弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原決定を破棄する。
     本件を東京地方裁判所に差戻す。
         理    由
 本件再抗告の理由は別紙記載のとおりである。
 ところで、記録によると、抗告人が相手方を被申立人として本件訴訟引受の申立
をした渋谷簡易裁判所昭和三九年(ハ)第二三三号請求異議事件の訴の要旨は、A
と抗告人間の渋谷簡易裁判所昭和三四年(イ)第二〇七号家屋明渡和解事件につい
て同年一〇月九日、抗告人はA所有の本件建物を不法占有中であることを認め昭和
三四年一一月一五日限りこれを同人に明渡す等の旨の和解が成立したが、その後A
は訴外Bに本件建物を売渡し、同人は更にこれを抗告人に売渡したので、Aは既に
無権利者であるから、同人を被告として右和解調書に基く執行不許の裁判を求める
というのであり、本件訴訟引受申立の要旨は、相手方は本件訴訟提起後である昭和
三九年六月一三日右和解調書につき承継執行文の付与を受けたから相手方に対して
訴訟の引受を命ずる旨の裁判を求めるというのである。これに対し、原決定は、A
は本件建物をCに売渡し、相手方は昭和三九年五月四日本件建物をCから買受け、
同月一九日Aから中間省略による所有権移転登記を受けたとの事実を認定した上、
相手方は本件建物の所有権と共に抗告人に対する明渡請求権をも譲受けたものであ
り、所有権移転の対抗要件をそなえることによつて右明渡請求権を抗告人に対抗し
得ることとなつたのであるから、訴訟の目的たる債務の承継も、承継執行文付与の
有無にかかわりなく、そのときに生じたのであつて、本件訴訟はその後である昭和
三九年五月二六日に提起されたものであるから、本件訴訟引受申立は失当であると
して、これを却下した第一審裁判に対する抗告人の抗告を棄却したものである。
 しかし、請求異議の訴は債務名義が存する場合に、実体上の理由により債務名義
に表示された請求権が存しないことを主張して形式上存する債務名義の執行力の排
除を求める訴であるから、承継執行文の付与がない限り債務名義に債権者として表
示された者を被告とし、債権者の地位に承継があつたことを理由とする承継執行<要
旨>文の付与があつたときはその承継人を被告とするのが本則であることはいうまで
もないところである。したがつて、債務名義に表示された請求権の譲渡がな
されたが承継執行文の付与がなされないうちに、債務名義に表示された債権者を被
告として請求異議の訴を提起した後、承継執行文の付与があつたときは、その承継
人を被申立人として訴訟引受の申立をすることは当然許されるものと解するのが相
当である。もつとも、未だ承継執行文の付与はなされていなくとも、債務名義に表
示された請求権が第三者に譲渡されて対抗要件が具備された場合には、その譲受人
が何時承継執行文の付与を受けて強制執行をなすかわからないのであるから、債務
者としては右譲受人を被告として訴を提起することも許されるものと解すべきであ
り(昭和七年一一月三〇日大審院判決、民集一一巻二一号二二一六頁参照)、更
に、債務名義に表示された債権者を被告として訴を提起した後、右請求権が第三者
に譲渡されて対抗要件が具備された場合には、その譲受人が承継執行文の付与を受
ける以前でも、原告は訴訟引受の申立をすることができるものと解することができ
るが、しかし、その故に、請求権の譲渡が行われ対抗要件が具備された後は譲渡人
すなわち債務名義に表示された債権者を被告として訴を提起することができないと
解したり、また、かかる訴を提起した後譲受人が承継執行文の付与を受けた場合に
は訴訟引受の申立をすることが許されないと解することはできない。何となれば、
債務名義に表示された請求権が第三者に譲渡された後においても承継執行文の付与
があるまでは、譲渡人が第三者に対する請求権の譲渡を争い、又はその回復を得
て、或いは単に不当に、強制執行をなすおそれがないとはいえないから、債務者が
これに対処するため提起した訴は適法であると解すべきことは当然であり、またそ
の後承継執行文の付与があつて、債務者が右訴をそのまま維持する必要がなくなつ
たときに、承継人を被告として改めて別訴を提起することを要するものとすること
は、債務者に酷であり訴訟経済にも反するからである。(なお、請求異議の訴提起
前に請求権の譲渡がなされ対抗要件が具備されたが未だ承継執行文の付与がなされ
ない場合には、債務者は訴を提起するにあたり、譲渡人を被告とすることもできれ
ば、譲受人を被告とすることもでき、更に両者を共同被告とすることもできるもの
と解する。)
 なお、請求異議の訴においては、債務名義に債権者として表示された者とその承
継人とでは、これに対する異議の理由が共通である場合もあれば異る場合もあり、
本件訴訟の異議の理由は、被告であるAは既に本件建物の所有者ではなくなつたと
の主張に基くものであるから、抗告人はこれをそのまま相手方に対する異議の理由
となし得るとは考えられないのであるが、一般に訴訟引受があつた場合被告と訴訟
引受人とについて請求原因がすべて同一であるとは限らないのであるし、民事訴訟
法第二三二条に反しない限り異議の理由の追加変更が許されるものと解すべきであ
るから、Aに対する異議の理由が相手方に対する異議の理由とならないことをもつ
て、本件訴訟引受の申立を排斥する理由とすることもできない。
 してみれば、本件訴訟引受の申立は、抗告人主張のとおり、訴提起後に承継執行
文の付与がなされたものとすれば、その一事によつて許さるべきものと認むべきで
あるにも拘らず、原審はその点に触れることなく、相手方は抗告人が本件訴訟を提
起する以前に本件債務名義に表示された請求権を譲受け対抗要件を具備したとの理
由によつて本件訴訟引受の申立は失当であるとしたのであるから、原決定には決定
に影響を及ぼすべき法令の解釈適用の誤があるものといわなければならない。
 よつて本件再抗告は理由があるから、民事訴訟法第四一四条第四一三条第四〇七
条に則り、主文のとおり決定する。
 (裁判長裁判官 牛山要 裁判官 福島逸雄 裁判官 今村三郎)

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