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平成15年(ワ)第28575号特許権に基づく損害賠償請求権等不存在確認請求事

口頭弁論終結日 平成16年9月16日
判    決
原       告     株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ
同訴訟代理人弁護士     大野聖二
同             市橋智峰
同補佐人弁理士       森田耕司
同             田中久子
同             鈴木 守
被       告     エイディシーテクノロジー株式会社
主    文
1 被告は,原告が別紙物件目録記載1ないし5の製品を販売したこと
について,別紙特許権目録記載の特許権に基づく損害賠償請求権及び不当利得返還
請求権を有しないことを確認する。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
主文同旨
第2 争いのない事実
1 当事者
  (1) 原告は,通信機器の販売等を主たる業務とする株式会社である。
  (2) 被告は,コンピュータソフトウェアの開発及び販売等を目的とする株式会
社である。
 2 被告の特許権
被告は,別紙特許権目録記載の特許権(以下「本件特許権」といい,その特許
請求の範囲請求項1ないし3記載の各特許発明を「本件特許発明」という。)を有
している。
 3 原告の行為
原告は,日本電気株式会社(以下「NEC」という。)が製造した別紙物件
目録記載1ないし5の携帯電話機(以下「原告製品」という。)を販売している。
第3 事案の概要
本件は,原告が,被告に対し,原告が原告製品を販売したことについて,本
件特許権に基づく損害賠償請求権及び不当利得返還請求権を有しないことの確認を
求める事案である。
第4 当事者の主張
1 原告の主張
(1) 本件特許には無効理由が存在することが明らかであり,また,原告製品は
本件特許発明の技術的範囲に属さないから,被告は,原告が原告製品を販売したこ
とについて,本件特許権に基づく損害賠償請求権及び不当利得返還請求権を有しな
い。
(2) 被告は,原告宛てに,平成15年4月17日付警告書(甲3)及び同年6
月2日付警告書(甲4)を送付し,原告が販売する2画面式の携帯電話機(型式番
号N2051,N504iS,N251i,N251iS,N211iS)が本件
特許発明を実施している旨主張した。被告は,原告から連絡を受けたNECとも数
度にわたり交渉したが,交渉が決裂した場合には差止め及び損害賠償請求訴訟を提
起すると述べた。原告は,上記型式の携帯電話機の販売を既に終了しており,現在
は,その後継機種として原告製品を販売している。
  なお,被告は,ボーダフォン株式会社に対しても,本件特許権に基づい
て,同社が当時販売していた2画面式携帯電話機(J-T09)に対して警告し,
調停も申し立てた。被告は,平成15年10月16日,同社を被告として,J-T
09の後継機種であり,同社が現に販売している2画面式携帯電話機(J-T01
0)のみを対象として,差止め及び損害賠償を求める訴訟を名古屋地方裁判所に提
起した(同裁判所平成15年(ワ)第4269号特許権侵害差止等請求事件)。この
点から見ても,原告が,現に販売している原告製品について,被告が本件特許権に
基づく損害賠償請求権及び不当利得返還請求権を有しないことの確認の利益を有す
ることは明白である。
(3) よって,被告が,原告が原告製品を販売したことについて,本件特許権に
基づく損害賠償請求権及び不当利得返還請求権を有しないことの確認を求める。
2 被告の主張
   被告は,原告が原告製品を販売したことについて,平成15年3月14日の
時点(登録時)における本件特許権並びに平成16年4月15日付け訂正請求書の
請求項1及び2に記載した発明に係る本件特許権に基づく損害賠償請求権及び不当
利得返還請求権が存在しないことを認める。登録時における本件特許権並びに平成
16年4月15日付け訂正請求書の請求項1及び2に記載した発明に係る本件特許
権には無効理由が存在し,現時点で本件特許権を行使することは権利濫用となるか
らである。なお,平成16年4月15日付け訂正請求による訂正は確定していない
し,現時点で訂正審判を請求していない。
第5 当裁判所の判断
1 確認の利益について
(1) 被告は,前記第4の2のとおり,平成15年3月14日の時点における本
件特許権並びに平成16年4月15日付け訂正請求書の請求項1及び2に記載した
発明に係る各特許権に基づいては,原告製品の販売についての損害賠償請求権及び
