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H18.10.11東京高等裁判所平成17年(行コ)第289号公務外認定処分取消請求
控訴事件
主文
本件控訴を棄却する。1
控訴費用は,控訴人の負担とする。2
事実及び理由
第1控訴の趣旨
原判決を取り消す。1
被控訴人が控訴人に対して平成12年6月20日付けでした公務外認定処分2
を取り消す。
(略語等は,原則として,原判決に従う。)第2事案の概要
本件は,東京都立A療育センター(以下「療育センター」という。)に看護1
婦(当時の名称)として勤務していた控訴人が,控訴人に発症した全身性エリテマ
トーデスは療育センターにおける看護婦としての過重な公務による過労・ストレス
が原因であり,これを公務外の災害と認定した被控訴人の処分は違法であるとして,
その取消しを求めた事案である。
原審は,控訴人に発症した全身性エリテマトーデスを公務外の災害と認定し2
た被控訴人の処分に所論の違法は認められないとして,控訴人の請求を棄却した。
当裁判所も,原審と同様に,控訴人の請求を棄却すべきものと判断した。3
前提となる事実及び争点は,次のとおり改めるほかは,原判決の事実及び理4
由の「第2事案の概要等」1及び2(原判決2頁2行目から5頁8行目まで)に
記載のとおりであるから,これを引用する。
原判決2頁8行目から9行目までを次のとおり改める。(1)
「(2)控訴人は,昭和62年4月1日,東京都に看護婦見習として採用され,同日
以降,療育センターの看護科勤務となり,同年6月1日以降,看護婦として勤務し,
重症心身障害者の成人病棟を担当していた。(甲1)」
原判決2頁18行目の「平成元年3月に」を「平成元年2月に浮腫が,同年(2)
3月に大腿部に出血斑が発症し,」に改める。
第3当裁判所の判断
当裁判所も,控訴人の請求は,以下に説示するとおり,理由がないものと判断す
る。
事実経過等は,次のとおり改め又は加えるほかは,原判決の事実及び理由の1
「第3争点に対する判断」1及び2(原判決5頁10行目から10頁19行目ま
で。次項以下において引用する際は「前記1(原判決1(10)。同9頁及び10頁参
照)」等と略記する。)に記載のとおりであるから,これを引用する。
原判決5頁12行目から14行目までを次のとおり改める。(1)
「(1)控訴人(昭和25年3月25日生。家族は夫と子2人)は,昭和62年3月,
看護専門学校を卒業し,同年4月1日,東京都に看護婦見習として採用され,同日
以降,療育センターの看護科勤務となり(当時37歳),同年6月1日以降,看護
婦として,重症心身障害者の成人病棟(3−1病棟)を担当していた。(甲1,2
4,26)」
原判決6頁6行目の「午後9時ころ」を「午前9時ころ」に改める。(2)
原判決10頁8行目の末尾に,改行して,次のとおり加える。(3)
「他方で,ストレスが全身性エリテマトーデスの増悪因子のみならず発症因子と
もなり得るとする見解は,科学的にはいまだ検証されておらず,免疫応答性の低下
につながるストレスの量・種類やストレスの程度の数量化の方法もはっきりしてい
ない,科学的根拠に基づくものが少なく教科書的な記載は皆無であるなど,その科
学的根拠等に懐疑的な指摘を受けている。このように,全身性エリテマトーデスは,
遺伝的素因を基礎として,これに様々な環境的因子が複雑に絡み合い,長年にわた
り蓄積し,複合的に作用して,それまで異常の見られない者に特定の原因や具体的
な機序が不明なまま発症に至るといわれているが,色々な環境的因子(特にストレ
ス)のいずれが発症にどの程度の影響を及ぼすのかについてはいまだ十分に解明さ
れるには至っていない。(乙8ないし13,14の1・2,15の1・2,16の
1・2)」
前記1(原判決1(10)。同9頁及び10頁参照)のとおり,全身性エリテマト2
ーデスの原因は特定されておらず,遺伝的素因に加えて様々な環境的因子等が複合
