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平成17年(ワ)第26020号損害賠償請求事件
平成18年3月23日口頭弁論終結
判決
原告A
訴訟代理人弁護士柳原敏夫
被告日本ビーンズ株式会社
訴訟代理人弁護士片柳昴二
同伊藤真
主文
1原告の請求を棄却する。
2訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1原告の請求
被告は原告に対し,2000万円及びこれに対する平成17年12月20日か
ら支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2事案の概要
本件は,別紙原告絵画目録の絵画(以下「原告絵画」という)を描いた亡。
B(以下「亡B」という)からその著作権及び同著作権若しくは著作者人格。
権侵害により生じた損害賠償請求権を相続により取得した原告が,被告が製造
販売した豆腐のパッケージにおいて,原告絵画を亡Bに無断で複製して使用し
たのみならず,亡Bが江戸時代の画家であるかのような虚偽の氏名表示をした
として,被告に対し,原告絵画の著作権侵害及び原告絵画についての著作者人
格権(氏名表示権)侵害等に基づく損害賠償請求として合計2億7640万8
264円のうち2000万円の支払を求めている事案である。
1前提となる事実(当事者間に争いのない事実及び証拠により容易に認定し得
。,。)る事実証拠により認定した事実については該当箇所末尾に証拠を掲げた
(1)当事者
ア亡Bは,昭和14年,東京美術学校日本画科を卒業後,挿絵の仕事をし
た後,40年にわたり,江戸風俗の研究家として,資料画の制作を行って
いた。亡Bは「江戸吉原図聚「江戸物売図聚,「江戸庶民風俗図絵」,,」,」
「明治物売図聚「江戸職人図聚「定本江戸商売図絵」などをそれぞ」,」,
れ執筆刊行するなどし,昭和62年には,吉川英治文化賞を受賞した(甲
1〔以下,原則として枝番は省略する,甲3。。〕)
亡Bは,平成17年6月15日に死亡し,亡Bの長男である原告は,遺
産分割協議の結果,亡Bが有していた著作権と本件の損害賠償請求権を取
得した(甲22~24。)
イ被告は,豆腐の製造・販売等を業とする株式会社である。
(2)亡Bによる絵画の制作
ア亡Bは,原告絵画を制作し,上記「定本江戸商売図絵(昭和61年5」
。,,,「」月15日発行なお昭和38年ころ他の出版社より江戸商売図絵
として既に発行されていた)に,収録した(甲1,4,検甲1。。)
イ亡Bは,原告絵画を,江戸時代に制作された別紙本件原画目録の浮世絵
(近世職人尽絵巻」に収録された「豆腐屋」の浮世絵。以下「本件原「,
画」という)を参考にし,それを模写して制作した。。
(3)被告による原告絵画の使用
ア被告は,平成4年10月ころから,別紙被告各パッケージ目録記載のと
おり,被告が製造販売した豆腐のパッケージに原告絵画を印刷して使用し
た(被告が製造販売するすべての製品において原告絵画が使用されたもの
ではない。以下,原告絵画がパッケージに使用された製品を「被告各製,
品」といい,そのパッケージを「被告各パッケージ」という〔甲2,,。
甲8,乙1,検甲2。被告は,平成17年3月12日ころ,亡Bより,〕)
被告各パッケージに原告絵画を使用することは,原告絵画の著作権侵害で
あるとの指摘を受けたため,同月18日からは,原告絵画の使用を中止し
た(甲4,5。)
イ被告は,被告各パッケージにおいて,その左下端に「江戸時代B画」,
と,それぞれ表示した(甲2,検甲2。)
2争点
(1)原告絵画の著作物性(原告の主位的主張:争点1)
(2)原告絵画の著作物性(原告の予備的主張:争点2)
(3)原告絵画の複製権侵害の成否(争点3)
(4)原告絵画の著作者人格権侵害の成否(争点4)
(5)原告の損害(争点5)
第3争点に関する当事者の主張
1争点1(原告絵画の著作物性・原告の主位的主張)について
(1)原告の主張
ア模写作品における創作性について
ガラス板をおいて丹念に技術的に模写するだけのような機械的模写は,
表現上の選択の余地がないまま再現行為が完了してしまうから,創作性が
認められず,原画の単なる複製物というべきである。しかし,機械的模写
ではなく原画を横において模写制作者自身の手でまねて描いた場合以,,(
下,単に「模写」という場合,このような方法によるものを意味する)。
には,いかに模写作品が原画そっくりであったとしても,それは模写制作
者が多様な選択肢の中から一つの表現を選択した結果というべきであるか
,。,,らすべて創作性を認めることができるものであるすなわち模写とは
「模写制作者の網膜に映った絵画を忠実に真似る(再現する」ことをい)
うのであり,対象となる原画を観察し,模写制作者自身の判断において表
現手法等を選択し,描写しているものである。したがって,模写作品がい
かに原画に似ていたとしても,模写制作者による新たな創作性の付与が認
められる。
イ上記結論は,模写の制作過程からも明らかである。
模写作品は,通常,①模写制作者が,原画を自らの目により認識する行
