弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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○ 主文
本件訴えを却下する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
○ 事実
第一 当事者の求めた判決
一 原告ら
1 被告は、昭和五八年の六月ないし七月に施行を予定している参議院比例代表選
出議員の選挙に関する事務を執行してはならない。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 被告
主文同旨
第二 原告らの請求原因
一 原告らは、日本国民であり、参議院議員の選挙権及び被選挙権を有している。
二 被告は、公職選挙法(以下「法」という。)五条一項の規定に基づき参議院比
例代表選出議員の選挙に関する事務を管理する者であり、昭和五八年の六月ないし
七月に、法八六条の二等の規定に基づき参議院比例代表選出議員の選挙を施行しよ
うとしている。
三 しかしながら、法八六条の二等の規定に基づく参議院比例代表選出議員の選挙
は、次のとおり憲法に違反するものである。
1 参議院比例代表選出議員の選挙においては、法八六条の二第一項の各号の一に
該当する政党その他の政治団体に所属するか、あるいはその推薦を受けなければ、
候補者となることができず、国民が個人として立候補することは許されない。これ
は、国民が政党その他の政治団体に所属するか又はその推薦を受けるか否かとい
う、社会的身分ないし政治的理由によつて国民を差別し、平等であるべき国民固有
の被選挙権を奪うものであつて、憲法一四条及び四四条の規定に違反する。
2 参議院比例代表選出議員の選挙においては、選挙人は、投票用紙に法八六条の
二第一項の規定による届出をした政党その他の政治団体の名称又は略称を自書して
投票しなければならない。しかし、憲法一五条は、一項で、「公務員を選定し、及
びこれを罷免することは、国民固有の権利である。」と規定し、三項で、「公務貝
の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。」と規定し、国民の公務員
選定罷免権を明定するとともに、公務員の選挙については、公務員たるべき個人を
選択する権利を国民に保障しているのである。したがつて、政党その他の政治団体
に対する投票を強制する参議院比例代表選出議員の選挙は、憲法一五条の規定に違
反する。
3 憲法二一条一項は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、
これを保障する。」と規定し、すべての国民に対し、結社することの自由及び結社
しないことの自由を保障している。しかるに、参議院比例代表選出議員の選挙は、
国民が政党その他の政治団体に所属するか又はその推薦を受けなければ候補者とな
ることができないとするもので、政党その他の政治団体に所属せず又はその推薦を
受けない国民の被選挙権を奪うとともに、結社しない者に対する国民の選挙権をも
侵し、ひいては国民に対し政治的結社を間接的に強制するものであつて、憲法二一
条一項の規定に違反する。
四 したがつて、被告が昭和五八年の六月ないし七月に施行を予定している参議院
比例代表選出議員の選挙に関する事務を執行すれば、原告らの選挙権及び被選挙権
が侵害されることになるので、その差止めを求める。
五 なお、原告らは、原告らの個人的権利の予防的救済を求める抗告訴訟として、
本件訴えを提起するものである。本件訴えのような予防的不作為命令訴訟は、
(1)近い将来において具体的行政処分の行われる高度の蓋然性が存すること、
(2)当該行政処分が行われると国民の法益が侵害されること、(3)事後の救済
が困難であること、及び(4)他に適当な法益救済の手段が存しないこと、との要
件が充足されれば、いわゆる無名抗告訴訟の一としてその提起が認められると解さ
れるところ、本件においてはこれらの要件がすべて充足されているのである。すな
わち、(1)被告の行う選挙事務は、例えば、個人の立候補の届出を却下し、個人
名を記載した投票を無効とするなど、原告らの憲法上の具体的権利を制限する行政
処分として把握されるところ、被告において、昭和五八年の六月ないし七月に参議
