弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
       本件上告を棄却する。
       当審における未決勾留日数中510日を本刑に算入する。
         理    由
 弁護人長尾博史の上告趣意のうち,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を
引用するものであって,本件に適切でなく,その余は,単なる法令違反,事実誤認
の主張であって,いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 なお,所論にかんがみ,第1審判決の判示第1の事実について,職権により判断
する。
 1 原判決及びその是認する第1審判決の認定並びに記録によれば,本件に関す
る事実関係は,以下のとおりである。
 (1) 被告人は,妻と共謀の上,長女が通学する小学校の担任教諭の所有に係る
自動車(以下「被害車両」という。)に放火しようと企て,本件当日午後9時50
分ころ,同小学校教職員用の駐車場に無人でとめられていた被害車両に対し,ガソ
リン約1.45lを車体のほぼ全体にかけた上,これにガスライターで点火して放
火した。
 (2) 本件駐車場は,市街地にあって,公園及び他の駐車場に隣接し,道路を挟
んで前記小学校や農業協同組合の建物に隣接する位置関係にあった。また,本件当
時,前部を北向きにしてとめられていた被害車両の近くには,前記教諭以外の者の
所有に係る2台の自動車が無人でとめられており,うち1台(以下「第1車両」と
いう。)は被害車両の左側部から西側へ3.8mの位置に,他の1台(以下「第2
車両」という。)は第1車両の左側部から更に西側へ0.9mの位置にあった。そ
して,被害車両の右側部から東側に3.4mの位置には周囲を金属製の網等で囲ん
だゴミ集積場が設けられており,本件当時,同所に一般家庭等から出された可燃性
のゴミ約300kgが置かれていた。
 (3) 被害車両には,当時,約55lのガソリンが入っていたが,前記放火により
被害車両から高さ約20ないし30cmの火が上がっているところを,たまたま付
近に来た者が発見し,その通報により消防車が出動し,消火活動により鎮火した。
消防隊員が現場に到着したころには,被害車両左後方の火炎は,高さ約1m,幅約
40ないし50cmに達していた。
 (4) 本件火災により,被害車両は,左右前輪タイヤの上部,左右タイヤハウス
及びエンジンルーム内の一部配線の絶縁被覆が焼損し,ワイパーブレード及びフロ
ントガラスが焼けてひび割れを生じ,左リアコンビネーションランプ付近が焼損し
て焼け穴を作り,トランクの内部も一部焼損し,更に第1,第2車両と前記ゴミ集
積場に延焼の危険が及んだ。
 2 所論は,刑法110条1項にいう「公共の危険」は,同法108条,109
条所定の建造物等への延焼のおそれに限られる旨主張する。しかし,【要旨1】同
法110条1項にいう「公共の危険」は,必ずしも同法108条及び109条1項
に規定する建造物等に対する延焼の危険のみに限られるものではなく,不特定又は
多数の人の生命,身体又は前記建造物等以外の財産に対する危険も含まれると解す
るのが相当である。そして,【要旨2】市街地の駐車場において,被害車両からの
出火により,第1,第2車両に延焼の危険が及んだ等の本件事実関係の下では,同
法110条1項にいう「公共の危険」の発生を肯定することができるというべきで
ある。本件について同項の建造物等以外放火罪の成立を認めた原判決の判断は,正
当である。
 よって,刑訴法414条,386条1項3号,刑法21条により,裁判官全員一
致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 金谷利廣 裁判官 濱田邦夫 裁判官 上田豊三 裁判官 藤田
宙靖)

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