弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1原判決を取り消す。
2被控訴人の請求を棄却する。
第2事案の概要
次のように補正するほかは,原判決の事実及び理由の第2に記載のとおりである
から,これを引用する。
1原判決2頁13行目の次に改行して次のように加える。
「原審は,被控訴人の上記請求を認容した。これに対し,控訴人が控訴した。」
2原判決2頁16行目の「当裁判所」を「原審」に,19行目の「終局判決を
することとしたものである」を次のように,それぞれ改める。
「終局判決である原判決をしたものであり,これに対する本件控訴があったこと
から,その訴えに係る本件訴訟手続が完結するまでの間,本件義務付けの訴えに係
る訴訟手続を中断した」
3原判決9頁14行目の冒頭から「A協会が」までを次のように改める。
「民間企業は,その有する経営上,営業上,技術上の諸情報に関しては,それ
が一度公開されると何人がいかなることに利用するか知れないことから,その公
開に最大限慎重になるものである。本件各情報は,いずれも,BやA協会の協力に
より控訴人が入手したものであり,とりわけ,本件文書1,3は,処分行政庁が特
定行政庁として行うべき耐震性検証作業のため,わざわざ作成させたものである。
そして,本件各情報については,これらの協力者が」
4原判決11頁22行目から12頁8行目までを次のように改める。
「本件決定は,本件条例6条4項の理由付記の要件を満たしている。
アすなわち,本件決定に係る通知書には,非公開情報について定めた本件条例
8条1項各号の中の具体的な号などを掲げ,その文言を引用した上で,本件各情報
がそれらに該当する旨が記載されている。そして,引用された文言には,非公開情
報が個別的,具体的に規定されている。そこで,被控訴人は,具体的な処分理由を
了知することができる。
イ実際にも,被控訴人は,本件処分に対する異議申立てに際し,本件決定の理
由を了知した上でこれを争う主張をしている。
ウまた,市長を実施機関とする決定に対する不服申立ては,市長に対する異議
申立ての方法による。このように実施機関と不服申立てについて判断する機関とが
一致する場合には,本件条例6条4項の理由付記の要件について判断するに際し,
実施機関の決定に係る通知書の記載のほか,異議申立てについての決定に係る通知
書の記載も考慮してよい(これは,「瑕疵の治癒」とは別の問題である。)。そし
て,本件異議申立棄却決定に係る通知書には,本件処分の理由がより具体的に記載
されている。そこで,被控訴人は,具体的な処分理由を了知することができる。
エなお,次の最高裁判所の判例は,いずれも本件に適切でない。
すなわち,最高裁平成4年(行ツ)第48号同年12月10日第一小法廷判決・
裁判集民事166号773頁(以下「最高裁平成4年判決」という。)は,非公開
情報について定めた情報公開条例の条項が包括的で,しかも,その決定に対する行
政上の不服申立てを経ていなかった事案について判断したものである。最高裁昭和
43年(行ツ)第61号同47年12月5日第三小法廷判決・民集26巻10号1
795頁(以下「最高裁昭和47年判決」という。)は,原処分に対し,異議申立
てではなく,審査請求を経た事案について判断したものであるし,同判決は「瑕疵
の治癒」の成否について判断したものである。」
5原判決12頁21行目の次に改行して次のように加える。
「なお,本件異議申立棄却決定に係る通知書の記載によっても,本件決定の理
由は明らかにされていない。すなわち,本件各情報が該当する非公開情報の類型と
して,本件決定に係る通知書には本件条例8条1項1号,3号,4号ア,エが挙げ
られていたのに対し,本件異議申立棄却決定に係る通知書は同項3号のみに言及し
ていて,本件各情報が同項1号,4号ア,エに該当するかどうかに触れられていな
いし,本件各情報が同項3号に該当する理由についての上記通知書の記載も不十分
である。」
第3当裁判所の判断
1争点②(本件決定に理由付記を欠く違法があるか)について
本件の審理経過に鑑み,まず,争点②について判断する。
当裁判所も,本件決定には,本件条例6条4項に定める理由付記を欠く違法があ
り,これは本件決定の取消事由に当たると判断する。その理由は,次のように補正
するほかは,原判決の事実及び理由の第3の2に記載のとおりであるから,これを
引用する。
(1)原判決18頁22行目の「いわなければならない」の次に「(最高裁平成
4年判決参照)」を加える。
(2)原判決24頁4行目の「本件条例8条1項4号ア」を「本件条例8条1項
4号エ」に改める。
(3)原判決24頁6行目の次に改行して次のように加える。
「(3)なお,本件条例8条1項各号に定める非公開情報のうち,本件決定に
係る通知書に記載されたもの(同項1号,3号,4号ア,エ)以外のものを列挙す
ると,個人に関する情報の一部(同項2号),控訴人の機関内部若しくは機関相互
間又は控訴人の機関と国等の機関との間の意思形成過程における情報の一部(同項
4号イ),控訴人の合議制機関等の会議に係る情報の一部(同号ウ),市の職員の
人事に関する情報の一部(同号オ),公開により公共の安全と秩序の維持に著しい
支障が生ずるおそれのある情報(同号カ)の5類型となるところ,本件各情報が上
