弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を取消す。
     被控訴人の請求を棄却する。
     訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
         事    実
 控訴代理人は主文と同旨の判決をもとめ、被控訴代理人は控訴棄却の判決をもと
めた。
 当事者双方の事実上の主張、証拠の提出、援用および書証の認否は左記のほか原
判決事実摘示と同一(ただし、原判決二枚目表五行目に「毛色」とある誤記につき
「毛糸」と訂正)であるから、ここにこれを引用する。
 一、 控訴代理人は、甲第五ないし第八号証はいずれも不知と述べた。
 二、 被控訴代理人は、甲第七、第八号証を提出し、乙第一、第三、第四号証の
成立を認め、その余の乙号各証は不知と述べた。
         理    由
 本件毛糸売買契約の当事者につき、被控訴人は、被控訴人が売主本人であると主
張し、控訴人はこれを争うので先ずこの点について判断する。
 原審証人A、同B、同Cの各証言、原審における控訴会社代表者本人尋問の結
果、およびこれにより成立を認める乙第五号証を総合すれば、本件ラムアンゴラ毛
糸八二四キロ六二は、もと豊橋市a町字bc番地に本店を有する訴外白井通商株式
会社の所有に属していたが、右訴外会社が被控訴人よりの借受金の担保のため、被
控訴人に対し譲渡担保に供したものであるが、右訴外会社の倒産後、被控訴人にお
いて換価処分しようとしたが、被控訴人は金融業者で毛糸の売買には携わらず換価
困難であつたので、被控訴人より右訴外会社代表者Aにこれが売却方を依頼し、右
Aより更に同会社代表者Bにその旨連絡した結果、同人と控訴会社代表者Dとの間
に、右毛糸を代金四〇万〇五三二円で売買する旨の売買契約が締結されたこと、右
契約締結当時、右A、Bにおいて本件毛糸が被控訴人に譲渡担保に供せられていた
ことを知つていたことが認められ、右認定に反する証拠はない。
 以上認定の事実関係からすれば、右訴外白井通商株式会社代表者Bは被控訴人の
委託に基づき、被控訴人のためにする意思をもつて(明示の有無は別として)本件
売買契約を締結したものすなわち、右訴外会社代表者Bと被控訴人との間には、本
件売買につき代理関係が存在しその代理行為として本件売買契約が締結されたもの
と認むべきである。
 ところで代理人のなした法律行為が本人に対してその効力を生ずるためには、代
理人が本人のためにすることを示し、または相手方が本人のためにすることを知り
又は知ることを得べかりし場合であることを要する(民法第九九条第一項、第一〇
〇条但書)のであるが、右訴外会社代表者Bが右売買契約の締結に当り、被控訴人
の代理人であることを控訴人に表示したかどうかについては、原審における証人B
の証言によるもこれを肯定することはできず、原審における控訴会社代表者本人尋
問の結果よりすれば、これを表示しなかつたものと認めるのが相当である。しから
ば控訴人において、右訴外会社代表者Bの右代理行為につき、それが本人たる被控
訴人のためにするものなることを知りまたは知りうべき事情があつたかどうかにつ
いて考えてみるに、まず控訴人において右代理権の存在を知つていたことを認むべ
き証拠はないし、また、前段認定の諸事実に、原審における控訴会社代表者本人尋
問の結果により認められる控訴人は本件売買以前から右訴外会社とは毛糸の取引が
あつたけれども被控訴人とは全然なんらの取引関係もなかつた事実とをあわせ考え
れば、控訴人において、本件売買契約当時、右訴外会社代表者Bが本人たる被控訴
人のためにしたことは到底これを知り得べき事情でなかつたものと断定せざるを得
ない。
 ところで、被控訴人が金融業を目的とする民事会社であることは当事者間に争い
がなく、本件毛糸の換価が被控訴会社の営業に属する貸金の担保にとつた担保品の
換価処分行為であることは前段認定のとおりであるから、本件売買は被控訴人のた
めに付属的商行為(商法第五〇三条)となる行為であるから、右訴外会社代表者B
が本人のためにすることを明示せず、被控訴人のため控訴人となした商行為たる本
件売買契約が商法第五〇四条本文の解釈上、本人たる被控訴人に対してその効力を
生ずるかどうかについて検討してみよう。
 <要旨>おもうに、商法第五〇四条本文の規定は、企業主体の経営活動がその組織
の下にある補助者の行為により大量的継続的に展開される場合は、これに含
まれる個々の行為につき一々その主体(本人)の名を表示することはむしろ煩雑で
取引の敏活を害するおそれがあり、また相手方も行為の主体(本人)を認識するの
に困難がなくその必要のないのを通常とするというような事情を考慮して民法第一
〇〇条の規定を修正したものと解せられる。したがつて右商法第五〇四条本文が適
用されるのは相手方において代理人が本人のために行為したことを知りうべかりし
場合にかぎるのであつて、形式的に商行為であるというだけで軽々に商法第五〇四
条本文の規定を適用することは許されないものといわねばならない。もつともかよ
うに解することは民法第一〇〇条但書との関連において右商法第五〇四条がその特
別規定たる意義を失わしめる嫌がないではないがこの規定の趣旨は民法の規定に対
し単に立証責任の転換をはかつたものにすぎず、すなわち商法が民法のいわゆる顕
名主義に対し非顕名主義を採ることから、代理の効果を否認する相手方において、
代理人が本人のために行為したことを知り又は知りうべかりし事情になかつたこと
をみずから立証しなければならないものとするにあると解すべきである。
 そこで本件について考えてみると、訴外会社代表者Bは被控訴人の代理人として
本件毛糸を控訴人に売却したのではあるが、代理関係の存在を認めうべき事情又は
外観が全く存在せず相手方たる控訴人において右訴外会社代表者Bが被控訴人のた
めに行為したことは到底これを知り得べきでなかつたことは前段説示のとおりであ
るから、前記のごとき商法第五〇四条本文の規定の趣旨からみて、本件はその適用
を受けるべき場合ではなく、従つて右訴外会社代表者Bが被控訴人の代理人として
なした本件毛糸の売買契約は本人たる被控訴人に対してその効力を生じないものと
いわねばならない。
 してみると、被控訴人は本件売買契約に基づく代金債権を取得していないから、
右債権を有することを前提とする被控訴人の請求はその余の点について判断するま
でもなく失当であるからこれを棄却すべきである。
 よつて、これと結論を異にした原判決は失当であつて、本件控訴は理由があるか
ら、原判決を取消し、被控訴人の本訴請求を棄却すべきものとし、民事訴訟法第三
八六条第九六条第八九条を適用して主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 成田薫 裁判官 神谷敏夫 裁判官 辻下文雄)

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