為と,②その認識を模写作品に再現する行為という各過程を経て制作され
。,,「,,」,る一般に絵はそれを見る人の個性好み洞察力などに応じて
その姿を変えるものであるから,①の認識行為において,既に,各自の目
に映る絵もそれぞれ異なることになる。さらに,②の再現行為は,シャッ
ターを押す一瞬で再現行為が完了してしまう写真撮影とは異なり,終了ま
でに一定の時間を要するから,再現行為の間,模写制作者は,絶えず原画
と向き合うことにより自己の認識を新たにし,修正し,新たな認識に基づ
いて新たな再現行為を行う(①認識行為と②再現行為間の往還。②再現)
行為段階においても「忠実な再現」とは,あくまでも様々な個性を持っ,
た各模写制作者にとっての「忠実な再現」にほかならず,結局,模写する
者の数だけ異なった再現行為が存在することになる。そのため,仮に模写
制作者の目に映った絵が同一で,かつ,模写制作者の技量が同一であって
も,ほぼ同じ絵がそれぞれ再現されるわけではない。したがって,模写制
作においては,①認識行為及び②再現行為の各過程において,原則として
模写制作者の創作性が発揮されているものというべきである。
ウ美術界における理解も同様である。
a)模写制作における創作性の付与に関しては,13世紀の水墨の名画で
ある牧谿作の「鶴の絵」を原画とする横山大観の模写作品や,江戸初期
の画家俵屋宗達の名画「風神雷神図屏風」を原画とする尾形光琳と酒井
抱一の各模写作品について,それぞれ原画と各模写作品を比較すれば明
らかである。例えば,尾形光琳と酒井抱一の各模写作品においては,風
神・雷神の配置,雲の描き方,二神の描き方などにおいて,様々な相違
点が見られるのみならず,尾形光琳は,二神,雲を丹念に描写し,立体
感と力強い動きを描き出し,二神の後ろに広がる雄大な空間を表現して
いるのに対し,酒井抱一は,二神の全身を立体的に表現し,雷神の鮮や
かな白,風神の暗く重厚な緑との明暗を際立たせて対照的に描き,さら
に風の強さや雄大な空間より,二神を描くことに関心を集中させている
のである。
尾形光琳の模写作品は,重要文化財としてその創作性が高く評価され
ている。模写は往々にして,他人の原画の単なるまねごとであってオリ
,,,ジナリティがないと思われがちであるがむしろ日本画界においては
模写の創作性及びその価値が正当に評価されているのである。
b)多くの傑出した模写を描いた横山大観は,自伝において,模写とは,
各模写制作者自身の個性,好み,洞察力,技量などに応じて独力で,原
画の①認識行為と②再現行為を行うものであるという趣旨を述べている
し,美術研究家も,模写の創作性及びその芸術的価値について,同様の
指摘をしている。横山大観や菱田春草らが自らの芸術追求のため盛んに
模写を行うことにより精神性や技術を学び,それが後年の数々の名作を
生み出す原動力となったことは,美術界においてよく知られていること
である。
c)ゴッホは,安藤広重などによる浮世絵の芸術性に強い衝撃を受け,そ
の創作性を探求すべく,これらを熱心に模写したことで知られている。
模写制作者の原画に対する衝撃・感動が強いほど,模写は精緻となり,
模写作品に模写制作者の個性が発揮されることになる。ゴッホによる模
写作品が,原画である浮世絵に似ていたとしても,それはゴッホ自身が
原画制作者の制作過程を自ら追体験しようと試みた結果であり,ゴッホ
自身による創作的表現行為により制作されたものである。もちろん,模
写作品にゴッホ固有の表現がされている部分については,ゴッホ自身に
よる創作性が認められることはいうまでもない。
エ原告絵画について
原告絵画は,亡Bが本件原画を横に置き,①認識行為及び②再現行為の
各過程において自らの創作性を発揮して制作したものであるから,いわゆ
る機械的模写ではない。したがって,原告絵画は,創作性が認められるも
のであり,著作物性を有する。
(2)被告の主張
ア模写作品における創作性について
原告絵画は,本件原画を模写したものである。二次的著作物が原著作物
から独立した別個の著作物として著作権法の保護を受けるのは,原著作物
に新たな創作的要素が付加されている場合に限られる。
イ原告絵画は,いわゆるフリー・ハンドで本件原画を再現したものにすぎ
ないから,亡B自身により新たな創作性が付加がされたものと認められな
ければ,二次的著作物として保護することはできない。したがって,機械
的模写でなければ創作性の付加を認める原告の主張は失当である。
原告絵画は,本件原画から多少改変されていはいるものの,それらはい
ずれもごく一般的な変更にすぎないのであって,亡B独自の解釈やアレン
ジによる表現の付加は認められないのであるから,新たな創作的要素の付
加は認められず,二次的著作物として保護することはできないというべき
である。
2争点2(原告絵画の著作物性・原告の予備的主張)について
(1)原告の主張
ア原画と模写作品の相違点を前提とする模写作品の創作性について
争点1において述べたとおり,絵画における模写作品は,いわゆる機械
的模写でないかぎり,原画に酷似していたとしても創作性が認められるも
のというべきである。しかし,仮に,模写作品と原画との間に何らかの差
