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H18.10.25東京高等裁判所平成18年(ネ)第1825号遺言無効確認請求控訴事

主文
原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。1
東京家庭裁判所平成16年(家)第9206号遺言書検認申立事件に2
おいて検認された平成14年5月13日付け自筆証書によるA(最後の
住所・東京都○○区○○a丁目b番c号)に係る遺言は無効であること
を確認する。
訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人の負担とする。3
事実及び理由
第1控訴の趣旨
主文同旨
第2事案の概要
本件は,亡Aの妻である控訴人が,亡Aと控訴人との間の長男である被控訴1
人に対し,主文掲記の亡Aに係る遺言()が無効であるとして,その確認本件遺言
を求めた事案である。
原審は,本件遺言中加筆された「その他」という3文字の記載部分のみが無2
効であるとして,控訴人の請求をその限度で認容し,その余の請求を棄却した。
当裁判所は,原審と異なり,本件遺言は無効であり,控訴人の請求を全部認3
容すべきものと判断した。
前提事実(争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認4
められる事実)
亡A(明治44年10月11日生)は,平成16年5月13日に死亡し,そ(1)
の相続人は,妻控訴人(大正7年1月2日生),両者間の長女(戸籍上は二女)B,
長男被控訴人,二女(戸籍上は三女)C,二男(戸籍上は三男)D及び亡Aと亡E
との間の長女Fである。
本件遺言の概要等(2)
本件遺言に係る自筆証書は,縦約25.7㎝,横約18.2㎝の大きさに切ア
り取られたカレンダーの裏面(本件文書)と封筒(本件封筒)から成り,(a)本
件文書は,作成者の署名及び押印のいずれもなく,冒頭に「遺言書」という標題,
末尾に「平成14年5月13日」という日付が記載されているほか,要旨,①妻と
の共有に係る土地家屋を被控訴人に,②「マンション203号室」だけを二男Dに,
それぞれ取得させることとするほか,③長女B及び次女には新たには何も取得させ
ないこと,④相続人らが法要を忘れないこと,⑤財産についていざこざを起こさな
いこと,と記載され,一部加入又は訂正をされた部分があるが,加入及び訂正の箇
所にその旨の付記及び署名押印はされておらず,(b)本件封筒は,表に「遺言
書」と記載され,裏面には,亡Aの氏名及び封じ目に「封」と判読できる1文字が
記載され,○○名(注:亡Aの氏)の印影が顕出され,検認時には既に開封されて
いた。(甲8の2枚目,4枚目から7枚目まで)
本件遺言に係る自筆証書は,平成16年11月26日,東京家庭裁判所(同イ
裁判所同年(家)第9206号遺言書検認申立事件)において検認された。(甲
8)
被控訴人は,検認の際,亡Aの死後,平成16年7月3日,同人の自宅の金庫の
中に本件封筒に密封された本件文書を発見したと述べた。本件文書及び本件封筒に
書かれた文字の筆跡については,検認の際,Fは亡Aの筆跡であるかどうかは分か
らないと答え,被控訴人,B及びCは,亡Aの筆跡であると答え,本件封筒の裏面
の印影については,B,C及びFは亡Aの印章であるかどうかは分からないと答え,
被控訴人は,亡Aの印章であると答えた。(甲8の3枚目)
被控訴人は,本件遺言が自筆証書遺言として有効であると主張している。ウ
争点5
本件遺言は,自筆証書遺言として有効か。
控訴人の主張6
本件遺言には以下のとおり方式違背がある。
本件文書には,遺言者が署名及び押印をしていない。(1)
遺言書と封筒を一体としてみることにより方式の不備を救済することができるの
は,遺言書に署名はあるが押印はなく封筒の封じ目に押印がある場合に限られ(最
高裁平成6年6月24日第2小法廷判決・集民172号733頁参照),本件文書
のように署名すらない場合にまで方式の不備を救済することはできない。
本件封筒の署名及び標題は整然と記載されているが,本件文書は,カレンダ(2)
ーの裏面を使用し,極めて乱雑な字体・態様で書かれており,署名及び押印がされ
ておらず,高々遺言書の下書きにすぎず,このような外観上の顕著な相違がある以
上,本件封筒と本件文書を一体のものと見ることはできず,両者は異なる時期に書
かれた可能性が高い。本件封筒は,被控訴人によって検認前に開封されており,四
十九日法要の日以前に本件封筒に本件文書が封入されていたとは到底考えられない。
Bは,平成12年ころから2年間,亡Aと同居し,又は近くに住んで同人の生活
を支援していたが,亡Aから頼まれて自宅の金庫を開けた際,表に「遺言書」と記
載されている封筒2枚を亡Aに手渡したことがあり,平成14年ころから亡Aと同
居している被控訴人は,上記金庫を開けることが可能であった。
本件文書は,3箇所加入され,2箇所訂正されているが,加入及び訂正は,(3)
民法968条2項の方式に従っていない。
被控訴人の主張7
