弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


戻る

         主    文
       本件上告を棄却する。
         理    由
 弁護人黒田修一,同長添節の上告趣意は,単なる法令違反,事実誤認の主張であ
って,刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 所論にかんがみ,本件詐欺罪の成否について職権で判断する。
 1 原判決及びその是認する第1審判決の認定並びに記録によれば,本件の事実
関係は次のとおりである。
 (1) 被告人が代表者として支配,経営するA株式会社(以下「A」という。)
は,住宅金融専門会社であるB株式会社(以下「B」という。)に対する債務を担
保するため,本件各不動産に第1順位の根抵当権又は抵当権(以下「本件各根抵当
権等」という。)を設定した。
 (2) 株式会社C(以下「C」という。)は,Bから,本件各根抵当権等を被担
保債権と共に譲り受け,被告人に対し,本件各不動産を売却してその代金をAの債
務の返済に充てることを督促していた。Cは,担保不動産の売却による一部弁済を
受けて担保権を放棄する際には,代金額が適正であることを厳格に審査し,かつ,
必要な経費を除く代金全額を返済に充てさせるものとし,担保不動産に関する利益
を債務者に残さない方針を採っていた。
 (3) 他方,被告人の経営する別の会社(以下「別会社」という。)の取引銀行
(以下「取引銀行」という。)は,被告人に対し,被告人が実質的に支配する会社
(以下「ダミー会社」という。)が適当な不動産を取得してその上に取引銀行のた
め第1順位の根抵当権を設定することを条件として,ダミー会社に融資を行い,そ
の融資金の中から別会社に対する貸付債権につき返済を受けるという取引を申し出
た。その取引は,取引銀行の別会社に対する回収の困難な多額の不良貸付債権を表
面上消滅させ,実質はこれをダミー会社に付け替えることに主眼があったが,被告
人にもこれに応じる利益のある内容であって,担保に供する不動産の価値をあえて
過大に評価してダミー会社が多額の融資を受け,その中から,当該不動産の購入代
金相当額を支払い,かつ,別会社の取引銀行に対する債務を返済しても,なお多額
の資金が被告人の手元に残るものであった。
 (4) 被告人は,取引銀行との間で,本件各不動産を担保に供して上記取引を実
行することを合意し,Cから本件各根抵当権等の放棄を得て本件各不動産をダミー
会社に売却することを企てた。しかし,CのAに対する債権額は本件各不動産の価
格を大幅に上回るものであった上,被告人は,Cの前記(2)の方針を承知していた
ので,真実を告げた場合にはCが本件各根抵当権等の放棄に応ずるはずはないと考
え,Cの担当者に対し,真実はダミー会社に売却をして本件各不動産を被告人にお
いて実質的に保有しつつ取引銀行から多額の融資を受ける目的であるのに,これら
の事情を秘し,真実の買主ではなく名目上の買主となるにすぎない者と共謀の上,
本件各不動産をその者に売却するという虚偽の事実を申し向け,上記担当者を欺い
てその旨誤信させ,Cをして,時価評価などに基づきCの是認した代金額から仲介
手数料等を差し引いた金員をAから受け取るのと引換えに,本件各根抵当権等を放
棄させ,その抹消登記を了した。
 2 【要旨】以上の事実関係の下では,本件各根抵当権等を放棄する対価として
AからCに支払われた金員が本件各不動産の時価評価などに基づき住管機構におい
て相当と認めた金額であり,かつ,これで債務の一部弁済を受けて本件各根抵当権
等を放棄すること自体についてはCに錯誤がなかったとしても,被告人に欺かれて
本件各不動産が第三者に正規に売却されるものと誤信しなければ,Cが本件各根抵
当権等の放棄に応ずることはなかったというべきである。被告人は,以上を認識し
た上で,真実は自己が実質的に支配するダミー会社への売却であることなどを秘し
,Cの担当者を欺いて本件各不動産を第三者に売却するものと誤信させ,Cをして
本件各根抵当権等を放棄させてその抹消登記を了したものであるから,刑法246
条2項の詐欺罪が成立するというべきである。
 したがって,本件詐欺罪の成立を認めた原判決の結論は正当である。
よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主
文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 藤田宙靖 裁判官 金谷利廣 裁判官 濱田邦夫 裁判官 上田
豊三)

戻る



採用情報


弁護士 求人 採用
弁護士募集(経験者 司法修習生)
激動の時代に
今後の弁護士業界はどうなっていくのでしょうか。 もはや、東京では弁護士が過剰であり、すでに仕事がない弁護士が多数います。
ベテランで優秀な弁護士も、営業が苦手な先生は食べていけない、そういう時代が既に到来しています。
「コツコツ真面目に仕事をすれば、お客が来る。」といった考え方は残念ながら通用しません。
仕事がない弁護士は無力です。
弁護士は仕事がなければ経験もできず、能力も発揮できないからです。
ではどうしたらよいのでしょうか。
答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所
[email protected]
採用担当宛