弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件各上告を棄却する。
         理    由
 被告人A本人の上告趣意について。
 所論は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由
にあたらない。
 被告人B本人の上告趣意のうち憲法二一条違反の所論について。
 記録および証拠物に徴すれば、本件「艶本研究国貞」特製本の本冊および別冊参
考資料を一個の文書として猥褻の文書に該当するとした原判決の判断は正当と認め
られ、したがつて、被告人らに対し刑法一七五条を適用して処罰することが憲法二
一条に違反するものでないことは、当裁判所大法廷判例(昭和四四年一〇月一五日
判決・刑集二三巻一〇号一二三九頁)により明らかである。所論は、理由がない。
 同その余の所論について。
 所論は、単なる法令違反の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらな
い。
 弁護人莇立明の上告趣意のうち憲法二一条違反の所論について。
 所論は、要するに、原判決が文書の猥褻性の有無に関する判断の基準として説示
する見解は憲法二一条に違反するというのである。
 しかし、原判決が、弁護人能勢克男の控訴趣意に対する判断二において説示して
いる、「文書の猥褻性の有無はその文書自体について客観的に判断すべきものであ
り、現実の購読層の状況あるいは著者や出版者としての著述、出版意図など当該文
書外に存する事実関係は、文書の猥褻性の判断の基準外に置かれるべきものである。」
旨の見解は、正当であり、また、このように解しても憲法二一条に違反するもので
はないことは、当裁判所大法廷判例(昭和三二年三月一三日判決・刑集一一巻三号
九九七頁)の趣旨により明らかである。所論は、理由がない。
 同その余の所論について。
 所論は、事実誤認の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。
 弁護人能勢克男の上告趣意について。
 所論は、憲法三一条違反をいうが、その実質は、事実誤認、単なる法令違反の主
張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。
 なお、弁護人鹿野琢見、同岩田洋明、同戸張順平連名の上告趣意書補充書、上告
趣意補充書(二)、被告人B本人の上告趣意書補充書は、いずれも上告趣意書差出
期間経過後に差し出されたものであるから、判断を加えない。
 よつて、刑訴法四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決す
る。
  昭和四八年四月一二日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    下   田   武   三
            裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    藤   林   益   三
            裁判官    岸       盛   一
            裁判官    岸   上   康   夫

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