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平成18年3月29日判決言渡し
平成16年(行ウ)第71号PCB処理施設設置許可処分取消請求事件
判決
主文
1原告らの請求をいずれも棄却する。
2訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第1原告らの請求
被告が日本車輌製造株式会社に対して平成16年8月13日付けでした別紙処
分目録1,2記載の各産業廃棄物処理施設設置許可処分をいずれも取り消す。
第2事案の概要
本件は,被告が,廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下,条文を示すとき
は「法」といい,法律名を示すときは「廃棄物処理法」という。)15条1項に
基づき,日本車輌製造株式会社(以下「日本車輌」という。)に対して,廃棄物
処理法施行令(以下「施行令」という。)7条12号の2及び13号に規定する
別紙処分目録1,2記載の各産業廃棄物処理施設(廃ポリ塩化ビフェニル等又は
ポリ塩化ビフェニル処理物の分解施設及びポリ塩化ビフェニル処理物の洗浄施
設)設置許可処分をしたところ,同施設設置予定地の愛知県半田市内に居住する
原告らが,その生命,健康等に重大な悪影響を受けるおそれがあるなどと主張し
て,これらの取消しを求めた抗告訴訟である。
1前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に認められる事実)
(1)当事者
ア原告ら
原告らは,いずれも半田市内に居住する住民である。
イ被告
被告は,法15条に基づき産業廃棄物処理施設の設置許可処分を行う権
限を有する行政庁である。
ウ日本車輌(乙19)
日本車輌は,名古屋市熱田区●●町●番●号に本店を置く株式会社であ
り,愛知県半田市●●号地●番に衣浦製作所を設置している。
(2)ポリ塩化ビフェニルの概要(乙57)
アポリ塩化ビフェニルの性状とその用途
ポリ塩化ビフェニル(。以下,その略称であるPolyChlorinatedBiphenyl
「PCB」ともいう。)は,ベンゼン環2個に多数の塩素()が水素()ClH
と置換して結合している化学物質の総称であり,理論上は209種類の異
性体が存在するとされている。
PCBは,主に油状を呈した物質であり,①水に極めて溶けにくい,②
沸点が高い,③熱で分解しにくい,④不燃性,⑤電気絶縁性が高い,⑥化
学的に安定しているなどの性質を有するため,電気機器の絶縁油,熱交換
機の熱媒体,ノーカーボン紙等の様々な用途で使用され,かつての高圧ト
ランスや高圧コンデンサは,その内部がPCB油やPCB油とトリクロロ
ベンゼンの混合液で満たされていた。
イPCBの毒性
しかし,PCBは,次第にその毒性が明らかになり,その後の研究の結
果,現在では,脂肪に溶けやすいという性質から,慢性的な摂取により体
内で徐々に蓄積され,目やに,色素沈下,座瘡皮疹(塩素ニキビ),爪の
変形,瞼や関節の腫れ等の中毒症状を引き起こし,長期的又は大量に摂取
した場合は,肝機能障害,手足のしびれや末梢神経系の異常,ホルモンの
機能異常などの慢性影響があると報告されている。
ウPCBに対する規制
このようにPCBの毒性が明らかになってきたことから,我が国では,
昭和40年代からその規制が始まり,現在では製造・輸入ともに禁止され
ている。また,これまでに使用されてきたPCBについては,外部に漏出
しないよう,密閉するなどして保管することが義務付けられている。
国内におけるPCBの総量については,約5万4000トンが使用され,
その約7割近くが高圧トランス,高圧コンデンサ等に用いられていたとさ
れており,これら高圧トランス,高圧コンデンサのうち,現在も約22万
台程度が処理されることなく保管されているとされている。これらについ
ては,ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法
(以下「PCB特措法」という。)10条,同法施行令3条により,同法
の施行日である平成13年7月15日から起算して15年(平成28年)