院比例代表選出議員の選挙を施行し、その事務を執行することが確実であり、
(2)右選挙事務が執行されると、原告らの憲法上の権利が侵害され、(3)最高
裁判所が、昭和五一年四月一四日の大法廷判決において、昭和四七年に行われた衆
議院議貝選挙の千葉県第一区における選挙の無効確認請求事件に関し、同選挙を違
憲と判断しながらも、選挙自体はこれを無効としない事情判決を下していることか
らも明らかなように、違憲選挙によつて侵された国民の権利の事後的救済は極めて
困難といわざるを得ず、(4)右権利を救済するためには、抗告訴訟をおいて他に
適切な手段がないのである。したがつて、本件訴えは、適法な訴えというべきであ
る。
また、被告の右参議院比例代表選出議員の選挙に関する事務の執行を差し止めて
も、国政に是正不可能な混乱は生じない。
昭和五七年中に臨時国会及び通常国会が開かれ、法の改正を行うことが十分可能だ
からである。
第三 被告の本案前の主張
原告らが侵害のおそれがあるとして、本件訴えによつて保護を求める権利は、もと
もと全国の参議院議員の選挙権あるいは被選挙権を有する者すべてに等しくかかわ
る抽象的、一般的利害にほかならない。原告らは、本件訴えを無名抗告訴訟として
構成しようと試みるものであるが、本件訴えの実体は、帰するところ法八六条の二
等の規定に基づく参議院比例代表選出議員の選挙の違憲無効を主張して、選挙制度
の適正な運用を維持するため、全国の選挙人ないしは被選挙権を有する者一般の資
格というまさに原告らの個人的な法律上の利益にかかわらない資格において提起し
た性質の訴訟というべきであつて、本件訴えは、当事者間に具体的な権利義務その
他法律関係についての争いがあり、個人の権利を保護するための訴訟ではないから
抗告訴訟に当たらず、行政事件訴訟法五条に定める民衆訴訟にほかならないという
べきである。行政事件訴訟法五条は、選挙人たる資格において提起する訴訟を民衆
訴訟と明定しているところであり、また、候補者たる資格において提起する訴訟も
同様に民衆訴訟と解されている。しかして、このような民衆訴訟は、法律に定める
場合において、法律に定める者に限り提起することができるものであるところ(行
政事件訴訟法五条及び四二条参照)、本件訴えのごとき訴訟を提起することができ
る旨を定めた実定法上の規定は存しないのであるから、原告らの本件訴えは不適法
なものとして却下されるべきである。
第四 原告らの反論
一 原告らが本件訴えによつて保護を求める参議院議員の選挙権及び被選挙権は、
原告ら各個人の人格に所属する個人的権利であり、被告主張のような一般的、抽象
的権利ではない。
抗告訴訟を提起するためには、出訴者が自らにかかわる権利・利益を有することが
必要であるが、この自らにかかわる権利・利益が専ら当該出訴者だけのものでなけ
ればならないとする理由はなく、他の多数の者に共通の権利・利益であつても何ら
差し支えはない。原告らの選挙権及び被選挙権は、他の選挙権者又は被選挙権者に
共通のものではあるが、全国の選挙権者及び被選挙権者が全員で一つの選挙権又は
被選挙権を有するというのではなく、各個人が選挙権及び被選挙権を有しているの
である。
被告が参議院比例代表選出議員の選挙を施行することによる不利益は、多数人が同
時に受ける不利益ではあるが、それは個人的な不利益の集積、総和にほかならな
い。また、多数人を対象とするいわゆる一般処分も抗告訴訟の対象となり得るとす
る裁判例は多数存在し、参議院比例代表選出議員の選挙が選挙権者及び被選挙権者
一般の権利に影響を与える性質のものであるからといつて、抗告訴訟の対象とし得
ないとする理由はない。
ちなみに、衆議院議員選挙に関し一部の選挙権者が定数不均衡を理由に自己の選挙
権を侵害されたとして慰謝料の支払を求めて提起した損害賠償請求事件について、
裁判所は、国家の立法行為と個々の選挙権者の選挙権との間に法律上の争訟関係を
認め、当該訴えを適法と判断している(東京地方裁判所昭和五二年八月八日判決・
判例時報八五九号三ページ、同裁判所昭和五三年一〇月一九日判決・判例時報九一
四号二九ページ、同裁判所昭和五六年一一月三〇日判決・判例時報一〇二四号三二
ページ及び札幌地方裁判所昭和五六年一〇月二二日判決・判例時報一〇二一号二五
ページ)。公権力の行使による同じ選挙権の侵害に関し、損害賠償請求訴訟は許さ
