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平成17年(行ケ)第10793号特許取消決定取消請求事件
平成18年5月11日口頭弁論終結
判決
原告マシモ・コーポレイション
訴訟代理人弁理士深見久郎
同森田俊雄
同仲村義平
同竹内耕三
同堀井豊
同野田久登
同酒井將行
被告特許庁長官中嶋誠
指定代理人高見重雄
同高橋泰史
同立川功
同大場義則
主文
1特許庁が異議2003-70832号事件について平成17年
6月30日にした決定のうち,「特許第3363150号の請求
項1ないし5,20ないし27に係る特許を取り消す。」(ただ
し,訂正2006-39008号審決による訂正前の請求項)と
の部分を取り消す。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1請求
主文1項と同旨
第2当事者間に争いのない事実
1手続の経緯
原告は,発明の名称を「パルスオキシメータおよびパルスオキシメータの中の
プロセッサ」とする特許第3363150号(1992年3月5日国際出願
〔優先日:1991年3月7日,米国〕,平成14年10月25日設定登録。
以下「本件特許」という。登録時の請求項の数は27である。)の特許権者で
ある。
本件特許について特許異議の申立てがなされた(異議2003-70832
号)ところ,原告は,平成16年6月18日,本件特許に係る明細書(以下
「本件明細書」という。)を訂正する請求をした(なお,原告は,平成17年
5月16日,上記訂正に係る訂正請求書を補正した。以下,この補正後の訂正
を「本件第1訂正」という。)。特許庁は,審理の結果,平成17年6月30
日,「訂正を認める。特許第3363150号の請求項1ないし5,10ない
し19,20ないし27に係る特許を取り消す。同請求項6ないし9に係る特
許を維持する。」との決定(以下「本件決定」という。)をし,その謄本は,
同年7月19日,原告に送達された。
なお,原告は,本訴の第2回弁論準備手続期日(平成18年5月11日)に
おいて,本件決定中「特許第3363150号の請求項10ないし19に係る
特許を取り消す。」(ただし,訂正2006-39008号審決による訂正前
の請求項)との部分の取消を求めた部分について,訴えを取り下げ,被告はこ
れに同意した。
2本件決定の理由
本件決定中,「特許第3363150号の請求項1ないし5,20ないし2
7に係る特許を取り消す。」との部分に係る理由の要点は,次のとおりである。
(1)本件特許の請求項1~5に係る発明は,本件特許の出願前に頒布された刊
行物(特開平2-172443号公報)に記載された発明及び周知技術に基
づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法2
9条2項の規定により特許を受けることができない。
(2)本件特許の請求項20に係る発明は,「最小自乗アルゴリズムは前記強度
信号の不所望成分の組合せに従って最適化される」との構成を有するところ,
「最適化」の技術内容,「最小アルゴリズム」が「最適化される」というこ
との技術内容が不明確であるから,その構成を明確に把握することができず,
請求項20の記載は,特許法36条5項2号の規定に違反するものであり,
請求項20を直接的又は間接的に引用する請求項21ないし27の記載も,
特許法36条5項2号の規定に違反するものである。
3訂正審決の確定
原告は,本訴の提起の日から90日以内である平成18年1月17日,本件
明細書の訂正をすることについて審判を請求した(訂正2006-39008
号)ところ,特許庁は,平成18年3月29日,この訂正(以下「本件第2訂
正」という。)を認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。)をし,同
審決は確定した。なお,本件第2訂正により,従前の請求項10~19が削除
され,請求項20~27が新たな請求項10~17とされた。
4特許請求の範囲
(1)本件第2訂正前(本件第1訂正後)の本件特許の請求項1~5,20~2
7の記載は,次のとおりである。
1.パルスオキシメータであって,
拍動で送られる血液を有する体組織を通る透過によって減衰された少なく
とも第1および第2の波長の光を受けるように構成された少なくとも1つの
光検出器を含み,少なくとも1つの光検出器は,第1の波長の光に基づく第
1の信号と第2の波長の光に基づく第2の信号とを生成し,さらに
前記第1および第2の信号をデジタル化して,第1および第2のデジタル
化された信号を発生するアナログ-デジタル変換器と,
閉ループ適応アルゴリズムを用いて,酸素飽和度を計算するのに用いるた
めに前記第1および第2のデジタル化された信号に作用するプロセッサとを
含む,パルスオキシメータ。
2.前記閉ループ適応アルゴリズムは最小自乗アルゴリズムを含む,請求
項1に記載のパルスオキシメータ。
3.前記閉ループ適応アルゴリズムは最小自乗格子を含む,請求項1に記
載のパルスオキシメータ
4.前記閉ループ適応アルゴリズムは適応ノイズキャンセラの成分である,
請求項1に記載のパルスオキシメータ。
5.ディスプレイをさらに含む,請求項1に記載のパルスオキシメータ。
20.パルスオキシメータの中のプロセッサであって,閉ループ最小自乗
アルゴリズムを用いて,拍動で送られる患者の血液によって減衰された第1
および第2の波長の光から生じる強度信号に作用してそれ自体の伝達関数を
調節し,前記最小自乗アルゴリズムは前記強度信号の不所望成分の組合せに
従って最適化される,プロセッサ。