異が存在しなければ創作性が認められないという見解によるとしても,原
告絵画は,江戸風俗の再現という意図に基づいて,亡Bによって様々な創
意工夫が加えられており,本件原画にはない独自の創作性が付与されてい
るものである。
原告絵画は,江戸時代の絵画の模写を通じて,当時の絵画の中に示され
た江戸の風俗を注意深く観察し,亡B自身の表現方法をもって,その江戸
の風俗の内容をできる限り損なうことなく忠実に,復元・再現したもので
ある。したがって,原告絵画は,創作性を有するものである。
イ原告絵画の著作物性について
原告絵画は,人物の描き方が本件原画と相違しており,亡Bによる創作
性が発揮されている。
a)左側の男性について
本件原画においては,左側の男性は,力を振り絞っている様子を表
現するために,首は肩にめり込んで見えないほど極端な猪首で描かれ
ているのみならず,肩も盛り上がって描かれている。このような表現
は,力がみなぎる様子を表すために江戸時代において活用された手法
によるものであるが,それにより人物のポーズが不自然になってしま
っている。これに対し,原告絵画においては,この不自然さを改め,
写実性を重視し,自然な頭部,自然な肩に描かれている。
b)赤ちゃんを背負った女性について
本件原画においては,背中の赤ちゃんが安眠できないほど反り返っ
て背負われているという不自然なポーズで描かれている。これに対し,
原告絵画においては,安眠するのにふさわしい自然なポーズで描かれ
ている。
c)右奥の老婆について
本件原画においては,右奥の老婆は手前の男性より大きく描かれて
いる。これは遠近法の視点からは不自然である。これに対し,原告絵
画においては老婆を自然な大きさで描いている。
ウ原告絵画と本件原画は,例示しただけでも多くの差異が認められる。し
たがって,亡Bによる創作性が付与されていることは明らかであって,原
告絵画は著作物性を有する。
(2)被告の主張
ア原告は,模写作品と原画との間に多少の差異があれば,常に創作性が認
められるかのように主張する。しかし,争点1において述べたとおり,模
写作品において,原画に多少の修正が加えられていたとしても,常に新た
な創作性の付与が認められるわけではない。
模写作品が原画の二次的著作物として保護されるためには,まず,模写
作品において,原画に付加された表現が存在し,さらにそこに新たな著作
物の創作がなされたと認めるに足りる程度の創作的要素が認められること
が必要である。
原告絵画は,構図,店の様子や器具の形配置,登場人物のポーズ(所作
の様子)など,いずれも本件原画を再現しているにすぎない。もちろん,
,,原告絵画と本件原画を対比すると細部において異なる点が認められるが
手書きにより模写している以上,そのような差異が存在することは当然で
あって,原著作物と対比して新たな創作的表現が付加されたと認めること
はできない。
イ原告が,原告絵画と本件原画の相違点として指摘する各事項は,いずれ
も本件原画における極端なデフォルメ(不自然な姿)を,模写制作におい
て一般的な手法を用いて若干の変更をしたものにすぎず,そこに亡Bによ
る創作的表現が付加されているわけではない。
a)左側の男性について
確かに,原告絵画においては,頭の位置を少し上にするとともに肩
の盛り上がりを少し抑えることにより,写実的な意味での不自然さが
多少改善されているものの,肩を盛り上がらせている態様や頭の角度
や絵柄も本件原画と全く同じである。
b)赤ちゃんを背負った女性について
確かに,原告絵画においては,赤ちゃんの首の傾きを多少抑えるこ
とにより,写実的な意味での不自然さが多少改善されているものの,
赤ちゃんの頭が後ろに反り,女性の着物の襟に支えられているという
基本的な絵柄は本件原画と全く同じである。
c)右奥の老婆について
原告絵画においては,不自然な大きさを,遠近法の視点から自然な
大きさに縮小しているだけであって,本件原画と老婆の基本的な絵柄
は全く同じである。
ウ別紙本件参考絵画目録の絵画(以下「本件参考絵画」という)は,本。
件原画をフィルム状のトレーシングペーパー上に置き,面相筆を用いて溝
。,引きの手法によりトレースして作成した模写作品である制作に際しては
原告絵画などを一切参照していない。本件参考絵画は,本件原画の機械的
複製物であり,二次的著作物ではない。
,,原告絵画と本件参考絵画を対比すると両絵画は一見して酷似しており
原告が指摘する相違点は,いずれもフリーハンドで模写したことに基づく
わずかな変更にすぎないことは明白である。
エ以上のとおり,原告絵画においては,亡Bにより創作的要素が新たに付
加された表現を看取することは到底できないのであって,本件原画の思想
又は感情を超えて新たな思想又は感情を表現するようなものではないので
あるから,二次的著作物であるとは認められない。
3争点3(原告絵画の複製権侵害の成否)について
(1)原告の主張
被告は,平成4年10月ころから,亡Bの許諾を得ることなく,被告各製
品のパッケージに原告絵画を印刷して使用したのであるから,被告が亡Bの
原告絵画の複製権を故意又は過失により侵害したことは明らかである。