的に作用して発症すると言われている。全身性エリテマトーデスは,基礎疾患が存
在して,これが病変して発症するというものではなく,本件疾病でもみられるよう
に,それまで異常が見られなかった者に,特定の原因や具体的な機序が不明なまま
発症する。遺伝的素因は何らかの原因となっていると考えられるけれども,様々な
環境的因子は複合的に影響するということであり,環境的因子と考え得るすべての
要素が発症の原因となっているのかどうかは明らかでないし,個々の環境的因子が
どの程度に発症に影響しているのかも明らかでない(環境的因子だけで全身性エリ
テマトーデスが発症するものではないことは間違いない。)。環境的因子とされる
ものの中には,手術,妊娠・出産等,その存在が日常的でないものがあるけれども,
紫外線やウィルス,外傷など,誰もが経験しうる因子も含まれる。まして,身体的
負荷及び精神的ストレスが環境的因子に含まれるのであるとすれば,これらは仕事
(公務)以外の日常生活にごく普通に存在するものであるから,仕事を原因とする
身体的負荷及び精神的ストレスが発症に影響を与えたかどうかを明確にすることも
できない。
以上からすれば,本人の遺伝的素因を基礎としてこれに様々な環境的因子が複雑
に絡み合い長年にわたり蓄積し複合的に作用して発症に至るといわれている全身性
エリテマトーデスについて,その発症と公務との間の相当因果関係の有無(その発
症が公務に内在し又は随伴する危険が現実化したものと評価し得るか否か)は,本
人の遺伝的素因が,発症前の一定の期間又は発症の直前における過重な公務による
身体的負荷及び精神的ストレスが環境的因子として作用した結果,その自然の経過
を超えて増悪したことによって発症に至ったと認められるか否かという観点から,
他の発症原因となるべき因子の有無等を踏まえて判断すべきものと解される(最高
裁平成12年7月17日第1小法廷判決・判例時報1723号132頁,最高裁平
成16年9月7日第3小法廷判決・判例時報1873号162頁,最高裁平成9年
4月25日第3小法廷判決・判例時報1608号148頁,最高裁平成18年3月
3日第2小法廷判決・判例タイムズ1207号137頁等参照)。
そこで,上記の観点から,本件疾病の発症と控訴人の公務との間の相当因果関3
係の有無について検討する。
前記1(原判決1(10)。同9頁及び10頁参照)のとおり,全身性エリテマ(1)
トーデスは,その発症の原因はいまだ特定されておらず,本件疾病でもみられるよ
うに,それまで異常が見られなかった者に,特定の原因や具体的な機序が不明なま
ま忽然と発症する。遺伝的素因は常に発症原因の基礎となっている(環境的因子だ
けで全身性エリテマトーデスが発症するものではない)と考えられるけれども,様
々な環境的因子は複雑に絡み合い長年にわたり蓄積して複合的に作用するとされて
おり,個々の環境的因子がどの程度に発症に影響しているのかも明らかではない。
環境的因子とされるものの中には,紫外線,ウィルス,外傷など,誰もが経験しう
る因子も含まれるし,女性ホルモンや控訴人も2回経験している妊娠・出産も含ま
れるとされている。また,身体的負荷及び精神的ストレスが環境的因子に含まれる
としても,その影響の機序・度合いは明らかではない上,これらは仕事(公務)以
外の日常生活にごく普通に存在するものであるから,仕事を原因とする身体的負荷
及び精神的ストレスが発症にどの程度の影響を与えたかを明確にすることもできな
い。
本件疾病の発症についても,それが,紫外線,ウィルス,外傷,日常生活上の様
々なストレス,女性ホルモン,妊娠・出産などの他の様々な環境的因子の長年にわ
たる蓄積と複合的な作用によるものであるのか,あるいは,控訴人の公務に伴う身
体的負荷及び精神的ストレスをも環境的因子としたものであるのかは必ずしも明ら
かではなく,他の様々な環境的因子が発症原因となり得る因子として考えられる本
件においては,控訴人の発症前の看護婦としての勤務歴が約1年半(就職時の年齢
