弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人香川保一、同青木康、同上野至、同東光宏、同多田雅美、同川中繁徳、
同三上耕一の上告理由第一の一、二及び三(一)について。
 論旨は、原判決が、本件青色申告書提出承認取消しの通知書に取消しの基因とな
つた事実の附記がないことを理由として、右承認取消処分を違法としたのは、昭和
四〇年法律第三四号による改正前の法人税法(昭和二二年法律第二八号。以下、「
旧法人税法」という。)二五条九項後段の規定の解釈適用を誤つたものである、と
いうのである。
 よつて、考えるに、旧法人税法二五条は、その八項において、青色申告書提出承
認の取消し(以下、単に承認の取消しという。)の事由を一号ないし五号に掲げる
五つに限定したうえ、その九項において、右取消しをしたときは、その旨を当該法
人に通知し、その通知の書面には取消しの基因となつた事実が同条八項各号のいず
れに該当するかを附記しなければならないものと定めている。同法が承認取消しの
通知書にこのような附記を命じたのは、承認の取消しが右の承認を得た法人に認め
られる納税上の種々の特典(前五事業年度内の欠損金額の繰越し、推計課税の禁止、
更正理由の附記等)を剥奪する不利益処分であることにかんがみ、取消事由の有無
についての処分庁の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに、
取消しの理由を処分の相手方に知らせることによつて、その不服申立てに便宜を与
えるためであり、この点において、青色申告の更正における理由附記の規定(同法
三二条)その他一般に法が行政処分につき理由の附記を要求している場合の多くと
その趣旨、目的を同じくするものであると解される。そうであるとすれば、そこに
おいて要求される附記の内客及び程度は、特段の理由のないかぎり、いかなる事実
関係に基づきいかなる法規を適用して当該処分がされたのかを、処分の相手方にお
いてその記載自体から了知しうるものでなければならず、単に抽象的に処分の根拠
規定を示すだけでは、それによつて当該規定の適用の原因となつた具体的事実関係
をも当然に知りうるような例外の場合を除いては、法の要求する附記として十分で
ないといわなければならない。
 この見地に立つて旧法人税法二五条の規定をみるに、同条八項各号に掲げられた
承認取消しの事由は、青色申告制度の基盤をなす納税者の誠実性ないしその帳簿書
類の信頼性が欠けると認められる場合を類型化したものであるが、具体的事案にお
いていかなる事実がこれに該当するとされるのかは必ずしも明らかでなく、特に同
項三号の取消事由は極めて概括的で具体性に乏しいため、取消通知書に同号に該当
する旨附記されただけでは、処分の相手方は、帳簿書類の記載事項の全体について
その真実性が疑わしいとされた理由が、取引の全部又は一部を隠ぺいし若しくは仮
装したことによるのか、それともそれ以外の理由によるのか、また、右の隠ぺい又
は仮装が帳簿書類のどの部分におけるいかなる取引に関するのか等を、その通知書
によつて具体的に知ることはほとんど不可能であるといわなければならない。のみ
ならず、承認の取消しは、形式上同項各号に該当する事実があれば必ず行なわれる
ものではなく、現実に取り消すかどうかは、個々の場合の事情に応じ、処分庁が合
理的裁量によつて決すべきものとされているのであるから、処分の相手方としては、
その通知書の記載からいかなる態様、程度の事実によつて当該取消しがされたのか
を知ることができるのでなければ、その処分につき裁量権行使の適否を争う的確な
手がかりが得られないこととなるのである。
 以上の点から考えると、同条九項後段の規定は、その文言上だけからは、一見、
取消しが同条八項各号のいずれによるものであるかのみを附記すれば足りるとする
もののようにみえないでもないけれども、このような解釈が前記理由附記の趣旨、
目的にそうものでないことは明らかであり、他方、そのような不十分な附記で足り
るとする特段の合理的理由も認められないのである(取消しを行なう処分庁として
は、既に具体的な取消事由についての調査を経ているはずであるから、これを具体
的に処分の相手方に通知すべきものとしても、さほど困難な事務処理を強いられる
ものとは考えられない。)から、同条八項三号におけるように該当号数を示しただ
けでは取消しの基因となつた具体的事実を知ることができない場合には、通知書に
