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平成11年(ワ)第11675号 商標権侵害差止等請求事件(甲事件)
平成12年(ワ)第1229号商標使用妨害禁止請求事件(乙事件)
口頭弁論終結の日 平成13年11月6日
           判        決
甲事件原告兼乙事件被告A
甲事件原告       株式会社コトブキゴルフ
両名訴訟代理人弁護士   高   初 輔
甲事件被告        ワールドブランズ株式会社
乙事件原告        アダムスゴルフインク
両名訴訟代理人弁護士   田 中   徹
同            竹之下 義 弘
同            大 塚 一 郎
甲事件被告訴訟代理人   瀬戸川 真 紀
乙事件原告訴訟代理人   平 野 高 志
     主        文
1 甲事件原告A及び同株式会社コトブキゴルフの請求を,いずれも棄却
する。
2 乙事件被告Aが,同事件原告アダムスゴルフインクに対して,同アダ
ムスゴルフインクの製造,販売に係るADAMSの標章を付したゴルフクラブの輸入,
販売又は販売のための展示につき,別紙商標目録記載の商標権に基づく差止請求権
を有しないことを確認する。
3 訴訟費用は,甲事件については同事件原告A及び同株式会社コトブキ
ゴルフの,乙事件については同事件被告Aの各負担とする。
           事実及び理由
第1 請求
1 甲事件
(1)甲事件被告ワールドブランズ株式会社(以下,単に「ワールドブランズ」
という。)は,別紙標章目録記載の標章(以下「本件標章」という。)を付したゴ
ルフクラブを輸入し,販売し又は販売のために展示し並びにその容器,包装紙及び
広告に本件標章を使用してはならない。
(2)ワールドブランズは,その占有する本件標章を付したゴルフクラブを廃棄
せよ。
(3)ワールドブランズは,甲事件原告株式会社コトブキゴルフ(以下,単に
「コトブキゴルフ」という。)に対し,1億2059万円及びこれに対する平成1
1年12月14日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金
員を支払え。
(4)ワールドブランズは,甲事件原告兼乙事件被告A(以下,単に「A」とい
う。)に対し,1812万円及びこれに対する平成11年12月14日(訴状送達
の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 乙事件
主文第2項と同じ。
第2 事案の概要
Aは,別紙商標目録記載の商標権(以下,「本件商標権」といい,その商標
を「本件登録商標」という。)の商標権者であり,ワールドブランズは本件標章を
付したゴルフクラブを輸入・販売等している会社である。
甲事件は,本件商標権を有するAがワールドブランズに対し,本件商標権に
基づき,本件標章を付したゴルフクラブの輸入・販売の差止め等を求めるととも
に,A及び本件商標権の元の商標権者であるコトブキゴルフがそれぞれワールドブ
ランズに対し,本件商標権の侵害を理由とする損害賠償の支払を求めている事件で
ある。
これに対して,乙事件は,本件標章を付したゴルフクラブを我が国に輸出し
ているアメリカ合衆国(以下「米国」という。)法人である乙事件原告アダムスゴ
ルフインク(以下「アダムスゴルフ」という。)が,Aに対し,本件標章を付した
ゴルフクラブの輸入・販売等につき,本件商標権に基づく差止請求権の不存在確認
を求めている事件である。
1 前提となる事実(証拠等により認定した事実については,末尾にその証拠等
を掲げた。)
(1)コトブキゴルフは,平成8年3月12日,本件登録商標につき,商品及び
役務の区分を第28類,指定商品を運動用具として商標登録出願をし,同9年11
月21日,設定登録を受けた。
  コトブキゴルフの代表取締役であるAは,平成11年3月1日,コトブキ
ゴルフから本件商標権を譲り受けた。
(2)コトブキゴルフは,平成9年11月ころから本件登録商標を付したゴルフ
クラブを販売していた。Aは,同11年3月ころから,本件登録商標の使用を有限
会社アダムスに許諾し,同社は本件登録商標を付したゴルフクラブを製造して,コ
