弁護士法人ITJ法律事務所

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       主   文
一 原判決を取り消す。
二 被控訴人が、中労委昭和五三年(不再)第二五号及び同第二六号事件につい
て、昭和六一年九月一七日付でなした救済命令を取り消す。
三 訴訟費用は、第一・二審を通じ、控訴人に生じた費用を被控訴人らの負担と
し、被控訴人及び補助参加人に生じた費用はそれぞれの自弁とする。
       事   実
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴の趣旨
 主文同旨
二 訴訟の趣旨に対する答弁(被控訴人、同補助参加人)
 本件控訴を棄却する。
第二 当事者双方の事実に関する主張は、原判決書の事実及び理由の第二ないし第
四に記載のとおりであるから、これを引用する(ただし、原判決書六枚目表四行目
の「従事している」の次に「(昭和六二年一一月末大東を退社した。)」を加え、
同二五枚目裏九行目の「現在」を「第一審口頭弁論終結当時」に改める。なお一部
証拠により認定した事実についての判断も当裁判所の判断と同じである。)。
第三 証拠関係(省略)。
       理   由
一 労働組合法七条の「使用者」とは、必ずしも労働者との間に雇用契約を締結し
た雇主に限定されるわけではなく、雇用契約がなくても、契約上の当事者である雇
主と同一視し得る程度に労働者の労働関係上の諸利益に直接の影響力ないし支配力
を及ぼし得るような地位にある者を含むと解するのが相当である。そして、この点
を判断するに当たっては、同法の趣旨目的を十分配慮すべきであり、不当労働行為
制度の目的が雇用契約の当事者に対して契約責任を追及することにあるのではな
く、労働者の団結権等に対する侵害行為を排除し、これによって生じた事実状態を
除去することにより、労働者が団体交渉その他の団体行動のために労働組合を組織
し運営することを擁護するとともに、労働協約の締結を主たる目的として団体交渉
をすることを助成することにあることや、「使用者」とされることによって課され
る法律上の義務等をも総合的に考慮して決すべきであることは、当裁判所も原審と
別段意見を異にするものではない。この点を考慮して労働者の労働関係上の諸利益
への影響力ないし支配力という面から実質的判断を加えるべきものと解するのであ
る。
 しかしながら、このことは、雇用契約の有無という形式をはじめから無視してよ
いことまで意味するものではない。物事を形式的に把えるだけではなく、実質的に
把えるべきであるといっても、労働関係の一方の当事者となるべき「使用者」とは
どのような者をいうかを決定する判断の基準となるべきものであるから、客観的な
基準としてできるだけ判り易いものであること(多くの人が常識で判断できるよう
なものであること)が望ましい。このことを考えると、現に労働者と雇用契約を締
結している者がある場合には、そのこと自体一つの徴憑としての意味を持つから、
それが形式に過ぎず、実は雇用契約上の雇用主以外の者が賃金や労働時間、職場へ
の配置等の基本的な労働条件を決め、労働者の労務の提供を指揮命令していると常
識で判断することができるような場合に、はじめてその者を使用者と認めることが
できるというべきであり、労働者と現に雇用契約を締結している者が、雇用契約を
締結しているというだけでなく、労働者の賃金や、労働時間、職場への配置等の基
本的な労働条件も決定している外形がある場合には、これも単なる外形に過ぎず、
実は雇用主以外の者がこうした基本的な労働条件の決定自体に直接の影響力ないし
は支配力を及ぼしていると常識で判断することができるような場合に、はじめてそ
の者を使用者と認めることができるというべきである。さらに、雇用契約上の雇用
主が、こうした労働条件の決定について現に労働組合との間で団体交渉を行い、労
働協約も締結しているような場合には、通常ならもはや雇用契約が単なる形式とは
