弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役一年及び罰金一万円に処する。
     この裁判確定の日から三年間懲役刑の執行を猶予する。
     右の罰金を完納することができないときは金五〇〇円を一日に換算した
期間被告人を労役場に留置する。
         理    由
 被告人本人の上告趣意(後記)は原判決の量刑不当を主張するのであるから、刑
訴応急措置法一三条二項により上告適法の理由にならない。しかし職権をもつて原
判決の擬律の当否を調べるのに、原判決は判示事実に対して「食糧管理法第九条、
第三一条、同法施行規則第二九条にあたるので情状により同法第三四条に従い、懲
役及び罰金を併科し、罰金に関しては刑法第六条、第一〇条に則り罰金等臨時措置
法による金額変更前の軽いものを適用し、以上は刑法第四五」と説示しているが、
これのみでは主文の刑の因つて生ずる処断刑を知ることができない。されば原判決
はその確定した事実に対する法令の適用を誤り、擬律錯誤の違法あるものというべ
く、この点において破棄を免れない。従つて本件上告は結局理由があることになる
ので、旧刑訴第四四七条に則り原判決を破棄し同法第四四八条に従い本被告事件に
つき更に判決をする。
 原判決の確定した事実を法律に照らすと、被告人の判示所為はいずれも食糧管理
法第三一条、昭和二四年六月二五日法律第二一八号による改正前の同法第九条同法
施行令第一一条、同法施行規則第二九条に該当するところ(罰金額については本件
犯行後昭和二三年法律第二五一号によつて変更があつたので刑法第六条、第一〇条
により軽い行為当時のものによる)、情状によつて各所為について食糧管理法第三
四条を適用して懲役及び罰金を併科するのを相当とするが、以上は刑法第四五条前
段の併合罪であるから、懲役刑につき同法第四七条本文、第一〇条に則り犯情重し
と認める梗玄米五俵の運搬罪の所定刑に併合罪の加重をし、罰金刑については同法
第四八条第二項により各罪について定めた罰金の合算額以下で処断すべく、以上の
所定刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年及び罰金一万円に処し、懲役刑につ
いては同法第二五条に従い裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予し、なお被
告人が罰金を完納することができないときは、同法第一八条により金五〇〇円を一
日に換算した期間被告人を労役場に留置すべきものとする。
 よつて主文のとおり判決する。
 この判決は裁判官全員一致の意見である。
 検察官 十蔵寺宗雄関与
  昭和二六年八月九日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    長 谷 川   太 一 郎
            裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介

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