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平成14年(行ケ)第84号 審決取消請求事件
平成15年6月24日判決言渡,平成15年6月10日口頭弁論終結
     判    決
 原    告    オプティスキャン Pty リミテッド
 訴訟代理人弁護士  鈴木和夫,弁理士 三浦邦夫
 被    告    特許庁長官 太田信一郎
 指定代理人     大野克人,林栄二,鹿股俊雄
     主    文
 特許庁が不服2000-13616号事件について平成13年10月9日にした
審決を取り消す。
 訴訟費用は被告の負担とする。
     事実及び理由
第1 原告の求めた裁判
 主文同旨の判決。
第2 事案の概要
 本件は,後記本願発明の出願人である原告が,本件出願について拒絶査定を受
け,これを不服として審判請求をしたところ,審判の請求は成り立たない旨の審決
がされたため,その取消しを求めた事案である。
 なお,本件においては,①「エネルギー」,「エネルギ」,②「ファイバー」,
「フアイバ」,「ファイバ」,③「レーザー」,「レーザ」,④「エアリー」,
「エアリイ」,⑤「N.A.」,「NA」というように,書証によって表記が異な
っているが,①~⑤の各グループごとに同一のものを指すものと認められるので,
以下,引用する場合を含め,①のものを「エネルギー」,②のものを「ファイバ
ー」,③のものを「レーザー」,④のものを「エアリー」,⑤のものを「NA」と
統一して記載する。また,本件において,「NA」とは,焦点位置すなわち検知用
開口の開口位置において集束手段によって画定される錐角の半角を用いて定義され
る集束手段の開口数を指し,「λ」とは,出力エネルギーの波長を指すものであ
る。
 1 前提となる事実等
 (1) 特許庁における手続の経緯
 (1-1) 本願発明
 出願人:原告
 発明の名称:「共焦マイクロスコープ」
 出願番号:特願平1-508154号
 出願日:平成1年8月1日(優先権主張オーストラリア,昭和63年8月1日)
 (1-2) 本件手続
 拒絶査定日:平成12年5月18日
 審判請求日:平成12年8月28日(不服2000-13616号)
 審決日:平成13年10月9日
 審決の結論:「本件審判の請求は,成り立たない。」
 審決謄本送達日:平成13年10月23日(原告に対し)
 (2) 本願発明の要旨(請求項7のみ記載。請求項7に係る発明を「本願発明」と
いう。)
【請求項7】(a)焦点付け可能な照明エネルギーを供給するエネルギー源と,
(b)コアと入射端と出射端とから成り,エネルギー源からの照明エネルギーが入射
端によって受け入れられ,コアを通過し,出射端に導かれて該出射端から現れるよ
う成された単一モードエネルギーガイドと,
(c)(ⅰ)該出射端から現れた照明エネルギーの少なくとも一部を集束させて,使用
時に物体と交差する回折限界スポットにし,(ⅱ)スポット内の照明エネルギーと物
体との相互作用の結果生じる及び/又はスポット内での照明エネルギーの透過の結果
生じるスポットからの出力エネルギーを回収し,(ⅲ)回収された出力エネルギーを
再び回折限界スポットに集束させる,共焦形式に構成された集束手段と,
(d)回収された出力エネルギーを検知のため方向付けるエネルギースプリッター
と,
(e)開口の平均直径が0.6×λ/NA未満である検知用開口と検知素子とを有し
て,エネルギースプリッターによって方向付けられ集束手段によって回折限界スポ
ットに集束された出力エネルギーが前記検知用開口に位置づけられるよう成され
た,出力エネルギーを検知する検知器(ここでλは出力エネルギーの波長,NAは
焦点位置すなわち検知用開口の開口位置において前記集束手段によって画定される
錐角の半角を用いて定義される該集束手段の開口数である)とから成る,回折限界
共焦点顕微鏡。
 (3) 審決の理由
 審決の理由は,【別紙】の「審決の理由」(だだし,第2項以下の抜粋)に記載
のとおりである。要するに,本願発明は,第1引用例(特開昭61-219919
号公報,本訴甲2),第2引用例(実願昭60-5617号(実開昭61-122
518号)のマイクロフィルム,本訴甲3)及び周知技術に基づいて当業者が容易
に発明をすることができたものと認められるので,特許法29条2項の規定により
特許を受けることができない,というものである。
 2 原告の主張(審決取消事由)の要点
 (1) 取消事由1(相違点Aについての判断の誤り)
 (1-1) 本願発明と第1引用例記載の発明との相違点Aは,「光学部材が,本願発
明は,コアと入射端と出射端とからなる単一モードエネルギーガイドであるのに対
して,第1引用例は,ピンホール90,91である点」であるところ,この点につ
き,審決は,相違点Aの構成,さらに,ピンホールに代えて光ファイバーを用いる
ことが,第2引用例に開示ないし示唆されていると判断した。しかし,この判断は
誤りである。
 (1-2) 本願発明は,(α)「回折限界共焦点顕微鏡」の,(β)「光源側」に,(γ)
「単一モードエネルギーガイド」を用いる構成であるが,第2引用例には,(α)
「ジャイロスコープのノイズ除去装置」の,(β)「検出側」に,(γ)「ピンホール
10又は光ファイバー」を用いることが記載されているにすぎず,本願発明の上記