までに処分すべきことが定められている。
(3)ダイオキシン類の概要(甲72,97,乙29,57)
アダイオキシン類の種類等
ダイオキシン類とは,一般には,ポリ塩化ジベンゾ−パラ−ジオキシン
(。以下「PCDD」という。)とポPolyChlorinatedDibenzo-para-Dioxin
リ塩化ジベンゾフラン(。以下「PCDPolyChlorinatedDibenzoFuran
CoplanarPolyF」という。)の総称であり,コプラナーPCB(
)のようなダイオキシン類と同様の毒性を示す物質をChlorinatedBiphenyl
ダイオキシン類似化合物と呼んでいる。
我が国では,かつてはPCDDとPCDFをダイオキシン類として規制
の対象としていたが,平成12年1月15日に施行されたダイオキシン類
対策特別措置法(以下「ダイオキシン類特措法」という。)によって,コ
プラナーPCBもダイオキシン類として定義され,規制の対象に含められ
た(2条1項)。
イダイオキシン類の性状等
ダイオキシン類は,基本的には炭素で構成される2個のベンゼン環が酸
素()で結合するなどし,それに塩素()が付いた構造をしている。OCl
PCDDは75種類,PCDFは135種類,コプラナーPCBは13種
類,合計223種類の異性体があり,そのうちの29種類に毒性があると
みなされている。
ダイオキシン類の毒性の強さは,毒性等価量(。ToxicEquivalentQuantity
以下「TEQ」という。)で表すこととされている。すなわち,ダイオキ
シン類の毒性の最も強いPCDDのうち2,3,7及び8の位置に塩素が
付いた四塩化ジベンゾパラジオキシンの毒性を1とし,これを基にして他
Toxicのダイオキシン類の毒性の強さを換算した係数を毒性等価係数(
)といい,これに各異性体量を乗じた数値の合計であるEquivalencyFactor
TEQをもって,ダイオキシン類の毒性の強さを表している。
ダイオキシン類は,通常は無色の固体で水に溶けにくく,蒸発しにくい
反面,他の化学物質や酸,アルカリにも簡単に反応せず,安定した状態を
保つことが多いとされているが,太陽光の紫外線で徐々に分解されるとい
われている。
ダイオキシン類の生体に対する毒性は,他の有毒物質と比較して極めて
強く,ごく微量であっても大きな影響を与えるといわれているところ,こ
れを大別すると急性毒性と慢性毒性に分けられる。前者の症状としては,
甲状腺機能喪失による遅延性致死毒性のほか,胸腺萎縮,脾臓萎縮,肝臓
障害,生殖障害などが挙げられ,後者の症状としては,軟組織肉腫,リン
パ腫,肺がんなどの発がん性が注目されているが,これらの実態や機序に
ついては,なお不明な点も多いとされている。
ウダイオキシン類の発生原因等
ダイオキシン類は,炭素,酸素,水素及び塩素が熱せられる過程で生成
されるため,森林火災や火山の噴火などが原因となって,自然界において
も微量ながら存在する。
人間活動が盛んになった現代においては,殺菌剤,除草剤であるフェノ
ール系化合物の製造の際の副生物,PCB製造過程における副生物,PC
Bの熱反応による生成,炭素を含む有機物質や可燃性塩素を含むごみ焼却
による生成等の様々な発生源が指摘されており,食物連鎖により生物に蓄
積されると考えられている。
(4)日本車輌による気相水素還元法に関する実証試験の実施(甲8,10,
74,106の1・2,107,108,114の1ないし4,乙36の
1)
ア実証試験の目的・概要等
日本車輌は,平成9年11月11日付けで,カナダのエコ・ロジック・
インターナショナル社から,「気相水素還元法による難分解性有機化合物
処理のプロセス」のシステム技術を導入したが,日本国内で同システムを
用いてPCBの処理を行うためには,監督官庁(環境庁,通商産業省,厚
生省。ただし,いずれも当時。以下同じ。)による処理設備の認定を取得
する必要があった。
そのため,日本車輌は,平成10年3月,日本車輌の豊川製作所内にお
いて,カナダから輸入した実証試験機を使用して,①低濃度PCB汚染油,
②高濃度PCB汚染油,③PCB汚染トランス,④PCB汚染土砂につい
て,それぞれ2回ずつ実証試験を実施することを計画し,同月18日,豊