(2)被告の主張
ア複製権侵害の主張は争う。前記のとおり,原告絵画は著作物性を有しな
いのであるから,複製権侵害もまた,成立しない。
イ二次的著作物のうち,原著作物と共通する部分は,何ら新たな創作的要
素を含むものではないから,二次的著作物においては,独自の解釈やアレ
ンジによる表現の付加がなされている部分が,保護の対象となる。
仮に,原告絵画が本件原画の二次的著作物として著作物性が認められる
としても,二次的著作物に関する複製権侵害においては,二次的著作物た
らしめている新たな創作的表現が複製物において直接感得されることが必
要である。
争点2において述べたとおり,本件絵画に付加された新たな創作的表現
は希薄であることから,被告各パッケージからは,本件原画の創作的表現
が主として看取されるのであり,原告絵画に二次的著作物として付加され
た創作的表現は,本件原画の創作的表現の中に埋没され看取されにくくな
っているというべきである。
ウ被告各パッケージにおいては,原告絵画はパッケージデザイン上の背景
画として用いられ,色彩も淡く地模様状に印刷されているだけであって,
被告各パッケージからは,原告絵画が二次的著作物とされる根拠となる新
たな創作的要素の付加を看取することはできない。
本件参考絵画を使用して,被告各パッケージと同じ文字などを用いて各
パッケージの試作品(乙4)を作成し,被告各パッケージと比較対照した
ところ,淡く地模様状に印刷されていること及び本件原画と原告絵画の相
違点がわずかであることから,原告が原告絵画に付加された創作性の主た
る根拠とした3点の変更点は,看者からは全く意識されなかった。
エ特に被告各パッケージにおいては例えばおぼろ豆腐二丁盛り乙,,「」(
1の1及び2)では,赤ちゃんを背負った女性と右奥の老婆は,文字にか
かってほとんど看取できない「濃い絹「濃い木綿(乙1の3)では,。」,」
右奥の老婆はほとんど看取できない「国産大豆使用濃い絹「国産大豆。」,
使用濃い木綿(乙1の4)では,原告が相違点と主張する赤ちゃんの首」
の表現と右奥の老婆は全く看取できない「にがり寄せ(乙1の5)も。」
同様である。
以上のとおり,原告絵画の二次的著作物性の根拠となる新たな創作的表
現部分は,被告各パッケージにおいては複製されておらず,また,ほとん
ど看取できない以上,被告各パッケージにおける原告絵画の使用は,原告
絵画の複製権を侵害するものではない。
4争点4(原告絵画の著作者人格権侵害の成否)について
(1)原告の主張
被告は,原告絵画を被告各パッケージに複製して使用する際,その左下端
に,原告絵画の無断使用の事実を隠す目的から「江戸時代B画」と表示し,
て,亡Bが江戸時代の画家であり,原告絵画が著作権の保護期間を過ぎたも
のであるかのような虚偽の氏名表示をした。したがって,このような虚偽の
表示は,被告の故意に基づくものであり,亡Bの氏名表示権を著しく侵害す
るものである。
(2)被告の主張
著作者人格権侵害の主張は争う。前記のとおり,原告絵画は著作物性を有
しないのであるから,著作者人格権侵害もまた,成立しない。なお「江戸,
時代B画」との表記は,亡Bを江戸時代の画家であると誤解したことに基づ
くものにすぎず,無断使用の事実を隠す目的によるものではないし,このよ
うな表記がされていたからといって,無断使用の事実を隠すことができるも
のでもない。
5争点5(原告の損害)について
(1)原告の主張
ア著作権侵害に基づく損害賠償請求について
a)定率方式の採用について
被告は,少なくとも平成4年ころから平成17年3月ころまで,約
14年間にわたり,断続的に,被告の主力商品のパッケージ正面に原
告絵画を使用し続けた。通常,定額料金によるイラストの使用許諾は,
3か月程度の使用期間を定めていること,被告各製品においては,消
費者の目に真っ先にとまるパッケージの正面に原告絵画が全面的に使
用されていることからすると,被告による原告絵画の使用行為は,使
用期間及び使用態様から,市販商品の物品自体に化体した形でキャラ
クター等が使用されている事案と同視すべきであり,その無断使用に
対する使用料相当損害額の算定は,定額方式ではなく,定率方式に基
づくべきである。
(計算式)損害額=被告各製品の希望小売価格×%(料率)×製造数量
b)希望小売価格の算定などについて
①希望小売価格
被告は,本件訴訟提起前の事前交渉において,亡Bに対し,被告
各製品の平均販売単価を開示したが,後日,そのうちの「おぼろ豆
腐二丁盛り」の平均販売単価(118円)は虚偽であり,少なくと
もその約2倍の238円前後であることが判明した。したがって,
被告各製品の希望小売価格は,被告による回答(甲8)の2倍とし
て計算する。
②料率
料率は,通常,2ないし10%が相当であるところ,亡Bの画家
としての経歴からすると,平均的料率である5ないし6%を下回る
ことはないというべきである。もっとも,本件においては,被告各
製品の希望小売価格が比較的低額である点を考慮して,4%とする。
③製造数量
被告は,本件訴訟提起前の事前交渉において,亡Bの要請にもか