当該号数を附記するのみでは足りず、右基因事実自体についても処分の相手方が具
体的に知りうる程度に特定して摘示しなければならないものと解するのが相当であ
る。このように解しても、必ずしも所論のいうように同条項の文理及び立法経過と
相容れないものということはできないし、また、同条項が前記青色申告の更正の理
由附記に関する規定とその形式を異にする点も、承認取消処分と更正処分の性質、
内容の違いを考慮すれば、いまだ右の解釈を妨げる根拠とするに足りない。
 所論は、承認の取消しに当たつては、それに先行する税務調査の過程で帳簿書類
の不備、不正の点が具体的に問題とされ、承認取消処分と同時に更正処分が行なわ
れるのが通例であつて、これにより、処分の相手方は具体的な取消事由を十分了知
することができるから、そのうえ更に、取消通知書に右事由を附記させるべき合理
的理由はないと主張する。しかし、税務調査の過程において帳簿書類の不備等が指
摘されたとしても、これにより処分庁が最終的判断としていかなる事実を取消事由
と認めたのかを知りうるものではなく、また、承認取消処分が常に理由の附記され
た更正処分を伴うとも限らないのであるから、取消通知書に事実の附記がなくても
処分の相手方が具体的な取消事由を知りうるのが通例であるとは、とうてい認める
ことができない。所論は、更に、一般的には取消しの基因となつた事実を附記すべ
きであるとしても、少なくとも処分の相手方において現実に右事実を了知し、かつ、
これを自認していたような場合には、その附記を要しないものと解すべきである旨
主張するが、右附記を命じた規定の趣旨が、処分の相手方の不服申立てに便宜を与
えることだけでなく、処分自体の慎重と公正妥当を担保することにもあることから
すれば、取消しの基因たる事実は通知書の記載自体において明らかにされているこ
とを要し、相手方の知、不知にはかかわりがないものというべきである。
 以上によれば、単に「法二五条八項三号に該当する。」と附記されているにすぎ
ない本件承認取消しの通知書は、法の定める附記の要件を欠くものというほかなく、
これと同趣旨の原審の判断は相当であつて、原判決に所論の違法はない。論旨は、
右と異なる見解に立つて原判決を非難するに帰し、採用することができない。
 同第一の三(二)について。
 論旨は、本件承認取消通知書の附記の瑕疵は、右取消処分に対する再調査決定及
び審査決定の書面に具体的な取消事由が記載されたことによつて治癒されたものと
解すべきであり、これを認めなかつた原判決は違法である、というのである。
 しかし、旧法人税法二五条九項後段の規定の趣旨が前記のとおりであることにか
んがみれば、右規定に違反した取消処分の瑕疵は、後日、再調査決定又は審査決定
において処分の具体的根拠が示されたとしても、それにより治癒されるものではな
いと解すべきであり、このことは、当裁判所判例(昭和四三年(行ツ)第六一号同
四七年一二月五日第三小法廷判決・民集二六巻一〇号一七九五頁)の趣旨に徴して
明らかである。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
 同第二について。
 論旨は、被上告人には本件承認取消処分の取消しを求める利益がないと主張する。
 しかし、記録によれば、被上告人の本件係争事業年度の法人税及び加算税が既に
確定ずみであること、また、被上告人が昭和四一年四月一日から同四二年三月三一
日までの事業年度以降の法人税について新たに青色申告書提出の承認を受けている
ことは認められるが、本件承認取消処分の取消しを得ても、被上告人の係争事業年
度後の事業年度の法人税等が全く影響を受けない関係にあることを確認するに足り
る資料はない。したがつて、被上告人に右処分の取消しを求める法律上の利益がな
いということはできず、論旨は採用することができない。
 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官
全員の一致で、主文のとおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    藤   林   益   三
            裁判官    下   田   武   三
            裁判官    岸       盛   一
            裁判官    岸   上   康   夫

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