れるが抗告訴訟は許されないというような不整合は、理論上成り立ち得ないのであ
る。
したがつて、原告ら各個人の選挙権及び被選挙権の救済を求める本件訴えは、適法
というべきである。
二 なお、原告A、原告B及び選定者Cは比例代表制の導入による法の改悪に対し
反対運動を続け、自由民主党及び日本社会党に法案の撤回を求めてきた「選ぶ自由
を奪うな!市民集会」のメンバーであり、その余の原告らは住民の代表たる地方議
会の議員であつて、その点においても本件訴えの提起が許されるものというべきで
ある。
第五 証拠(省略)
○ 理由
一 原告らの本件訴えは、法八六条の二等の規定に基づく参議院比例代表選出議員
の選挙が違憲であることを理由として、昭和五八年の六月ないし七月に施行予定の
参議院比例代表選出議員の選挙に関する一切の事務の執行の差止めを求めるという
ものであり、かつ、原告らが侵害のおそれがあるとして本件訴えにより保護を求め
る権利は、憲法及び法により一定年齢以上の日本国民すべてに保障されている参議
院議員の選挙権及び被選挙権である。したがつて、本件訴えは、行政事件訴訟法五
条の「国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙
人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するもの」、すな
わち民衆訴訟に該当することが明らかである。そして、民衆訴訟は、法律に定める
場合において、法律に定める者に限り提起することができるところ(行政事件訴訟
法四二条)、本件訴えのような選挙権者又は被選挙権者たる資格において参議院議
員の選挙に関する事務の事前差止めを求める訴訟を提起する途は現行法上認められ
ていないから、本件訴えは、結局、行政事件訴訟法四二条の要件を具備しない不適
法な訴えとして、これを却下すべきである。
二 原告らは、参議院議員の選挙権及び被選挙権は原告ら各個人に与えられた権利
であり、その保護を求める本件訴えは抗告訴訟として適法である、と主張する。
確かに、選挙権及び被選挙権は、国民の国政への参加を保障する権利として議会制
民主主義の根幹をなし、憲法の保障する基本的人権のうちでも重要なものの一つで
あり、一定年齢以上の国民各自に与えられた権利ということができる。しかしなが
ら、選挙権及び被選挙権は、一定年齢以上の国民すべてに等しく与えられるもの
で、原告らに特有のものではない。また、原告らは、昭和五八年の六月ないし七月
に施行予定の参議院比例代表選出議員の選挙に関する事務が執行されれば権利侵害
が発生すると主張するが、その理由とするところは、右選挙に関する法の規定が違
憲であるというものであつて、結局は法の一般的効力を争うものであり、原告らに
あてて加えられる特定の制約を争うものではない。そして、請求の趣旨は、昭和五
八年の六月ないし七月に施行予定の参議院比例代表選出議員の選挙に関する一切の
事務の執行の差止めを求めるというものである。このように、請求の基礎とする権
利が全国の選挙権者及び被選挙権者に共通のものであること、請求の理由とすると
ころが法の一般的効力の違憲性であつて、特定人にあて加えられる制約ないし制限
の違法性ではないこと、請求の趣旨が全国の選挙権者及び被選挙権者の権利行使に
直接影響を及ぼす内容のものであることからすれば、本件裁判で解決を求められて
いる紛争は、特定の者の法律関係の紛争ということができない。
憲法三二条は「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」と規定
するが、これは社会におけるすべての紛争につき裁判を受ける権利を保障したもの
ではなく、司法権の及ぶ範囲において裁判を受ける権利を保障したものであり、司
法権には、その目的と機能とに照らし、一定の限界が存する。すなわち、司法権
は、裁判官により行使され、裁判官は、その良心に従い独立して裁判を行い、憲法
及び法律にのみ拘束され、裁判の内容に関し国民から直接責任を問われることはな
い。そして、裁判は、当事者間に具体的な紛争が存する場合に、一方の当事者から
の訴えの提起を前提とし、一定の訴訟手続に従い、当事者の主張と立証に依拠して
事実の認定を行い、これに法律を適用することによつて、その紛争を解決する作用
である。したがつて、このような司法の機関、手続及び規範によつて処理するに適