考えにくいところであって、よほど特別の事情が認められない限り、雇用契約上の
雇用主が「使用者」に当たるとみるのが、むしろ常識的な判断であると考えられる
から、このような場合には、それでもなお雇用主以外の者が労働者の労働関係上の
諸利益に直接の影響力ないしは支配力を及ぼしていることを明らかにする具体的事
実が証明されてはじめて、その者を使用者と認めることができると解するのが相当
である。こうした点を考慮することなく、集団的労使関係の一方の地位にある使用
者にふさわしい者が「使用者」に当たり、その相手方が「労働者」に当たるという
に等しい原審の解釈は、控訴人も指摘するように、問をもって問に答えるものであ
るとの批判を免れず、当裁判所の採るところではない。
二 以上の観点から、本件において、控訴人が、大阪東通、大東及び関東電機の従
業員であって、控訴人のテレビ番組制作業務に従事している従業員に対する関係に
おいて「使用者」にあたるかどうかを検討する。
1 当事者間に争いのない事実に乙第一二一、第一三二、一三三、第一五一、第一
五二、第一六三、第一六五、第一六九、第一七一、第一七三、第一七五、第二〇
八、第二三六、第三一八、第三二二、第三四八、第三七三、第三八七及び第三九一
号証ならびに証人aの証言を総合すると、控訴人と下請三社との間の契約関係及び
これに基づく下請三社の従業員の具体的な就労状況は、次のようなものであったと
認められる。
(一) 控訴人はラジオ及びテレビの放送業を営む会社である。大阪東通は主とし
て控訴人など近畿地方所在の民間放送会社等からテレビ番組制作のための撮像、照
明、フイルム撮影、音響効果等の業務を請け負うほか、若干のテレビ番組の自主制
作を行っている会社であり、本件初審審問終結当時の従業員は約一六〇人で、その
うち約五〇人は後記請負契約に基づき控訴人の番組制作の現場においてアシスタン
ト・ディレクター、音響効果及びスタジオ・カメラの業務に従事している。大東は
大阪東通のほか近畿地方所在の民間放送会社等から照明業務を請け負っている会社
であり、本件初審審問終結当時の従業員は約三〇人で、そのうち約一〇人は後記請
負契約に基づき控訴人の番組制作の現場において照明業務に従事している。関東電
機は控訴人など近畿地方所在の民間放送会社、ホール、劇場等における照明業務を
請け負っている会社であり、本件初審審問終結当時の従業員は約七〇人で、そのう
ち約一〇人は後記請負契約に基づき控訴人の番組制作の現場において照明業務に従
事している。
(二) 控訴人は大阪東通及び関東電機との間でそれぞれテレビ番組制作のための
撮像、照明等(関東電機は照明のみ)の業務の提供につき請負契約を締結して、継
続的に業務の提供を受けている。控訴人と大東との間には直接の請負契約は締結さ
れていないが、大阪東通は大東との間で請負契約を締結しており、大東は大阪東通
が控訴人から請け負った業務のうち照明業務を下請している関係にある。下請三社
はそれぞれ右各請負契約に基づきその従業員を控訴人のもとに派遣し、右従業員は
それぞれの属する会社の指示により控訴人の制作現場に赴き、控訴人から支給ない
し貸与されている器材等を使用して請負契約により定められている番組制作に関す
る各業務に従事している。右請負契約によれば、業務の結果に対して控訴人が下請
三社に支払うべき請負料については、別途覚書の形式により作業内容及び派遣人員
により一定額の割合をもって支払う旨の定めがなされている。
(三) 番組制作にあたっては、控訴人が毎月編成日程表を作成して下請三社に交
付し、下請三社の担当課長らの責任者がこれに基づいて一週間から一〇日毎にそれ
ぞれの従業員の休日や休暇を勘案した上番組制作連絡書を作成し、誰をいつどの番
組の制作業務に割り当てるかを決定し、下請三社の従業員は右番組制作連絡書の指
示するところに従って控訴人の番組制作現場における業務に従事している。その勤
務の結果は従業員の自主的申告により出勤簿に記載され、下請三社の担当課長らの
