判決は、平成七年二月一八日確定した。
 しかしながら、少年法五二条によると、二〇歳に満たない少年に対して長期三年
以上の有期の懲役をもって処断すべきときは、刑の執行猶予の言渡しをしない限り、
短期は五年、長期は一〇年を超えない範囲において、不定期刑を言い渡すべきであ
ることが明らかであるから、原判決が、刑の執行猶予の言渡しをしないのに、被告
人を懲役一年二月の定期刑に処したのは、法令に違反したものというべきである。
しかも、本件において新たに言い渡すべき刑は、原判決の言い渡した刑などを考慮
すると、懲役一年以上一年二月以下の不定期刑とするのが相当であって、原判決の
刑より利益なことが法律上明白である。
 よって、刑訴法四五八条一号により、原判決を破棄し、被告事件について更に判
決することとする。
 原判決の確定した事実に法令を適用すると、本件については、平成七年法律第九
一号附則二条一項本文により同法による改正前の刑法を適用すべきところ、被告人
の第一の行為は、道路交通法一一九条一項七号の二、六五条一項、同法施行令四四
条の三に、第二の行為は、被害者ごとに改正前の刑法二一一条前段に各該当するが、
第二の業務上過失致死傷は一個の行為で四個の罪名に触れる場合であるから、同法
五四条一項前段、一〇条により一罪として犯情の最も重いAに対する業務上過失致
死罪の刑で処断することとし、各所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は同法四
五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により重い第二の罪の刑に
同法四七条ただし書の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で、少年法五二条一
項により、被告人を懲役一年以上一年二月以下に処し、原審の訴訟費用は、刑訴法
一八一条一項ただし書を適用して被告人に負担させないこととし、裁判官全員一致
の意見で、主文のとおり判決する。
 検察官平本喜禄 公判出席
  平成七年六月一九日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    中   島   敏 次 郎
            裁判官    大   西   勝   也
            裁判官    根   岸   重   治
            裁判官    河   合   伸   一

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