弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     請求人に対し金五〇万四〇五九円を交付する。
         理    由
 一 本件請求の趣旨及びその理由は、請求人代理人弁護士高見澤昭治作成の裁判
費用補償請求書記載のとおりであるから、これを引用する。
 二 一件記録によれば、以下の事実が認められる。
 1 請求人は、左記のとおり、いずれも、東京都府中市ab丁目c番d号の自宅
において、Aから、同人が他から窃取してきた物品を、それらが盗品であることの
情を知りながら買い受け、もつて賍物の故買をしたとして、東京地方裁判所八王子
支部へ起訴されたものである。
 (一)昭和五一年四月六日付起訴状記載の公訴事実第一(以下「本起訴状第一事
実」という。以下同様。)
 昭和五〇年一〇月一一日ころ、一四金ダイヤモンド付指輪、一八金台ジルコン付
指輪、一八金ネツクレス各一個(時価合計六万九〇〇〇円相当)を代金一万円で故
買。
 (二)本起訴状第二事実
 同月二五日ころ、カセツトラジオ一台(時価二万円相当)を代金一万円で故買。
 (三)本起訴状第三事実
 同月二六日ころ、プラチナ台ダイヤモンド付指輪、一八金台メキシコオパール付
指輪、模造真珠ネツクレス各一個(時価合計一三万八〇〇〇円相当)を代金三万円
で故買。
 (四)昭和五一年四月三〇日付追起訴状記載の公訴事実第一(以下「追起訴状第
一事実」という。以下同様。)
 昭和四九年一〇月六日ころ、一八金台紫水晶付指輪、一八金台ヒスイ付指輪、プ
ラチナ製指輪各一個、ブローチ二個(時価合計二万三九〇〇円相当)を代金四〇〇
〇円で故買。
 (五)追起訴状第二事実
 昭和五〇年五月中旬ころ、プラチナ製鎖ネツクレス一個(時価一万円相当)を代
金二〇〇〇円で故買。
 (六)追起訴状第三事実
 同月一三日ころ、プラチナ台紅水晶付指輪一個、ペンダント二個(時価合計四万
五〇〇〇円相当)を代金四〇〇〇円で故買。
 (七)追起訴状第四事実
 同年一二月下旬ころ、カセツトテープレコーダー一台(時価一万二〇〇〇円相当)
を代金五〇〇〇円で故買。
 2 同裁判所は、昭和五一年五月一二日、本起訴状の被告事件及び追起訴状の被
告事件につき、それぞれ第一回公判期日を開き、前者に後者を併合して審理する旨
決定したうえ、同五三年二月二〇日までの間、一七回にわたつて公判を開いて審理
し(このほかに公判期日外の証人尋問が一回ある。)、同年三月一六日(第一八回
公判)、本起訴状第一事実(但し、一四金ダイヤモンド付指輪及び一八金ネツクレ
ス各一個を除く。)、同第二事実、同第三事実(但し、プラチナ台ダイヤモンド付
指輪一個を除く。)、追起訴状第二事実、同第三事実及び同第四事実につき、ほぼ
各公訴事実どおりの賍物故買の事実を認定して、請求人を懲役一〇月及び罰金四万
円に処し、追起訴状第一事実(以下「甲事実」という。)につき、犯罪の証明がな
いとして無罪を言い渡した。右判決の有罪部分に対しては請求人から控訴の申立が
されたが、その無罪部分(甲事実関係)は、検察官からの控訴申立がないまま控訴
申立期間の経過により確定した。
 3 右控訴事件を審理した東京高等裁判所は、事実審理のため、昭和五三年一〇
月三一日から同五六年五月二八日までの間、二〇回にわたつて公判を開き、同年七
月一四日(第二一回公判)、第一審判決が有罪とした各賍物故買の事実を認定する
については証拠が不十分であるから、第一審判決の有罪部分は事実を誤認したもの
であるとして、これを破棄したが、さらに進んで、その第一六回公判において追加
を許可した予備的訴因(本起訴状第一事実、同第三事実、追起訴状第二事実及び同
第三事実関係)に基づき、請求人は、昭和五一年二月中旬ころ、前記自宅において、
前記Aから、同人が他から窃取してきたネツクレス等六点(予備的訴因にかかる物
品のうち、追起訴状第二事実のプラチナ製鎖ネツクレス一個を除外したもの。即ち、
本起訴状第一事実の物品のうち一八金台ジルコン付指輪一個、同第三事実の物品の
