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平成13年(行ケ)第416号 特許取消決定取消請求事件(平成14年1月30
日口頭弁論終結)
          判           決
       原      告   株式会社三共
       訴訟代理人弁理士   今 崎 一 司
       被      告   特許庁長官 及 川 耕 造
       指定代理人      松 川 直 樹
       同          村 山   隆
       同          渡 部 葉 子
       同          山 口 由 木
       同          宮 川 久 成
          主           文
 特許庁が平成11年異議第72762号事件について平成13年7月
24日にした決定を取り消す。
      訴訟費用は原告の負担とする。
          事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
 1 原告
   主文と同旨
 2 被告
   原告の請求を棄却する。
   訴訟費用は原告の負担とする。
第2 当事者間に争いのない事実
 1 特許庁における手続の経緯
 (1) 原告は、名称を「可変表示装置」とする特許第2849446号発明(平
成2年6月2日特許出願、平成10年11月6日設定登録、以下「本件発明」とい
う。)の特許権者である。
    平成11年7月14日及び同月21日、上記特許につきそれぞれ特許異議
の申立てがされ、平成11年異議第72762号事件として特許庁に係属したとこ
ろ、原告は、平成12年1月27日、明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説
明の各記載を訂正する旨の訂正請求をした。
    特許庁は、同特許異議事件について審理した上、平成13年7月24日、
「特許第2849446号の請求項に係る特許を取り消す。」との決定(以下「本
件決定」という。)をし、その謄本は同年8月17日原告に送達された。
 (2) 原告は、本件決定の取消しを求める本訴提起後の平成13年11月5日、
本件明細書の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の各記載を訂正する旨の訂正審
判の請求をしたところ、特許庁は、同請求を訂正2001-39201号事件とし
て審理した上、平成13年12月25日、上記訂正を認める旨の審決(以下「本件
訂正審決」といい、本件訂正審決に係る訂正を「本件訂正」という。)をし、その
謄本は平成14年1月9日原告に送達された。
 2 特許請求の範囲の記載
 (1) 本件訂正前の特許請求の範囲の記載
   【請求項1】複数の識別情報が表面に形成された回転部材を備えた可変表示
装置において、
   該可変表示装置は、透光性のある部材で構成される前記回転部材と、該回転
部材を回転せしめるモータと、該モータを固定するモータ固定板と、該モータ固定
板に設けられ且つ前記回転部材の裏面から遊技者の視認し得る前記識別情報を照射
する発光部材と、からなる回転部材ユニット機構を、支持部材に対して複数個並列
状に支持固定したことを特徴とする可変表示装置。
   【請求項2】前記回転部材を、一側面が開放した円筒状に形成してその開放
側から円筒状の空間部に前記モータ及び発光部材がほぼ収まるように収納配置した
ことを特徴とする請求項1記載の可変表示装置。
   【請求項3】前記支持部材は、一側面が開放した箱状に形成された収納ボッ
クスであり、
   前記複数個の回転部材ユニット機構を前記収納ボックス内に収納する際に、
前記モータ固定板に形成される係合部を前記収納ボックスに並列状に形成される被
係合部に係合させて支持固定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の
可変表示装置。
 (2) 本件訂正によって訂正された特許請求の範囲の記載(注、訂正部分を下線
で示す。)
   【請求項1】複数の識別情報が表面に形成された回転部材を備えた可変表示
装置において、
   該可変表示装置は、透光性のある部材で構成される前記回転部材と、該回転
部材を回転せしめるモータと、該モータを固定するモータ固定板と、該モータ固定
板に設けられ且つ前記回転部材の裏面から遊技者の視認し得る前記識別情報を遊技
状態がリーチ状態であるときの未だ識別情報が確定していない回転部材に対する表
示態様がリーチ状態の前にいずれの回転部材に対して行なった表示態様とも異なる
ように照射すると共に、さらに前記リーチ状態で既に識別情報が確定した回転部材
に対する表示態様がリーチ状態と大当たり状態とで異なるように照射する発光部材
と、からなる回転部材ユニット機構を、支持部材に対して複数個並列状に支持固定
したことを特徴とする可変表示装置。
   【請求項2】前記回転部材を、一側面が開放した円筒状に形成してその開放
側から円筒状の空間部に前記モータ及び発光部材がほぼ収まるように収納配置した
ことを特徴とする請求項1記載の可変表示装置。
   【請求項3】前記支持部材は、一側面が開放した箱状に形成された収納ボッ
クスであり、
   前記複数個の回転部材ユニット機構を前記収納ボックス内に収納する際に、
前記モータ固定板に形成される係合部を前記収納ボックスに並列状に形成される被
係合部に係合させて支持固定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の
可変表示装置。
 3 本件決定の理由
   本件決定は、(1)訂正請求に係る訂正の適否に関し、①当該訂正後の明細書の
特許請求の範囲の請求項1、2記載の本件発明は実願昭60-36595号(実開
昭61-151783号)のマイクロフィルム(以下「刊行物1」という。)記載
の発明に基づいて、②同請求項3記載の本件発明は刊行物1及び特開平2-102
687号公報(以下「刊行物2」という。)記載の各発明に基づいて、それぞれ当
業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許出願の際独立して特許
を受けることができないものであって、当該訂正は、特許法120条の4第3項に
おいて準用する同法126条3項(平成6年法律第116号による改正前のもの)
の規定に適合せず、認められないとし、(2)特許異議の申立てに関し、本件発明の要
旨を上記2(1)記載のとおり認定した上、①同請求項1、2記載の本件発明は刊行物
1記載の発明であって、特許法29条1項3号の規定に違反して特許されたもので
あり、②同請求項3記載の本件発明は刊行物1、2記載の各発明に基づいて当業者
が容易に発明をすることができものであって、同条2項の規定に違反して特許され
たものであるから、その特許は、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過
措置を定める政令(平成7年政令第205号)4条1項及び2項の規定により、取
り消されるべきものとした。
第3 当事者の主張
 1 原告
   本件決定が、本件発明の要旨を本件訂正前の特許請求の範囲の記載のとおり
認定した点は、本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂
正されたため、誤りに帰したことになる。そして、この瑕疵は本件決定の結論に影
響を及ぼすものであるから、本件決定は違法として取り消されるべきである。
 2 被告
   本件訂正審決の確定により特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂正された
ことは認める。
第4 当裁判所の判断
   本件訂正審決の確定により、特許請求の範囲の記載が上記のとおり訂正され
たことは当事者間に争いがなく、この訂正によって特許請求の範囲が減縮されたこ
とは明らかである。
   そうすると、本件決定が、本件発明の要旨を本件訂正前の特許請求の範囲の
とおりであると認定したことは、結果的に誤りであったことに帰する。そして、こ
れが本件決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、本件決定は、瑕疵が
あるものとして取消しを免れない。
   よって、原告の請求は理由があるから認容し、訴訟費用は、原告の申立て等
本件訴訟の経過にかんがみ、原告に負担させることとして、主文のとおり判決す
る。
     東京高等裁判所第13民事部
         裁判長裁判官 篠  原  勝  美
    裁判官 長  沢  幸  男
    裁判官 宮  坂  昌  利

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