川市に対して同計画書を提出し,受理された。
イ日本車輌による実証試験の実施
日本車輌は,①平成10年7月28日,30日に低濃度PCB汚染油に
つき,②同年8月3日,5日に高濃度PCB汚染油につき,③同月20日,
21日にPCB汚染土砂につき,④同年9月1日,7日にPCB汚染トラ
ンスにつき,それぞれ気相水素還元法を用いた処理の実証試験を合計8回
にわたって実施した(以下,これらを総称して「本件実証試験」とい
う。)。
ウ試料の分析と結果
日本車輌は,本件実証試験の各試料を株式会社島津テクノリサーチ(以
下「島津テクノリサーチ」という。)に引き渡し,分析を依頼した。
日本車輌は,上記分析結果を基に,平成10年12月付け「難分解性有
機化合物の化学処理に関する気相水素還元法実証試験報告書」を取りまと
め,豊川市及び通商産業省の「難分解性有機化合物処理技術検討評価委員
会」(以下「検討評価委員会」という。)に提出した。
検討評価委員会は,本件実証試験に係る気相水素還元法について技術評
価をした上で,平成11年5月,通商産業省(環境立地局環境指導室)に
対して平成10年度実証試験成果報告書を提出した(この実証試験成果報
告書を受けて,還元熱化学分解方式(気相水素還元方式が含まれる方式)
が廃棄物処理法施行規則で新たなPCB処理技術として認められることと
なった。)。
(5)日本車輌によるPCB廃棄物処理施設の設置許可申請に至る経緯
ア日本車輌による設置計画書の提出等(甲1,乙5)
日本車輌は,平成15年3月17日付けで,愛知県PCB廃棄物処理施
設設置等指導要綱(以下「旧要綱」という。)第7の1に基づき,被告に
対し,衣浦製作所内に廃PCB等,PCB汚染物及びPCB処理物の分解
施設を設置することを内容とするPCB廃棄物処理施設設置等計画書(以
下「本件計画書」といい,これに記載されたPCB処理施設を「本件計画
施設」という。)を提出した。
これを受けた被告は,同月28日付で,旧要綱第7の2に基づき,上記
計画書の写しを,関係市町村長である半田市長に送付した。
イ本件計画書に対する照会等(甲11,58,89,乙6,7)
被告(愛知県環境部長)は,平成15年5月7日付け照会書により,日
本車輌に対し,本件計画施設の性質,PCBの分解処理能力,排気装置及
び排水処理設備等の安全対策等について8項目の疑義があるとして,36
2小項目に及ぶ疑義事項について回答するよう求めた。
これに対し,日本車輌は,同月21日,上記疑義事項について回答した。
ウ日本車輌による住民説明会の開催
(ア)旧要綱に基づく住民説明会の開催(甲95の2,105,乙8,1
1)
日本車輌は,旧要綱第8の1に基づき,本件計画書提出後の平成15
年6月13日から同年8月10日までの間,半田市成岩地区,乙川地区,
半田地区,亀崎地区及び半田市全域を対象として,合計6回(同年6月
13日,同月16日,同月17日,同月18日,8月9日及び同月10
日),本件計画施設に関する住民説明会を開催した。
(イ)本件条例に基づく住民説明会の開催(乙8ないし11)
日本車輌は,平成15年12月24日,被告に対し,廃棄物の適正な
処理の促進に関する条例(平成15年愛知県条例第2号。以下「本件条
例」という。)9条2項に基づき,本件条例9条1項所定の関係地域を
半田市全域として,平成16年1月17日に住民説明会を開催する予定
であること,更にこれまで旧要綱に基づいて開催してきた住民説明会の
日時・場所等を記載した住民説明会開催届出書を提出した。
被告は,廃棄物の適正な処理の促進に関する条例施行規則(以下「本
件条例施行規則」という。)11条4項に基づき,半田市長の意見を聴
いた上,平成16年1月8日付けで,日本車輌に対し,上記届出書のと
おり住民説明会を実施するよう回答した。
日本車輌は,同月17日,半田市全域を対象とする住民説明会を開催
し,同月30日,本件条例施行規則12条1項に基づき,被告に対し,
その状況を報告した。
(ウ)住民説明会の終了(乙12,13)
被告は,日本車輌から住民説明会の状況報告書の提出を受けたことか
ら,平成16年2月10日,本件条例施行規則12条2項に基づき,半