トブキゴルフがこれを販売している。
(3)ワールドブランズは,ゴルフクラブの輸入・販売を業とする会社である。
  アダムスゴルフは,ゴルフクラブの製造・販売を主たる業とする米国法人
であり,米国等において本件標章を付したゴルフクラブを製造・販売している(弁
論の全趣旨)。
  ワールドブランズは,アダムスゴルフから本件標章の付されたゴルフクラ
ブを輸入し,我が国において販売している(乙2)。ゴルフクラブは,本件商標権
の指定商品に含まれる。
(4)本件登録商標のうちのADAMSの部分(英字部分)と本件標章は,その外観
が類似し,「アダムス」という称呼が同一である。
(5)コトブキゴルフは,別表1,同2記載の各商標につき,我が国において商
標登録出願をし,その一部については設定登録がされている。
2 本件の争点
(1)Aによる差止請求権及び損害賠償請求権の行使並びにコトブキゴルフによ
る損害賠償請求権の行使は,権利の濫用に当たるか。(争点1)
(2)アダムスゴルフは,本件商標権の登録出願前から本件標章を付したゴルフ
クラブを我が国に輸出したことにより,先使用権(商標法32条1項)を有する
か。(争点2)
(3)本件標章は,アダムスゴルフの「著名な略称を普通に用いられる方法で表
示する商標」(商標法26条1項1号)に当たるか。(争点3)
(4)A及びコトブキゴルフに生じた損害の額(争点4)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(A及びコトブキゴルフによる権利行使の権利濫用該当性)について
【ワールドブランズ及びアダムスゴルフの主張】
(1)米国におけるアダムスゴルフの著名性
  アダムスゴルフは,1987年(昭和62年)ころから米国においてADAMS
の標章を付したゴルフクラブを製造・販売していたが,当初は必ずしも有名なブラ
ンドではなかった。しかし,アダムスゴルフの代表者であるBが1995年(平成
7年)に「TightLies」(タイトライズ)という新製品を開発してからは,業界や
ゴルファーの注目を浴びるようになり,1996年(平成8年)1月26日から同
月29日にかけてフロリダ州で開催されたアメリカプロゴルフ協会(以下「PG
A」という。)の見本市に出品したタイトライズの新製品が人気を博したこと
で,ADAMSは一挙に有名なブランドとなり,アダムスゴルフも有名なゴルフクラブ
メーカーとなった。
(2)コトブキゴルフによる本件商標権の登録出願
 コトブキゴルフは,従前から,外国においてゴルフ用品製造業者又は販売
業者を示すものとして使用されている商標を我が国で無断で登録出願することを再
三にわたり行ってきた。コトブキゴルフは,米国法人であるアクシネットジャパン
インクとの間で「KINGCobra」の商標をめぐり係争中であるが,同事件の一審の東
京地裁判決(当庁平成9年(ワ)第5505号事件・判例タイムズ1006号244
頁)は,コトブキゴルフの前身である会社が無断で前記商標の登録出願をしたなど
の事実関係の下では,コトブキゴルフの商標権に基づく権利行使は権利濫用に当た
るとして,その差止め及び損害賠償の請求を棄却した。
 Aは,2年間の米国留学の経験を有し,米国のゴルフ業界の事情に明るい
者であるが,前記1996年(平成8年)1月開催のPGAの見本市を視察してい
る。
 コトブキゴルフによる我が国での本件商標権の登録出願は前記のとおり平
成8年3月12日のことであり,アダムスゴルフ及びADAMSの名称がPGAの見本
市の成功により著名になった直後である。そして,A及びコトブキゴルフには,ア
ダムス又ADAMSの名称について商標登録をするべき何らの合理的な理由は存しな
い。
(3)まとめ
 以上によれば,コトブキゴルフが本件商標権の商標登録出願をした理由
は,アダムスゴルフの米国ゴルフ業界における成功に着目して我が国において登録
出願を行ったこと以外には考えられない。
 このような事情の下では,コトブキゴルフ及びその代表者であり,これを
支配しているAが,ワールドブランズ及びアダムスゴルフによるゴルフクラブへの
本件標章の使用に対して,本件商標権に基づく請求権を行使することは,権利の濫