は37歳)であることも踏まえ,発症前の一定の期間ないし発症の直前における控
訴人の公務が,様々な環境的因子の長年の蓄積と複合的な作用による自然の経過を
超えて遺伝的素因を増悪させる危険のある特に負荷の重いものであったか否かとい
う観点から,控訴人の公務の態様等を検討すべきである。
控訴人は,国際基準との比較や夜間労働の健康への悪影響等の観点から,(2)ア
我が国における看護婦の労働条件が劣悪でありその職務一般が過重である旨主張す
るが,看護婦の看護の職務が一般の事務系の職務に比べて相対的により身体的負荷
及び精神的ストレスを伴うことが多いことを前提としても,そのことのみから直ち
に個別の事案における公務の過重性を肯定し得るものではない。
前記認定のとおり,控訴人は,成人の重症心身障害者の看護を行い,昭和6イ
3年7月から平成元年3月まで月平均約6.8回(昭和63年7月から10月まで
月平均7.5回)の深夜勤務及び準夜勤務に就き,準夜勤務に引き続いて日勤勤務
を行う場合等には労働時間と労働時間との間が短かったと認められる一方で,仮眠
時間はあるが夜間に就寝することができない深夜勤務についてみれば,昭和63年
7月から平成元年3月まで月平均約3.6回(昭和63年7月から10月まで月平
均約3.8回)であって,勤務後の時間が短いまま次の勤務に就いた場合には,翌
日が休日とされるか,勤務開始時間が遅い準夜勤務を割り当てられるなど,次の勤
務開始までに長時間の休息をとることができるように配慮されていた(前記1(原
判決1(9)。同8頁以下参照))。また,控訴人が長時間の残業(超過勤務)をし,
又は長時間とはいえないが連日ないし頻繁に残業をしていた事実は認めることがで
きない(昭和63年4月から10月17日までの間は残業は全くなかった。前記1
(原判決1(9)。同9頁参照))。控訴人には少なくとも毎月9日の休日があり,昭
和63年7月と8月には更に休日は多く,毎月の休日はほぼ予定どおり取得してい
た。これらの事実に照らせば,控訴人には,公務による身体的負荷及び精神的スト
レスを解消するに足りる休息時間が与えられていたと認めることができる。これら
の勤務の状況に加え,控訴人が他の同僚職員に比して特に負荷の重い公務に従事し
ていたと認めることもできないことや,控訴人の発症前の看護婦としての勤務歴が
約1年半と短いことも併せて考慮すれば,本件疾病の発症前における控訴人の看護
婦としての公務が特に負荷の重いもので,それによって生じた疲労や精神的ストレ
スが蓄積していたと認めることはできない。
控訴人は,当審において,本件について公務の過重性を判断するに当たっては,
①準夜勤務の負荷,②休息時間の短さの負荷を看過してはならない旨主張する。し
かしながら,前記のとおり,勤務開始時間が遅い準夜勤務の割当ては,前の勤務終
了からの長時間の休息を確保するための配慮によるものと推認され,控訴人につい
ては,全体として,次の勤務の開始までに長時間の休息をとることができるように
配慮されており,長時間ないし頻繁な残業(超過勤務)に従事した事実を認めるこ
とはできず,毎月9日以上の休日もほぼ予定どおりに取得していたこと等の諸事情
を総合すれば,準夜勤務の負荷を勘案しても,控訴人には公務による身体的負荷及
び精神的ストレスを解消するに足りる休息時間が与えられていたというべきであっ
て,本件における公務の過重性に関する前示の認定は,上記主張によって左右され
るものではない。なお,控訴人は,当審において,控訴人の労働実態は産業衛生学
会の意見書の提案する基準と比較して過重であるとも主張するが,本件における前
記の勤務状況等を前提とする以上,本件における公務の過重性に関する前示の認定
は,上記主張によって左右されるものではない。
また,控訴人が膝に激痛を覚えたという時期の前後についてみると,控訴人ウ
は,昭和63年10月16日の日勤終了後,約7時間15分の休息時間の後,同月
