弁護士法人ITJ法律事務所

裁判例


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         主    文
     各被告人に対する原判決及び第一審判決中の各有罪部分を破棄する。
     被告人Aを懲役四月に同Bを懲役六月に処する。
     但し被告人両名に対し本裁判確定の日から三年間右各刑の執行を猶予す
る。
     領置にかかる納入書一通(領第八六号の証第七の一号)は被告人Aから
これを没収する。
     本件公訴事実中物価統制令違反の点について各被告人を免訴する。
     第一審における訴訟費用中証人C、同Dに支給した分及び当審における
訴訟費用は全部被告人両名の連帯負担とする。
         理    由
 被告人Aの弁護人小室薫の上告趣意について。
 物価統制令違反の罪については後に述べるように大赦があつたから、この点に関
する論旨に対しては判断を省略する。論旨はその余の事実に関しても判例違反を主
張しているが、その判例を具体的に示していないから適法な上告理由とならない。
 被告人Bの弁護人渡部信男の上告趣意第一について。
 論旨は大赦のあつた犯罪事実に関するものであるから、これに対する判断を省略
する。
 同第二について。
 論旨は採証法則違背を理由とする事実誤認の主張に帰するから適法な上告理由と
ならない。
 同第三について。
 憲法三八条一項の法意は、威力その他特別の手段を用いて供述する意思のない被
告人に供述を余儀なくすることを禁ずる趣旨であること、当裁判所の判例(昭和二
三年(れ)第一〇一〇号同二四年二月九日大法廷判決)とするところである。原判
決が、共犯者AのためにEを教唆して証慧の偽造をなさしめた被告人の所為を刑法
一〇四条に触れるものとして、第一審判決を維持したことは、所論のように右の憲
法の条項に違反するものでないこと、前掲の判例に照らして明らかである。論旨は
理由がない。
 しかし職権で調査すると本件公訴事実中物価統制令違反の点については昭和二七
年政令第一一七号大赦令により大赦があつたから刑訴四一一条五号、四一三条但書
により各被告人に対する原判決及び第一審判決中の各有罪部分を破棄し更に当裁判
所において自ら判決をすることとし右公訴事実については同三三七条三号により各
被告人に対し免訴の言渡をなすべきものとする。
 なお第一審判決が確定した右免訴にかからないその余の事実に法律を適用すると
被告人等の所為は各刑法一〇四条六一条一項、罰金等臨時措置法二条三条一号に該
当するから所定刑中各懲役刑を選択しその所定刑期範囲内で被告人Aを懲役四月に
同Bを懲役六月に処し諸般の情状に鑑み刑法二五条により被告人両名に対し本裁判
確定の日から三年間右各刑の執行を猶予することとし、なお領置にかかる納入書一
通(領第八六号の証第七の一号)は被告人Aの犯罪より生じ且つ犯人以外の者に属
しないから同法一九条一項三号二項により同被告人からこれを没収し訴訟費用の負
担については刑訴一八一条一項一八二条を適用し主文のとおり判決する。
 この裁判は裁判官全員一致の意見によるものである。
 検察官 大津民蔵出席
  昭和二八年三月一〇日
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    井   上       登
            裁判官    島           保
            裁判官    河   村   又   介
            裁判官    小   林   俊   三
            裁判官    本   村   善 太 郎

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