かわらず,販売総数量しか回答せず,製造総数量を開示しなかった。
被告各製品が生鮮加工食品であることを考慮し,販売総数量は製造
総数量の70%であると仮定して概数を算出する。また,被告は,
1回目及び2回目の無断使用についての販売価格などは不明である
とするので,第3回及び第4回のデータから推計することとする。
c)各使用期間における損害額合計6860万2066円
①第3回24万4064円
(計算式(81円×2)×4%×(26,365パック÷70%))
=244,064円
②第4回877万5316円
(計算式(118円×2)×4%×(650,712パック÷70)
%)=8,775,316円
③第1回4681万4968円
ⅰ)販売総数量
第3回及び第4回の使用期間は,いずれも約5か月間であるか
ら,第3回及び第4回の販売総数量の平均である33万8538
パックが,被告各製品の5か月間の平均販売総数量であると推計
する。
ⅱ)使用期間
第1回の使用期間は約55か月であるので,第3回及び第4回
の約11倍の使用期間である。
ⅲ)希望小売価格
本件訴訟提起時の同種製品(200gの木綿または絹豆腐)の小
売価格は108円(甲16)であるから,平成4年ないし10年当
時と平成17年10月の豆腐の価格指数が98.4対95.8であ
ること(甲17)を前提に平成4年ないし10年当時の豆腐の価格
を推測すると,110円を下らない。
ⅳ)具体的計算
(計算式)絹豆腐110円×4%×(338,538パック÷
70%)×11倍=23,407,484円
木綿豆腐110円×4%×(338,538パック÷
70%)×11倍=23,407,484円
④第2回1276万7718円
第2回の使用期間は約15か月であるから,第3回及び第4回の使
用期間の約3倍となる。したがって,第1回と同様に推計すると,1
276万7718円となる。
(計算式)絹豆腐110円×4%×(338,538パック÷70
%)×3倍=6,383,859円
木綿豆腐110円×4%×(338,538パック÷7
0%)×3倍=6,383,859円
⑤合計6860万2066円
d)被告が賠償すべき損害額
亡Bは,これまで,故意による無断複製行為に対しては,原則とし
て,通常の再使用料の3倍の額をペナルティとして請求していた。し
たがって,著作権法114条4項により,被告が,原告絵画の無断複
製について支払うべき損害賠償額は,上記合計額6860万2066
円の3倍である2億0580万6198円となる。
また,被告は,著作権法114条3項により,複製権侵害に基づく財
産的損害の賠償として,少なくとも上記合計額6860万2066円を
支払う義務がある。
イ氏名表示権の侵害について
被告各パッケージにおける「江戸時代B画」という表示は,亡Bがあた
かも江戸時代の画家であるかのような虚偽の氏名表示である。被告は,無
断使用の事実を隠すため,原告絵画が著作権の保護期間が満了した江戸時
代の作品であるかのように見せかけたものであり,これは,亡Bの著作者
人格権を著しく侵害するものである。被告による著作者人格権侵害の悪質
さからすると,亡Bの精神的苦痛を慰謝するためには,その慰謝料額は,
原告絵画の通常の使用料である6860万2066円を下らない。
ウ相続
亡Bは,平成17年6月15日に死亡し,亡Bの長男である原告は,遺
産分割協議の結果,本件の損害賠償請求権を取得した。
エ弁護士費用200万円
本件は,亡Bが,訴訟提起前の交渉において,被告による原告絵画の使
用期間及び使用態様に適合する損害賠償額の算定基準である定率方式によ
る合理的解決を提案したが,被告が誠意ある対応をしなかったため,原告
はやむなく,本件提訴を余儀なくされた。本件訴訟追行に関する弁護士費
用は少なくとも200万円を下らない。
オ合計2億7640万8264円
よって,原告は,被告に対し,著作権侵害及び著作者人格権侵害に基づ
く損害賠償並びに不法行為に基づく損害賠償として,上記損害合計2億7
640万8264円のうち,金2000万円及びこれに対する訴状送達の
日の翌日である平成17年12月20日から支払済みに至るまで民法所定
の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(2)被告の主張
,。ア原告絵画に著作物性が認められない以上被告が賠償すべき損害はない
イa)仮に,被告に著作権侵害に基づく損害賠償義務が存するとしても,損
害額が原告の通常の再使用料の3倍になるとの主張は争う「ペナルテ。
ィ」の賠償は,発生した損害の填補を目的とする不法行為制度(民法7
09条)の根本法理に反するものである。また,仮に原告絵画に著作物
性が認められたとしても,あくまでも本件原画の二次的著作物であるか
ら,使用料相当損害額については,原告絵画と本件原画の寄与の割合に
より按分されるべきである。
b)原告は,損害額の算定において,定率方式により算定されるべきであ
ると主張する。しかし,定率方式は,キャラクターなどの著作物の使用
において,当該著作物の顧客吸引力が直接に商品価値に反映している場
合,すなわち,著作物の顧客吸引力の利用と商品の販売量とが比例する