した紛争のみが司法権の対象となると解すべきであり、それは特定の者の具体的な
法律関係についての紛争であるというべきである。要するに、「わが現行の制度の
下においては、特定の者の具体的な法律関係につき紛争の存する場合においてのみ
裁判所にその判断を求めることができるのであり」(最高裁判所昭和二七年一〇月
八日大法廷判決・民集六巻九号七八三ページ)、裁判所法三条一項に「裁判所
は、・・・・・・一切の法律上の争訟を裁判し」とあるのも、この趣旨を示すもの
である。そして、当該紛争が特定の者の具体的な法律関係についての紛争すなわち
法律上の争訟に該当する場合は、裁判の拒否は許されないが、法律上の争訟に該当
しない場合には、本来的には裁判権の行使が許されず、法律に特別の定めが存する
ときに限り例外的に裁判権の行使が許されるのである。また、抗告訴訟は、その原
告適格に関する行政事件訴訟法九条、三六条及び三七条の規定からも明らかなよう
に、いわゆる主観的訴訟であり、法律上の争訟に関する訴訟形式の一にすぎないか
ら、当該紛争が法律上の争訟に該当しない限り抗告訴訟の提起も許されないこと
は、多言を要しないところである。
原告らは、法の抽象的効力自体を真接訴えの対象とするのではなく、昭和五八年の
六月ないし七月に施行予定の参議院比例代表選出議員の選挙に関する事務の執行に
よつて原告らの選挙権及び被選挙権が侵害されると主張し、その差止めを求めるも
のであるから、紛争の具体性はかろうじて肯定できるかも知れない。しかし、原告
らが本件裁判で解決を求めようとする紛争が特定の者の法律関係についての紛争と
いえないことは前叙のとおりであるから、その点において本件訴えの対象は法律上
の争訟に当たらず、抗告訴訟の対象にもなり得ないといわざるを得ないのである。
仮に、本件訴えの対象が法律上の争訟に該当すると解するとすれば、全国の選挙権
者及び被選挙権者が同種訴訟を提起することが可能となり、裁判所は訴訟の洪水に
よりその正常な機能の維持を妨げられ、被告にも過重な負担を強いる結果となるの
である。そして、各裁判所の判断の相違により国政に重大な混乱を招くおそれなし
としない。また、本件訴えによつて原告らが勝訴するとすれば、全国の他の選挙権
者及び被選挙権者は、自己の何ら関与しない裁判によりその権利行使につき拘束を
受けるという不公正が生ずるのであり、行政事件訴訟法二二条の第三者の訴訟参加
の規定も本件訴えのような場合に有効に機能し得るものでないことは明らかであ
る。更に、原告らが勝訴するとすれば、立法府において法改正を強制されることに
なるが、政治的独立を有する裁判官が少数の当事者の関与の下にかかる決定をなす
ことが議会制民主主義及び三権分立の原理に照らし許されないことは明らかという
べきである。以上の考察からも、本件訴えの対象が法律上の争訟に該当しないこと
は明らかである。
以上のように、本件訴えは、法律上の争訟に係るものではなく、典型的な民衆訴訟
であり、かかる民衆訴訟を認める法律の特別規定が存しない以上(本件訴えが法二
〇四条の選挙の効力に関する訴訟に該当しないことは、多言を要しないところであ
る。)、不適法な訴えといわざるを得ないのである。
三 また、原告らは、抗告訴訟により保護救済を求むべき権利・利益が専ら当該出
訴者だけのものでなければならないとする理由はなく、他の多数の者に共通の権
利・利益であつても何ら差し支えないとして、原告らの選挙権及び被選挙権が全国
の選挙権者及び被選挙権者に共通のものであつても抗告訴訟によりその保護救済を
求めることが可能である、と主張する。
選挙権及び被選挙権がおよそ抗告訴訟による保護救済の対象となり得ないとするこ
とには問題があるかも知れない。しかし、少なくとも、抗告訴訟により排除を求め
んとする選挙権又は被選挙権に対する制約ないし制限は、特定人に対する制約ない
し制限でなければならない。そして、右の制約は、当該出訴者に対してのみ加えら
れたものであることは要しないが、国民ないし市民一般が等しく受ける制約とは区
別し得る特定的・個別的な制約でなければならない。しかるに、原告らが本件訴え
で排除しようとする制約は、法の一般的効力により全国の選挙権者及び被選挙権者
の等しく受ける制約であるから、抗告訴訟により排除を求め得る制約ではなく、本
件訴えを抗告訴訟としてとらえることができないのである。