構成を何ら示唆するものではない。なお,(α)については,両者の対象技術が全く
異なるものであり,(β)が異なることは明らかである。そして,(γ)については,
本件発明は,「単一モードエネルギーガイド」すなわち「単一モード光ファイバ
ー」を用いるものであるが,第2引用例では,単に「光ファイバー」が用いられる
との記載があるだけであり,「単一モード光ファイバー」に限定されるとの記載は
ない。また,本願発明は,回折限界共焦点顕微鏡の光源側に,単一モードエネルギ
ーガイドを用いることによって,光源,検知器及び関連するエレクトロニクスが,
偏光子,集束レンズ,集束レンズシステムといったような光学的ハードウエアから
離れて配置できるとの効果を奏するのであるが,第2引用例には,本願発明の上記
効果について何ら示唆するものはない。
 (1-3) 審決には,第2引用例と第1引用例をどう結びつければ本願発明に至るか
の道筋が示されていない。本願発明と第2引用例とでは,以下のような点で技術的
相違があり,第2引用例と第1引用例をどう結びつけても本願発明には至らない。
 本願発明のファイバーには,第2引用例のジャイロスコープの検知側におけるピ
ンホールやファイバーのようなノイズ除去の機能はない。
 本願発明において,単一モードエネルギーガイドが光源側に存在することの意義
は,光の特性(波面や波長)に何の変化も与えることなく,レーザー光源からエネ
ルギーガイドの末端までレーザー光(照明エネルギー)を伝達する点にある。別言
すれば,レーザー光源から出てエネルギーガイドを伝わった光が,レーザー光源か
ら直接ピンホールに至った光と同じ特性(可干渉性の維持,波長の維持等)を示す
ことに意義がある。これに対し,マルチモードファイバーでは入射端における光の
特性を変化させずに出射端に導くことはできない。
 本願発明が,共焦点顕微鏡において,ピンホールに代えて単一モードエネルギー
ガイドを用いたことの利点は,レーザー光源をピンホールから離して設置すること
ができ(つまり,単一モードエネルギーガイドの入射端面とレーザー光源との位置
を固定したまま,その出射端面を自由な位置に配置することができ),それによっ
てレーザー光源を原因とする振動が出射端面(実質的な発光側焦点)に伝達される
可能性を減らすことができることにある。これに対し,第2引用例において,ピン
ホールに代えることが示唆されているファイバーは,ジャイロスコープの検知側に
存在し,ノイズを除去するために,単に,小さい開口(アパーチャー)としての役
目だけをもっていればよい。ピンホールに代えてファイバーを用いるとしてもその
ファイバーの性質が単一モードかマルチモードかを問うことはあり得ず,第2引用
例にはその記載はない。
 本願発明において,光源側のファイバーが単一モードエネルギーガイドであるこ
とと,相違点Bに関する検知側開口の大きさとは密接に関連している。光源側に単
一モードエネルギーガイドを用いても検知側開口の大きさが2a<0.6λ/NA
を満足しなければ,検知用開口で検出される像が劣化してしまい,共焦点顕微鏡と
しての高い性能を発揮することができない。これに対し,第2引用例では,光源側
のファイバーが単一モードエネルギーガイドであることと,検知側開口の大きさと
の関連性は全く示されていない。
 (2) 取消事由2(相違点Bについての判断の誤り)
 (2-1) 本願発明と第1引用例との相違点Bは,本願発明が,検知用開口の平均直
径が0.6×λ/NA未満であるのに対して,第1引用例には,そのような記載が
ない点であるところ,この点につき,審決は,「一般に,開口の直径をエアリーデ
ィスクよりも小さくして回折光強度の大きい部分の光を使用することは,従来周知
(矢島達夫外3名編『新版レーザーハンドブック』1989年6月15日初版第1
刷・株式会社朝倉書店発行〔本訴甲1-2〕の36,37頁には,(2.5.2)
式として,△θ=0.514λ/Dと半値半幅角の記載があり,レーザー学会編
『レーザーハンドブック』昭和57年12月15日第1版第1刷・株式会社オーム
杜発行〔本訴甲1-3〕の105頁には,(9・50)式として,△θH=1.0
3(λ/2a)と半値全幅の記載がある。)である。上記(2.5.2)式より,
D=0.514λ/△θが導かれ,上記(9・50)式より,2a=1.03(λ
/△θH)が導かれ,これを半値半幅に換算すると,2a=0.5(λ/△θH)が
導かれ,何れの係数も0.6未満である。」とした。
 (2-2) しかし,以下のとおり,「回折限界共焦点顕微鏡」におけるエネルギー検
知器の検知用開口の平均直径を0.6×λ/NA未満とすることを想到することは
容易とはいえない。
 「回折限界共焦点顕微鏡」におけるエネルギー検知器の検知用開口において,
「一般に,開口の直径をエアリーディスクよりも小さくして回折光強度の大きい部
分の光を使用すること」が従来周知の技術であるとはいえない。
 上記の矢島達夫外3名編「新版レーザーハンドブック」1989年6月15日初
版第1刷(甲1-2)は,本件出願日(優先権主張日は1988年8月1日)よりも後に
発行されたものであり,公知文献とはいえない。
 上記のレーザー学会編「レーザーハンドブック」(甲1-3)には,(9・5
0)式として△θH=1.03(λ/2a)の記載があるが,これは,円形開口の
フラウンホーファ回折による「エアリーパターン」における「主ローブの半値全
