弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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          主        文
       本件控訴を棄却する。
       控訴費用は,控訴人の負担とする。
          事 実 及 び 理 由
第1 当事者の求めた裁判
 1 控訴人
 (1) 原判決を取り消す。
 (2) 被控訴人の請求を棄却する。
 2 被控訴人
   控訴棄却
第2 事案の概要
 1 被控訴人が,その代理人である弁護士を通じて,多重債務の整理のために貸
金業の規制等に関する法律(貸金業法)所定の貸金業者である控訴人に債権調査を
求めたところ,控訴人がこれに応ずることなく,①平成10年3月4日付けの20
0万円の貸付金及び②同年12月24日付けの50万円の貸付金の残元本,利息,
損害金を被担保債権として,被控訴人所有不動産に設定された根抵当権の実行とし
ての競売申立てをした。その請求債権の目録が,原判決別紙の債権目録である。本
件は,被控訴人が,この目録記載の上記①,②債務の不存在確認を求めた事案であ
る。
 被控訴人は,控訴人からの借入れは平成4年9月10日からであり,その返済は
利息制限法で計算すれば過払いとなっており,上記①,②債務も既に消滅している
旨主張した。
 控訴人は,原審では答弁書等を提出することなく第1回口頭弁論期日に欠席し
た。そのため,原審は,請求認容の欠席判決をした。これに対して,控訴人が不服
を申し立てた。
 2 当事者双方の主張
(1) 控訴人の主張
 ア 平成4年9月10日の貸付
 控訴人は,被控訴人に対して,平成4年9月10日,金220万円を次の約定で
貸し付けた。
 弁済期 平成9年10月5日
 利息 年25.55%
 損害金 年40%
 利息の支払方法 毎月5日に後払い
 期限の利益の喪失 一回でも利息の支払を怠ったとき,なんらの通知催告なく期
限の利益喪失
 イ 平成4年の貸付時の費用の差引き
 平成4年の貸付時に,控訴人は,貸金から,次の金員合計8万4810円を差し
引いた。
 印紙代 2600円
 公正証書作成料 1万4010円
 手数料 2200円
 調査料 6万6000円
 手数料2200円が,利息制限法3条の規定により,利息とみなされることは争
わない。
 しかし,調査料6万6000円は,控訴人の不動産部の社員であって,宅地建物
取引主任者であるAが,担保として提供される不動産の評価をしたことに要した費
用である。したがって,この調査料は,利息制限法3条の契約締結費用に該当し,
利息とみなされない。
 ウ 平成4年の貸金に対する被控訴人の弁済
 被控訴人は,平成4年の貸金について,別紙1「220万円約定金利計算」の入
金日に入金額どおり弁済した。
 別紙1には,控訴人が被控訴人の入金額から入金日に手数料300円を徴収した
旨の記載がある。そのうち200円は,弁済費用である印紙代である。残り100
円は手数料であり,これが利息制限法3条により,利息とみなされることは争わな
い。
 エ 平成6年12月5日の期限の利益喪失
 被控訴人は,平成6年12月5日に支払うべき利息を遅滞した。これにより,被
控訴人は,同日,期限の利益を喪失した。
 オ 貸金業法17条及び18条書面の交付
 控訴人は,被控訴人に対して,貸付時に貸金業法17条書面を,弁済時に同法1
8条書面を交付した。したがって,被控訴人の利息などの弁済については,貸金業
法43条のみなし弁済の適用がある。
 被控訴人は,天引利息及び前払い利息には,貸金業法43条の適用がない旨主張
するが,適用があるものである。
 カ 平成10年3月4日の200万円の貸付(上記の①の貸金)
 控訴人は,被控訴人に対して,平成10年3月4日,金200万円を次の約定で
貸し付けた。
 弁済期 平成15年2月5日
 利息 年26%
 損害金 年36.5%
 利息の支払方法 毎月5日に後払い
 期限の利益の喪失 一回でも利息の支払を怠ったとき,なんらの通知催告なく期
限の利益喪失
 この貸付は,平成4年の貸付の借換えあるいは借増しではなく,被控訴人は,借
入金200万円から,平成4年の借入金の残元金137万6610円及び損害金2
万7130円の合計140万3740円を控訴人に弁済した。
