弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人等の負担とする。
         理    由
 上告人両名代理人弁護士正木晃、上告人両名指定代理人板井俊雄及び津田晋介の
各上告理由について。
 自作農創設特別措置法(以下自創法という。)三条一項及び五項の各号の規定は、
一般的に政府が自作農創設のため買収する目的物たる土地が右各号所定のいずれか
の農地に該当しなければならないことを定めたに過ぎないものである。しかし、政
府のなした一定の土地に対する具体的買収処分の有効要件として、その目的物が右
各号所定のいずれかの農地に該当すれば足ることを定めた趣旨のものと解すること
はできない。農地買収計画を立てることは市町村農地委員会の権限であり、農地の
買収処分はこの市町村農地委員会の定める農地買収計画に基いてなされなければな
らないのである(同法六条一項)。それゆえ、買収計画とこれに基いてなされる買
収処分とは不可分一体をなすものであり、また、その買収計画はその目的物が同条
項各号所定のいずれの農地に該当するかを考察して立てらるべきであり、漫然その
いずれかに該当するであろうというがごとき予想の下にこれを立てることは許され
ないのであるから、もし目的物が買収計画の根拠とされた農地に該当しないときは、
かかる計画に基いてはこれを買収することはできないものといわざるを得ない。こ
のことたるやたまたまその目的物が買収計画の根拠とされた以外の買収し得べき農
地に該当する場合にあつてもその結論を異にするものではない。けだしもし然らず
とすれば買収計画に基かない買収処分を許容する結果となり、被買収地の所有者の
利害を考慮するだけでも到底認容し得ないことは明らかだからである。自創法三条
一項及び五項各号による農地の買収はそれぞれその理由を異にし、また、買収され
る農地の如何は自作農となるべきものに差異を来たすこともあり得るのであり(同
条五項四号、五号、同法施行令一七条一項一号、七号参照)、また同条五項による
買収にあつては都道府県農地委員会または市町村農地委員会が政府の買収を相当と
認めることを前提とし、その認定行為もその目的物が同項各号所定のいずれの農地
に該当するかによつてその結論を異にすることあるべきは当然であるから、同法条
所定の一の農地として立てられた買収計画を他の農地としての買収計画と見ること
は許されないものといわざるを得ないのである。本件県農地委員会は、本件A地区
農地委員会の立てた農地買収計画を審査して、裁決することはできるが、その裁決
において従来の買収計画と異なる新たなる買収計画を定めたり、又は新たなる買収
計画を定めるに等しい見解をもつて、原委員会の定めた買収計画の違法を適法化す
ることはできない(自創法四七条参照)。
 されば右と同旨に出でた原判決は正当であり、これと反対の見地に立つ論旨には
賛同することを得ない。
 よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと
おり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    真   野       毅
            裁判官    斎   藤   悠   輔
            裁判官    岩   松   三   郎

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