記5類型のいずれにも該当しないことは明らかである。すなわち,本件決定に係る
通知書には,本件条例に定める非公開情報の類型が,これに該当しないことが明ら
かなものを除き,すべて列挙されているのである。
そして,処分行政庁ないし控訴人は,本件決定に係る通知書には,このように多
くの非公開情報の類型を挙げたにもかかわらず,本件異議申立棄却決定に係る通知
書には,本件条例8条1項3号の類型のみを挙げるにとどまり(甲6),本件訴訟
では,再び,本件決定に係る通知書に挙げた非公開情報の類型をすべて主張するに
至っており,なお,当審で陳述した最後の準備書面には,同項各号該当性について
は改めて別の準備書面をもって主張する旨の記載がある。
このように,本件各情報の非公開事由に関する控訴人の主張は,必ずしも首尾一
貫しておらず,現時点でもなおその整理を待つ段階にある。そうであれば,処分行
政庁において,本件処分の時点で,本件各情報が,いかなる点において,本件条例
8条1項各号のいずれに該当するのかを慎重に吟味した結果として,上記通知書に
付記されたとおりの判断をしたものとは認め難い。
本件決定における理由付記の在り方には,非公開決定の理由の有無について実施
機関の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するという制度の趣旨にも
そぐわない面がある。」
(4)原判決24頁7行目の「(3)」を「(4)」に,同行の「8条2項」を「6条
4項」に,それぞれ改める。
(5)原判決24頁9行目の「(4)」を「(5)」に,同行の「前記第2の3(2)(被
告の主張の要旨)①~③」を「前記第2の3(2)(控訴人の主張の要旨)ア~エ」
に,14行目の「(①)」を「(ウ)」に,それぞれ改める。
(6)原判決24頁14行目の「そもそも,」の次に次のように加える。
「本件条例は,市政情報の公開請求を受けた実施機関に対し,公開するかどうか
の決定(1項),その書面による通知(3項),非公開決定を通知する書面への理
由の記載(4項)を義務付け,その決定ないし通知の時期も厳格に定めているので
あるから(1項ないし3項),非公開決定の理由の告知は,当該決定を通知する時
点で,通知書への記載という方法によってしておくべきものであるし,」
(7)原判決24頁17行目の「審査請求についての裁決」を「異議申立てにつ
いての決定」に改める。
(8)原判決24頁19行目から20行目にかけての「最高裁昭和43年(行
ツ)第61号同47年12月5日第三小法廷判決・民集26巻10号1795頁参
照」を次のように改める。
「最高裁昭和47年判決参照。なお,控訴人は,控訴人の上記主張は,同判決に
いう「瑕疵の治癒」を説くものではないとも主張する。しかしながら,既に述べた
とおり,本件条例によれば,非公開決定の理由の告知は,決定の通知の時点で,通
知書への記載という方法によってすべきものであるから,本件処分に係る通知書に
記載された理由が不十分であれば,本件処分は,その通知の時点で瑕疵を帯びるこ
ととなる。控訴人の主張は,その後の本件異議申立棄却決定に係る通知書の記載を
考慮した事後的な判断として,本件処分に瑕疵がないとする余地を説くものと解さ
れ,その実質は,上記判決にいう「瑕疵の治癒」を説くものにほかならない。その
ような用語法の問題をひとまずおくとしても,既に述べた本件条例の趣旨や,最高
裁昭和47年判決の説くところに照らせば,控訴人の上記主張を採用する余地はな
い。」
(9)原判決24頁23行目の「(③)」を「(イ)」に,25頁10行目の
「(①,②)」を「(ア)」に,それぞれ改める。
(10)原判決25頁11行目の次に改行して次のように加える。
「なお,控訴人は,最高裁平成4年判決や最高裁昭和47年判決が本件に適切
でないと主張するところ(エ),確かに,両判決には本件と事案を異にする側面も
あり,両判決の判例としての拘束力が直ちに本件に及ぶものではない。とはいえ,
最高裁平成4年判決の判断に係る東京都条例には,それに基づく情報公開制度や理
由付記制度の趣旨等において本件条例に共通する点があり,最高裁昭和47年判決
の判断に係る旧法人税法には,それに基づく更正処分の理由付記制度の趣旨等にお
いて本件条例に共通する側面があるのであって,本件条例に関する本件争点②につ
いて判断するに際し,上記のような共通点を踏まえて,上記各判決の説くところを
参照することは,何ら不当なものではない。なお,最高裁昭和47年判決の説くと
ころを踏まえると,取消請求に係る処分について行政上の不服申立てを経由したか
どうかとか,経由した不服申立てが審査請求,異議申立てのいずれであるか(取消
請求に係る処分をした機関とこれに対する不服申立てについて判断した機関とが一
致するかどうか)とかの点について事案の相違があるからといって,上記各判決の
説くところを参照することが不当となるものでもない。」
2そうすると,被控訴人の請求は認容すべきであり,これと同旨の原判決は相
当であるから,本件控訴は理由がない。
東京高等裁判所第20民事部
裁判長裁判官春日通良
裁判官金子直史
裁判官佐藤美穂

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