用に当たり許されない。
【A及びコトブキゴルフの主張】
(1)本件商標権の商標登録出願に至る経緯
  アダムス及びADAMSの標章は,C(以下「C」という。)が考案したもの
であり,Cは,昭和60年9月ころから,同人が設計・製造したゴルフクラブにこ
れを付して我が国において販売していた。Cは,平成2年4月有限会社アダムスを
設立し,同年8月ころからコトブキゴルフとの間で,コトブキゴルフの発注に対し
てアダムス及びADAMSの標章を付したゴルフクラブを販売するという形で取引を開
始した。
 その後,有限会社アダムスの経営が苦しくなったため,Aは平成7年6月
有限会社アダムスに対し,営業資金として200万円の融資をした。そのころ,C
とAの間でアダムス及びADAMSの標章を商標登録出願することで話が進み,ひとつ
には上記債権の担保の趣旨で,ひとつにはコトブキゴルフが有限会社アダムスから
アダムス及びADAMSの標章の付されたゴルフクラブを購入し,販売することを自己
の業務として今後も継続するという趣旨で,Cの了解のもとコトブキゴルフの名義
で本件登録商標を商標登録出願したものである。
(2)本件登録商標の宣伝広告の実績
  有限会社アダムス及びコトブキゴルフは,新聞,雑誌紙上で本件登録商標
の付されたゴルフクラブの宣伝広告を行い,その販売を継続して行ってきた。
  有限会社アダムスが広告を掲載した新聞等と掲載日は,次のとおりであ
る。
    昭和62年12月16日  日刊スポーツ
    昭和63年2月24日   日刊スポーツ
昭和63年3月20日   サンケイスポーツ
    平成元年8月       月刊ゴルフ用品界
    平成2年12月18日   日刊ゲンダイ
    平成3年10月月刊ゴルフ用品界
    平成5年5月1日     ゴルフ産業新聞
    平成8年6月       月刊ゴルフ用品界
    平成8年8月22日号   ALBA
    平成8年9月22日号   週刊アサヒゴルフ
  コトブキゴルフが広告を掲載した新聞と掲載日は,次のとおりである。
    平成10年5月7日    スポーツニッポン
    平成10年6月1日    スポーツニッポン
(3)まとめ
以上によれば,コトブキゴルフによる本件登録商標の商標登録出願には合
理的な根拠が存在し,商標登録出願に至る経緯についても何ら不自然な点はない。
したがって,コトブキゴルフ及び同社から本件商標権を譲り受けたAによるワール
ドブランズ及びアダムスゴルフに対する権利行使は,権利の濫用に当たらない。
2 争点2(先使用権の有無)について
【ワールドブランズ及びアダムスゴルフの主張】
 株式会社クリエイトプロダクト(以下「クリエイト社」という。)は,本件
登録商標の商標登録出願の前である平成7年11月と12月に,アダムスゴルフか
ら本件標章の付されたゴルフクラブを各3万4500ドル及び4万5000ドル分
輸入して,我が国において販売を開始した。クリエイト社は,この他に少なくとも
同年12月15日付け及び同月30日付けで,アダムスゴルフから本件標章の付さ
れたゴルフクラブを各4万4000ドル及び2万2000ドル分輸入している。こ
のことは,アダムスゴルフとしては,輸入代理店であるクリエイト社を通じて日本
国内の店舗においてゴルフクラブを販売するについて本件標章を使用したことにな
る。
 そして,本件標章の付されたアダムスゴルフ製造のゴルフクラブは,米国で
著名になるに従い,我が国においても需要者であるゴルフ製品関係者に広く知られ
るようになった。このことは,雑誌「ゴルフ用品界」の平成7年12月号における
アダムスゴルフのゴルフクラブに関する記事,平成8年3月1日発行の「ゴルフ用
品総合カタログ」におけるアダムスゴルフのゴルフクラブの広告及び同誌の論説に
掲載されたゴルフクラブの写真等により知ることができる。
 以上によれば,アダムスゴルフは,本件標章につき先使用権(商標法32条
1項)を有しているというべきであり,アダムスゴルフから本件標章の付されてい
るゴルフクラブを輸入しているワールドブランズも,アダムスゴルフの先使用権を
援用して,甲事件原告らの権利行使を拒むことができる。
【A及びコトブキゴルフの主張】