幅」を示す数式にすぎず,「回折限界共焦点顕微鏡」におけるエネルギー検知器の
検知用開口を,検知用開口の平均直径が0.6×λ/NA未満とすることを何ら示
唆するものではない。また,審決は,上記数式を,「半値半幅に換算すると,2a
=0.5(λ/△θH)が導かれ,」として,本願発明の係数0.6と対比してい
るが,この場合,1/2とする必要,根拠がない。
 (2-3) 従来の回折限界共焦点顕微鏡は,発光側のピンホールに機械式ピンホール
を用いていたが,本願発明では,発光側に機械式ピンホールの代わりに,「単一モ
ードエネルギーガイド」(シングルモード光ファイバー)を用いた。
 従来の発光側のピンホールに機械式ピンホールを用いる回折限界共焦点顕微鏡で
は,発光側の機械式ピンホールの回折によって,レーザーから発せられた光線のガ
ウスビーム形状が変形されるのに対し,本願発明のように,発光側に「単一モード
エネルギーガイド」を用いた共焦点顕微鏡では,検出側のピンホールには,純粋ガ
ウス形状のビーム形状が提供される。
 そのため,上記従来の回折限界共焦点顕微鏡では,必要な分解能を与えるため,
検知側開口は,エアリーディスクの第1の最小限よりもわずかに小さく,すなわ
ち,検出口径は,一般的にエアリーディスクより若干小さい直径で<1.22に設
定される。他方,検出口径を上記以上に小さく設定する必要がない。なぜなら,検
出口径を1.22に設定した場合の分解能より,1.22より小さく設定した場合
の分解能は大した改良がないし,必要以上の検出手段に伝導された光の量が減少す
るからである。検知側開口を狭めて,エアリーディスクの中心の明るいところだけ
を使用しようとしても,ビーム形状のごく一部の情報しか得ることができず,充分
な解像度を得ることができない。
 これに対し,発光側に「単一モードエネルギーガイド」を用いた本願発明では,
検出側のピンホールには,純粋ガウス形状のビーム形状が提供される(レーザー光
線は,不完全なガウスビーム形状を有するので,レーザーからの光線がシングルモ
ード光ファイバーに入射すると,そのファイバーにはレーザー光線の一部のみが入
射でき,単一モードの光線のみが伝導される。このシングルモード光ファイバーに
よる「フィルターリング」では,ファイバーに入射された不完全なガウスビーム形
状は,純粋ガウスビーム形状としてそのファイバーの射出端から射出される。)。
その純粋ガウスビームのエネルギーは,変形された不完全ガウスビームよりも,は
るかに小さいスポットサイズまでに合焦することができる。よって,同じ共焦点分
解能を得るためには検出口径もより小さく,つまり,平均直径を0.6×λ/NA
未満とすることで,初めて適切な解像度を得ることができる。このように,検知側
の開口は,エアリーディスクの第1の最小限の中心のごく狭い範囲(<0.6)を
使用することで,光伝導に関しては作業効率は減少するが,一方,解像度のレベル
は高くなり,そのシステムが回折共焦点顕微鏡として作動し,かなり浅くされた被
写界深度の中で結像結果を得られるようになり,空間フィルターにおける中央部の
像から非合焦情報をほぼ除外することができる。逆に,この構成において,従来の
検知側開口のように,エアリーディスクの第1の最小限よりもわずかに小さい範囲
(1.22の幅)を使用すると,非合焦情報を多量に含んでしまい適切な解像度を
得ることができない。
 以上のように,本願発明は,回折限界共焦点顕微鏡の発光側に「単一モードエネ
ルギーガイド」(シングルモード光ファイバー)を用いることにしたので,適切な
解像度を得るため,検知側開口の平均直径を0.6×λ/NA未満とし,エアリー
ディスクの第1の最小限の中心のごく狭い範囲(<0.6)を用いたものである。
本願発明の構成は,従来技術(エアリーディスクの第1の最小限よりもわずかに小
さく形成する)にない構成であって,新規性を有するとともに,回折限界共焦点顕
微鏡の発光側に機械式ピンホールを用いた場合の検知側開口に関する知見からは容
易に想到することができないものである。
 本願発明の「検知側開口を,その平均直径が0.6×λ/NA未満とする」との
構成は,回折限界共焦点顕微鏡の発光側に「単一モードエネルギーガイド」(シン
グルモード光ファイバー)を用いた上で,検知側の開口をエアリーディスクの第1
の最小限のどの範囲とすることが,非合焦情報を排除し適切な解像度を得ることが
できるかという技術的課題に答えたものであって,「一般に,開口の直径をエアリ
ーディスクよりも小さくして回折光強度の大きい部分の光を使用することは従来周
知である。」との一般的な技術に含まれるものでもない。
 3 被告の主張の要点
 (1) 取消事由1(相違点Aについての判断の誤り)に対して
 (1-1) 審決においては,回折限界共焦点顕微鏡に関しては第1引用例に記載され
ている旨指摘しており,第2引用例は,本願発明と第1引用例との相違点のうち,
ピンホール10と光ファイバーとが代替可能である点に関して引用しているもので
あり,ピンホール10と光ファイバーとがいずれも光学部材であることに変わりは
ない。
 (1-2) 光ファイバーに単一モード光ファイバーとマルチモード光ファイバーとが
あり,単一モード光ファイバーが代表的なものであることは技術常識であり,さら
に,乙第1号証(610頁,図29・68)には,光ファイバージャイロについ