 キ 平成10年3月4日の貸付時の費用の差引き
 平成10年3月4日の貸付時に,控訴人は,貸金から,次の金員合計7万526
0円を差し引いた。
 印紙代 2000円
 公正証書作成料 1万1000円
 手数料 2000円
 調査料 6万0260円
 このうち手数料及び調査料は,イに記載したのと同様である。
 ク 平成10年3月4日の貸金に対する被控訴人の弁済
 被控訴人は,平成10年の貸金について,別紙2「200万円約定金利計算」の
入金日に入金額どおり弁済した。
 ケ 貸金業法17条及び18条書面の交付
 控訴人は,被控訴人に対して,貸付時に貸金業法17条書面を,弁済時に同法1
8条書面を交付した。したがって,被控訴人の利息などの弁済については,貸金業
法43条のみなし弁済の適用がある。
 コ 平成10年12月24日のカードローン(上記の②の貸金)
 控訴人と被控訴人とは,平成10年12月24日カードローン基本契約を締結
し,同日以降別紙3履歴リスト記載の取引をした。利息及び損害金の利率は,年3
6.5%の約定であった。
 この取引は機械処理であり,返済の都度貸金業法18条の書面を交付していな
い。そこで,被控訴人の弁済金につき,利息制限法に従い,制限利率超過分を元本
に充当して計算すると,別紙4元利金計算書のとおりである。
 控訴人は,平成13年9月4日現在で,貸金元本36万0727円を有してお
り,これについて平成13年9月5日以降弁済期の平成13年10月9日までは利
息債権を,平成13年10月10日以降は損害金債権を有している。
(2) 被控訴人の主張
 ア 平成4年9月10日の貸付及び貸付時の差引き
 控訴人の主張アのとおり貸付を受け,同イのとおり差引きされた。
 名目上の貸金220万円から,印紙代2600円,公正証書作成料1万4010
円を差し引かれたが,これらは,契約締結費用で,被控訴人が負担すべきものであ
ることを認める。
 名目上の貸金220万円から差し引きされた,手数料及び調査費合計6万820
0円は,契約締結の費用ではなく,利息制限法3条により,利息とみなされる。そ
の結果,被控訴人は,利息として6万8200円を天引きされたものである。
 天引利息を差し引いた被控訴人の受領額は,213万1800円である。
 イ 平成4年9月10日の貸金に対する被控訴人の弁済
 被控訴人は,上記アの平成4年の貸金について,別紙1「220万円約定金利計
算」の入金日に入金額どおり弁済した。
 これらの入金は,利息の支払としてしたものである。アの天引利息の額6万82
00円は,次の利息支払期までの利息の額を上回る金額であったから,次の利息の
支払期が到来したときには,それまでの利息は,支払済みであった。したがって,
次の利息支払期に支払った利息は,さらに次の利息支払期までの利息に当たる。こ
のようにして,被控訴人は,利息を前払いしたものである。
 ウ 天引利息及び前払い利息と貸金業法43条の適用の有無
 天引利息及び前払い利息には,貸金業法43条の適用がない。
 エ 平成10年3月4日の貸付(上記の①の貸金)及び貸付時の差引き
 控訴人の主張カのような貸付があり,同キのような差引きがあった。しかし,こ
の貸付は,平成4年9月10日の貸付の貸増しである。被控訴人は,名目上の貸金
200万円から,印紙代2000円,公正証書作成料1万1000円を差し引かれ
たが,これらは,契約締結費用で,被控訴人が負担すべきものであることを認め
る。
 そして,被控訴人は,名目上の借入金200万円から,平成4年の借入金の残元
金137万6610円及び損害金2万7130円の合計140万3740円を差し
引かれた。したがって,被控訴人が貸増しを受けたのは,この差引き後の59万6
260円である。
 そして,被控訴人は,さらに手数料2000円及び調査料6万0260円合計6
万2260円を差し引かれた。
 差引きされた手数料及び調査費合計6万2260円は,契約締結の費用ではな
く,利息制限法3条により,利息とみなされる。その結果,被控訴人は,利息とし
て6万2260円を天引きされたものである。
 天引利息を差し引いた被控訴人の受領額は,53万4000円である。
 オ 平成10年3月4日の借増し後の被控訴人の弁済
 被控訴人は,平成10年3月4日の借増し後,別紙2「200万円約定金利計
算」の入金日に入金額どおり弁済した。これらの利息の支払も,前記イ記載のとお
り,利息の前払いをしたものである。