と合理的に推測される場合に限られるのであって,顧客吸引力を有する
キャラクターの使用の場合であっても,キャラクターの使用の有無が売
上高の増減に結びつかない場合には裁判例においても,定率方式をも
って通常使用料相当額を算定することは相当ではないとされている。
豆腐の売り上げは,豆腐の品質(味・安全性)などや価格に左右され
るものであり,パッケージの図柄によって左右されるものではない。原
告絵画は,特に需用者において知られているものでもなく,また,その
使用態様も,豆腐という商品に対応して,江戸時代の豆腐屋の様子を描
いた原告絵画を被告各パッケージの背景に使用したにすぎず,特に商品
を象徴するキャラクター(図柄)などとして用いているものではない。
したがって,原告絵画の使用と被告各製品の売上高の増減とが結びつく
ものではなく,本件において,定率方式が採用される余地はない。
第4当裁判所の判断
1争点1(原告絵画の著作物性・原告の主位的主張)について
(1)ア原告絵画が,本件原画を模写して作成されたことについては,当事者
間に争いがない「模写」とは「まねてうつすこと。また,そのうつし。,
とったもの(岩波書店「広辞苑」参照)を意味するから,絵画におけ。」
る模写とは,一般に,原画に依拠し,原画における創作的表現を再現する
,,。,行為又は再現したものを意味するものというべきであるしたがって
模写作品が単に原画に付与された創作的表現を再現しただけのものであ
り,新たな創作的表現が付与されたものと認められない場合には,原画の
複製物であると解すべきである。これに対し,模写作品に,原画制作者に
よって付与された創作的表現とは異なる,模写制作者による新たな創作的
,,,表現が付与されている場合すなわち既存の著作物である原画に依拠し
かつ,その表現上の本質的特徴の同一性を維持しつつ,その具体的表現に
修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現するこ
とにより,これに接する者が原画の表現上の本質的特徴を直接感得するこ
とができると同時に新たに別な創作的表現を感得し得ると評価することが
できる場合には,これは上記の意味の「模写」を超えるものであり,その
模写作品は原画の二次的著作物として著作物性を有するものと解すべきで
ある。
イ機械や複写紙を用いて原画を忠実に模写した場合には,模写制作者によ
る新たな創作性の付与がないことは明らかであるから,その模写作品は原
画の複製物にすぎない。また,模写制作者が自らの手により原画を模写し
た場合においても,原画に依拠し,その創作的表現を再現したにすぎない
場合には,具体的な表現において多少の修正,増減,変更等が加えられた
としても,模写作品が原画と表現上の実質的同一性を有している以上は,
当該模写作品は原画の複製物というべきである。すなわち,模写作品と原
画との間に差異が認められたとしても,その差異が模写制作者による新た
な創作的表現とは認められず,なお原画と模写作品との間に表現上の実質
的同一性が存在し,原画から感得される創作的表現のみが模写作品から覚
知されるにすぎない場合には,模写作品は,原画の複製物にすぎず,著作
物性を有しないというべきである。
ウ原告は,機械的模写でない限り,模写については模写制作者による創作
性が認められることは,模写制作の各過程(認識行為と再現行為)におい
て,それぞれ模写制作者の創作性が発揮されることからも明らかであるか
ら,仮に原画と模写作品が酷似していても,常に創作性が認められると主
張する。
しかし,著作権法は,著作者による思想又は感情の創作的表現を保護す
ることを目的としているのであるから,模写作品において,なお原画にお
ける創作的表現のみが再現されているにすぎない場合には,当該模写作品
については,原画とは別個の著作物としてこれを著作権法上保護すべき理
由はないというべきである。したがって,原画と模写作品との間に表現上
の実質的同一性が存在する場合には,模写制作者が模写制作の過程におい
てどのように原画を認識し,どのようにこれを再現したとしても,あるい
は,模写行為自体に高度な描画的技法が採用されていたとしても,それら
はいずれもその結果として原画の創作的表現を再現するためのものである
にすぎず,模写制作者の個性がその模写作品に表現されているものではな
い。
また,原告は,美術界における模写行為の創作性及びその芸術的意義を
強調し,尾形光琳と酒井抱一の各模写作品を比較検討し,その表現上の違
いから,尾形光琳らによる創作性の付与を指摘すると共に,尾形光琳の模
写作品は重要文化財として高く評価されているし,横山大観やゴッホらも
多くの模写作品を残しているとも主張する。しかし,模写作品が二次的著
作物として著作権法上の保護を与えられるべきか否かについては,個々の
模写作品毎に,著作権法に基づく法的な判断,すなわち,著作権法におけ
る著作物性の概念を前提に判断されるべきであり,本件においては,本件
原画と比べた原告絵画の著作物性について論じれば足り,美術界において
論じられている模写行為の創作性及び模写作品の芸術的意義一般について