て,光ファイバーとして単一モードファイバーが記載されており,第2引用例にお
いて用いられる光ファイバーは,ピンホールに代替して用いられるものも含めて,
単一モードファイバーと理解するのが普通である。仮に,そのように理解すること
が適当ではないとしても,少なくとも単一モード光ファイバーの使用が示唆されて
いる。
 (1-3) 原告は,手続補正書添付の明細書(本願明細書:甲5)の記載に基づい
て,本願発明においてピンホールに代えて単一モードエネルギーガイドを用いたこ
との利点を主張するが,甲5では,光源と検知器との両方の場合についての利点を
述べているのであり,光源側に単一モードエネルギーガイドを用いたことによる効
果とはいえず,また,光学的ハードウエアから離れて配置できるとの効果及び振動
が伝達される可能性を減らすことができる効果は,光ファイバーが有している効果
であって,格別のものでもない。
 (1-4) 第2引用例は,ピンホール10と光ファイバーとが代替可能である点を引
用しているものであり,ノイズ除去機能の有無は直接的には関係がない。なお,一
般に,光ファイバーのコア直径は微細なものであり,ここに入射できる光は限定さ
れるのであるから,本願発明のファイバーも,何らかのノイズ除去機能を有してい
る。
 (1-5) 審決は,本願発明と第1引用例とを対比し,相違点A及びBを示し,相違
点Aについては,第2引用例に開示ないし示唆され,相違点Bについては従来周知
技術であるから,全体として,本願発明は,第1引用例,第2引用例及び周知技術
から容易に発明できたと述べている。相違点Aについては,ピンホールに代えて単
一モードエネルギーガイド(光ファイバー)を用いることが,第2引用例に開示な
いし示唆されているから,当然に,第1引用例記載のピンホール90,91に代え
て,第2引用例記載の光ファイバーを適用することは,当業者なら容易になし得た
ものであるとしている。
 (2) 取消事由2(相違点Bについての判断の誤り)に対して
 (2-1) 審決は,一般に,開口の直径をエアリーディスクよりも小さくして回折光
強度の大きい部分の光を使用することは,従来周知であるとし,本願発明は,各引
用例及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたと述べてい
る。
 本願発明の従来例(第1図)あるいは第1引用例に開示されているように,光学
系にピンホールを用いた顕微鏡は従来から周知であり,ピンホールの直径は,光学
系全体を考慮して,何らかを根拠にして設計されている。一方,本願発明の式0.
6×λ/NAは,本願明細書(甲5)において,式の導入過程を開示することな
く,突然に記載され,しかも,一般的なものとして記載されている。そうすると,
本願発明の式0.6×λ/NAは,従来からピンホールを設計する際の根拠になっ
ていた,光学系を設計する際に考慮すべき,光学分野における技術常識であること
が推察され,開口数NA,波長λ,開口の直径dの含まれた式であるエアリーディ
スクに関するもの(甲1-2,3,乙1~4)であることがわかる。
 エアリーディスクとは,円形単開口によるフラウンホーファ回折像の中央部の最
も明るい部分を意味し,エアリーディスクの外側の明環部は明るさも小さく,誤信
号の元になるから使用されず,エアリーディスクの中央部の明るさの強いところが
用いられるのは,技術的にみて当然であるから,開口直径をエアリーディスクより
も小さくすることは,記載がなくても,周知であるといえる。
また,本願明細書(甲5)には,従来例である第2図において,解像度を最大限
にするために,検知器14上のピンホールのサイズをエアリーディスクよりも小さ
くすることが記載されている。さらに,特開昭62-223716号公報(乙5)
には,ピンホール板24のピンホールをエアリーディスクより小さくすることが記
載されており,特開昭61-140914号公報(乙6)の第3図(b)からは,ピ
ンホール5が光束8よりも小さいことがうかがえる。
 そして,開口直径をエアリーデイスクより小さくする際に,上限値をどの程度に
するかというようなことは,当業者が適宜決定できる設計変更にすぎない。
 (2-2) 原告は,回折限界共焦点顕微鏡の光源側に,単一モードエネルギーガイド
を用いた場合には,検知器側のピンホールの開口を,平均直径が0.6×λ/NA
未満とすると,適切な解像度を得ることができると主張しているが,そのようなこ
とは本願明細書(甲5)に何ら記載されていない。本願明細書の図面の簡単な説明
の欄には,図3~図6が本願発明による回折限界共焦点マイクロスコープである旨
の記載があり,図3~図6には,光源側のみならず,検知器側にも光ファイバーを
用いた構成が開示されている。また,本願明細書の詳細な説明の欄には,「一般的
に,第1から第4の実施例においては,開口上に集光乃至集束される中心部からの
出力エネルギーにより形成される集束手段の開口数NA,出力エネルギーの波長
λ,及び開口,検知素子,或いはコアの平均直径dは,以下の式により関係付けら
れる。NA<0.6×λ/d」との記載があり,開口,検知素子,コアを同じよう
に扱っている。そうすると,本願発明は,光源側と検知器側に光ファイバーを用い
たものであるか,あるいは,光源側,検知器側にかかわらず,開口,検知素子,あ
るいはコアの平均直径dを特定したものであり,原告の主張する「光源側に,『単
