弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人らの負担とする。
         理    由
 上告代理人山村利宰平の上告理由第一点について。
 しかし、投票管理者が当該選挙の候補者の長男であつて、しかも投票立会人の意
見を聞くことなく、自己の一存で代理投票の補助者を選任するとともに、自らもそ
の補助者となつて代理投票を行つた場合は、その代理投票が果して自由公正に行わ
れたかどうかにつき著しく他人の疑惑を招き、選挙法の基本理念たる投票の自由公
正の原則に背くものであるから、かかる代理投票は無効投票といわざるを得ないと
する所論原判示は、その確定した事実関係の下において正当として是認されないわ
けのものではない。原判決は所論の公職選挙法六条の違背を理由にしているのでは
なく、所論はひつきょう独自の見解であるから採るを得ない。
 同第二点について。
 しかし所論指摘の原判示は、「判示前段の如き場合は、形の上では、投票管理者
を欠いたことにはなるが、実際には、同投票所の当時の実情は、判示後段の如き状
況にあつたことが認められるから、投票管理者の職務を遂行する上に特段の支障を
生ずべき事情が見受けられなかつた」との趣旨を判示したものであるから、その間
前後矛盾等所論のそごは認められない。
 また、投票管理者の職務代理者を選任する権限は、もともと選挙管理委員会にあ
るのであつて、出先きの投票管理者にあるものでないことは所論のとおりであるが、
所論指摘の原判示は、本件投票所における投票管理者が自ら代理投票の補助者とな
るにあたり、職務代理者(選挙管理委員会においてあらかじめ選任しておいた職務
代理者)に、現実に職務の代行を命じないで、補助事務に従事した点を非難したの
にとどまり、投票管理者自らが所論職務代理者を選任する権限がある旨を判示した
ものでないこと、判文上明らかであるから、原判決には所論法令誤解の違法がある
とは認められない。
 同第三点について。
 原判決が所論六票の代理投票を無効と判断したのは、ただ単に投票管理者が自ら
その補助者になつて代理投票を行つたからというのではなく、投票管理者が候補者
の長男であつて、しかも投票立会人の意見を聞かず、自己の一存で代理投票の補助
者を選任するとともに、自らもその補助者の一人となつて代理投票を行つた点を重
視して無効と判断したものに外ならないことは判文上おのずから明らかである。
 原判決の右の如き判断が正当として是認さるべきであることは前叙のとおりであ
り、右の如き判断をしたからといつて、何ら所論投票の秘密事項を犯したことには
ならないのであるから、違憲の主張はその前提を欠き採るを得ない。
 また論旨は、原判決が右六票を無効にしたのは、これら代理投票が、それを補助
した投票補助者が候補者の長男であつた関係から、すべて父候補者の得票に帰属し
たであろうとの疑いに由るものと解されるから、もし果してそうであるならば、こ
れを右父候補の得票から差引けば足りるのであつて、さらに上告人らにまで及ぼす
べきではない旨主張するが、単なる疑いを以て特定候補者の得票を加減すべきもの
でないことは多くいうをまたないところであるばかりでなく、右投票が右父候補の
得票に悉く帰属したものであるとはもともと原審の認定していないところである。
 されば所論はひつきょう原審の認定しない事実を前提とするに帰するから採るを
得ない。
 同第四点について。
 しかし、選挙関係の争訟は、選挙の公正を期するためのものであるから、投票の
無効がよしんば投票管理者らの不注意や違法手続に基因するものであつても、その
結果が所論善意無過失な当選人にまで及び、それら当選人が不測の不利益を蒙むる
ことがあつても、やむを得ないとせざるを得ない。
 そして右投票が、もし真に公正に行使されていたとすれば、右投票は、当該選挙
の立候補者のうち何人かの得票に加えられ、何人かの得票から差引かるべき筋合の
ものであるから、かかる場合の当選の効力を決定するにつき、判示の如き方法によ
るべきものとした原判決は正当として是認せざるを得ない。
 所論は右と相容れない独自の見解に立つて原判決の違法をいうものであるから採
るを得ない。
 同第五点について。
 しかし選挙人の善意無過失にした投票が、所論投票管理者らの違法手続の故に無
効になればとて、それと所論表現の自由ないし良心の自由とはなんらの関係がない
のであるから、所論憲法三八条、一九条違反の主張はその前提を欠くものであり、
採るを得ない。
 同第六点について。
 投票管理者や投票立会人を代理投票の補助者として選任することを禁止する規定
のないことは所論のとおりであるが、投票管理者が候補者の長男であり(そのこと
自体は違法でないが)、しかも投票立会人の意見を聞かず、自己の一存で投票立会
人を代理投票の補助者に選任し、自らもその補助者の一人となつて代理投票を行う
が如きことは、著しく他人の疑惑を招き、投票の自由公正を阻害するものであるか
ら無効であるとした原判決の首肯するに足るものであることは前叙のとおりである。
 しかし右の如き事情によつて無効とされる投票は、代理投票の違法管理の故に選
挙人の真意が正確に表現されていることを保障しがたい関係にあるものとして無効
とされるのであるから、所論公職選挙法二〇九条二項にいわゆる潜在無効投票に該
当しないものというべきである。
 さればこれと同趣旨の判断をした原判決はその確定した事実関係の下において正
当として是認せざるを得ない。
 論旨はひつきょう独自の見解に出ずるものであるから採るを得ない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、
主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    高   木   常   七
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    下 飯 坂   潤   夫

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