 先使用権が認められるためには,商標登録出願の際,先使用権を主張する者
が用いていた商標がその者の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者
の間に広く認識されていることを要する。しかし,本件においては,証拠上認めら
れるゴルフクラブの輸入数量はせいぜい1000本にとどまり,1000万人以上
あるゴルフ人口から考えて,本件標章が需要者の間に広く認識されていたとは到底
認めることはできない。
 なお,米国法人のアダムス・ゴルフ・アイピー・リミテッドによる本件商標
権の商標登録異議申立てに対して,特許庁は,本件登録商標の商標登録出願時に,
本件標章がゴルフクラブに使用する商標として取引者,需要者の間において広く認
識されていたものとは認められないという理由で,本件登録商標の設定登録を維持
する旨の決定をしている。
 以上によれば,ワールドブランズ及びアダムスゴルフには先使用権は認めら
れない。
3 争点3(自己の著名な略称の使用への該当性)について
 【ワールドブランズ及びアダムスゴルフの主張】
  アダムスゴルフは,前記2のとおり,その製造に係るゴルフクラブにアダム
ス又ADAMSの名称を付して我が国に輸出した。このアダムス又はADAMSの名称とい
えば,アダムスあるいはAdamsの名称を含むゴルフクラブのメーカーを指すことは,
関係地域,業界,需要者間に一般に知られていたものであるから,このような意味
における略称を普通に用いられる方法で表示した本件標章の使用については,本件
商標権の効力は及ばないものというべきである(商標法26条1項1号)。
 【A及びコトブキゴルフの主張】
 アダムス又はADAMSの名称がアダムスゴルフの著名な略称であることは,否
認する。
  商標法26条1項1号が著名な略称を「普通に用いられる方法」で表示する
ことを要件としているのは,使用者の名称という情報を需要者に開示するために必
要最小限に止まることを要求する趣旨であると解されるところ,ワールドブランズ
は,顧客を誘引するための広告に大々的にADAMSの名称を用いているのであるか
ら,「普通に用いられる方法」で表示しているものとはいえない。
4 争点4(甲事件原告らに生じた損害)について
 【A及びコトブキゴルフの主張】
  ワールドブランズは本件標章の付されたゴルフクラブを輸入・販売して本件
商標権を侵害したが,これによるワールドブランズの売上げは,平成9年12月か
ら同11年4月までで約7億5000万円と推定される。そして,通常,ゴルフ製
品の販売業者が得る販売利益は売上げの約20%であるところ,ワールドブランズ
が本件標章の付されたゴルフクラブを販売することにより得る利益もほぼこれと同
じである。
  したがって,上記の期間におけるワールドブランズの利益は合計で少なくと
も1億3400万円と推定されるが,このうちコトブキゴルフが本件登録商標の商
標権者であった期間(平成11年2月末日まで)は15か月であるから,1億34
00万円のうちの1億1823万5000円がコトブキゴルフに帰属する損害の額
であり,その余の1576万5000円がAに帰属する損害の額である。
  そして,甲事件原告らは,ワールドブランズによる本件商標権の侵害行為に
より,本訴を提起するため原告訴訟代理人弁護士に委任せざるを得なかったもので
あるが,その弁護士費用のうち着手金の471万円については,既に発生している
損害で,かつ内部的な負担割合は2分の1であるから,甲事件原告らは各自235
万5000円の損害を被ったことになる。
  よって,上記の損害額を合計して,コトブキゴルフについては1億2059
万円,Aについては1812万円及びそれぞれについて不法行為の後である平成1
1年12月14日(甲事件の訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合
による遅延損害金の支払を求める。
 【ワールドブランズの主張】
  A及びコトブキゴルフの主張は,否認し,争う。
第4 当裁判所の判断
1 本件登録商標と本件標章の類否について
 本件登録商標は,上下2段の横書き文字列よりなる商標であって,上段に英
