弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
     本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人津田玄児の上告趣意第一点について
 所論の前段は、憲法三一条違反をいうが、その内容とするところは、原審がなん
ら事実調を行なわず記録調査だけによつて控訴趣意の各主張を斥け被告人の控訴を
棄却したのは不当であるというのであつて、実質において単なる審理不尽の違法を
いうに帰するものであるから、適法な上告理由にあたらない。また、所論の後段は、
憲法一四条ならびに三一条違反をいうのであるが、その実質は、本件における被告
人の窃盗犯行が常習としてなされたものと認定されたことについての非難であつて、
事実誤認ないし単なる法令違反の主張に帰し、適法な上告理由にあたらない。
 同上告趣意第二点について。
 所論は判例違反をいうので、検討するに、所論引用の仙台高等裁判所昭和三六年
三月一六日判決(下級裁判所刑事裁判例集三巻三・四合併号二〇四頁)は、盗犯等
の防止及び処分に関する法律(以下盗犯等防止法という)二条二号にいう「二人以
上現場ニ於テ共同シテ犯シタルトキ」の解釈適用につき、「右にいわゆる共同とは、
共謀者中二人以上の者が現場において、窃盗の実行行為に出た以上、他の者は現に
その実行行為をしない場合をも含むけれども、少くとも共謀者中二人は各自その実
行行為を分担することを要するものと解すべきである。したがつて、被告人両名が
共謀のうえ洋品店等において衣類等を窃取した場合であつても、被告人中一名が右
窃盗をなすに際し、他の者がその幕となる等の所為に出たにすぎず、被告人ら各自
が現に窃盗の実行行為を分担したのでないときは、前記法条の規定する常習特殊窃
盗の罪が成立しない。」 旨の判断を示しているものである。これに対し、本件原
判決は、右仙台高裁判決の判示前段、すなわち「共同シテ犯シタルトキ」とは少な
くとも二人以上の者が実行行為を分担することを必要とするとの点については、こ
れと同じ見解をとるとしながら、「いわゆる集団万引窃盗といえる態様の犯行にあ
つては、たとえ財物に直接手を触れこれを若干移動させるという意味の実行行為を
担当遂行する者が単独であつても、見張りをする者もしくは幕となる者或はリレー
式に持ち出す者と共に犯罪を実現したと認められる以上、見張りも幕も持ち出しも
窃盗の実行行為の分担にほかならないと解する」と判示し、甲が直接万引の衝に当
り、乙又は丙が甲の傍で風呂敷をひろげて品物を受取りこれを店外に駐車して待ち
構えている被告人のもとに持ち出し、その間に丁が見張りあるいは店員の視線を遮
ぎるために幕の役割を分担したという本件については、二人以上現場において共同
して犯したというになんの妨げもないとの判断を示して、前記法条の規定する常習
特殊窃盗の罪の成立を認めているのである。
 右の両判決を対比すると、前記仙台高裁判決の説示する「幕となる等の所為」が
具体的にいかなるものであるか必らずしも明らかではないが、その所為が本件原判
決の説示する幕と同じ内容のものであるとするならば、右仙台高裁判決が、幕とな
ることは窃盗の実行行為の分担ではないとして常習特殊窃盗の成立を否定すべき理
由としているのに対し、原判決は、同種事案につき幕も窃盗の実行行為の分担にほ
かならないとして同罪の成立を認めているのであるから、両者は見解を異にするも
のであり、従つて、原判決は右仙台高裁判決と相反する判断をしたものといわなけ
ればならない。
 よつて案ずるに、いわゆる集団万引の犯行において、本件のように、直接の万引
行為をなす者が一人であつて、他の者が見張り、あるいは幕、持ち出しなどと呼ば
れる役割を担当したにとどまる場合に、盗犯等防止法二条二号の適用があるかどう
かの点に関する当裁判所の見解は以下説示するとおりである。
 すなわち、同条は、特殊の犯罪手口を用いる習癖のある強盗又は窃盗の常習者を
特に重く処罰しようとする趣旨の規定であるが、そのうち同条二号が「二人以上現
場ニ於テ共同シテ犯シタルトキ」と規定しているのは、集団のすり、万引、または
強盗など二人以上の者によつて犯罪の現場において共同して強盗又は窃盗の犯行が
なされる場合、その犯行は組織的、集団的かつ大規模であることが多く、これによ
る被害もしたがつて甚大なものとなりやすいのに対し、その取締り、検挙は容易で
はなく、犯人の悪性も通常の単独犯に比してより強いとみるべきであるから、以上
の諸点にかんがみこれらを常習とする者を特に重く処罰すべきものとしたものと解
される。ところで、集団万引においては、直接に財物の占有奪取行為をなす者のほ
か、本件原判決の判示するような見張り、幕、持ち出し等の役割を分担する者など
数名の者の犯行現場における協力行為によつて、迅速、確実に犯行の実現がはから
れる点にその特殊性があるということができる。そして、右の見張り、幕、持ち出
し等は、直接の占有奪取行為者の行為と相まつて、財物の占有取得を完成させるた
めの不可分の共同行為であつて、全体として一個の窃盗行為を組成するものと評価
すべきものと考える。それであるから、原判決の判示するような集団万引の場合に
ついても、二人以上現場において共同して窃盗の犯行をなしたものとして、同条二
号の適用があるといわなければならない。もし、直接の占有奪取行為が二人以上の
者の共同によつてなされた場合にのみ同条二号の適用があるものと解するならば、
窃盗に関するかぎり同条同号の適用される範囲が極めて狭少なものとなり、右規定
のもうけられた前述の趣旨は全く没却されることにもなるであろう。
 以上判示したところによれば、原判決の判断のうち、本件犯行について盗犯等防
止法二条二号を適用すべきものとした結論は相当であるから、これを維持すべきで
ある。所論引用の仙台高裁昭和三六年三月一六日判決は、原判決に牴触すると解さ
れるかぎりにおいてこれを変更すべきものと認める。従つて、弁護人の所論は原判
決破棄の理由となり得ない。
 よつて、刑訴法四一〇条二項、四一四条、三九六条により、裁判官全員一致の意
見で、主文のとおり判決する。
  検察官平山長 公判出席
  昭和四六年一一月二六日
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    村   上   朝   一
            裁判官    色   川   幸 太 郎
            裁判官    岡   原   昌   男
            裁判官    小   川   信   雄

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