 前述のとおり,天引利息及び前払い利息等について,貸金業法43条の適用はな
い。そこで,被控訴人の弁済について,利息制限法の規定にしたがい,制限利息超
過分を元本に充当すると,被控訴人は,控訴人に対して,被控訴人の計算では,平
成13年9月5日現在で,過払金188万7395円を有することになり,上記の
①の貸金は消滅している。そして,この過払金は,控訴人の不当利得であるから,
被控訴人は,控訴人に対してその返還請求権がある。
 カ 平成10年12月24日のカードローン(上記の②の貸金)
 控訴人と被控訴人とは,平成10年12月24日カードローン基本契約を締結
し,同日以降別紙3履歴リスト記載の取引をしたことを認める。
 キ 不当利得返還請求権による相殺
 被控訴人は,平成15年6月26日の口頭弁論期日において,控訴人に対して,
上記オの不当利得返還請求権(被控訴人の計算では平成13年9月5日現在で18
8万7395円)を自働債権として,上記カのカードローンの残債務(控訴人の主
張では平成13年9月4日現在で,貸金元本36万0727円)を受働債権とし
て,対当額で相殺する旨の意思表示をした。
 これにより,上記カのカードローン債務(上記の②の貸金)は,全額消滅した。
第3 当裁判所の判断
 1 貸付,差し引き及び被控訴人の弁済の事実関係
 控訴人の被控訴人に対する貸付,貸付の際の差引き及びその後の被控訴人の弁済
の事実関係が,控訴人の主張(ア,イ,ウ,カ,キ,ク及びコ)のとおりであるこ
とは,当事者間に争いがない。
 控訴人は,平成10年3月4日の貸付(上記の①の貸金)は,平成4年の貸付の
借換えあるいは借増しではなく,被控訴人は,借入金200万円から,平成4年の
借入金の残元金137万6610円及び損害金2万7130円の合計140万37
40円を控訴人に弁済したものである旨の主張をする。しかし,被控訴人が,自己
の調達した資金で従前の貸金の返済をするのではなく,控訴人から借り入れる資金
で控訴人に返済するのは,借換えであり,その際必要資金をさらに借り入れるの
は,借増しである。受領書や貸付の契約書で,現実の返済があったかのように取り
扱ったからといって,その実態に変わりがあるわけではなく,この点に関する控訴
人の主張を採用することはできない。
 2 調査料と契約締結費用
 控訴人は,貸付に当たり,被控訴人から調査料を徴収しており,控訴人は,これ
を契約締結の費用であると主張する。しかし,控訴人のいう調査料とは,債権者が
契約を締結するかどうかを検討するに当たって,必要な情報を取得するために費や
す費用であり,契約の締結そのものの費用ではない。
 利息制限法3条は,「消費貸借に関し債権者の受ける元本以外の金銭は,礼金,
割引金,手数料,調査料その他何らの名義をもってするを問わず,利息とみなす。
但し,契約の締結及び債務の弁済の費用は,この限りではない。」と規定してい
る。この文言からして,同条は,契約締結そのものの費用のみを例外とし,それ以
外の契約の締結に当たって支出される可能性のある費用を,例外扱いしていないも
のと解される。そうすると,契約の締結そのものの費用に該当しない調査料は,た
とえこれが支出された場合でも,利息制限法3条の例外に当たらず,同条により利
息とみなされるべきものである。
 3 みなし利息と利息の天引及び前払い
 平成4年9月10日の貸付及び平成10年3月4日の借増し(上記の①の貸金)
時に,手数料及び調査料として,控訴人主張の金額(6万8200円と6万226
0円)が差し引かれたことは,前述のとおり争いがない。
 これらの差し引かれた金額は,利息制限法3条の規定により,利息とみなされ
る。そうすると,控訴人は,これらの差引きによって,利息を天引きしたこととな
る。
 平成4年9月10日の貸付時の天引利息の額6万8200円及び平成10年3月
4日の借増し時の天引利息の額6万2260円は,次の利息支払期までの利息の額
を上回る金額であったものと認められる。そうすると,次の利息の支払期が到来し
たときには,それまでの利息は,支払済みであったことになる。したがって,次の
利息支払期に支払った利息は,さらに次の利息支払期までの利息に当たり,このよ
うにして,被控訴人は,利息を前払いしたものと認められる。
 4 天引利息及び前払い利息と貸金業法43条
(1) 文言解釈
 控訴人は,天引利息にも,貸金業法43条の適用があり,適法有効な弁済があっ
