弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     本件控訴を棄却する。
         理    由
 本件控訴の趣意は、弁護人堀部進作成名義の控訴趣意書の記載のとおりであるか
ら、ここにこれを引用する。
 控訴趣意の要旨は、
 一、 被告人は、原判示のとおり、a町立中学校増築委員会の委員長であつた。
しかしながら、右の増築委員会は、地方自治法第一一〇条所定の特別委員会すなわ
ちa町議会委員会条例第四条所定の特別委員会にあたらず、右増築委員会の委員長
は、刑法上の公務員でなく、その委員長の職務は、公務に属しない。故に仮に被告
人が原判示のように土木建築請負業者A株式会社の取締役Bより増築委員会委員長
の職務に関し現金および小切手を各収受したとしても、その各所為は、いずれも刑
法第一九七条第一項前段の収賄罪を構成しない。
 一、 次に右の条項にいわゆる「公務員の職務に関し」という文言に「公務員の
職務と密接な関係のある行為に関し」という趣旨をも包含させて、同条項の拡張解
釈をすることは、罪刑法定主義を採用する憲法に違反する。
 一、 なお、本件の現金の授受は、消費貸借契約にもとづくものであり、小切手
の受領は、A株式会社が融資を受け得るように被告人が同会社のために銀行に交渉
をしたことの報酬として受け取つたのである。この点からみても、いずれも収賄罪
とならない。
 というにあり、結局において、原判決に判決に影響を取ぼすことの明らかな法令
適用の誤ないし事実の誤認があると主張するものである。
 所論にかんがみ、記録を精査し原審の取り調べたすべての証拠を検討し、原判決
引用のa町長C作成のa町議会委員会条例写、原審公判調書中の証人Cの供述記
載、Dの司法警察員および検察官に対する各供述調書ならびに被告人の検察官に対
する各供述調書を総合して考察すると、
 一、 愛知県海部郡a町のa町議会委員会条例は、その第一条ないし第三条にお
いて、同町議会に総務常任委員会、文教常任委員会、土木常任委員会および厚生産
業経済常任委員会の四個の常任委員会を置き、その各委員の任期を二年とし、文教
常任委員会は、教育に関する事務の調査およびその議案、請願、陳情等の審査を掌
り、土木常任委員会は、土木治水に関する事務の調査およびその議案、請願、陳情
等の審査を掌る旨を規定し、第四条において、特定の事件を審査するため必要があ
る場合において、議会の議決で特別委員会を置く旨を規定し、第五条において、常
任委員および特別委員は、議長が会議に諮つて指名する旨を規定している。
 一、 被告人は、昭和三一年三月以来引き続きa町議会議員に就任しており、特
に昭和三五年三月以降は同議会議員として前記土木常任委員会委員をして来たもの
である。そして同町においては、昭和三五年一二月から審議の結果、昭和三六年二
月上旬同議会の議決を経て同町立中学校の第三期工事として同校々舎の増築をする
ことに確定し、したがつて同町長においてその増築工事を施行することとなつた。
しかるところ、昭和三六年二月一〇日後記のような従来の慣例に従い、右増築工事
の施行につき、同町長の提案嘱託にもとづき、町長の諮問機関として、同町議会議
員の全員と同町教育委員会委員の全員とをもつて組織しかつ後記の職務に従事する
ことを目的とする中学校増築委員会を組織することとなり、同日町議会議員の全員
協議会において、右の増築委員会の組織を可決し、町教育委員会委員の全員もまた
これに同意し、ここに右の中学校増築委員会が成立し、同日ただちにその増築委員
会が開催され、その各委員の互選により、被告人が同委員会の委員長に選任され
た。そして同委員会は、町長の諮問に応じて、右の増築工事に関し、設計図、工事
請負の競争入札に参加すべき土木建築請負業者の指名、入札価格(予定価格および
制限価格)入札の立会、工事の監督検査等について審議をして同委員会としての意
見を取りまとめ、これを町長に答申する職務を執行することとなつた。そして以後
同委員会は、しばしば会議を開催して、右の職務を執行して来た。