17日の深夜勤務に就き,その終了後も引き続き同日午後8時ころまで,看護研究
発表会の準備作業に例年より少ない人員(担当者2名と婦長)で従事し,不慣れな
印刷作業を1人で行った(前記1(原判決1(5)及び(6)。同6頁及び7頁参照))
のであるが,同月20日の看護研究発表会(例年実施されており,各棟の複数の職
員が発表の担当となり,全職員が必ず担当すべきもので,各棟の発表の時間は10
ないし15分)に使用した印刷物はB5版用紙4枚のものであり,その作成の作業
も,大部のものを新たに作成するというものではなかった。また,同年10月には,
13日,15日,18日が休日又は休暇とされており(前記1(原判決1(9)。同8
頁及び9頁参照)),17日の前後には十分な休息をとることができる状況にあり,
同日以外には控訴人は通常どおりの公務に従事していたと認められる。控訴人は,
同月17日に激しい膝の痛みを感じたものの,医師の診察も受けないまま間もなく
痛みは軽減し,同月19日には遠足に行き,その後は膝の痛みを感じていないこと
などによれば,同月17日の時点での控訴人の膝の痛みは一時的なものであったと
みることができる。以上の諸事実に照らせば,同日の前後(同月20日までの20
日間)にわたる研究調査・発表準備の作業を勘案しても,控訴人の10月17日に
膝に痛みを感じた直前及びその前後において,控訴人が特に負荷の重い公務に従事
していたと認めることはできない。
控訴人は,当審において,本件について公務の過重性を判断するに当たっては,
①20時間連続勤務の負荷,②看護研究の業務の負荷(昭和63年10月17日の
前後の作業を含めた負荷)を看過してはならない旨主張する。しかしながら,前記
のとおり,看護研究発表に使用した印刷物はB5版用紙4枚のものであり,その作
成の作業も大部のものを新たに作成するというものではなく,同日の膝の痛みも間
もなく軽減してその後は遠足にも行き痛みを感じていないというのであるから,同
日の前後20日間の準備作業全体を含めて勘案しても,本件における公務の過重性
に関する前示の認定は,上記主張によって左右されるものではない。
以上のとおり,本件疾病の発症に関しては,看護婦となる以前に既に長年に(3)
わたり様々な環境的因子の作用の蓄積があったものと推認され,看護婦としての勤
務開始の前後を含め,他に様々な発症原因となり得る環境的因子の介在が考えられ
る上,発症前の看護婦としての勤務歴は約1年半と短く,その間の公務も前示のと
おり特に負荷の重いものと認めることができない以上,訴訟上の因果関係の立証が
自然科学的証明ではなく経験則上の高度の蓋然性の証明であることを前提とした上
で本件の全証拠によっても,控訴人の遺伝的素因が過重な公務による身体的負荷及
び精神的ストレスによって自然の経過を超えて増悪して発症に至ったものと認める
には足りず,したがって,本件疾病の発症は公務に内在し又は随伴する危険が現実
化したものと評価することはできないというべきである。
本件においては,前記1(原判決1(10)。同9頁及び10頁参照)の本件疾病の
特性及び前示の諸事情に照らすと,昭和63年10月ないし12月ころの時点にお
いて,控訴人の遺伝的素因が,確たる発症因子がなくてもその自然の経過により本
件疾病を発症させる寸前にまで増悪していなかったと推認するには足りず,むしろ,
控訴人の遺伝的素因が,特定の確たる発症因子がなくてもその自然の経過(様々な
環境的因子の長年にわたる蓄積と複合的な作用)により本件疾病を発症させる寸前
にまで増悪していたと推認する方が事実経過に即しているというべきである。控訴
人は,当審において提出した意見書(甲34)の中で,本件疾病の発症につき,女
性ホルモンを除く公務以外の環境的因子の作用の蓋然性を全面的に否定する旨の意
見を述べているが,これをもって上記の可能性を否定するに足りるものということ
はできない。
なお,前記(2)のとおり,控訴人は,昭和63年10月17日に膝に激痛を覚