同じく、原告らは、多数人を対象とするいわゆる一般処分が抗告訴訟の対象となる
以上、参議院比例代表選出議員選挙が選挙権者及び被選挙権者一般の権利に影響を
与える性質のものであるからといつて、抗告訴訟の対象となし得ない理由はない、
と主張する。
いわゆる一般処分であつても、それが特定人の権利義務に直接関係する場合には、
抗告訴訟の対象となる余地が存するが、一般的・抽象的な規範の定立という性質を
持つにすぎない場合には、法令の定立行為と同様に抗告訴訟の対象とはならない。
参議院比例代表選出議員の選挙に関する一連の手続を全体として一個の処分として
とらえ得るとしても、それは選挙権者及び被選挙権者一般の権利義務にかかわるも
のであつて、特定人に対する関係においてその権利義務に作用する処分とはいえな
いから、抗告訴訟の対象とはなし得ないといわざるを得ない。
四 次に、原告らは、選挙権の侵害を理由とする損害賠償請求事件につきその法律
上の争訟性を認めた裁判例を引用して、選挙権及び被選挙権を根拠とする本件訴え
につき法律上の争訟性を否定するのは理論的整合を欠くものである。と主張する。
公権力の行使又は私人の行為により、特定人の選挙権又は被選挙権に対する個別的
侵害が発生した場合に、右選挙権又は被選挙権に対する侵害をもつて損害賠償請求
の根拠とすることはできても、法により国民一般の選挙権又は被選挙権に対し制約
が課せられたからといつて、右選挙権又は被選挙権に対する制約をもつて損害賠償
請求の根拠となし得るかは疑問の存するところである。しかし、それはともかくと
して、損害賠償請求訴訟の対象は、特定当事者間における損害賠償請求権の存否を
めぐる紛争であるから、特定当事者が裁判により解決するにふさわしく、法律上の
争訟に該当するといい得る余地が存するが、本件訴えは、法により国民一般の選挙
権及び被選挙権に対し課せられた制約を違憲として、選挙に関する一切の事務の執
行の差止めを求めるものであるから、国民一般にかかわり、裁判による解決にふさ
わしいものとはいえないから、損害賠償請求訴訟と同日に論ずることはできない。
五 更に、原告らは、「選ぶ自由を奪うな!市民集会」のメンバー又は地方議会の
議員であつて、その点からも本件訴えの提起が認められるべきである、と主張す
る。
しかし、原告らが右の資格を有するとしても、本件訴えにより解決を求めている紛
争が当該資格に特有の法律関係についての紛争でないことは多言を要しないところ
であるから、原告らの右資格の故に本件訴えを法律上の争訟に係るものととらえる
ことはできず、また、右の資格をもつて本件訴えのような民衆訴訟の提起を認めた
法律の定めはないから、原告らの右主張は失当といわざるを得ない。
六 なお、原告らは、本件訴えのような予防的不作為命令を求める抗告訴訟の提起
を認めなければ、原告らの選挙権及び被選挙権の保護救済を求むべき手段が他に存
在しない、と主張する。
仮に、法八六条の二等の規定に基づく参議院比例代表選出議員の選挙が違憲である
とした場合、原告ら主張のごとく、事情判決の可能性を包含した法二〇四条の選挙
の効力に関する訴訟では権利保護に十全を期し得ない面があり、本件訴えのような
予防的不作為命令請求訴訟を抗告訴訟の一種として認めるのでなければ、裁判によ
る選挙権及び被選挙権の実効ある保護救済を図ることが事実上困難であるかも知れ
ない。しかし、前叙のとおり、司法権には一定の限界が存し、法律上の争訟以外の
紛争につきいかなる訴訟を認めるかは立法政策に属することであり、議会制民主主
義及び三権分立を建前とする我が国の憲法の下では、憲法上国民一般に認められた
権利の擁護につき、最終的には主権を有する国民の国政参加及び政治的批判に委ね
られる分野が存しても、それはやむを得ないものというべきである。
七 以上の次第であるから、本件訴えは、法律上の争訟を対象とするものではな
く、民衆訴訟に該当するところ、本件訴えのような民衆訴訟を認めた特別の法律の
規定も存在にないので、これを不適法として却下することとし、訴訟費用の負担に
つき行政事件訴訟法七条並びに民事訴訟法八九条及び九三条一項本文の規定を適用
し、主文のとおり判決する。
(裁判官 泉 徳治 大藤 敏 杉山正己)
選定者目録(省略)

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