字で「ADAMS」,下段にカタカナで「アダムス」と記載したものである。
 本件標章は,横書き1列の文字列からなる標章であって,黒字に白抜きの英
字で「ADAMS」と記載したものである。
  本件登録商標のうちの「ADAMS」の部分(英字部分)と本件標章とを対比す
ると,その外観が類似し,「アダムス」という称呼が同一であることは,当事者間
に争いがなく,また,両者は人名等である「アダムス」という観念を生じる点でも
同一である。
 そして,上記のとおり,本件登録商標は,英字「ADAMS」とこれにカタカナ表
記した「アダムス」を上下2段に併記したというものであるから,そこからは「ア
ダムス」という称呼及び「アダムス」という観念を生ずる。したがって,本件標章
は,本件登録商標と類似するものである。
2 争点1(甲事件原告らによる権利行使の権利濫用該当性)について
(1)当事者間に争いのない事実並びに証拠(甲4の1~13,乙3~5,6の
1,2,12の1,2,14,18の1,2,19の1,2,20の1,2,21
の1,2,証人C,当事者本人兼代表者A)及び弁論の全趣旨を総合すれば,次の
事実を認めることができる。
ア 米国法人であるアダムスゴルフは現在の代表者であるBが1987年
(昭和62年)に創業した会社であり,当初は注文を受けてゴルフクラブを設計・
製造していた。その後,アダムスゴルフは,ADAMSの標章を付したゴルフクラブを
製造・販売するようになったが,ゴルフ業界においてそれほど注目を浴びることは
なかった。
イ Bは,1995年(平成7年),フェアウェイウッドの設計に関して,
従来のヘッドの形状を逆にするというユニークな構想に係る製品を開発し,「Tight
Lies」(タイトなライ用のクラブという意味。以下「タイトライズ製品」とい
う。)と名付けた。従来,ウッドクラブの上部輪郭の長さは,その下部輪郭の長さ
より長いのが常識であったが,タイトライズ製品はこれを逆にすることにより,重
心を低くし,平均的なゴルファーの最大の課題の1つであるボールの打ち上げを容
易にした点に特徴がある。
ウ アダムスゴルフは,1996年(平成8年)1月26日から同月29日
にかけてフロリダ州オーランドにて開催されたPGA国際ゴルフショー(以下「P
GA展示会」という。)にブースを設けて,タイトライズ製品を出品した。
  タイトライズ製品は,1996年のPGA展示会で話題を集めたいくか
のゴルフクラブの中の1つであり,アーノルド・パーマーやリー・トレビノといっ
た著名なプロゴルファーもこのクラブを使用していた。なお,タイトライズ製品
は,米国において,インターナショナル・ネットワーク・オブ・ゴルフという団体
の1996年度におけるBreakthroughProduct(革命的製品)という賞を受賞して
いる。
エ PGA展示会は,100から200という規模のブランドが出品される
世界的にみても大きな規模の展示会であり,ゴルフ用品の販売等の業者のみが入場
できる資格を有する。
  コトブキゴルフは,我が国のゴルフ用品の小売業においては最大手の会
社である。Aは2年間の米国留学の経験を有し,従前から2,3年に一度の割合で
PGA展示会を視察していた者であるが,1996年のPGA展示会を視察し,タ
イトライズ製品が話題を呼んでいることを知った。 Aは,上記展示会において2
0年来の知り合いである米国法人コブラゴルフ・インコーポレイテッドの創始者の
Dと会い,一緒にアダムスゴルフのブースを含むいくつかのブースを視察した。その
際,Aは,Dに対し,「タイトライズ製品は,将来重要なゴルフクラブになるかもし
れない。」という趣旨の感想を述べた。
オ コトブキゴルフは,平成8年3月12日,本件登録商標の商標登録出願
をしたが,その際にアダムスゴルフの許諾を得ることはなかった。なお,アダムス
ゴルフは,米国においてADAMSの名称自体については商標登録をしていない
が,ADAMSの文字の左側に三角形の図形を付したロゴについては,1996年(平
成8年)3月20日から使用しているという事実に基づき商標登録をしている。
カ コトブキゴルフは,外国において外国のゴルフ用品製造業者又は販売業
者を出所として表示するものとして使用されている商標を,我が国において無断で