責任者がこれをもとに残業時間の計算をし、下請三社はこれに基づいて従業員に毎
月の賃金を支払っている。ただ、控訴人の番組制作のために派遣される者は同一の
従業員にほぼ固定されており、番組の内容や従業員の都合で別の者に割り当てられ
ることもあるが、現実には一定の者がローテーションを組んで順次派遣されるとい
うのが実態である。業務の遂行にあたっては、請負契約上は、下請三社はそれぞれ
業務担当責任者を定め、控訴人の担当者と十分連絡をとった上、下請三社の業務担
当責任者が、それぞれの従業員を責任をもって指揮・監督することになっている
が、実際に番組を制作する作業自体は、控訴人の従業員であるディレクター(これ
は番組ごとに定められる。)が番組制作に関する全責任を負うことになっていて、
作業の進行は全てディレクターの下に置かれ、例えば制作時間帯を変更する必要が
ある場合や、制作予定時間を越えて作業をする必要がある場合はディレクターの判
断で指示がなされるし、どこでどの程度の休憩時間をとるかも、ディレクターが作
業の進展状況に応じて判断して指示する等、番組制作の作業自体の具体的な進行に
関する限り、下請三社の業務の担当責任者は実質的な指揮、監督の権限を有してい
ない。下請三社もこのことは当然のこととして従業員を派遣している。
(四) 大阪東通は、控訴人の番組制作に携る従業員の休憩場所及び従業員への連
絡場所として、昭和四四年頃から控訴人本社三階に東通コーナーを設けていたが、
昭和四七年一〇月頃からは控訴人本社社屋(ここに番組制作のためのスタジオもあ
る。)に隣接する大阪タワー内に大阪東通朝日放送事業所を置いている。大東は昭
和五一年四月頃から同社の江坂事業所をその従業員の休憩場所及び従業員への連絡
場所としている。また関東電機は昭和五〇年五月頃控訴人本社社屋の東南隣にある
藤井ビル内に大淀連絡所を設け、控訴人の番組制作に携る従業員の休憩場所及び従
業員への連絡場所としていたが、同連絡所は昭和五三年七月控訴人本社社屋の西隣
にあるプラザハイツに移転した。
(五) 下請三社は、それぞれ独自の就業規則を持つとともに、大阪東通及び大東
は昭和四七年以降、関東電機は昭和四六年以降、それぞれ労働組合との間で賃上
げ、夏季一時金、年末一時金等について交渉を行い、妥結した事項について協定を
締結している。
(六) 控訴人は、下請三社のほか、大道具、小道具、かつら等の業務について、
関連下請会社約二〇社とテレビ番組等の制作業務に関する請負契約を締結してい
る。
2(一) 右認定の事実によれば、下請三社はそれぞれ技術を有する従業員を雇用
し、控訴人に対してのみばかりでなく他の放送会社等にも派遣するなど独自の営業
活動をしていて、事業主体としての独立性を備えており、かつ各社ともその従業員
との間では、それぞれ独自の就業規則を持つとともに、それぞれ組合との間で賃上
げ、夏期一時金、年末一時金等についての交渉を行い、妥結した事項について協定
を締結するなど、名実ともに本件組合員らの雇用主として行動している。このこと
からすると、下請三社は、それぞれその従業員との関係において実質的にもまさに
労働組合法七条二号にいう「使用者」に該当すると認められるのであり(このこと
は被控訴人も認めるところであり、本件命令においても、本件組合員らの雇用主は
下請三社であって控訴人ではないのであるから、控訴人が組合の要求事項中賃上
げ、夏季・年末各一時金の支給、社員化、配転撤回等に関する事項につき団体交渉
を拒否しても、不当労働行為には当たらないとされている。)、このことは、本件
において控訴人が団体交渉を命ずべき相手方たる使用者に当たるかどうかを判断す
るにつき無視し得ない重要なポイントというべきである。すでに判示したところか
らいって、右の事実が認められる以上、特別の事情が認められない限り、下請三社
が使用者というべきである。
(二) そこで、さらに特別の事情の有無について判断する。被控訴人は、先に認
定した事実関係のうち、控訴人のテレビ番組制作の現場においては、控訴人の従業