不当利得返還請求権が存在しないことを認めた。
(2) しかし,証拠(甲3,4)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認めら
れる。
ア 被告は,原告に対し,平成15年4月17日付の警告書(甲3)によ
り,原告の販売する2画面式の携帯電話機N2051,N504iS,N251i
が本件特許発明の技術的範囲に属し,これらを販売することは本件特許権の侵害と
なるので,直ちにその販売を中止するよう申し入れるとともに,1か月以内に誠意
ある回答のない場合には法的措置をとる旨を警告した。
イ 被告は,原告に対し,平成15年6月2日付の書面(甲4)により,原
告の販売する2画面式の携帯電話機N2051,N251iS,N211iSが本
件特許発明の技術的範囲に属し,これらを販売することは本件特許権の侵害となる
として,特許権に基づく請求を訴状の形式でまとめた警告書を送付した。
ウ 原告は,前記ア及びイで警告の対象となった携帯電話機(N2051,
N504iS,N251i,N251iS,N211iS)の販売を中止してお
り,原告製品はこれらの携帯電話機の後継機種として販売が開始された。
エ 被告は,その後,原告から連絡を受けたNECと数度にわたり交渉した
が,その際,交渉が決裂した場合には差止請求及び損害賠償請求の訴訟を提起する
旨を申し述べた。
オ 被告は,本件特許権に基づいて,ボーダフォン株式会社に対しても,同
社が当時販売していた2画面式携帯電話機(J-T09)に対して警告し,調停も
申し立てた。その後,被告は,同社に対し,J-T09の後継機種であり,同社が
現に販売している2画面式携帯電話機(J-T010)のみを対象として,差止め
及び損害賠償を求める訴訟を提起した。
カ 被告は,本件第1回弁論準備手続期日においては請求棄却判決を求める
旨の答弁をし,その後も原告製品が本件特許発明の技術的範囲に属する旨を主張し
ていた。その後,本件特許を取り消す旨の特許庁の決定を受け,被告は,現時点に
おける特許請求の範囲に基づき権利行使することは権利濫用に当たるとの理由で,
一転して,本件第4回弁論準備手続期日において,平成15年3月14日の時点に
おける本件特許権並びに平成16年4月15日付の特許庁に対する訂正請求書の請
求項1及び2に記載した発明に係る各特許権に基づいては,原告製品の販売につい
ての損害賠償請求権及び不当利得返還請求権が存在しないことを認め,従前の主張
を撤回する旨の陳述をした。
(3) 前記(2)認定の各事実及び本件の経緯に照らせば,被告が前記(1)のとおり
前記請求権の不存在を自認する旨の陳述をしたとしても,今後被告が原告製品につ
いて本件特許権に基づく損害賠償請求又は不当利得返還請求を行う可能性があるこ
とは否定できないから,いまだ本件請求の確認の利益は失われていないというべき
である。
2 損害賠償請求権及び不当利得返還請求権の存否について
被告は,原告が原告製品を販売したことについて,本件特許権に基づく損害
賠償請求権及び不当利得返還請求権の発生原因事実を主張立証せず,前記第4の2
のとおり,平成15年3月14日の時点(登録時)における本件特許権並びに平成
16年4月15日付け訂正請求書の請求項1及び2に記載した発明に係る本件特許
権に基づく損害賠償請求権及び不当利得返還請求権が存在しないことを認めた。
特許庁は,平成16年4月15日付け訂正請求による訂正を認めた上,本件
特許を取り消す旨の決定をしたが(乙5),取消訴訟の提起により上記訂正は確定
していないから,本件口頭弁論終結時における本件特許権の特許請求の範囲は,登
録時である平成15年3月14日の時点におけるものである。よって,本件口頭弁
論終結時において,本件特許に無効理由が存在すること並びに被告が,原告が原告
製品を販売したことについて,本件特許権に基づく損害賠償請求権及び不当利得返
還請求権を有しないことは,当事者間に争いがないことに帰する。
3 結論
以上の次第で,原告の本件請求を認容することとし,主文のとおり判決す
る。
東京地方裁判所民事第47部
 裁判長裁判官    高 部 眞規子
 裁判官    東海林   保
 裁判官    田 邉   実
(別紙)
物 件 目 録
以下の型式番号の携帯電話機
1 N505iS
2 N252i
3 N2102V
4 N505i
5 N2701
(別紙)
特 許 権 目 録
登録番号  第3408154号
発明の名称  携帯型コミュニケータ
出願年月日  平成4年11月9日(特願平10-180964)
登録年月日  平成15年3月14日
特許請求の範囲
【請求項1】
公衆通信回線に無線によって接続され,該公衆通信回線を経由して発信,または