田市長の意見を聴いた上,日本車輌に対し,平成15年6月13日から
平成16年1月17日までに延べ7回の住民説明会が開催されたところ,
依然として一部住民に安全性に対する危惧や意見があるため,今後とも
衣浦製作所に設けられた衣浦準備室における説明や個別の説明の実施な
どによって誠実に対応されたい旨通知した。
エ日本車輌による修正計画書の提出(甲64ないし67,乙14ないし1
8)
被告は,平成16年3月29日,旧要綱第9に基づき,日本車輌に対し,
本件計画書に対する半田市長及び関係住民の意見に適切に対応し,その結
果を文書で回答すべきことを通知した。
日本車輌は,同月30日,上記通知(意見)を受け,被告に対し,旧要
綱第10の1に基づき,PCBの収集・運搬,施設の管理・運営,地域住
民への安全配慮,情報公開などの点について回答するとともに,同日,旧
要綱第10の4に基づいて本件計画書を一部修正した「PCB廃棄物処理
施設設置等修正計画書」を提出した(以下「本件修正計画書」という。)。
被告は,同日,半田市長に対し,旧要綱第11の2に基づき本件修正計
画書の写しを送付するとともに,本件修正計画書の当否を検討した結果,
法15条1項の規定に基づく申請の形式的要件を具備しているものと判断
し,日本車輌に対し,その旨通知した。
(6)日本車輌によるPCB廃棄物処理施設の設置許可申請とそれに伴う手続
ア日本車輌による設置許可申請(甲2,3,乙19)
日本車輌は,上記通知を受けたことから,平成16年3月31日,被告
に対し,法15条1項に基づき,同社の衣浦製作所内に以下の(ア),(イ)
のとおりの施設(以下,それぞれ「本件分解施設」,「本件洗浄施設」と
いい,これらを併せて「本件各施設」という。)を設置することの許可申
請をした(以下,本件分解施設に係る許可申請を「本件分解施設設置許可
申請」,本件洗浄施設に係る許可申請を「本件洗浄施設設置許可申請」,
これらを併せて「本件各許可申請」といい,これらの申請書をそれぞれの
申請に対応して「本件各許可申請書」などという。)。
(ア)廃PCB等の分解施設
a産業廃棄物処理施設の種類
施行令7条12号の2に規定する「廃ポリ塩化ビフェニル等(ポリ
塩化ビフェニル汚染物に塗布され,染み込み,付着し,又は封入され
たポリ塩化ビフェニルを含む。)又はポリ塩化ビフェニル処理物の分
解施設」
b処理する産業廃棄物の種類
廃PCB等,PCB汚染物及びPCB処理物
c処理能力
1日(24時間)当たり3.456トン,1時間当たり0.144
トン
d施設の処理方式
還元熱化学分解方式(気相水素還元法)
e処理に伴い生ずる排ガス及び排水
hr排ガス:最大6987立方メートルN/
排水:最大36立方メートル/日
(イ)PCB汚染物等の洗浄施設
a産業廃棄物処理施設の種類
施行令7条13号「ポリ塩化ビフェニル汚染物又はポリ塩化ビフェ
ニル処理物の洗浄施設」
b処理する産業廃棄物の種類
PCB処理物
c施設の処理方式
1日(24時間)当たり3トン,1時間当たり0.125トン
d処理の方式
洗浄法
e処理に伴い生ずる排ガス及び排水
hr排ガス:最大6987立方メートルN/
排水:最大36立方メートル/日
イ本件各許可申請書等の縦覧(甲77,93,102,乙20,32,3
4,50)
被告は,平成16年4月16日付け愛知県公報により,同日から同年5
月17日までの間,法15条4項に基づき,本件各許可申請書及びこれに
添付された生活環境影響調査書を縦覧に供すること,利害関係者は,被告
に対し,同年4月16日から同年5月31日までの間,生活環境の保全上
の見地から意見書を提出することができることを告示した(愛知県告示第
387号)。
ウ半田市長等の意見(甲30,乙21)
被告は,平成16年4月8日付けで,法15条5項に基づき,半田市長
に対し,生活環境の保全上の見地からの意見を求めたところ,半田市長は,
同年5月17日付けで,生活環境保全上,被告が日本車輌に対し,事業全
般にわたる安全対策上の指導をするよう求めるとともに,収集運搬時の安
全性の確保,処理時の安全性の確保,情報公開,補償等10項目の詳細事
項を記載した意見書を提出した。
また,原告A(以下「原告A」という。)は,平成16年5月31日付