うち一八金台メキシコオパール付指輪及び模造真珠ネツクレス各一個並びに追起訴
状第三事実の各物品)を、それが盗品であるかもしれないことを認識しながら、B
を介し、右Aに対する貸金二万円の担保として預かり、もつて賍物の寄蔵をしたと
の事実を認定し、請求人を懲役四月(執行猶予二年)及び罰金二万円に処し、本起
訴状第二事実、追起訴状第二事実(予備的訴因の関係でも)及び同第四事実(以上
をまとめて、以下「乙事実」という。)につき、犯罪の証明がないとして無罪を言
い渡した。右判決の有罪部分に対しては請求人から上告の申立がされたが、その無
罪部分(乙事実関係)は、検察官からの上告申立がないまま上告申立期間の経過に
より確定した。
 4 右上告事件を審理した当裁判所は、昭和五七年一二月一六日弁論を開き、同
五八年二月二四日、第二審判決が有罪とした賍物寄蔵の事実、即ち、本起訴状第一
事実、同第三事実及び追起訴状第三事実のうち予備的訴因として構成された事実(
以下「丙事実」という。)につき、請求人に当該物品が盗品であることについての
未必的認識があつたものと認定するに足りる十分な証拠はないから、請求人に有罪
を言い渡した第二審判決は、判決に影響を及ぼすべき重大な事実誤認を犯したもの
であつて、これを破棄しなければ著しく正義に反すると認められるとして、第二審
判決の有罪部分を破棄し、更に判決して請求人に無罪を言い渡し、この判決は、同
年三月八日確定した。
 5 請求人は同年四月二二日当裁判所へ本件費用の補償請求をしたものである。
 三 右の事実関係によれば、本件請求に対しては、本件公訴事実中丙事実につき
無罪の判決をした当裁判所において、その事実の裁判に要した費用を補償すべきも
のであるが、甲、乙各事実の裁判に要した費用については、これらの事実につき無
罪の判決をしたのはそれぞれ第一審の東京地方裁判所八王子支部及び第二審の東京
高等裁判所であり、右各無罪判決の確定後すでに刑訴法一八八条の三第二項所定の
六箇月の期間がいずれも経過しているのであるから、もはや請求人において、右の
費用の補償を請求することは許されないものと解すべきである。
 四 そこで、更に一件記録を調査するに、請求人には丙事実につき刑訴法一八八
条の二第一項但書、二項及び三項所定の補償除外事由は認められないので、当裁判
所は、同法一八八条の二第一項本文により請求人に対して丙事実の裁判に要した費
用を補償することとし、進んで同法一八八条の六第一項所定の費用の範囲及び額に
ついて検討する。
 一件記録によれば、第一審における公判準備及び公判期日は、いずれも本件公訴
事実のすべてにつき審理、判決するため、また、第二審における公判期日は、いず
れも乙(少なくともその一部)及び丙の両事実につき審理、判決するため、それぞ
れ開かれたこと、しかも、以上の全部の事実は、同一本犯者からの賍物故買(その
一部につき、予備的訴因は賍物寄蔵)の事実であつて、相互に密接に関連しており、
証拠関係もほとんど共通であつたことが認められるから、第一審及び第二審におい
て生じた各費用のうち、丙事実の裁判に要した費用は、弁護人であつた者に対する
報酬のみならず、請求人(被告人であつた者)及び弁護人であつた者の旅費及び日
当についても、その余の事実の裁判に要した分と区別することはできない。従つて、
本件においては、第一審及び第二審においてそれぞれ生じた費用の各総額をいずれ
も相当の割合で案分し、これによつて得られた金額をその審級の丙事実の裁判に要
した費用とするのが相当である。そして、一件記録から認められる本件審理の経過、
弁護人の立証活動、各無罪とされた理由、第一審及び第二審において審理、判決さ
れた各事実のうち当裁判所において無罪とされた事実が占める各割合等に鑑みると、
第一審及び第二審においてそれぞれ生じた費用の各総額の各二分の一をもつて丙事
実の裁判に要した費用とするのが相当であると認められる。なお、当裁判所におい
て生じた費用は、その全額が丙事実の裁判に要した費用である。