一モードエネルギーガイド』を用い,検知器側のピンホールの開口を,平均直径が
0.6×λ/NA未満とする」場合についての記載は,本願明細書の詳細な説明の
欄には見いだせない。それゆえ,原告の主張は,明細書の記載に基づかないもので
あり,意味がない。
第3 当裁判所の判断
 1 取消事由2(相違点Bについての判断の誤り)について
 便宜,取消事由2から検討する。
 (1) 審決は,相違点Bについての判断として,甲1-2,3を挙げ,概ね次のよ
うに説示している。すなわち,開口の直径をエアリーディスクよりも小さくして回
折光強度の大きい部分の光を使用することは従来周知であり,甲1-2には,Δθ
=0.514λ/Dと半値半幅角の記載,甲1-3には,半値半幅に換算すると,
2a=0.5(λ/ΔθH)が導かれる式が記載されており,いずれの係数も0.6
未満であるから,相違点Bは想到容易であるというものである。
 (2) 検討するに,そもそも,上記甲1-2の文献は,本件優先権主張日前の公知
文献ではない(当事者間に争いがない。なお,甲1-2の記載から本件優先権主張
日当時の事項を推察するとしても,審決の説示を根拠付け得るものということは困
難である。)。
 そして,甲1-3には,(9・50)式として,ΔθH=1.03(λ/2a)
が記載されている。しかしながら,上記の式は,波長λの光の平面波が直径2aの
円形開口に垂直入射した際に,フラウンホーファ回折により形成されるエアリーパ
ターンのうち,主ローブ(エアリーディスク)の半値全幅を示す式であると認めら
れるものの,回折限界共焦点顕微鏡に適用できるとの記載はなく,検知器側の開口
の直径をエアリーディスクよりも小さくして,回折光強度の大きい部分の光を使用
することを示す証拠ということはできない。
 よって,審決の相違点Bについての説示は是認することができない。
 (3) 被告は,本願発明の式0.6×λ/NAは,本願明細書において,式の導入
過程を開示することなく,一般的なものとして記載されているので,従来からピン
ホールを設計する際の光学分野における技術常識であることが推察され,上記の式
は,エアリーディスクに関するものであり,エアリーディスクの中央部の明るさの
強いところを用いるのは技術的にみて当然であるから,開口直径をエアリーディス
クよりも小さくすることは,記載がなくても周知であるといえると主張し,乙5,
6を挙げている。
 また,被告は,開口直径をエアリーデイスクより小さくする際に,上限値をどの
程度にするかというようなことは,当業者が適宜決定できる設計変更にすぎないと
も主張する。
 (3-1) 検討するに,本願明細書(甲5)には,次の記載がある。
 ・「従来の反射共焦マイクロスコープの図式的図面が図1に示されている。レー
ザー1よりのレーザー光線は,顕微鏡対物レンズ2により機械的ピンホール3に焦
点付けられる。本明細書における“機械的ピンホール”という表現は,通常金属製
のシートに設けた従来のピンホールを意味する。」(1頁)
 ・「反射共焦マイクロスコープの操作の基本は,単純化した共焦マイクロスコー
プ配列を図式的に示した図2を調べれば分かる。機械的ピンホール点光源15は,
高品質光学素子16により,物体17上に集束される。照明するピンホールのサイ
ズ15は,物体17に当たる光線が,光線の波長と高品質光学素子16の特性によ
り大きさが決まる回折限界スポットパターンを形成するように,選択される。表面
により反射され,散乱される光線は,高品質光学素子16により回収され,ビーム
スプリッター13により,ピンホール検知器14上に再方向付けられる。解像度を
最大限にするために,検知器14上のピンホールのサイズは,その上に集束される
回折限界スポットの第1の最小限よりもわずかに小さくなるように選択される。」
(2頁~3頁)
 ・「機械的ピンホールは,開口にたまるほこりの影響を受け易い。共焦マイクロ
スコープの機械的ピンホール内にほんのわずかでもほこりがあると,結果としての
光の場が,もはや回転対称ではなくなり,収差が生じるので問題となる。更に,従
来の共焦マイクロスコープにおける機械的ピンホール,或いは,何らかの他の素子
の僅かなアライメントミスは,機械的ピンホールから放射される光ビームに非対称
強度分布を引き起こし,これによりまた,収差が引き起こされる。」(3頁~4
頁)
 ・「本発明の第1の実施例に従えば,以下のものよりなる回折限界共焦マイクロ
スコープが提供される。焦点付け可能な照明エネルギーを供給するためのエネルギ
ー源。単一モード・エネルギーガイド。前記エネルギーガイドは,コアと入射端と
出射端とからなり,エネルギー源よりの照明エネルギーが,入射端により受信さ
れ,コア内にカップリングされ,出射端に導かれて,出射端におけるコアより現れ
るように成されている。コアより現れる照明エネルギーの少なくとも一部を集束さ
せて,使用時に物体と交差する中心部を有する回折限界スポットにする第1集束手
段。使用時における物体の存在下で,スポット内の照明エネルギーと物体との相互
作用の結果として生じる,及び/または,スポット内での照明エネルギーの透過の
結果として生じる,スポットからの出力エネルギーを回収する第2集束手段。開口
と検知素子とを有する検知器。第2集束手段は,前記中心部を開口に集束させる。
本共焦マイクロスコープは,被写界深度をかなりの程度低減し,それによって,開
