弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     原判決を破棄する。
     被告人を懲役一年六月に処する。
     原審における未決勾留日数中六〇日を右本刑に算入する。
         理    由
 (控訴趣意)
 弁護人稲本錠之助及び同後藤英三提出の各控訴趣意書記載の通りであるから、こ
れを引用する。
 (当裁判所の判断)
 一、 後藤弁護人の控訴趣意第一点のその一について。
 所論は、原判決に法令適用の誤があると主張するもので、すなわち(一)原判決
は原判示第一の二(2)のような事実を認定し、被告人がAらの死体を押入れ内に
放置したままBの室を退去したことをもつて死体遺棄罪に問擬しているが、被告人
の当時の心境としては、驚愕のあまり前後の判断もなく一途にBと一緒に死ぬこと
によりすべての償いができると思いこみ、死体を遺棄するといら意識よりも死んだ
二人のところへすぐ飛んで行くという気持で一杯であつたといわざるを得ず、又死
体を自室の押入れ等に隠匿する所為は現在においてはこれを処罰する規定はないか
ら、葬祭の義務がないと認むべきBがその後自室を離去することになつたからとい
つて刑法第一九〇条の死体遺棄罪に該当すると解すべきいわれはないので、この点
に法令適用の誤りがあり、これを前提とした被告人に対する原判決の事実摘示「そ
の死体を遺棄した犯人であることを知り」にも法令の解釈を誤つた違法がある。
(二)被告人は単にBが死体を押入れ内に隠匿していることを認識しながら、その
場を離去したに過ぎないのであつて、要するに本件は死体に何ら場所的移転を加え
ず、単なる離脱という不作為による遺棄の事案であるから、被告人に条理又は慣習
上両者の死体の葬祭をなすべき義務があるとしても、それをもつて直ちに死体遺棄
罪が成立するとなすべきではなく、かような場合には、従来の判例の趣旨からすれ
ば、自ら刑法上有責に死の結果を招いたその死体が目前にあるという事態からの離
脱という要素を伴つた場合にのみ死体遺棄罪の成立が認められるべきであり、しか
も被告人は両者の死について何ら刑法上有責な加担又は加功行為をしていないか
ら、原判決が被告人の所為をもつて死体遺棄罪に問擬したのは法令の解釈、適用を
誤つたものであるというのである。
 よつて審究すると、
 右(一)の所論については、後述するように両者の死体について葬祭の義務があ
ると認められる被告人がその義務を懈怠して死体を放置してその所在場所から離去
すれば、死体遺棄罪を構成するものといわなければならないのであつて、原判決も
またこの趣旨に出たものであり、被告人の当時の心境が所論のようなものであつた
としても、それは単に情状に関する問題に過ぎず、そのために同罪の成立を否定す
べき理由はない。又、原判決が被告人に死体遺棄罪の成立を認めたのは、葬祭の義
務のある被告人が死体を放置してその所在場所から離去したという事実に基くので
あつて、決してBの死体遺棄罪の成立を前提としているのではないから、仮にBに
死体遺棄罪の成立がないとしても(当裁判所としては、原判決がとくに説明するよ
うにBに死体遺棄罪が成立するものと考えるものである。)、そのために被告人の
死体遺棄罪の成立が否定されるものではない。
 所論は採用できない(原判決は、所論のように被告人に対する事実摘示として
「BがAらを殺害しその死体を遺棄した犯人であることを知り」と判示してBが殺
人及び死体遺棄の罪を犯した者であることを被告人が知つていたとしてとくにその
犯意を明らかにする意図に出たものであつて、原判決がBの死体遺棄罪の成立を前
提として被告人の死体遺棄罪を認めた趣旨でないことは原判決の全文を通読すれば
おのずから明らかである。)。
 前記(二)の所論については、従来の判例によれば、死体遺棄罪は葬祭に関する
良俗に反する行為を処罰するのを目的とするものであるから、法令又は慣習により
葬祭をなすべき義務のある者が、葬祭の意思なく死体を放置してその所在場所から
離去する場合には、たとえみずから刑法上有責にその死体の死の結果を招いたもの
でないとしても、死体遺棄罪を構成するというにあると解せられるのであつて(大
審院大正六年一一月二四日判<要旨>決録二三輯一、三〇二頁、大正一三年三月一四
日判例集三巻二八五頁)、原判示のA及びCの両名は被告人の妻子であるの
で、被告人は慣習上これらの死体の葬祭をなすべき義務のあることは明らかである
から(右大正六年の判例参照)たとえ本件の死体について被告人がみずから刑法上
有責にその死の結果を招いたものでなく、又その死体について何ら場所的移転を加
えたのでないにしても、右死体が他人の宅の押入れに隠してあることを知りながら
葬祭の意思なくこれを放置してその場所から離去した被告人の所為に対し、原判決
が死体遺棄罪をもつて問擬したのは正当という外はなく、所論の死体遺棄罪に関す
る従来の判例についての解釈は誤つた独自の見解に基くものであり、所論は採用の
限りでない。
 二、 後藤弁護人の控訴趣意第一点のその二及び稲本弁護人の控訴趣意中「原判
決第二(「第一」の誤記と認める。
以下同じ。)の二の所論はいずれも被告人は官憲に自首したと認められるにかかわ
らず、原判決が自首したとは認められないとして刑法第四二条第一項の規定を適用
しなかつたのは違法であるといらものであるが、仮に被告人の所為が自首にあたる
としても、自首はいわゆる刑の裁量的減軽事由に過ぎないのであるから、この点に
ついての誤認は刑事訴訟法第三八二条の事実誤認には該当しないので(大審院大正
一五年六月七日、判例集五巻二四五頁等参照)、原判決が自首を認めなかつたこと
を事実誤認の問題としてとり上げその当否をとくに説明すべき限りではなく、又原
判決が刑法第四二条第一項による刑の減軽をしなかつたことをもつて法令適用の誤
とすることもできない。もつとも、被告人の所為が自首にあたるとの主張は量刑不
当の主張とはなるのであるから、この点については後述の量刑不当の主張に対する
判断の個所で併せて判断することとする。
 (その余の判決理由は省略する)
 (裁判長判事 足立進 判事 栗本一夫 判事 浅野豊秀)

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