論じる必要性はないし,また,著名な画家が過去に制作した模写作品の著
作物性を本件において論じる必要性もない(尾形光琳と酒井抱一あるいは
横山大観,ゴッホらの各模写作品の著作物性については,別途詳細に議論
されるべき問題であり,本件においては,本訴の訴訟物である原告絵画の
著作物性について検討すべきである。原告絵画が本件原画の二次的著。)
作物か複製物にすぎないかは,本件原画と原告絵画を比較し,原告絵画に
ついて新たな創作的表現が付与されたと認められるか否かにより判断すべ
きである。
(2)以上によれば,原告の主位的主張は採用することができない。
2争点2(原告絵画の著作物性・原告の予備的主張)について
(1)原画と模写作品の相違点を前提とする模写作品の創作性について
争点1において述べたとおり,模写制作者が自らの手により原画を模写し
た場合においても,原画に依拠し,その創作的表現を再現したにすぎない場
合には,具体的な表現において多少の修正,増減,変更等が加えられたとし
ても,その差異が模写制作者による新たな創作的表現とは認められず,なお
原画と模写作品との間に表現上の実質的同一性が存在し,原画から感得され
る創作的表現のみが模写作品から覚知されるにすぎない場合には,当該模写
作品は原画の複製物というべきであり,また,模写作品に,原画制作者によ
って付与された創作的表現とは異なる,模写制作者による新たな創作的表現
が付与されている場合,すなわち,新たに思想又は感情を創作的に表現する
ことにより,これに接する者が原画の表現上の本質的特徴を直接感得するこ
とができると同時に新たに別な創作的表現を感得し得ると評価することがで
きる場合には,その模写作品は原画の二次的著作物として著作物性を有する
ものと解すべきである。以下,同判断基準に基づいて,原告絵画の著作物性
の有無について判断する。
(2)原告絵画の著作物性について
ア本件原画は「近世職人尽絵巻」に収録された鍬形惠斎筆に係る江戸時,
代の豆腐屋の店先の様子を描いた浮世絵である。本件原画においては,①
絵の右側中央に,眠っている幼児を背負った女性が,下駄を履き,力を入
れるために前傾姿勢を取りながら,あらかじめ水につけておいた豆を石臼
でひいている様子,及び,同女性が前傾姿勢を取っているため眠っている
幼児の首が後ろに傾いている様子,②絵の中央左側にいる男性が,石臼で
ひいた豆を入れた木綿袋から,棒を利用してその汁を搾るために,棒の上
に腰をかけ,自分の体重を利用して汁を搾っている様子,及び,その男性
が力を込めているため,その首が肩にめりこみ,極端な怒り肩に描かれて
いる様子,③絵の右上の奥の座敷の上では,数珠を右耳に掛け,腰が曲が
った老婆が畳に座りながら油揚げを揚げている様子,並びに,④江戸時代
の豆腐屋の店先の様子として,絵の左側の桶と豆腐を固める長方形の箱,
豆腐を入れる箱,包丁,絵の中央のかまど,絵の右側の簀の子に乗せられ
た油揚げ,絵の中央上部の天井から下がっている八間と呼ばれた照明,老
婆の後ろの屏風やそのほかの小物類などが細かく描写されている(甲1
3。本件原画においては,上記のような姿態の男性と幼児を背負った女)
性及び老婆の3人の特徴的・個性的な姿態がいずれも浮世絵に特徴的なダ
イナミックな表現方法で生き生きと躍動的に描かれている点,及び,江戸
時代の豆腐屋の店先の様子が細かく具体的に描写されている点が大きな特
徴となっている。
イ原告絵画は,亡B著の,江戸時代の商売の様子を描いた絵画とその解説
文を掲載した書籍である「定本江戸商売図絵(甲1,検甲1)に発表さ」
れたものである。原告絵画は,本件原画の模写作品であるため,本件原画
における上記①ないし④の特徴的な表現はすべて再現されている。すなわ
ち,原告絵画においては,①絵の右側中央に,眠っている幼児を背負った
女性が,下駄を履き,力を入れるために前傾姿勢を取りながら,あらかじ
め水につけておいた豆を石臼でひいている様子,及び,同女性が前傾姿勢
を取っているため眠っている幼児の首が後ろに傾いている様子,②絵の中
央左側にいる男性が,石臼でひいた豆を入れた木綿袋から,棒を利用して
その汁を搾るために,棒の上に腰をかけ,自分の体重を利用して汁を搾っ
ている様子,及び,その男性が力を込めているため,その首が肩にめりこ
み,極端な怒り肩に描かれている様子,③絵の右上の奥の座敷の上では,
,,,数珠を右耳に掛け腰が曲がった老婆が油揚げを揚げている様子並びに
④江戸時代の豆腐屋の店先の様子として,絵の左側の桶と豆腐を固める長
方形の箱,豆腐を入れる箱,包丁,絵の中央のかまど,絵の右側の簀の子
に乗せられた油揚げ,絵の中央上部の天井から下がっている八間と呼ばれ
た照明,老婆の後ろの屏風やそのほかの小物類などが本件原画と同様に細
かく描写されている(甲1,甲13。)
ウ上記のとおり,原告絵画を本件原画と比較すれば,原告絵画が本件原画
の模写作品であるため,江戸時代の豆腐屋の店先における日常の出来事を
躍動的に描こうとした本件原画の特徴的な表現をそのまま再現しているも
のというべきであり,その間に実質的同一性があることは明らかである。