口上に得る中心部の画像から,焦点外情報をかなりの程度,除去できる。これによ
り,検知器は出力エネルギーを検知する。開口は,ピンホール・開口であってもよ
い。開口は,第2エネルギーガイドのコア内に焦点付けられる出力エネルギーを検
知する出射端を同様に備えたコアを有する,第2エネルギーガイドのエネルギー入
射端におけるコアであってもよい。第2エネルギーガイドは,多重モード・エネル
ギーガイドでも,単一モード・エネルギーガイドであってもよい。」(4頁~5
頁)
 ・「一般的に,第1から第4の実施例においては,開口上に集光乃至集束される
中心部からの出力エネルギーにより形成される集束手段の開口数NA,出力エネル
ギーの波長λ,及び開口,検知素子,或いはコアの平均直径dは,以下の式により
関係付けられる。NA<0.6×λ/d」(12頁~13頁)
 ・「既に上で指摘したように,機械的ピンホール/光源の組み合せは,アライメ
ントを正確に行うことが難しい。機械的ピンホールが適正にアライメントされない
場合は,共焦マイクロスコープの解像度に大きな影響を与え,結果として回折スポ
ットの位置が変則となり,深度調査,及び他の調査の精度の面で重大な結果をもた
らす。それに対して,単一モード光ファイバー/光源の組み合せが適正にアライメ
ントされない場合には,ファイバーの出口端部からの光線の光強度は低下するが,
発生する光線は依然として円形対称である。」(15頁)
 (3-2) 上記の記載によれば,光源側に機械的ピンホールを使用する従来技術にお
いては,解像度を最大限にするために,検知器上のピンホールのサイズは,その上
に集束される回折限界スポットの第1の最小限よりもわずかに小さくなるように選
択されていたことが示されており,回折限界スポットの第1の最小限とは,フレネ
ル回折によるエアリーディスクの零値全幅である1.22×λ/NAと解される
(甲6)から,乙5,6の開示事項からも,回折限界共焦点顕微鏡において,検知
器側の開口の直径をエアリーディスクよりもわずかに小さくすることは,従来知ら
れていたものと認められる。
 しかしながら,甲5の上記記載には,機械的ピンホールは,ほこりの影響やアラ
イメントミスのため,放射される光ビームに非対称強度分布や収差が引き起こされ
ること,本願発明は,エネルギー源,単一モードエネルギーガイド,及び開口と検
知素子とを有する検知器を備え,集束手段の開口数NA,出力エネルギーの波長λ
及び開口の平均直径dは,NA<0.6×λ/dの式により関係付けられること,
単一モード光ファイバー/光源の組み合せが適正にアライメントされない場合に
は,ファイバーの出口端部からの光線の光強度は低下するが,発生する光線は依然
として円形対称であることが示されている。
 これらの記載事項によれば,光源側の開口として機械式ピンホールを用いた場合
には,解像度を最大限にするために,検知器上のピンホールの直径は,回折限界ス
ポット(=1.22×λ/NA)よりもわずかに小さくなるように選択されるが,
光源側の開口として単一モード光ファイバーを用いた場合には,解像度を最大限に
するために,検知器側の開口の平均直径を0.6×λ/NA未満に選択すべきであ
ることが本願明細書に記載されているものと解することができる。さらに,本願発
明においては,光源(エネルギー源)側に単一モードエネルギーガイドを使用する
ことと,検知器側の開口の平均直径が0.6×λ/NA未満であることが,相互に
関連しているものと認められる。
 ところで,光源側の開口として機械式ピンホールを用いた場合には,検知器上の
ピンホールの直径を回折限界スポット(=1.22×λ/NA)よりもわずかに小
さくなるように選択すれば,解像度を最大限にすることができる。しかし,開口の
直径を更に小さくすることは光量の減少を招くだけであるから,「回折限界スポッ
トよりもわずかに小さく」なるようにする以上に小さくすることは,従来技術から
は想到し難いというほかない。
 加えて,被告が援用する乙5,6に記載された事項及び甲5に従来技術として記
載された事項をみても,検知器側の開口直径をエアリーディスク(=1.22×λ
/NA)より小さくすることが示されているのみであり,光源側に単一モード光フ
ァイバーを用いる例は記載されていない。そして,本件全証拠を検討しても,本願
発明に関するもの以外に,光源側の開口として単一モード光ファイバーを用いるこ
とと検知器側の開口の直径との関連付けを示す証拠は見当たらず,ましてや,光源
側の開口として単一モード光ファイバーを用いた場合に,検知器側の開口の直径を
0.6×λ/NA未満にすべきことは,開示されていないというほかない。
 よって,光源(エネルギー源)側に単一モードエネルギーガイドを使用すること
との関連で,検知器側の開口の平均直径を0.6×λ/NA未満とされたものと認
められる本願発明において,上記検知器側の開口の直径を0.6×λ/NA未満に
するについて,従来周知のものであるとか,設計変更にすぎないとか,容易に想到
し得るものとは認められない。
 このように,審決の相違点Bについての判断は是認し得ず,被告の上記主張は失
当である。
 (4) 被告は,回折限界共焦点顕微鏡の光源側に単一モードエネルギーガイドを用
いた場合には,検知器側のピンホールの開口を平均直径が0.6×λ/NA未満と
