弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人諸冨伴造の上告理由第一点および第二点について。
 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯する
ことができ、この認定判断の過程に所論の違法は認められない。論旨は、ひつきよ
う、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採
用することができない。
 同第三点について。
 所論は、原判決には、死因贈与について遺言の取消に関する民法一〇二二条の準
用を認めた法令の解釈適用の誤りがあり、かつ、本件死因贈与は夫婦間の契約取消
権によつて取消しえないものであると解しながら、右民法一〇二二条の準用によつ
てその取消を認めた理由そごの違法がある、というものである。
 おもうに、死因贈与については、遺言の取消に関する民法一〇二二条がその方式
に関する部分を除いて準用されると解すべきである。けだし、死因贈与は贈与者の
死亡によつて贈与の効力が生ずるものであるが、かかる贈与者の死後の財産に関す
る処分については、遺贈と同様、贈与者の最終意思を尊重し、これによつて決する
のを相当とするからである。そして、贈与者のかかる死因贈与の取消権と贈与が配
偶者に対してなされた場合における贈与者の有する夫婦間の契約取消権とは、別個
独立の権利であるから、これらのうち一つの取消権行使の効力が否定される場合で
あつても、他の取消権行使の効力を認めうることはいうまでもない。それゆえ、原
判決に所論の違法は存しないというべきである。論旨は、独自の見解に立脚して、
原判決を非難するものであつて、採用することができない。
 同第四点について。
 原判決は、被上告人Bを除くその余の被上告人らについては、その申立の限度で
請求を認容したものである。それゆえ、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用す
るに足りない。
 同第五点(一)について。
 記録に徴し本件訴訟の経過に鑑みれば、原審が所論の証拠調をしなかつたとして
も違法とはいえない。原判決には所論の違法はなく、論旨は採用することができな
い。
 同第五点(二)について。
 所論は違憲をいうが、その実質は、原判決に民訴法違背がある旨の主張にすぎな
いところ、本件記録に徴すれば、被上告人らの主張には、訴外Dが上告人に対する
本件土地建物の死因贈与の意思表示を撤回した旨の主張が含まれている旨の原審の
判断は正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用
することができない。
 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    岸       盛   一
            裁判官    岩   田       誠
            裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    藤   林   益   三
            裁判官    下   田   武   三

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