商標登録出願することを行っており,今までに商標登録出願している主なものは,
別表1,同2記載のとおりである(ただし,同社の代表者であるA及び同人の父で
あるEらの名義による登録出願を含む。)。
  そのうちの一例として,ZEVOの商標は,1996年1月のPGA展示会
にその商標を付したゴルフクラブ等が出品されていたものであるが,同じ年の9月
30日に我が国において商標登録出願がされている。
(2)上記認定の事実によれば,ADAMSの名称が米国において注目されるように
なったのは1996年(平成8年)1月のPGA展示会からであるところ,Aはそ
の展示会を視察していること,しかも,AはADAMSの標章の付されたタイトライズ
製品に注目し,将来重要なブランドになるとの認識を示していたこと,コトブキゴ
ルフは上記展示会終了後間もない平成8年3月12日にアダムスゴルフに無断で本
件商標権の商標登録出願をしていること,コトブキゴルフは,従前から,外国にお
いてゴルフ用品製造業者又は販売業者を示すものとして使用されている商標を我が
国で無断で登録出願することを繰り返していたこと,が認められる。
 以上によれば,コトブキゴルフには,アダムス又ADAMSの名称について商
標登録をするべき合理的な理由は存在せず,むしろタイトライズ製品が米国のゴル
フ業界において成功したことに着目し,ADAMSの名称が将来我が国において人気が
出ることを期待して商標登録出願を行ったものと認められる。
 そうすると,アダムスゴルフが自己の製造販売するゴルフクラブにADAMSの
標章を付してこれを輸入,販売等する行為,及び,ワールドブランズが本件標章の
付されたアダムスゴルフ製造販売に係るゴルフクラブを輸入,販売等する行為に対
して,コトブキゴルフ及び同社から本件商標権を譲り受けた同社の代表者であるA
が,本件商標権に基づく差止請求権・損害賠償請求権を行使することは,権利の濫
用に当たるというべきである。
(3)この点について,A及びコトブキゴルフは,本件商標権に基づく権利行使
が権利濫用に当たることを争い,本件登録商標につきコトブキゴルフ名義で商標登
録出願したのは,① Aの有限会社アダムスに対する200万円の貸金債権の担保
の趣旨と,② 有限会社アダムスからアダムス又はADAMSの標章の付されたゴルフ
クラブを購入・販売することによる自己使用の趣旨であった旨主張する。そして,
これを裏付ける証拠として,①については証人Cの証言及び本人兼代表者Aの供述
が,②についてはコトブキゴルフによる宣伝広告の実績を示す新聞記事(甲4の1
2,同13)がある。
  そこで検討するに,コトブキゴルフは,本訴に先立つ本件登録商標の商標
登録に対する異議申立事件(平成10年異議第90654号)においては,本件登
録商標の登録出願の経緯につき,「Aが有限会社アダムスの代表者であるCに対
し,アダムス及びADAMSの標章を商標登録しなければ第三者が先に商標登録を経由
した場合には,商標権侵害となるおそれがある旨のアドバイスをしたところ,Cは
これに恩義を感じてコトブキゴルフの名義で商標登録出願することを許可した。」
旨主張していたことが認められ(乙11の3),本訴における上記の主張とは食い
違いがみられる。
  そして,200万円の貸金債権の担保という点については,上記証言及び
供述以外にこれを裏付ける客観的な証拠が存在しないし,コトブキゴルフと有限会
社アダムスの取引の実態からみても不自然である。すなわち,本件商標権の商標登
録出願がされたころのコトブキゴルフと有限会社アダムスとの間のゴルフ用品の仕
入額は,平成7年には52万5000円,同8年93万9000円,同9年86万
1336円,同10年64万5000円であり(乙11の3〔前記登録異議申立事
件において証拠として提出された仕入伝票〕により認められる。),このような少
額の年間仕入額からみて,コトブキゴルフが有限会社アダムスからゴルフクラブを
購入してこれを販売する便宜だけのために,アダムス及びADAMSの標章につきわざ
わざ商標登録出願をすることは考えにくい。しかも,AとCのどちらが本件登録商
標の商標登録出願を申し出たかという点について,AはCが申し出たと供述してい