すると,適切な解像度を得ることができるというようなことは,本願明細書に何ら
記載されていないと主張する。すなわち,本願明細書(甲5)の図3~図6には,
光源側のみならず,検知器側にも光ファイバーを用いた構成が開示されており,さ
らに,本願明細書の詳細な説明の欄の記載では,NA<0.6×λ/dの関係につ
いて,開口,検知素子,コアを同じように扱っているから,本願発明は,光源側と
検知器側に光ファイバーを用いたものであるか,あるいは,光源側,検知器側にか
かわらず,開口,検知素子,あるいはコアの平均直径dを特定したものであり,原
告の主張する「光源側に,『単一モードエネルギーガイド』を用い,検知器側のピ
ンホールの開口を,平均直径が0.6×λ/NA未満とする」場合についての記載
は,本願明細書の詳細な説明の欄には見いだせず,原告の主張は,明細書の記載に
基づかないものであると主張する。
 しかしながら,本願明細書(甲5)には,「開口は,ピンホール・開口であって
もよい。開口は,第2エネルギーガイドのコア内に焦点付けられる出力エネルギー
を検知する出射端を同様に備えたコアを有する,第2エネルギーガイドのエネルギ
ー入射端におけるコアであってもよい。第2エネルギーガイドは,多重モード・エ
ネルギーガイドでも,単一モード・エネルギーガイドであってもよい。」(5頁)
と記載されており,本願発明は,検知器側の開口として光ファイバーを用いるもの
を含むことは明らかである。また,「開口上に集光乃至集束される中心部からの出
力エネルギーにより形成される集束手段の開口数NA,出力エネルギーの波長λ,
及び開口,検知素子,或いはコアの平均直径dは,以下の式により関係付けられ
る。NA<0.6×λ/d」(12頁~13頁)との記載は,「開口上に集光乃至
集束される」との記載からすれば,その開口は検知器側の開口であると解され,
「コア」とは,検知器側の開口に光ファイバーを用いた場合のコアを指しているこ
とが明らかであり,さらに,特許請求の範囲の請求項7には,「開口の平均直径が
0.6×λ/NA未満である検知用開口」と記載されている。
 さらに,本願明細書の特許請求の範囲請求項7及び第1~第4の実施例のすべて
において,光源側の開口は単一モードエネルギーガイドと記載されている。
 そうすると,本願発明は,検知器側の開口としては,ピンホール又は光ファイバ
ーを用いるものを含むが,光源側の開口は,単一モードエネルギーガイドのみが用
いられるものであり,前記(3)に判示したように,光源側に単一モードエネルギーガ
イドを用いることにより,検知器側のピンホールの開口の平均直径を0.6×λ/
NA未満として,適切な解像度を得るものである。
 したがって,被告のこの点についての主張も失当である。
 2 結論
 以上のとおり,原告主張の審決取消事由2は理由があるので,その余の取消事由
について判断するまでもなく,審決は取消しを免れない。
東京高等裁判所第18民事部
    裁判長裁判官   塚  原  朋  一
        裁判官   塩  月  秀  平
        裁判官   田  中  昌  利
【別紙】 審決の理由
不服2000-13616号事件,平成13年10月9日付け審決
(下記は,上記審決の理由の第2項以下について,文書の書式を変更したが,用字
用語の点を含め,その内容をそのまま掲載したものである。)
理 由
(1.は省略)
2.これに対して、原査定の拒絶の理由に引用した特開昭61-219919号公報
(以下、第1引用例という。)には、「次に、上記実施例の具体例として通常顕微
鏡の観察も可能な走査型顕微鏡の光学系を第5図に示す。後で詳述するレーザ光源
53からのレーザビーム54はビームスプリッタ55を通過して対物レンズの瞳位
置と共役な位置に設けられた光偏向器のガルバノメーターミラー56に入射す
る。」(第4頁右上欄第9~14行)、「次にIC標本を観察する場合のように反
射系で検出する場合について説明する。光ビームは試料63で反射され、対物レン
ズ62、結像レンズ61、瞳投影レンズ60、ガルバノメーターミラー59、瞳伝
送レンズ58、57、ガルバノメーターミラー56を通ってビームスプリッタ55
に戻ってくる。即ち試料63に入射した時と全く同じ光路を逆に通って戻ってく
る。ビームスプリッタ55によって反射された検出ビーム70は集光レンズ71に
よって点状に集光される。この位置にピンホール72を挿入し、その後方の検出器
で検出すると高解像の画像が得られる。」(第4頁右下欄第16行~第5頁左上欄
第7行)、及び「第7図はレーザ光源53の光学系の詳細図であって、この場合二
つのレーザ84、85を使用している。86、87は音響光変調器でレーザ光の強
度を変調するものである。88、89は集光レンズ、90、91はスペーシャルフ
ィルタ(ピンホール)、92、93はビーム径を適切な径に変換するコリメータで
ある。コリメータ92、93を通った光は切換えミラー94により光路が選択さ
れ、図中のレーザビーム54を形成する。」(第5頁右下欄第3~11行)との記
載があり、結局、(a)焦点付け可能な照明エネルギーを供給するレーザ84、8
5と、
(b)レーザ84、85からの照明エネルギーを通すピンホール90、91と、
(c)(i)該ピンホール90、91から現れた照明エネルギーの少なくとも一部
を集束させて、使用時に試料63と交差する回折限界スポットにし、