そして,次に述べるとおり,原告絵画においては,本件原画にはない創作
的な表現が付加されているものと認めることはできない。
原告絵画においては,確かにこれを詳細に見れば,本件原画における,
男性の頭が肩にめり込み,怒り肩になっていた浮世絵に特徴的な誇張的表
現を,首のめり込む程度を若干減らし,怒り肩も若干盛り上がりを抑えた
表現で描かれているものの(甲1,甲13,全体的に見ると両者の差異)
は細部における僅かなものであり,これを原告絵画における創作的な表現
とみることは到底できないものである。また,原告絵画においては,女性
に背負われた幼児の頭が反り返った程度が,若干抑えられて描かれている
ものの(甲1,甲13,これにより,石臼をひくために前傾姿勢を取っ)
ている女性と首を後ろに傾かせて寝ている幼児とのバランスに特段の変化
が生じているということもできず,これを原告絵画における創作的な表現
とみることもできない。さらに,画面右側上部の奥座敷に座り,油揚げを
揚げている老婆については,本件原画より原告絵画の方が若干小さく描か
れているほか,顔のしわなどの描写が多少簡略化して描かれているものの
(甲1,甲13,顔のしわの描写については単に簡略化されただけであ)
るとの印象を否定することはできず,老婆の体の大きさがやや小さめに描
かれているとしても,その姿態から着物の柄に至るまで実質的に同一であ
り,そこに何らかの創作的な表現が付加されたことを肯定することはやは
り困難である。またさらに,豆腐屋の店舗の様子についても,画面左下に
ある豆腐を入れる箱の上部四隅の金具,屋根,屏風の色ないし明暗,及び
登場人物の着物の色などにおいて,異なる部分があるものの(甲1,甲1
3,これらは原告絵画において,精密な描写を省略し,若干の簡略化が)
なされたという程度のものであるとの印象を否定することはできず,そこ
に何らかの創作的な表現が付加されたものということはできない。
(3)以上によれば,原告絵画は,本件原画の模写の範囲を超えて,これに亡
Bにより何らかの創作的表現が付与された二次的著作物であると認めること
はできず,本件原画の複製物にすぎないものといわざるを得ない。
3争点3(原告絵画の複製権侵害の成否)及び争点4(原告絵画の著作者人格
権侵害の成否)について
前記認定のとおり,原告絵画については著作物性を認めることができないの
,,()であるから原告が主張する複製権侵害も亡Bの著作者人格権氏名表示権
侵害も,いずれも成立しない。
なお,被告が被告各パッケージに「江戸時代B画」と表記したのは,亡B著
の「定本江戸商売図絵」の80頁の原告絵画の下に「出典・絵巻物『近世職人
尽絵詞』文化二年鍬形恵斎画」と記載されていることなどから,原告絵画を
既に著作権が消滅している江戸時代の絵と漫然と誤信したことによるものと認
められる(甲7,8,検甲1の80頁。すなわち,このことは,被告が,原)
告絵画が江戸時代の豆腐屋の様子を描いた本件原画を現代において模写した作
品であるとは知らないまま,被告各パッケージに原告絵画を使用したことを推
認させるものであり,被告が仮に本件原画とその模写作品である原告絵画の両
方の存在を知っていたならば,著作権が既に消滅している江戸時代の豆腐屋の
様子を描いた浮世絵である本件原画を被告各パッケージに使用していたことを
も推認させるものである。被告は,被告各パッケージに江戸時代の豆腐屋を描
いた絵を使用したかったにすぎないのであり,被告が本件原画と原告絵画とを
比較し,その細部における差異,すなわち,本訴において原告が主張するとこ
ろの,本件原画にはない原告絵画の創作的表現というような部分が存在するが
故に原告絵画を使用したわけではないことは,被告各パッケージにおいて,原
告絵画の複製物が「おぼろ豆腐二丁盛り」などの商品名の背景画として使用さ
れ,3人の人物像の一部や絵の細部が不明瞭であること(乙1の1ないし5)
からも明らかであるといわざるを得ない。被告各パッケージからは,原告が原
告絵画を二次的著作物と主張する根拠となる表現部分を看取することも困難な
のである。
第5結論
よって,原告の請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない
から棄却することとし,訴訟費用の負担については,民訴法61条を適用し,
主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第46部
裁判長裁判官設樂隆一
裁判官荒井章光
裁判官鈴木千帆は,転官のため署名押印することができない。
裁判長裁判官設樂隆一
(別紙)
原告絵画目録
(別紙)
本件原画目録
(別紙)
被告各パッケージ目録
商品名使用開始使用終了販売数量
・濃い絹不明H.4.10H.9.3
・濃い木綿
・国産大豆使用濃い絹不明H.9.4H.10.6
・国産大豆使用濃い木綿
H.12.9H.13.226,365・にがり寄せ下旬末
H.16.10.22H.17.3.17650,712・おぼろ豆腐二丁盛り
(別紙)
本件参考絵画目録

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