弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人徳永竹夫の上告理由第一点について。
 所論の点に関する原審の認定は、挙示の証拠により、これを是認することができ
る。所論の実質は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに
帰し、採用することができない。
 同第二点について。
 原審の確定するところによれば、訴外D(主債務者)は昭和三四年三月訴外E(
債権者)との間で原判示の準消費貸借契約を締結し、上告人および訴外Fは右準消
費貸借上の債務につき連帯して保証する旨約したというのであり、記録によれば、
上告人は、連帯保証人の一人である訴外Fがその後において訴外Eから前記保証債
務の免除を受けるにいたつた旨抗弁していることが明らかである。しかしながら、
複数の連帯保証人が存する場合であつても、右の保証人が連帯して保証債務を負担
する旨特約した場合(いわゆる保証連帯の場合)、または商法五一一条二項に該当
する場合でなければ、各保証人間に連帯債務ないしこれに準ずる法律関係は生じな
いと解するのが相当であるから、連帯保証人の一人に対し債務の免除がなされても、
それは他の連帯保証人に効果を及ぼすものではないと解するのが相当である。右に
よれば、原審が、前記確定した事実関係のもとにおいては、訴外Fに対する債務の
免除がなされたとしても、それは上告人に対し効果を及ぼすものではないとし民法
四三七条の準用を否定したのは、結論において正当であるから、所論は採用するこ
とができない。
 よつて、民訴法三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官奥野健一の
反対意見があるほか、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
 裁判官奥野健一の反対意見は、次のとおりである。
 上告代理人徳永竹夫の上告理由第二点について。
 主たる債務者と連帯して数人が保証債務を負担した場合には、各保証人は主たる
債務者を通じて、債権者に対して各自全部義務を負担し、各保証人間には連帯債務
関係に準ずる法律関係を生ずるものと解するのが相当である(大審院大正六年(オ)
第七四号、大正六年三月六日言渡判決、録二三輯四七三頁参照)。このことは、共
同保証人間の求償権を定めた民法四六五条一項「……各保証人カ全額ヲ弁済スヘキ
特約」という特約には各共同保証人間に連帯の特約ある場合の外に、各共同保証人
が主たる債務者と連帯して弁済すべき特約ある場合をも含むものと解すべきところ、
この場合に一人の保証人が全額其の他自己の負担部分を超える額を弁済したときの
他の共同保証人に対する求償権につき連帯債務者の求償権に関する規定を準用して
いることは各連帯保証人の相互の関係が連帯債務関係に準ずるものと解したが故で
あり、また同条二項が「前項ノ場合ニ非スシテ互ニ連帯セサル保証人……」と規定
して、前項すなわち同条一項の場合は共同保証人間の関係が、連帯債務関係である
ことを前提としているものと解すべきであることよりも推知し得るところである。
 そして各連帯保証人の負担部分については、別段の定のない限り、平等であると
解すべきであるから(大審院大正八年(オ)第八八七号、大正八年一一月一三日言
渡判決、録二五輯二〇〇五頁参照)、連帯債務に関する民法四三七条を準用し、連
帯保証人の一人に対して為した債務の免除は、その保証人の負担部分についてのみ
他の保証人の利益のためにも、その効力を生ずるものと云うべきである。
 然るに、原判決が「控訴人は、Eにおいて連帯保証人の一人であるFに対しその
連帯保証債務を免除しているから、控訴人は金九〇万円の二分の一すなわち金四五
万円についてのみ支払義務あるにすぎない旨抗弁する。しかしながら、控訴人は、
主債務者であるDの前記債務につき連帯保証をなしたものであるが、連帯保証人に
ついては負担部分なるものは存しないのであるから、これを前提とする民法第四三
七条の規定は準用の余地がなく、控訴人の前記抗弁は理由がない。」と判断したこ
とは、前示の法理に照し是認し難いところであり、原判決は破棄を免れず、本件を
原裁判所に差戻すべきである。
     最高裁判所第二小法廷
         裁判長裁判官    奥   野   健   一
            裁判官    草   鹿   浅 之 介
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    石   田   和   外
            裁判官    色   川   幸 太 郎

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