(ii)スポット内の照明エネルギーと試料63との相互作用の結果生じる及び/又
はスポット内での照明エネルギーの透過の結果生じるスポットからの出力エネルギ
ーを回収し、
(iii)回収された出力エネルギーを再び回折限界スポットに集束させる、共焦
形式に構成されたコリメータ92、93及び対物レンズ62と、
(d)回収された出力エネルギーを検知のため方向付けるビームスプリッタ55
と、
(e)ピンホール72と検知素子とを有して、ビームスプリッタ55によって方向
付けられ集束手段によって回折限界スポットに集束された出力エネルギーが前記ピ
ンホール72に位置づけられるよう成された、出力エネルギーを検知する検出器7
4、75とから成る、回折限界共焦点顕微鏡が記載されている。
 同じく引用した実願昭60-5617号(実開昭61-122518号)のマイ
クロフイルム(以下、第2引用例という。)には、「本考案ではレンズ2およびレ
ンズ3によって平行にされ重ねあわせられた双方向の光は受光器6に入射する前に
レンズ9によって小さく集光される。さらにその集光点にピンホール10または光
ファイバからなるノイズ光除去装置が設置されており、それを通過した後、受光器
6に入射する。・・・したがってピンホールの直径や光ファイバのコア径を十分小
さくすれば信号光と反射光を分離でき信号光のみ受光器に入射できる。」(第3頁
第16行~第4頁第8行)との記載がある。
3.そこで、本願請求項7に係る発明と第1引用例記載のものとを対比すると、本願
請求項7に係る発明の「エネルギー源」、「物体」、「集束手段」、「エネルギー
スプリッター」、「検知用開口」、「検知器」は、夫々第1引用例記載のものの
「レーザ84、85」、「試料63」、「コリメータ92、93及び対物レンズ6
2」、「ビームスプリッタ55」、「ピンホール72」、「検出器74、75」に
相当するから、両者は、(a)焦点付け可能な照明エネルギーを供給するエネルギ
ー源と、
(b)エネルギー源からの照明エネルギーが通る光学部材と、
(c)(i)該出射端から現れた照明エネルギーの少なくとも一部を集束させて、
使用時に物体と交差する回折限界スポットにし、
(ii)スポット内の照明エネルギーと物体との相互作用の結果生じる及び/又はス
ポット内での照明エネルギーの透過の結果生じるスポットからの出力エネルギーを
回収し、
(iii)回収された出力エネルギーを再び回折限界スポットに集束させる、共焦
形式に構成された集束手段と、
(d)回収された出力エネルギーを検知のため方向付けるエネルギースプリッター
と、
(e)検知用開口と検知素子とを有して、エネルギースプリッターによって方向付
けられ集束手段によって回折限界スポットに集束された出力エネルギーが前記検知
用開口に位置づけられるよう成された、出力エネルギーを検知する検知器とから成
る、回折限界共焦点顕微鏡で一致し、
A光学部材が、本願請求項7に係る発明は、コアと入射端と出射端とから成る単一
モードエネルギーガイドであるのに対して、第1引用例は、ピンホール90、91
である点、
B本願請求項7に係る発明は、検知用開口の平均直径が0.6×λ/N.A.未満(こ
こでλは出力エネルギーの波長、N.A.は焦点位置すなわち検知用開口の開口位置
において前記集束手段によって画定される錐角の半角を用いて定義される該集束手
段の開口数である)であるのに対して、第1引用例には、そのような記載が無い点
で相違する。
4.そこで、先ず、相違点Aについて検討すると、
第2引用例には、「集光点にピンホール10または光ファイバ(本願請求項7に係
る発明の単一モードエネルギーガイドに相当する。)からなるノイズ光除去装置が
設置されと」の記載があり、ピンホール10または光ファイバが択一的に用いられ
ることを示唆している。
 してみれば、相違点Aの構成、さらに、ピンホールに換えて光ファイバを用いる
ことが、第2引用例に開示ないし示唆されている。
 次に、相違点Bについて検討すると、一般に、開口の直径をエアリーディスクよ
りも小さくして回折光強度の大きい部分の光を使用することは、従来周知(矢島 
達夫外3名編『新版 レーザーハンドブック』1989年6月15日初版第1刷、
株式会社 朝倉書店発行、第36~37頁には、(2.5.2)式として、Δθ=0.
514λ/Dと半値半幅角の記載があり、レーザー学会編『レーザーハンドブック』
昭和57年12月15日第1版第1刷、株式会社 オーム社発行、第105頁に
は、(9・50)式として、ΔθH=1.03(λ/2a)と半値全幅の記載があ
る。)である。 上記(2.5.2)式より、D=0.514λ/Δθが導かれ、上記
(9・50)式より、2a=1.03(λ/ΔθH)が導かれ、これを半値半幅に換
算すると、2a=0.5(λ/ΔθH)が導かれ、何れの係数も0.6未満である。
5.したがって、本願請求項7に係る発明は、第1引用例、第2引用例及び周知技
術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、本願
請求項7に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることがで
きない。
 よって、結論のとおり審決する。
   平成13年10月9日

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