受信を行う無線通信手段と,
該無線通信手段に対する制御指令の出力,上記無線通信手段を経由して上記公衆
通信回線からデータを入力,または上記無線通信手段を経由して上記公衆通信回線
にデータを送出する処理を行うコンピュータと,
該コンピュータによって所定の画像を表示する第1のディスプレイと,第2のデ
ィスプレイと,
オン信号を出力するオンスイッチが操作された場合に上記第1のディスプレイ
と,上記コンピュータを含む全体に電源を供給して,該第1のディスプレイを利用
した入出力が行われるアクティブ状態にし,オフ信号を出力するオフスイッチが操
作された場合に,上記コンピュータと,上記無線通信手段とを含む所定の部分にの
み電源を供給して,上記第1のディスプレイを利用した入出力が行われることのな
い待機状態にする電源コントローラと,
上記無線通信手段と,上記コンピュータと,上記第1のディスプレイと,上記第
2のディスプレイとを組み合わせた状態で保持する筐体とを備え,
上記コンピュータは,上記オンスイッチと,上記オフスイッチの操作状態に拘わ
りなく,
上記無線通信手段が受信を待機している受信待機中であるかを判断する受信待機
中判断手段と,
該受信待機中判断手段が受信待機中であると判断した場合に,上記第2のディス
プレイに受信待機中の表示を行う受信待機中表示手段とを備えることを特徴とする
携帯型コミュニケータ。
【請求項2】
公衆通信回線に無線によって接続され,該公衆通信回線を経由して発信,または
受信を行う無線通信手段と,
該無線通信手段に対する制御指令の出力,上記無線通信手段を経由して上記公衆
通信回線からデータを入力,または上記無線通信手段を経由して上記公衆通信回線
にデータを送出する処理を行うコンピュータと,
該コンピュータによって所定の画像を表示する第1のディスプレイと,第2のデ
ィスプレイと,
オン信号を出力するオンスイッチが操作された場合に上記第1のディスプレイ
と,上記コンピュータを含む全体に蓄電池から電源を供給して,該第1のディスプ
レイを利用した入出力が行われるアクティブ状態にし,オフ信号を出力するオフス
イッチが操作された場合に,上記コンピュータと,上記無線通信手段とを含む所定
の部分にのみ上記蓄電池から電源を供給して,上記第1のディスプレイを利用した
入出力が行われることのない待機状態にする電源コントローラと,
上記無線通信手段と,上記コンピュータと,上記第1のディスプレイと,上記第
2のディスプレイとを組み合わせた状態で保持する筐体とを備え,
上記コンピュータは,上記オンスイッチと,上記オフスイッチの操作状態に拘わ
りなく,
上記蓄電池の電源容量を検出する電源容量検出手段と,上記第2のディスプレイ
に,上記電源容量検出手段が検出した電源容量の表示を行う電源容量表示手段とを
備えることを特徴とする携帯型コミュニケータ。
【請求項3】
公衆通信回線に無線によって接続され,該公衆通信回線を経由して発信,または
受信を行う無線通信手段と,
該無線通信手段に対する制御指令の出力,上記無線通信手段を経由して上記公衆
通信回線からデータを入力,または上記無線通信手段を経由して上記公衆通信回線
にデータを送出する処理を行うコンピュータと,
該コンピュータによって所定の画像を表示する第1のディスプレイと,第2のデ
ィスプレイと,
オン信号を出力するオンスイッチが操作された場合に上記第1のディスプレイ
と,上記コンピュータを含む全体に蓄電池から電源を供給して,該第1のディスプ
レイを利用した入出力が行われるアクティブ状態にし,オフ信号を出力するオフス
イッチが操作された場合に,上記コンピュータと,上記無線通信手段とを含む所定
の部分にのみ上記蓄電池から電源を供給して,上記第1のディスプレイを利用した
入出力が行われることのない待機状態にする電源コントローラと,
上記無線通信手段と,上記コンピュータと,上記第1のディスプレイと,上記第
2のディスプレイとを組み合わせた状態で保持する筐体とを備え,
上記コンピュータは,上記オンスイッチと,上記オフスイッチの操作状態に拘わ
りなく,
上記蓄電池の電源容量を検出する電源容量検出手段と,上記第2のディスプレイ
に,上記電源容量検出手段が検出した電源容量の表示を行う電源容量表示手段と,
上記無線通信手段が受信を待機している受信待機中であるかを判断する受信待機
中判断手段と,
該受信待機中判断手段が受信待機中であると判断した場合に,上記第2のディス
プレイに受信待機中の表示を行う受信待機中表示手段を備えることを特徴とする携
帯型コミュニケータ。

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