弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
       本件上告を棄却する。
         理    由
 検察官の上告趣意のうち,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用する
ものであるから,本件に適切でなく,その余は,単なる法令違反の主張であって,
刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 所論にかんがみ,第1審判決判示第2の詐欺罪の成否について検討する。
 1 原判決が前提とする第1審判決の認定によれば,被告人は,不正に入手した
A名義の国民健康保険被保険者証を使用して同人名義の預金口座を開設し,これに
伴って預金通帳を取得しようとの意図の下に,同人名義の「口座開設のお客さま用
新規申込書」を偽造し,これが真正に成立し,かつ,自己がA本人であるかのよう
に装って,上記国民健康保険被保険者証,Aと刻した印鑑と共に銀行窓口係員に提
出して行使し,同係員らをしてその旨誤信させ,同係員から貯蓄総合口座通帳1冊
の交付を受けたというのである。
 2 第1審判決は,上記と同旨の事実を認定し,有印私文書偽造罪,同行使罪の
ほか,詐欺罪についても被告人を有罪とした。これに対し,原判決は,預金通帳は
預金口座開設に伴い当然に交付される証明書類似の書類にすぎず,銀行との関係に
おいては独立して財産的価値を問題にすべきものとはいえないところ,他人名義に
よる預金口座開設の利益は詐欺罪の予定する利益の定型性を欠くから,それに伴う
預金通帳の取得も刑法246条1項の詐欺罪を構成しないとして,第1審判決を破
棄し,詐欺罪の成立を否定した。
 3 しかし,【要旨】預金通帳は,それ自体として所有権の対象となり得るもの
であるにとどまらず,これを利用して預金の預入れ,払戻しを受けられるなどの財
産的な価値を有するものと認められるから,他人名義で預金口座を開設し,それに
伴って銀行から交付される場合であっても,刑法246条1項の財物に当たると解
するのが相当である。そして,被告人は,上記のとおり,銀行窓口係員に対し,自
己がA本人であるかのように装って預金口座の開設を申し込み,その旨誤信した同
係員から貯蓄総合口座通帳1冊の交付を受けたのであるから,被告人に詐欺罪が成
立することは明らかである。そうすると,詐欺罪の成立を否定した原判決には,刑
法246条1項の解釈適用を誤った違法があるというべきである。
 ところで,本件詐欺罪の対象となった上記通帳自体の価額は少額であることに加
え,本件詐欺罪は,有印私文書偽造罪,同行使罪と牽連犯の関係にあるところ,こ
れらの罪については有罪とされており,しかも,以上は,他の9件の窃盗罪等と併
合罪の関係にあるとされていることなどを考慮すると,上記法令違反をもって刑訴
法411条により原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められな
い。
 よって,同法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主
文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 滝井繁男 裁判官 福田 博 裁判官 北川弘治 裁判官 亀山
継夫 裁判官 梶谷 玄)

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