たものとみなされる旨主張する。
 しかし,貸金業法43条の文言上,利息制限法2条は排除されておらず,利息天
引の場合には,貸金業法43条の適用はないものと解する。(文言解釈)
(2) 利息制限法2条の立法趣旨
 利息制限法2条は,借主の受領し利用できる金額について,利息を発生させるこ
と(利息の後払いではそのようになる。)は許容できるが,受領せず利用できない
金額について,高利を発生させること(利息の天引や前払いではそのようにな
る。)は許容できない,すなわち高利金融の場合は,発生しない高利の利息の受領
を許容できないとしたものである。同条は,当事者が合意してそのように約束して
いても,許容できないとしたものであり,そのことは,利息制限法1条の利率の制
限について,任意の支払の場合の除外規定があるのに,利息制限法2条には任意の
支払の除外規定がないことに現れている。
 当事者間で合意してそのように約束する際に,貸主が強迫したり,騙したりして
はいない場合,その約束は,言葉の形式的な意味では,借主の任意の判断によるも
のであるといえる。しかし,利息制限法2条は,そのような言葉の形式的な意味で
の任意の合意であっても,その合意の効力を否定しており,この点についての同条
の解釈には,全く異論を聞かない。
(3) 貸金業法43条の下での利息の天引
 利息制限法の上記の立法趣旨は,貸金業法43条の下では,これを変更すべき理
由があり,変更されたのかが,ここでの問題である。結論を先に述べれば,変更す
べき理由はなく,変更されていないと考えられる。
 ア 貸金業法43条の守備範囲
 貸金業法43条は,利息制限法1条の制限利率について,任意の支払の場合に,
適用を制限する趣旨の規定であり,利息制限法1条自体にあった任意の支払の場合
の適用制限規定を実質上復活したものである。すなわち,最高裁判決によって,利
息制限法1条2項の明文にかかわらず,任意の支払の場合でも,制限利率が適用さ
れる結果となっているのを,厳しい条件付ではあるが,適用を制限したものであ
る。貸金業法の立法趣旨は,このように利息制限法1条の例外規定を実質上復活す
ることにあって,利息制限法の他の条文について,貸金業者に有利な変更を加えよ
うとしたものではない。このように貸金業法のいわば守備範囲が,利息制限法1条
の例外規定を実質上改廃した最高裁判決の是正にあって,利息制限法自体の改変に
あるのでない以上,利息制限法2条は,貸金業法43条の制定後もそのまま適用さ
れるものと解するのが相当である。
 イ 問題の実質的側面
 そして,貸金業法43条が適用される条件である契約書面の交付や受取証書の交
付の事実があるから,利息制限法2条の許容していない発生しない高利の受領が例
外的に許容できる,というような価値判断をすることも,利率の制限と発生しない
高利の受領とは,本質的に異なる事柄であることからして困難である。
 すなわち,高利金融の下での利息の天引は,利息を制限利率内でのみ天引きする
などということが,現実には存在しないように,借主に意思選択の自由がない状況
下で行われるのが実態である。だからこそ,高利が発生してもいないのに,発生し
たかのようにしてこれを受領するという,理に合わない不自然なことでも,貸金業
者の圧力の下で実現するのである。
 また,利息の天引は,貸主が借主から利息の支払を受けるのではなく,貸金から
計算上の利息分を差し引くものである。このような差引きは,貸主からする相殺に
類似する。貸主からする相殺は,貸金業法43条の下でも,支払には該当しない
(最高裁事務総局「貸金業関係事件執務資料」40頁)。その結果,43条の適用
は否定されるのであるが,利息の天引には,そのような貸主側からの一方的な行為
であるという要素もある。
 これら二つの点,すなわち,内容が理に合わず不自然なことであって,借主が任
意に応じたとはいえないことや,貸金業者の相殺のように一方的であることは,貸
金業者が契約書面や受取証書を交付したからといって,変わるわけではない。その
ような契約書面の交付などの条件を満たしたところで,実質上問題点は解消されず
に残るのである。それでもなお,高利の利息の天引を許容するというのでは,とて
も説得的な説明をしたものとはいえない。
 ウ 立法の経過
 以上のように,問題の実質的側面イや貸金業法43条の守備範囲の問題アとし