員であるディレクターが下請三社の従業員を含めて作業の進行を全て直接指揮、監
督して番組を制作している実態に着目して、控訴人がその従業員であるディレクタ
ーを通じて下請三社の従業員を使用従属させている関係にあると主張し、原審もこ
れを是認している。たしかに、被控訴人の右見解やこれを是認した原審の判断も、
部分的にみる限りもっともなところがあるようにもみえる。しかしながら、右見解
は、労務の提供自体を指揮命令して労働者に直接の支配力を及ぼすことと、一定の
目的を達成するために提供される労務の内容を指揮監督して統合する作用とを混同
するとの批判を免れない。番組制作の作業は、一つの目的を達成するため多数人が
同時に協同してしなければならない作業であって、そのためには多数人の作業を一
つの目的に向けて統合する指揮、監督者を置かなければならないことは作業の性格
上当然のことであり、番組制作の作業現場でディレクターが行う指揮、監督は、本
来このような統合作用というべきものである。確かに、ディレクターの指示が結果
として作業に従事する者の労働時間に影響することは否定できないところであり、
この点について下請三社の業務担当者は指揮、監督権を有しない実態にあること
や、下請三社の従業員だけが番組制作作業を途中で勝手に中止して職場を離脱する
ことができないことは事実であるけれども、これはチームワークによって進められ
る番組制作作業の特殊性からくる特質というべきである。むしろ、下請三社が番組
制作連絡書によって指示した就業命令そのものがこうした作業の特殊性を前提とし
て、ディレクターの指揮監督のもとに番組制作作業が終了するまで労務を提供すべ
き命令を含むものとみることができ、そうするとそれぞれの従業員の労務の提供に
つき直接の支配力を有しているのは下請三社であって、控訴人ではないといわなけ
ればならない(勤務時間につき出動簿に自主申告させることとし、下請三社の責任
者がその正確性をその都度確認していないことは、従業員の自主性を尊重したから
に他ならない。このことをもって下請三社の労務提供についての指揮命令権限がな
いことの根拠とすることはできない。なお、下請三社の従業員が控訴人の番組制作
の現場で仕事をするに際して、控訴人の提供する器材を使用し、作業服も共通のも
のを着用していた等のことも、労働力の支配力を判断するに当たってさほど意味の
あることではない。また、ディレクターが番組制作に際して指揮監督するからとい
って下請三社の(下請三社に限らず、その指揮下にある全ての)従業員に対し労務
の提供に関して具体的な命令をする権限が付与されているとみるのは、その職制か
らいっても実態に合わないことを付け加えておく。)。被控訴人の主張は採用する
ことができず、他に特別の事情を窺わせる証拠もない。
3 ところで、被控訴人は、本件命令において、「就労に係る諸条件」に関しては
控訴人を使用者と認めて労働組合との団体交渉を命ずるのが実効性のある措置であ
ることを強調している。そこで、念のため、この点について検討しておく。
 前記争いのない事実のほか、甲第二、第三号証、乙第八ないし第二二号証、丙第
一ないし第一〇号証、証人b、同aの各証言によれば、次の事実を認めることがで
きる。
(一) 組合の控訴人に対する団体交渉に関する要求書の項目には、社員化要求、
賃上げ、夏季一時金についての要求、作業着等の支給に関する要求、安全確保に関
する要求、勤務時間や週休に関する要求、休憩室やロッカーの設置に関する要求、
控訴人のビデオ等の器材の使用に関する要求等いわゆる労働条件に関するものから
物品の支給に至るまで雑多なものが含まれている。
(二) 組合は昭和四九年九月二四日以降、控訴人が組合員らの使用者に当たると
して控訴人に対し団体交渉を申し入れてきたが、団体交渉の重点項目はむしろ社員
化要求や賃上げにあり、控訴人は右各要求に対していずれも使用者には当たらない
との理由で団体交渉を拒否してきた。組合と控訴人との間で、これまで「就労に係
る諸条件」が他の交渉事項と区別して意識されたことはなく、したがって、組合及