けで,愛知県(被告)に対し,本件各施設の設置を批判する立場からの意
見書を提出した。
(7)愛知県廃棄物処理施設審査会による審査
ア被告による審査依頼(乙22)
被告は,本件各許可申請書の提出を受け,法15条の2第3項に基づき,
生活環境の保全に関し,専門的知識を有する者の意見を聴くため,平成1
6年4月14日,大学教授らによって構成される愛知県廃棄物処理施設審
査会(以下「審査会」という。)に対し,日本車輌の本件許可申請に係る
施設設置計画及び生活環境影響調査書の審査を依頼した。
イ審査会による審査の実施(甲9,12の1ないし3,14の1・2,3
2,121,乙37,39,52ないし57)
審査会は,平成16年4月22日を皮切りに,同年5月6日,同月18
日,同年6月10日,同月22日,同年7月8日,同月22日及び同年8
月5日の合計8回にわたって審査会議を開き,①事業計画,生活環境影響
調査書等の説明,②現地調査,③施設の構造等基準適合状況及び事業計画
等に関する疑義事項についての審査,④日本車輌の半田市長及び利害関係
者の意見に対する見解の審査,⑤日本車輌の利害関係者の意見(補足説
明)に対する見解の審査等を実施した。
ウ審査会の意見(乙22)
審査会は,平成16年8月5日,審査の結果,日本車輌の本件各許可申
請に係る施設の設置計画及び維持管理計画は,廃棄物処理法の定める技術
上の基準に適合し,同法の定める周辺地域の生活環境の保全及び周辺の施
設について適正な配慮がなされたものであると認められるとの意見を取り
まとめ,被告に報告した。
(8)本件各許可申請に対する許可(甲4,5,乙23の1・2,60)
被告は,平成16年8月13日,審査会から上記報告を受けて,日本車輌
に対し,別紙処分目録1,2記載のとおり,本件各許可申請につき許可する
との処分を行った(以下,本件分解施設設置許可申請に対する許可を「本件
分解施設設置許可処分」,本件洗浄施設設置許可申請に対する許可を「本件
洗浄施設設置許可処分」といい,両者を併せて「本件各許可処分」とい
う。)。
日本車輌は,平成17年10月21日,被告に対し,本件各施設の窒素発
生器,貯留タンクの構造及び排水処理装置について,最終的な仕様が確定し
たことに伴い,本件各許可申請書記載の計画の一部が変更されたとして,被
告に対し,法15条の2の5第3項,9条3項に基づく産業廃棄物処理施設
軽微変更等届出書を提出した。
(9)本件各施設の概要
ア本件分解施設について
(ア)本件分解施設において採用されたPCBの処理方法(気相水素還元
法。甲117,132)
本件分解施設は,廃PCB等,PCB汚染物及びPCB処理物を,気
相水素還元法によって処理する施設である。
気相水素還元法とは,カナダのエコ・ロジック・インターナショナル
社が開発したPCB等やダイオキシン類などの難分解性有機化合物を処
理する技術であり,還元熱化学分解方式の設備を用いて熱化学反応によ
りPCBを分解する方法の一つとして,「特別管理一般廃棄物及び特別
管理産業廃棄物の処分又は再生の方法として環境大臣が定める方法」
(平成4年厚生省告示第194号)に定められた処理方法であり,有機
化合物を,無酸素水素雰囲気中,常圧下で850度以上に加熱し,触媒
を用いることなくPCBを分解,脱塩素する還元反応を利用するもので
ある。
その特色として,液状物だけでなく固形物の処理も可能であること,
反応に触媒を利用せず,新たなPCB廃棄物は発生しないこと,分解効
率が高いこと,濃度にかかわらず希釈を行うことなく処理が可能である
こと,すべて気相で処理するため,有機物の残さはほぼゼロとなること
などが挙げられている。
(イ)本件分解施設における処理の概要
a処理対象物(甲122)
本件分解施設で処理する対象物は,PCBに汚染された油,高圧・
低圧コンデンサ,高圧・低圧トランス,蛍光灯,水銀灯安定器,ウエ
ス,土砂・汚泥,廃感圧紙,コンクリート,保護具,活性炭,洗浄水
・溶剤その他の物である。
b処理工程の概要(甲6,7の1,59,122)
(a)受入れ工程
処理の対象物となる廃PCB等(PCB廃油など)及びPCB汚
染物(トランス,コンデンサなど)を受け入れ,保管する。他方,