えたものの,医師の診察も受けないまま間もなく痛みは軽減し,同月19日には遠
足に行き,その後は膝の痛みを感じていないというのであるから,その膝の痛みを
覚えた時点で直ちに公務への従事を停止すべき状態にあったとも認めることができ
ないのであって,その後も引き続き公務に従事し続けたこと及びその後に本件疾病
の発症に至ったことをもって,公務に内在し又は随伴する危険が現実化したものと
みることもできないというべきである。
控訴人は,当審において,控訴人の公務と本件疾病の発症との間の相当因果4
関係について,①ストレスによるカテコーラミンの増加は,急激な血圧変動や血管
収縮等を引き起こして狭心症等の脳心臓疾患を発症・増悪させるのみならず,活発
な自己免疫反応を起こす場合もあり,後者の場合には,自己免疫疾患の一つとして
全身性エリテマトーデスが発症するのであり,このように脳心臓疾患と全身性エリ
テマトーデスとは共通の機序を有している以上,脳心臓疾患を発症させる程度の過
重な公務があればこれによって自己免疫疾患が発症すると認められるのであって,
②控訴人の主治医の意見書(乙7の15)は,上記①の機序を踏まえ,控訴人の公
務が本件疾病の発症の引き金となったことを認めており,本件訴訟における上記主
治医の意見書(甲25)はこの趣旨を更に敷衍して説明しているところ,本件にお
いて,控訴人を実際に診療した上でのこれを覆すに足りる特段の証拠は存しない旨
主張する。
まず,ストレスによるカテコーラミン(文献によってはカテコラミン又はカテコ
ールアミンとも表記される。)の増加が自己免疫反応を引き起こして全身性エリテ
マトーデスを発症させるとの見解は,控訴人の主治医が述べているものである(甲
25,乙7の15参照)が,ストレスによるカテコーラミンの分泌が免疫機能の低
下の一つの因子となる可能性に言及する医学文献(甲15,17,18,22)が
ある一方で,そのような見解を示さないものも多く(甲19,20,23,乙9な
いし13,14の1・2,15の1・2,16の1・2),前記1(原判決1(10)。
同9頁及び10頁参照)のとおり,ストレスが全身性エリテマトーデスの発症因子
となり得るとする見解自体の科学的根拠等に懐疑的な指摘もあるなど,全身性エリ
テマトーデス発症の機序とストレスとの関係等についていまだ十分に解明されてい
ない現状の下では,控訴人の主治医の上記見解をもって直ちに本件疾病の発症の科
学的な機序を認定し得るものではない。
また,控訴人の主治医は,公務による身体的・精神的なストレスが本件疾病の発
症の原因となったと考える旨の意見を述べる(甲25,乙7の15参照)が,上記
のとおり,全身性エリテマトーデス発症の機序とストレスとの関係等についていま
だ十分に解明されていない現状の下で,同主治医の上記見解によっては,本件疾病
の発症の科学的な機序を認定し得るものではなく,控訴人に係る公務の過重性及び
他の様々な発症因子の作用の可能性に関する前示の認定を前提とすると,前記3の
とおり,本件疾病の公務起因性を肯認することはできないといわざるを得ない。
したがって,本件疾病の公務起因性の有無に関する前示の判断は,上記主張及び
これに沿う証拠を勘案しても,左右されるものではない。
以上によれば,本件疾病と控訴人の公務との間に相当因果関係を認めることは5
できないから,被控訴人が控訴人に対してした本件の公務外認定処分に所論の違法
はない。
第4結論
よって,控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり,本件控訴は理由がないか
ら,これを棄却することとし,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第1民事部
裁判長裁判官江見弘武
裁判官岩井伸晃
裁判官市川多美子

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