 一、 そして同年四月一二日に開催された右の増築委員会は、町長の諮問に応じ
て、町長が諸種の資料を提出したうえ候補者として提案した約三〇名の土木建築請
負業者について種々審議選考をなし、その結果、そのうちから、A株式会社、E産
業所等合計八名の業者を右の入札に参加すべき土木建築請負業者に指名することに
決定して、町長にその旨を答申し、町長は、その答申どおり実行することに決定し
て、右八名の業者にその旨を通知した。次で右の入札は、同月二四日町長の管理の
もとに、被告人が入札会議長となり、増実委員会委員が立ち会い、右の指名された
A株式会社、E産業所等合計八名の業者によつて行なわれ、結局においてE産業所
が落札した。その後同年五月四日に至つて、a町契約条例の定めるところに従い、
町議会において、E産業所との右増築工業請負契約の締結を可決した。
 一、 右中学校については、昭和三一年から第一期工事をし、昭和三三年から第
二期工事をして、それぞれこれを完成したが、その都度、右町長の諮問機関として
議会議員の全員と教育委員会委員の全員とをもつて組織する前記と同様の建築委員
会を設置し、町長は、同委員会の意見を聴取して、右の各工事を施行した。同町に
おいては、その他の重要な諸工事の施行についても、町議会議員等をもつて組織す
る右と類似の町長の諮問機関を設けることを慣例としていた。そして叙上の慣例に
従つて、本件の中学校第三期工事についても、前記の中学校増築委員会を設置した
のであつた。
 一、 町長が、その事務に属する工事の施行にあたり、叙上のような町議会議員
等をもつて組織する諮問機関を設置し、その意見を聴取して工事を施行するという
方法を採用して来たのは、工事に関する行政事務執行の民主的運営を計り、その事
務執行の完全を期することを目的としたためであることはもちろんであるけれど
も、後に至つて工事に関し町議会その他の関係諸機関および町民等より非難攻撃を
受けることのないようにすることをも目的としたものである。特に町議会が、地方
自治法第九六条第九八条ないし第一〇〇条第一〇九条等にもとづき、町長の事務執
行につき、決算報告認定、検閲、検査、監査請求、説明請求、意見陳述、調査等の
諸種の権限を有するところから、あらかじめ町議会議員に発言の機会を与え、その
意見を聴取しておくことが町長の議会対策として適切妥当であつたからである。
 という事実を肯認することができる。
 そこでa町議会議員は、いうまでもなく、刑法上の公務員である。しかし、同町
立中学校第三期工事について設置された前記中学校増築委員会が地方自治法第一一
〇条a町議会委員会条例第四条にもとづく特別委員会でなく、右の中学校増築委員
会委員自体または同会委員長自体が刑法上の公務員に該当しないものであつたこと
は、所論のとおりである。しかるところ、叙上認定の事実関係のもとにおいて、特
に前記のような慣例<要旨>の存在する本件においては、被告人の中学校増築委員会
委員および同会委員長としての職務行為は、社会観念上、被告人の同町議会
議員の職務と密接な関係を有する行為であつたといわなければならない(この場
合、被告人が土木常任委員であつたと否とを問わない。しかし、被告人は、前記の
ように土木常任委員であつたのであるから、なお更然りである。)そして刑法第一
九七条第一項にいわゆる「公務員の職務に関し」とは、「公務員の職務に密接な関
係を有する行為に関し」という趣旨を包含していることは、多言を要しない。叙上
のとおり解釈しても、決して憲法に違反しないと確信する。
 したがつて被告人が、A株式会社取締役Bより、いずれも後記説示の趣旨にて、
前記の昭和三六年四月一二日(入札参加業者指名決定の日)の以前なる同年三月二
七日頃現金一万円を収受し、同年四月一二日の以後にして同年四月二四日(入札の
日)の以前なる同年四月二〇日頃五万円の小切手一通を収受した以上、被告人は、
結局において、公務員たるa町議会議員の職務に関し賄賂を各収受したものであ
る。