るのに対し,Cはコトブキゴルフの側が申し出たと証言しており,両者は食い違っ
ている。
  さらに,コトブキゴルフによるアダムス及びADAMSの標章の付されたゴル
フクラブの宣伝広告は,本件登録商標の出願後はもとより,設定登録がされた後に
おいても行われた形跡がなく,平成10年5月7日になって初めて行われたこと,
コトブキゴルフによる本件登録商標の付されたゴルフクラブの広告は,平成10年
5月と6月に3回集中的に行われていること(甲4の12,13,弁論の全趣
旨),その時期は前記登録異議申立事件において,コトブキゴルフから代理人弁理
士の選任届が提出された直後に当たること(乙11の2),上記の広告をみると,
他のゴルフ用品は有名なブランドのものであるのに,その中に有名とはいえない有
限会社アダムス製造のADAMSの標章の付されたゴルフクラブが含まれていることが
認められるから,上記の宣伝広告は,コトブキゴルフがその販売に係る製品を宣伝
するというよりも,むしろ,本件登録商標についての前記登録異議申立事件の手続
を自己に有利に進行させることのみを目的としてなされたことが強く推認される。
  以上の認定事実によれば,A及びコトブキゴルフの主張は,いずれも採用
することができない。
3 以上のとおりであるから,A及びコトブキゴルフの請求は,その余の点につ
いて判断するまでもなく理由がなく,他方,Aに対し,ADAMSの標章の付されたゴル
フクラブの販売等につき,本件商標権に基づく差止請求権の不存在確認を求めるア
ダムスゴルフの請求は,理由がある。
  よって,主文のとおり判決する。
   東京地方裁判所民事第46部
     
        裁判長裁判官   三  村  量  一
           裁判官   和久田 道  雄
           裁判官  田  中  孝  一
(別紙)
商標目録標章目録別表1別表2

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答えは、弁護士業もサービス業であるという原点に立ち返ることです。
我々は、クライアントの信頼に応えることが最重要と考え、そのために努力していきたいと思います。 弁護士数の増加、市民のニーズの多様化に応えるべく、従来の法律事務所と違ったアプローチを模索しております。
今まで培ったノウハウを共有し、さらなる発展をともに目指したいと思います。
興味がおありの弁護士の方、司法修習生の方、お気軽にご連絡下さい。 事務所を見学頂き、ゆっくりお話ししましょう。

応募資格
司法修習生
すでに経験を有する弁護士
なお、地方での勤務を希望する先生も歓迎します。
また、勤務弁護士ではなく、経費共同も可能です。

学歴、年齢、性別、成績等で評価はしません。
従いまして、司法試験での成績、司法研修所での成績等の書類は不要です。

詳細は、面談の上、決定させてください。

独立支援
独立を考えている弁護士を支援します。
条件は以下のとおりです。
お気軽にお問い合わせ下さい。
◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
◎業務に関する質問等可能
◎事務所事件の共同受任可

応募方法
メールまたはお電話でご連絡ください。
残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
ITJ法律事務所 採用担当宛
email:[email protected]

71期修習生 72期修習生 求人
修習生の事務所訪問歓迎しております。

ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
その他 明るく楽しい職場です。
シフトは週40時間以上
ロースクール生歓迎
経験不問です。

応募方法
写真付きの履歴書を以下の住所までお送り下さい。
履歴書の返送はいたしませんのであしからずご了承下さい。
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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