本件文書は,それ自体には亡Aの署名及び押印がされていないが,本件文書(1)
と一体と認められる本件封筒に署名及び押印がされており,方式違反はない。
控訴人は,本件封筒の署名及び標題の記載が本件文書の記載と比べて整然と(2)
しており,両者が異なる時期に書かれた可能性が高いと主張するが,署名は本人が
書き慣れている文字であるから整然としていても不思議ではなく,本件封筒の「遺
言書」の文字と本件文書の「遺言書」の文字は同じように書かれており,亡Aは氏
名や標題を別の筆記具を使って太字で書く習慣があった(乙1の1及び2)。本件
封筒が本件文書と異なる時期に書かれたとする控訴人の推測は,合理性を欠く。
いったん作成して封入した遺言書を破棄した者が封筒だけを破棄しないで保管す
ることは考え難いが,封筒だけを保存し,新たに作成した遺言書をその封筒に入れ
ても,遺言書と封筒の一体性を損なうことはない。
亡Aのような高齢の老人は物を大切に使う気持ちが強いので,カレンダーの裏面
を使用した遺言書の作成は決して異常なことではない。
検認手続の調書(甲8)に「加除等なし」と記述されているように,本件(3)
文書の加入3箇所,訂正2箇所は,いずれも遺言書の加除その他の変更には該当し
ない。
第3当裁判所の判断
当裁判所は,本件遺言は自筆証書遺言として無効であり,控訴人の請求は理1
由があると判断する。その理由は,以下のとおりである。
訴えの適法性2
本件遺言は,前記のとおり,相続関係につき法的効果を生じさせる事項としては,
特定の不動産を特定の相続人に相続させることを内容とするものであり,遺産分割
の方法の指定を内容とする遺言である。そうすると,本件遺言の無効確認を求める
訴えは,被控訴人が本件遺言に基づいては特定の不動産を取得しないとして,当該
不動産に係る被控訴人の所有権の不存在確認を求める訴えに類似したものと解され
るので,本件の事実関係のもとでは,固有必要的共同訴訟に当たらず(最高裁昭和
56年9月11日第2小法廷判決・民集35巻6号1013頁参照),相続人の一
部の者から相続人の一部の者に対して提起された本件訴えは,適法である。
本件遺言の効力3
自筆証書による遺言は,遺言者が,遺言の全文及び日付を自書し,署名及び(1)
押印をすることを要する(民法968条1項)。
本件についてこれをみるに,前記前提事実のとおり,本件文書には遺言者とされ
る亡Aの署名及び押印がされておらず,本件文書自体をもって自筆証書遺言として
有効なものと認めることはできない。
もっとも,前記前提事実のとおり,本件封筒には,表に「遺言書」と記載さ(2)
れ,裏面に亡Aの氏名が記載され,「○○」名(注:亡Aの氏)下の印影が顕出さ
れており,亡Aが本件封筒に署名して押印し,かつ,本件文書と本件封筒が一体の
ものとして作成されたと認めることができるのであれば,本件遺言は,亡Aの自筆
証書遺言として有効なものと認め得る余地がある。
この点につき,被控訴人は,亡Aの四十九日法要の当日,B及びその他の亡Aの
子ら()が来訪する前に金庫を開けて糊付けされた本件封筒を発見し,糊付けBら
をはがして開封し,本件封筒の中に入っていた本件文書をBらに見せた旨の陳述記
載(乙2)が存する。
しかしながら,一方,①平成14年5月13日(本件文書の作成日付)の数か月
前から平成16年5月13日(亡A死亡時)までの間,被控訴人のみが亡Aと同居
しており,②被控訴人は,亡Aの四十九日法要の当日(同年7月3日ころ),Bら
に対し,自宅の金庫の中から発見したとして,本件文書のコピーのみを示し,求め
られながら原本を示すこともなく,本件封筒の原本及びコピーのいずれをも示さず,
本件文書を発見した時期についても告げず,③被控訴人は,東京家庭裁判所におけ
る検認の際,Bらに対し,本件文書及び本件封筒の各原本を初めて示し,本件文書
の封入された本件封筒を上記法要の当日に発見したと初めて告げたのであり(上記
①から③までにつき,甲8,16及び17並びに弁論の全趣旨),これらの事実に
加え,④上記検認の当時,本件封筒は既に開封されていたこと(前記前提事実)を
も考慮すると,被控訴人の上記陳述記載は採用の限りではなく,他に,本件文書と
本件封筒が一体のものとして作成されたことを認めるに足りる証拠はない。
以上のとおり,本件文書と本件封筒が一体のものとして作成されたと認める(3)
ことができない以上,亡Aが本件封筒の裏面に署名し,その意思に基づいて押印し
たかどうかを問うまでもなく,本件文書には亡Aの署名及び押印のいずれをも欠い
ており,本件遺言は,民法968条1項所定の方式を欠くものとして,無効である。
第4結論
よって,原判決中,控訴人の請求を棄却した部分は相当でないから,同部分を取
り消した上,控訴人の請求を全部認容することとし,主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第1民事部
裁判長裁判官江見弘武
裁判官植垣勝裕
裁判官岩井伸晃

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