て,困難なことでも,国会が,貸金業者を保護するために,法律により実現すると
いうことができないことではない。
 しかし,そのように国会が行動したというのであれば,国会の審議の経過にその
点が明らかにされるであろうが,国会の議事録にはそのような記載はない。かえっ
て,立法の関係者の著作(大森政輔「貸金業規制法第四三条についてー利息制限法
の特則性とその限界」判例時報1080号16頁)には,利息制限法2条について
は,なんらの改正もないことが明言されている。
(4) 前払い利息
 前払い利息は,利息の天引と同じく発生しない利息を支払わせるものであり,高
利の金融におけるその弊害は,利息の天引に等しい。貸金業法43条の下でも,発
生しない高利を支払わせることは許容できないとする利息制限法2条の立法趣旨
は,変更されておらず,天引利息について,貸金業法43条の適用はないのである
から,前払い利息についても,同条の適用がないものと解するのが相当である。
 5 利息制限法による再計算
 被控訴人の入金から,控訴人が手数料として,300円を差し引いたものについ
ては,そのうち200円は,印紙代であり,これは受領書に貼付するものとして,
弁済の費用に該当する。したがって,この金額は,被控訴人の負担すべきものであ
り,被控訴人の入金から,この200円を差し引いた残りが,借入金に対する弁済
になる。
 控訴人は,被控訴人の弁済の途中で利息の弁済が遅滞し,被控訴人は,期限の利
益を喪失した旨主張する。しかし前述のとおり,被控訴人は,利息の前払いをさせ
られてきたのである。利息の前払いとは,利息債務が発生していないのにその支払
をするものであるから,それを怠ったからといって,債務の不履行があったとは直
ちにはいえない。そうすると,被控訴人が債務不履行により期限の利益を喪失した
とする控訴人の主張を採用することはできないものである。
 そこで,平成4年9月10日の貸付及び平成10年3月4日の借増し(上記の①
の貸金)について,被控訴人の弁済金のうち,利息制限法の制限利率を超えた金額
を元本に充当して,再計算すると,別紙5の計算表のとおりとなる。
 なお,利息の天引がある場合には,借主の受領額を借入金元本として,その後の
弁済金について,利息の後払いの場合と同様に,利息制限法による再計算すると,
利息制限法2条に規定する方法で計算した場合と,同じ結果になるとされている
(我妻栄・新訂債権総論56頁によれば,利息制限法2条の計算法は,上記のよう
な計算結果と一致するように,立法されたものであるという。)。そこで,別紙5
の計算表は,この方法により計算した。
 このような再計算の結果,平成10年3月4日の借増し(上記の①の貸金)は,
全額消滅したことが認められる。
 そして,被控訴人は,控訴人に対して,平成13年9月5日現在で191万74
24円の不当利得返還請求権を取得したものと認められる。
 6 相殺
 被控訴人は,平成15年6月26日の口頭弁論期日に,上記5の不当利得返還請
求権(期限の定めがない債権であるから,その発生後直ちに相殺の自働債権とする
ことができる。)を自働債権として,平成10年12月24日のカードローン(上
記の②の貸金)の残債務(控訴人の主張では平成13年9月4日現在で,貸金元本
36万0727円であり,その弁済期は平成13年10月9日である。)を受働債
権として,対当額で相殺する旨の意思表示をした。
 したがって,この相殺により,平成10年12月24日のカードローン(上記の
②の貸金)の債務は,全額消滅し存在しないものである。
 7 結論
 以上の次第であるから,平成10年3月4日の借り増し(上記の①の貸金)及び
平成10年12月24日のカードローン(上記の②の貸金)の債務が,存在しない
ことの確認を求める被控訴人の請求は,理由があり,これを認容すべきである。
 これと結論を同じくする原判決は相当であって,本件控訴は理由がない。
 よって,主文のとおり判決する。
 (口頭弁論終結の日 平成15年6月26日)
        東京高等裁判所第19民事部
           裁判長裁判官    淺  生  重  機
                裁判官    及  川  憲  夫
                裁判官    竹  田  光  広
別紙添付省略

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