 五 よつて、請求人に補償すべき費用を別紙計算書記載のとおり算出し、刑訴法
一八八条の三第一項、一八八条の七、刑事補償法一六条前段により、裁判官全員一
致の意見で、主文のとおり決定する。
  昭和五八年一一月七日
     最高裁判所第一小法廷
         裁判長裁判官    中   村   治   朗
            裁判官    団   藤   重   光
            裁判官    藤   崎   萬   里
            裁判官    谷   口   正   孝
            裁判官    和   田   誠   一
 別   紙
 計   算   書
 1 請求人に補償すべき費用                       
       金 五〇万四〇五九円
  後記2、3の各二分の一(一円未満の端数は切捨)及び4を合算したもの。
 2 第一審の裁判に要した費用                      
     合計金 二六万七五五五円
  (一)旅費及び日当                          
       金 一二万七五五五円
  内訳及び費用額算定の基準は、後記5、6のとおり。第二審及び当審の場合も
同様。
  (二)弁護人であつた者に対する報酬                  
       金 一四万円
  算定の基準は後記6のとおり。第二審及び当審の場合も同様。
 3 第二審の裁判に要した費用                      
     合計金 三六万三六一二円
  (一)旅費及び日当                          
       金 一一万三六一二円
  (二)弁護人であつた者に対する報酬                  
       金 二五万円
 4 当審の裁判に要した費用                       
     合計金 一八万八四七六円
  (一)旅費及び日当                          
       金 八四七六円
  (ニ)弁護人であつた者に対する報酬                  
       金 一八万円
 5 旅費及び日当の内訳
  別表(一)ないし(三)のとおり。
 6 費用額算定の基準
 (一)旅 費
 請求人及び弁護人であつた者が公判期日等の出頭に要した鉄道賃及び路程賃は、
各出頭の時点を基準として、刑訴法一八八条の六第一項において準用する刑事訴訟
費用等に関する法律及び刑事の手続における証人等に対する給付に関する規則によ
り、これに当裁判所の事実取調の結果を加えて算出する。路程賃の額は、各基準日
に適用される右規則の最高額とする。
 (二)日 当
 請求人及び弁護人であつた者が公判期日等の出頭に要した日当は、各出頭の時点
を基準として、前記法律及び規則により、各審級の裁判所における証人等の日当の
支給基準を参酌し、審理の所要時間等を勘案して算出する。
 (三)宿 泊 料
 請求人及び弁護人であつた者が公判期日等の出頭のために宿泊を要したとは認め
られない。
 (四) なお、弁護人であつた者の旅費及び日当につき、各審級を通じ、公判期
日等に出頭した弁護人が二人以上あつた場合もあるが、刑訴法一八八条の六第二項
の規定による限定はしない。
 (五)弁護人であつた者に対する報酬
 本件事案の性質、内容、審理経過のほか、各審級における開廷回数、複数弁護人
がついたこと、各弁護人の訴訟活動の状況、弁護活動上必要であつたと認められる
準備費用(記録謄写料、弁論要旨、上告趣意書等の各作成費用を含む。)等を勘案
し、前記法律により、各審級の判決宣告の時点を基準として、各裁判所における国
選弁護人報酬支給基準を参酌して算出する。
別 表 (一)
<記載内容は末尾1添付>
別 表 (二)
<記載内容は末尾2添付>
別 表 (三)
<記載内容は末尾3添付>

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