び控訴人との間で、組合の諸要求のうち、どの要求が「就労に係る諸条件」に関す
るのかについての共通の認識があるわけではない(組合の前記各要求に対し控訴人
と下請三社との間で、どちらが団体交渉の当事者になるかというような協議がなさ
れたこともない。)。
(三) 原審が昭和六三年一月一四日付けでした緊急命令により、組合と控訴人は
同年二月以降「就労に係る諸条件」について数回団体交渉をしたが、その後中断し
ている。これまでに、団体交渉により実現したとされるのは、SEの作業室の空調
時間の延長、美術職場の大道具・小道具・メークのスタッフに深夜作業のときに他
のスタッフと同様に深夜食券を支給すること、タクシーによる深夜送りの実施、ス
タジオ棟のトイレの紙質等の改善である。
 以上の事実経過に照らせば、被控訴人のいう「就労に係る諸条件」が具体的に何
を指すのかは当事者間においても共通の認識がなく、交渉の対象が不明確であるば
かりか、控訴人に対するこれまでの組合の要求のほんの一部ないしは副次的なもの
にすぎない。緊急命令に基づく団体交渉の内容、結果からみても、被控訴人が緊急
命令の申立において主張したような、右団体交渉が実現しなければ組合の団体交渉
権をはじめ組合活動一般に対して回復し難い損害を与え、ひいては労働組合法の立
法精神も没却されるというものとは程遠いものである。それに、もともと被控訴人
のいう「就労に係る諸条件」も、全体としての労働条件の一部として決定されるは
ずのものであって、賃金をどのように定めるかも、どのような職場に配置するかと
か、全体としての労働時間をどのように定めるかなどの諸条件との関連で判断され
るものであるのに、控訴人としては解決しようのない賃金や人員配置あるいは労働
時間の定め等と切り離して「就労に係る諸条件」についてだけ団体交渉を命ずるこ
とができるとすると、いろんな疑問も生じてくる。具体的な団体交渉の方法(控訴
人と下請会社とが同時に団体交渉の当事者となるのか、両者が意見を異にする場合
にどう調整するのか)や内容をどう定めるのか(「就労に係る諸条件」の範囲、内
容が明確でないことは前記のとおりである。)等についても疑問があるし、組合員
が「就労に係る諸条件」に関する合意に従わなかった場合、直接組合員の人事配置
や賃金等について権限を有しない控訴人がどのような方法で合意事項を遵守させる
ことになるのか、逆に組合員は「就労に係る諸条件」に関してのみの争議行為がで
きるのかどうか、及びその方法についても疑問がある。以上のことは、基本的な労
働条件の決定に関与することができないのに、「就労に係る諸条件」についてだけ
の使用者なるものを認めることの実効性に疑問を抱かせるものに他ならない。労働
者の労働関係上の諸利益に対し事実上の影響力ないし支配力を及ぼし得る者をでき
るだけ団体交渉の当事者とする方が実情に沿った解決策であり、実質的に労働者の
地位を保護することになるとする被控訴人の見解もある程度理解し得ないではない
が、その実効性にも疑問があって、法律論としては無理があるといわざるを得ない
(組合としては、下請三社との間で交渉をすることによって労働条件全体の改善を
求め、請負契約の内容が障害になるというのであれば、これを改めることによって
労働条件を改善するよう求めていくのが、とるべき筋道であろう。)。
 以上判断したところによれば、控訴人は本件組合員との関係で労働組合法七条二
号の「使用者」には該当せず、したがって控訴人との間で不当労働行為の問題が生
ずる余地はないというべきであるから、被控訴人のした本件救済命令は違法として
取消を免れない。
三 以上のとおりであって、控訴人の請求は正当として認容すべきであり、これを
棄却した原判決は相当でないから、これを取り消して、控訴人の請求を認容するこ
ととし、主文のとおり判決する。
(裁判官 上谷清 満田明彦 亀川清長)

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