21.収束に対する前記閉ループ最小自乗アルゴリズムの効果は,酸素飽
和度を計算するのに用いるための強度信号を最適化することである,請求項
20に記載のプロセッサ。
22.前記強度信号は少なくとも所望される部分とノイズ部分とを有する,
請求項20に記載のプロセッサ。
23.前記最小自乗アルゴリズムの効果はノイズ部分を低減することであ
る,請求項22に記載のプロセッサ。
24.前記ノイズ部分は前記所望される部分と相関していない,請求項2
3に記載のプロセッサ。
25.前記閉ループ最小自乗アルゴリズムの効果はノイズ部分を低減する
ことである,請求項24に記載のプロセッサ。
26.前記ノイズ部分は患者の動きによって少なくとも部分的に引起され
る,請求項22に記載のプロセッサ。
27.前記最小自乗アルゴリズムの効果はノイズ部分を低減することであ
る,請求項26に記載のプロセッサ。
(2)本件第2訂正後の特許請求の範囲の請求項1~5,10~17は,次のと
おりである。(下線部が本件第1訂正後のものと比較した場合の訂正箇所で
ある。)
1.パルスオキシメータであって,
拍動で送られる血液を有する体組織を通る透過によって減衰された少なく
とも第1および第2の波長の光を受けるように構成された少なくとも1つの
光検出器を含み,少なくとも1つの光検出器は,第1の波長の光に基づく第
1の信号と第2の波長の光に基づく第2の信号とを生成し,さらに
前記第1および第2の信号をデジタル化して,第1および第2のデジタル
化された信号を発生するアナログーデジタル変換器と,
閉ループ適応アルゴリズムを用いて前記第1および第2のデジタル化され
た信号に作用して酸素飽和度の計算に用いるための信号を生成するプロセッ
サとを含み,前記第1および第2のデジタル化された信号の関数が前記閉ル
ープ適応アルゴリズムの伝達関数を適応させるために用いられ,前記閉ルー
プ適応アルゴリズムは前記第1および第2のデジタル化された信号の不所望
のノイズ成分を除去することにより,前記酸素飽和度の計算に用いられる信
号のノイズ成分を低減する,パルスオキシメータ。
2.前記閉ループ適応アルゴリズムは最小自乗アルゴリズムを含む,請求
項1に記載のパルスオキシメータ。
3.前記閉ループ適応アルゴリズムは最小自乗格子を含む,請求項1に記
載のパルスオキシメータ。
4.前記閉ループ適応アルゴリズムは適応ノイズキャンセラの成分である,
請求項1に記載のパルスオキシメータ。
5.ディスプレイをさらに含む,請求項1に記載のパルスオキシメータ。
10.パルスオキシメータの中のプロセッサであって,閉ループ最小自乗
アルゴリズムを用いて,拍動で送られる患者の血液によって減衰された第1
および第2の波長の光から生じる強度信号に作用してそれ自体の伝達関数を
調節し,前記伝達関数は前記強度信号の不所望成分の組合せに従って適応的
に調整されて前記不所望成分を低減する,プロセッサ。
11.収束に対する前記閉ループ最小自乗アルゴリズムの効果は,酸素飽
和度を計算するのに用いるための強度信号を最適化することである,請求項
10に記載のプロセッサ。
12.前記強度信号は少なくとも所望される部分とノイズ部分とを有する,
請求項10に記載のプロセッサ。
13.前記最小自乗アルゴリズムの効果はノイズ部分を低減することであ
る,請求項12に記載のプロセッサ。
14.前記ノイズ部分は前記所望される部分と相関していない,請求項1
3に記載のプロセッサ。
15.前記閉ループ最小自乗アルゴリズムの効果はノイズ部分を低減する
ことである,請求項14に記載のプロセッサ。
16.前記ノイズ部分は患者の動きによって少なくとも部分的に引起され
る,請求項12に記載のプロセッサ。
17.前記最小自乗アルゴリズムの効果はノイズ部分を低減することであ
る,請求項16に記載のプロセッサ。
第3原告主張の取消事由の要点
本件訂正審決の確定により,特許請求の範囲の記載が遡及的に訂正されるた
め,本件決定中「特許第3363150号の請求項1ないし5,20ないし2
7に係る特許を取り消す。」(ただし,本件第2訂正前の請求項)との部分は,
結果的に発明の要旨の認定を誤ったことになるから,取り消されるべきである。
第4当裁判所の判断
当事者間に争いのない事実(前記2)によれば,本件決定は,本件第2訂正前
(本件第1訂正後)の請求項1ないし5,20ないし27の記載に基づいて上記
各請求項に係る発明を認定し,これを前提に,請求項1ないし5については特許
法29条2項の規定,請求項20ないし27については同法36条5項2号の規
定に,それぞれ違反して特許されたものと判断して,上記各請求項につき特許を
取り消したものであるところ,本件決定の取消しを求める本訴係属中に,当該特
許に係る特許請求の範囲の減縮を含む訂正の審判が請求され,特許庁はこれを認
める審決(本件訂正審決)をし,これが確定したものである。
そうすると,本件決定は,結果として,請求項1ないし5,20ないし27
(ただし,本件第2訂正前の請求項)について判断の対象となるべき発明の要旨
の認定を誤ったことになり,この誤りが上記各請求項についての決定の結論に影
響を及ぼすことは明らかである。したがって,本件決定は,上記各請求項に関す
る部分につき取消しを免れない。
以上によれば,原告の請求は理由があるから,これを認容することとし,訴訟
費用については,本件訴訟の経過にかんがみ,これを原告に負担させるのを相当
と認め,主文のとおり判決する。
知的財産高等裁判所第3部
三村量一裁判長裁判官
古閑裕二裁判官
嶋末和秀裁判官

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