 原判決を精査するに、原判決は、本件の中学校増築委員会が地方自治法第一一〇
条a町議会委員会条例第四条所定の特別委員会であり右増築委員会の委員ないし委
員長が刑法上の公務員にあたるなどとは、決して判示していない。右の点に関する
論旨は、原判決が左記のように被告人がa町議会議員(それが法令により公務に従
事する職員であることは、何人にとつても明白な事柄である)であつた旨を明確に
判示しているにもかかわらず、この点を不問に附して、原判決がなんら判示してい
ない事項を徒に論難攻撃しているものにほかならない。原判決は、まず当初に、被
告人が昭和三一年三月一日以来a町議会議員であつたことを明確に判示している。
その議員が刑法上の公務員であるとまでは判示していないけれども、そのことは、
自明の事柄であり、原判決が右の議員をもつて刑法上の公務員にあたるとみている
ことは、判文上明白であり、疑の余地がない。原判決は、次に被告人が同町議会議
員として前記の組織職務を有する中学校増築委員会(原判決は、これをa中学増築
建設委員会と呼んでいる)の委員兼委員長となつてその職務の執行をしていた旨を
明記し、更に被告人が原判示第二および第三のとおり現金および小切手を順次収受
し、もつてその職務に関して各収賄した旨を記載している。叙上の記載その他の原
判決の記載全体を総合して考察すると、原判決は被告人が、a町議会議員の職務と
密接な関係のある中学校増築委員兼委員長の職務行為に関して、したがつて結局に
おいて公務員たる同町議会議員の職務に関して、原判示第二および第三のとおり各
収賄をした、という趣旨であることが明らかである。なお、原判決は、本件中学校
増築委員会が従来の慣例に従つて設置されたという趣旨を判示していないけれど
も、原判決引用の証拠によつて、その事実を肯認し得ること、前記説示のとおりで
あるから、原判決は、右趣旨の見解であるとみるべきである(本件増築委員会は、
前記のように、a町における従来の慣例に従つて設置されたことが明白である。し
かし、仮に同町に従来そのような慣例がなく中学校第三期工事についてはじめて右
委員会が設置されたとしても、被告人の右委員会委員兼委員長としての職務行為
は、前記のとおり、被告人の町議会議員としての職務と密接な関係を有する行為で
あつたと解してよいであろう。
 けだし、はじめてそのような委員会が設けられた場合とその第一回目の慣例に従
つて第二回目に同様の委員会が設けられた場合とによつて特段の差異を認めるべき
根拠に乏しいように思われるからである)。
 次に原判決がその第二および第三の各事実の認定資料に供した各証拠を総合する
と、被告人に関する原判示第二および第三の各事実を認定するに十分である。その
各事実を要約すると、被告人は、A株式会社取締役Bから、昭和三六年三月二七日
頃同会社が前記中学校増築工事請負競争入札に参加すべき業者に指名されるように
有利かつ便宜の取り計らいをなされたい旨を依頼されかつその行為の報酬とする趣
旨のもとに現金一万円を収受し、更に同年四月二〇日頃右会社が競争入札に参加す
べき業者に指名されたことの報酬とすると共に、競争入札にあたり事前に入札価格
等を右会社係員に秘かに通知する等の有利かつ便宜の取り計らいをなされたい旨を
依頼されかつその行為の報酬とする趣旨のもとに五万円の小切手一通を収受したの
である。
 以上のとおりであるから、被告人が前記のように現金および小切手を収受した各
所為は、いずれも刑法第一九七条第一項前段の収賄罪に該当することが明らかであ
る。
 原判決に判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤ないし事実の誤認はな
く、控訴趣意は、すべて理由がない。
 右のとおりであつて、本件控訴は、理由がないので、刑訴法第三九六条により、
これを棄却すべく、主文のとおり判決をする。
 (裁判長裁判官 影山正雄 裁判官 吉田彰 裁判官 村上悦雄)

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