弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人美村貞夫の昭和三八年九月一八日付上告理由書記載の上告理由第一点
について。
 終結した口頭弁論を再開するかどうかは、事実審の専権に属するから、たとい、
口頭弁論を再開しないため、当事者が所論のような攻撃防禦方法を提出することが
できないとしても、なんら違法でない。
 所論は、採用しがたい。
 同第二点ないし第四点について。
 原判決挙示の証拠によれば、原判決の認定した事実を肯定しえないわけではない。
 原判決には、所論のような違法はなく、所論は、結局、原審の専権に属する証拠
の取捨・判断、事実の認定を非難するに帰し、採用しがたい。
 上告代理人太田真佐夫、同美村貞夫の昭和三八年一〇月一〇日付上告理由書記載
の上告理由第一点について。
 第一、二審判決および本件記録によれば、被上告人の請求は、要するに、訴外D
は昭和一一年三月二八日訴外E・同F夫婦と養子縁組の届出をし、そのさい同年四
月一日実父の訴外Gから本件土地の贈与を受けて所有権を取得したが、その所有権
移転登記を経由しないまま右Gは同二五年一月八日死亡し、本件選定者らが同人の
相続人となつた。これより先、右Dは、同一一年四月二日養父Eの死亡により女戸
主となり、さらに、被上告人は、同一三年一〇月三〇日右Dのもとに入夫婚姻をし
て戸主となり、同日その届出をしたので、前戸主Dの有した一切の権利義務を承継
した。したがつて、被上告人は、右Dが亡Gの相続人である本件選定者らに対して
有する本件土地の贈与による所有権移転登記手続請求権を承継したとして、本件選
定者らに対し、本件宅地について昭和一一年四月一日贈与による所有権移転登記手
続を求めるものであることが認められる。それゆえ、本件訴訟は、被上告人がGか
らDに対する贈与を理由として本件選定者らに対し契約上の義務の履行を求めてい
ることは明らかである。
 ところで、不動産について被相続人との間に締結された契約上の義務の履行を主
張して、所有権移転登記手続を求める訴訟は、その相続人が数人いるときでも、必
要的共同訴訟ではないと解するのが、当裁判所の判例(昭和三三年(オ)第五一七
号・同三六年一二月一五日第二小法廷判決・民集一五巻一一号二八六五頁、昭和三
九年(オ)第一四〇号・同三九年七月一六日第一小法廷判決・裁判集七四号六五九
頁、昭和三七年(オ)第一四三七号・同三九年七月二八日第三小法廷判決・裁判集
七四号七五五頁)とするところであり、これを今なお変更する必要がないと思料す
るから、本件のように、贈与を理由として、贈与者の相続人に対し所有権移転登記
手続を求める訴訟は、その相続人が数人いるときでも、必要的共同訴訟ではないと
解せられ、したがつて論旨の失当なことは前記説述したところから明らかであり、
所論は採用できない。
 同第二点について。
 前記第一点について判断したとおり、本件選定者らの負担する所有権移転登記手
続義務は不可分債務と解すべきであるから、本件選定者らがその債務の履行につい
て各自が全部の責任を負うことは明らかである。
 所論は、採用できない。
 同第三点について。
 本件記録によれば、本件選定者らは、選定当事者を確定的な意思に基づいて選定
したことが認められるから、その行為を有効としてした訴訟手続にはなんら違法は
ない(所論のような記載をもつて所論のように条件と解することはできない)。所
論は採用できない。
 (なお、付言するに、本件記録によれば、上告をしたのは上告人(選定当事者)
Aのみであるのに、原審および上告審たる東京高等裁判所においては、(選定当事
者)H、(選定当事者)IおよびJをも、上告人として、所要の手続をしているこ
とが認められるが、前記に判断したとおり、本訴請求は、通常の共同訴訟にすぎな
いから、上告人(選定当事者)A以外の者は、上告をしていないので、上告人とな
るものではない。)
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岩   田       誠
            裁判官    入   江   俊   郎
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    大   隅   健 一 郎

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