弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人孫田秀春、同高梨好雄の上告理由及び同滝川誠男の上告理由第一点な
いし第三点について。
 論旨は、要するに、原判決が、上告会社の原判示懲戒規定は従業員が不名誉な行
為をして会社の社会的評価を著しく汚した場合に限つて適用されるもので、本件に
おける被上告人らの行為はいまだこれに当たらないとしたのは、憲法の理念を無視
し、同法一三条、二九条に違反するとともに、自治法規たる前記懲戒規定の解釈適
用を誤り、かつ、審理不尽、理由不備、理由齟齬の違法を犯すものである、と主張
する。
 よつて、按ずるに、原判決の確定するところによれば、上告会社A製鉄所の従業
員であつた被上告人らは、昭和三二年七月八日東京都北多摩郡a町で発生したいわ
ゆるa事件に加担し、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約三条に基づく
行政協定に伴う刑事特別法二条違反の罪により逮捕、起訴されたところ、上告会社
は、A製鉄所の労働協約三八条一一号及び就業規則九七条一一号所定の懲戒解雇事
由である「不名誉な行為をして会社の体面を著しく汚したとき」(以下本件懲戒規
定という。)に該当するとして、被上告人B1、同B2を懲戒解雇、同B3を諭旨
解雇にしたことが明らかである。
 ところで、営利を目的とする会社がその名誉、信用その他相当の社会的評価を維
持することは、会社の存立ないし事業の運営にとつて不可欠であるから、会社の社
会的評価に重大な悪影響を与えるような従業員の行為については、それが職務遂行
と直接関係のない私生活上で行われたものであつても、これに対して会社の規制を
及ぼしうることは当然認められなければならない。本件懲戒規定も、このような趣
旨において、社会一般から不名誉な行為として非難されるような従業員の行為によ
り会社の名誉、信用その他の社会的評価を著しく毀損したと客観的に認められる場
合に、制裁として、当該従業員を企業から排除しうることを定めたものであると解
される。
 所論は、右懲戒規定にいう「会社の体面」とは、会社の社会的評価のほかに、会
社がそのような評価を受けていることについての会社の経営者や従業員らの有する
主観的な価値意識ないし名誉感情を含むものであり、同規定は、従業員の不名誉な
行為がこのような会社関係者の主観的感情を著しく侵害した場合にもこれを懲戒解
雇の対象とする趣旨である旨主張するが、会社の存立ないし事業運営の維持確保を
目的とする懲戒の本旨にかんがみれば、右「会社の体面」とは、会社に対する社会
一般の客観的評価をいうものであつて、所論指摘の諸点を考慮しても、なお、同規
定を所論のように広く解すべき合理的理由を見出すことはできない。
 しかして、従業員の不名誉な行為が会社の体面を著しく汚したというためには、
必ずしも具体的な業務阻害の結果や取引上の不利益の発生を必要とするものではな
いが、当該行為の性質、情状のほか、会社の事業の種類・態様・規模、会社の経済
界に占める地位、経営方針及びその従業員の会社における地位・職種等諸般の事情
から綜合的に判断して、右行為により会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大
であると客観的に評価される場合でなければならない。
 そこで、本件についてみるに、被上告人らは、在日アメリカ空軍の使用するD基
地の拡張のための測量を阻止するため、他の労働者ら約二五〇名とともに、一般の
立入りを禁止されていた同飛行場内に不法に立ち入り、警備の警官隊と対峙した際
にも、集団の最前列付近で率先して行動したというものであつて、反米的色彩をも
つ集団的暴力事犯としてのa事件が国の内外に広く報道されたことにより、当時上
告会社が巨額の借款を申し込んでいたE銀行からは同会社の労使関係につきa事件
のことを問題とされ、また、国内の他の鉄鋼関係会社からも同事件について批判を
受けたことがあるなど、上告会社の企業としての社会的評価に影響のあつたことは、
原判決の確定するところである。しかし、原判決は、他方において、被上告人らの
前記行為が破廉恥な動機、目的に出たものではなく、これに対する有罪判決の刑も
最終的には罰金二〇〇〇円という比較的軽微なものにとどまり、その不名誉性はさ
ほど強度ではないこと、上告会社は鉄鋼、船舶の製造販売を目的とする会社で、従
業員約三万名を擁する大企業であること、被上告人らの同会社における地位は工員
(ただし、被上告人B1は組合専従者)にすぎなかつたことを認定するとともに、
所論がa事件による影響を強調する前記E銀行からの借款との関係については、上
告会社の右借款が実現したのは同時に申込みをした他の会社より三箇月ほど遅延し
たが、被上告人らがa事件に加担したことが右遅延の原因になつたものとは認めら
れないとしているのである。
 以上の事実関係を綜合勘案すれば、被上告人らの行為が上告会社の社会的評価を
若干低下せしめたことは否定しがたいけれども、会社の体面を著しく汚したものと
して、懲戒解雇又は諭旨解雇の事由とするのには、なお不十分であるといわざるを
えない。
 したがつて、右と同旨に出て被上告人らに対する本件解雇を無効とした原審の判
断は相当であり、原判決に所論の違法はない。所論のうち違憲をいう部分は、その
実質において単なる法令違背の主張にすぎず、また、懲戒権の根拠に関する原判断
の誤りをいう所論も、判決の結論に影響を及ぼさない傍論に対する非難に帰する。
論旨は、ひつきよう、以上と異なる独自の見解もしくは原審の認定にそわない事実
に立脚して原判決を攻撃するものであるか、あるいは原判決を正解しないことによ
るものであつて、いずれも採用することができない。
 上告代理人滝川誠男の上告理由第四点について。
 上告会社のE銀行からの借款の遅延が被上告人らのa事件における行動が報道さ
れたことによるものとは認められないとした原審の判断は、原審で取り調べた証拠
関係に照らして首肯するに足り、原判決に所論の違法はない。論旨は採用すること
ができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    大   塚   喜 一 郎
            裁判官    岡   原   昌   男
            裁判官    小   川   信   雄
            裁判官    吉   田       豊

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