弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人一松弘および同朴宗根の各上告理由について。
 所論の各点に関する原審の事実認定は、原判決の挙示する証拠関係に照らして、
是認しえないものではない。したがつて、右事実認定の違法をいう所論は、結局、
原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を争うものにすぎない。
 ところで、原審の確定した右事実関係によれば、訴外Dは、上告人に対し、訴訟
行為をなさしめることを主たる目的として本件手形の裏書をしたというのである。
してみれば、右の裏書は取立委任のためになされたものにほかならず、本件手形は
右Dから上告人に対していわゆる隠れた取立委任裏書のなされた手形であるといわ
なければならない。そして、右のような裏書は、裏書人が自己の有する手形債権の
取立のため、その手形上の権利を信託的に被裏書人に移転するものと解すべきであ
る(当裁判所昭和二九年(オ)第八六号・同三一年二月七日第三小法廷判決、民集
一〇巻二号二七頁参照)ところ、信託法一一条は訴訟行為をなさしめることを主た
る目的として財産権の移転その他の処分をなすことを禁じ、これに違反する行為を
無効とするのであるから、本件のように隠れた取立委任のための手形の裏書が訴訟
行為をなさしめることを主たる目的としてなされた場合においては、たんに手形外
における取立委任の合意がその効力を生じないのにとどまらず、手形上の権利の移
転行為である裏書自体もまたその効力を生じえないものと解するのが相当である。
したがつて、上告人は、訴外Dのした裏書によつては手形上の権利を取得しえなか
つたものというべきであり、被上告人らは上告人が手形上の権利を有しないことを
主張して、その手形上の請求を拒絶することが許されることは明らかである。それ
ゆえ、これと同旨に出て上告人の被上告人らに対する本件手形金請求を排斥した原
審の判断は正当である。その余の論旨は、原審の認定にそわない事実を前提とする
ものにすぎない。原判決に所論の違法はなく、論旨は、すべて採用することができ
ない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官大隅健一郎の意見があ
るほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 裁判官大隅健一郎の意見は次のとおりである。
 本判決の結論には賛成であるが、多数意見がいわゆる手形の隠れた取立委任裏書
をもつて裏書人がその手形上の権利を信託的に被裏書人に移転するものと解すべき
であるとする点には、同調することができない。もつとも、本件ではこの点が直接
の論点となつているわけではないから、左に私の意見の結論だけを述べておきたい。
 私は、手形の隠れた取立委任裏書は、裏書人が、譲渡裏書の形式により、被裏書
人に手形上の権利者たる形式的資格とともに、自己の名をもつて裏書人の手形上の
権利を行使する権限(いわゆる授権、エルメヒテイグンク)を与えるものと解する
のが、妥当であると考える。それが最もよく当事者の追求する経済的利益に適合す
るのはもとより、これによつてなんら第三者の利益ないし公共の利益を害するとこ
ろはないからである。この見解によれば、手形の隠れた取立委任裏書にあつては、
被裏書人は手形上の権利者たる形式的資格とともに自己の名をもつてその手形上の
権利を行使する権限を与えられるが、手形上の権利自体は依然として裏書人に帰属
しているのであるから、かかる裏書が信託法一条にいわゆる財産権の移転その他の
処分に当たるかどうか、ひいて同法所定の信託に当たるかどうかにつき、疑問を生
ずるのを免れないであろう。しかし、たといそれが直接には信託法にいわゆる信託
に当たらないとしても、この種の裏書が訴訟行為をなさしめることを主たる目的と
するものである場合には、同法一一条の禁止に触れるものと解すべきことは、同条
の立法の趣旨に照らして明らかであると考える。それゆえ、私のような見解をとつ
ても、本件においてDから上告人に対してなされた手形の隠れた取立委任裏書は同
条の類推適用により無効と解せられるのであつて、その点では格別多数意見と異な
るところはない。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    岩   田       誠

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