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判決 平成15年2月26日 神戸地方裁判所 平成14年(わ)第823号 業務
上過失致死被告事件
主文
被告人を禁錮1年8月に処する。
理由
(罪となるべき事実)
 被告人は,業務として大型貨物自動車を運転し,平成13年3月29日午前4時
40分ころ,神戸市a区b町c丁目d番e号付近道路を東方から西方に向かい,時
速約50キロメートルで進行中,早朝で交通が閑散として気が緩んだことなどのた
め眠気を覚え,前方注視が困難な状態になったのであるから,直ちに車両の運転を
中止すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,漫然前記速度のまま運転を継
続した過失により,間もなく一瞬仮睡状態に陥り,そのころ,同町f丁目g番h号
先の交差点に自車を進入させた上,折から同交差点入口に設けられた横断歩道上を
左方から右方に向かい横断中のA(当時71歳)運転の自転車をその前方約7.2
メートルの地点に迫って初めて発見し,急制動・左転把の措置を講じたが及ばず,
同自転車右側部に自車右前部を衝突させて同女を路上に転倒させ,よって,同女に
右側頭部打撲の傷害を負わせ,同日午前8時22分ころ,同市中央区i町j丁目k
番地所在のB病院において,前記傷害に基づく脳挫傷により死亡するに至らしめた
ものである。
(証拠の標目)―括弧内の数字は証拠等関係カード記載の検察官請求証拠番号―
 省略
(補足説明)
 弁護人は,被告人は一瞬といえども仮睡状態に陥ったことはない旨主張し,被告
人も当公判廷においてこれに沿う供述をするところ,被告人は判示の運転中止義務
違反の過失を犯したとして起訴されたのであり,この点については被告人も争うと
ころではなく,一瞬仮睡状態に陥ったか否かは本件事故に至る経緯としての意味し
か持たないのであるが,所論にかんがみ検討すると,被告人は,公判供述を含め,
自らが「眠気を覚え,頭がボーッとして直ちに車両の運転を中止しなければならな
い程度に前方注視が困難な状態にあった」ことを自認しているところ,被害者運転
の自転車にその前方約7.2メートルの地点に迫るまで気付かず,しかも自転車が
南北どちらの方向から進行していたものかもわからなかったし,そのころの自分の
運転状況を想起もできないことも自認しているのであって,前掲被告人の検察官調
書(検察官請求証拠番号30)中の,「本件事故現場手前で一瞬居眠りがあったた
めはっとして気が付いたときには,私の視界前方に被害者の自転車が飛び込んでき
たものと思う。」旨,一瞬の仮睡状態があったといわれればそうかもしれない旨を
承認する供述部分の信用性は十分であり,その他前掲関係各証拠により認められる
本件事故状況に照らすと,被告人が一瞬仮睡状態に陥って本件事故に至ったものと
認めるに十分である。弁護人及び被告人の主張は理由がない。
(法令の適用)
 被告人の判示所為は平成13年法律第138号による改正前の刑法211条前段
に該当するところ,所定刑中禁錮刑を選択し,その所定刑期の範囲内で被告人を禁
錮1年8月に処することとする。
(量刑の理由)
 本件は,被告人が,大型貨物自動車を運転中,眠気を覚え,前方注視が困難な状
態になったのに,直ちに車両の運転を中止せず,漫然運転を継続した過失により一
瞬仮睡状態に陥り,交差点に進入して,横断歩道上を横断中の被害者運転の自転車
に自車を衝突させて被害者を死亡させたという業務上過失致死の事案であるとこ
ろ,被告人は,当時,約31トンもの重量の鉄筋を積んだ大型トレーラー(長さ,
牽引車・トラクタ部分約6.75メートル,被牽引車・セミトレーラ部分約9.1
0メートル)を運転していたものであるが,このようないったん制御を失えば,ま
さに走る凶器と化する極めて危険な車両を運転する職業運転手として,殊に安全運
転に努めるべき立場にある被告人が,強い眠気を感じたにもかかわらず,安易に運
転を継続した過失の程度は高いこと,被告人は,一瞬仮睡状態に陥って,片側5車
線の交通量の多い幹線道路の交差点(国道l号線mn丁目交差点)に進入し,交差
点入口に設けられた横断歩道上を左方から右方に向かい横断中の被害者運転の自転
車に自車を衝突させて同女を死亡させたものであるが,被告人の供述によっても事
故直後交差点内の衝突地点から西方約19.7メートルの地点で停止した際の被害
者進行方向(南北方向)の信号表示は青色であったこと,横断歩道上を横断中の被
害者1名を死亡させたその結果はまことに重大であること,示談は成立しておら
ず,被害者遺族の被害感情には殊に厳しいものがあること,加えて,業務上過失致
死罪等の交通事犯に対する近時の我が国における国民の厳しい刑罰感情などを考え
併せると,被告人の刑事責任は重いと言わなければならず,実刑は免れないものと
思料するが,示談は成立していないものの,将来,保険による適正な被害弁償がな
されることが見込まれること,被告人の反省悔悟の情など等被告人のために斟酌す
べき事情をも十分考慮した上,主文のとおり量定した次第である。
よって,主文のとおり判決する。
平成15年2月26日
神戸地方裁判所第11刑事係甲
裁 判 官   杉 森 研 二

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