反応薬剤等(水素,窒素,二酸化炭素,都市ガス,水酸化ナトリウ
ム)も受け入れ,保管する。
(b)前処理工程
PCB油が封入されていたトランス,コンデンサ等(トランス
類)から内部液(PCB油)を抜き取った後,切断,穿孔,解体し,
容器残留PCBを処理するため,固形物用蒸発設備に投入する。
また,PCB廃油は,トランス類から抜き取られた内部液(PC
B油)とともに,液体蒸発設備へ供給される。
(c)分解反応工程
固形物用蒸発設備では,加熱してトランス類に付着した残余PC
Bを蒸発させる。また,液体蒸発設備でも,PCB廃油を蒸発させ
る。そして,蒸発したPCBを反応器設備に送り込み,850度の
高温の水素雰囲気中で還元分解する(ここで気相水素還元法が用い
られる。)。
この還元反応により生成されたガスは,スクラバ設備に移送され
る。
(d)除去工程
生成ガスは,スクラバ設備で急冷・洗浄され,スクラバ水は排水
処理される。
(e)後処理工程
スクラバ設備を出た生成ガスは,生成ガス圧縮設備で圧縮され,
生成ガス貯留設備(生成ガスタンク)に貯められる。
(f)払出し工程
生成ガス貯留設備(生成ガスタンク)に貯められた生成ガスから
還元剤として再利用するため水素が回収され,残ったガスはオフガ
スタンクに貯められ,成分分析を経た後,燃料として反応器設備で
再利用される。
除染済廃棄物や処理水も,貯留後に払出しされる。
イ本件洗浄施設
PCBが付着していたトランス類であって蒸発処理を終えたものを,溶
剤(アサヒクリンAK−225)を用いて洗浄する。
(10)原告らによる訴え提起
原告らを含む7名は,平成16年10月29日,当裁判所に対し,本件各
許可処分の無効確認を求めて訴えを提起し(当庁平成16年(行ウ)第68
号事件),さらに,原告らを含む34名は,同年11月12日,本件各許可
処分の取消しを求めて訴えを提起した(本訴)ところ,両事件は併合された。
その後,本件各許可処分の無効確認を求める訴えは取下げとなり,さらに,
本訴についても,原告ら以外の者は訴えを取り下げている。
2関係法令等の要旨ないし抜粋
(1)廃棄物処理法
(産業廃棄物処理施設)
15条産業廃棄物処理施設(廃プラスチック類処理施設,産業廃棄物の最
終処分場その他の産業廃棄物の処理施設で政令で定めるものをいう。以
下同じ。)を設置しようとする者は,当該産業廃棄物処理施設を設置し
ようとする地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。
2項前項の許可を受けようとする者は,環境省令で定めるところにより,
次に掲げる事項を記載した申請書を提出しなければならない。
(中略)
6産業廃棄物処理施設の位置,構造等の設置に関する計画
7産業廃棄物処理施設の維持管理に関する計画
(中略)
3項前項の申請書には,環境省令で定めるところにより,当該産業廃棄
物処理施設を設置することが周辺地域の生活環境に及ぼす影響について
の調査の結果を記載した書類を添付しなければならない。
4項都道府県知事は,産業廃棄物処理施設(略)について第1項の許可
の申請があつた場合には,遅滞なく,第2項第1号から第4号までに掲
げる事項,申請年月日及び縦覧場所を告示するとともに,同項の申請書
及び前項の書類(略)を当該告示の日から1月間公衆の縦覧に供しなけ
ればならない。
5項都道府県知事は,前項の規定による告示をしたときは,遅滞なく,
その旨を当該産業廃棄物処理施設の設置に関し生活環境の保全上関係が
ある市町村の長に通知し,期間を指定して当該市町村長の生活環境の保
全上の見地からの意見を聴かなければならない。
6項第4項の規定による告示があつたときは,当該産業廃棄物処理施設
の設置に関し利害関係を有する者は,同項の縦覧期間満了の日の翌日か
ら起算して2週間を経過する日までに,当該都道府県知事に生活環境の
保全上の見地からの意見書を提出することができる。
(許可の基準等)
15条の2都道府県知事は,前条第1項の許可の申請が次の各号のいずれ
にも適合していると認めるときでなければ,同項の許可をしてはならな
い。
1その産業廃棄物処理施設の設置に関する計画が環境省令で定める技
術上の基準に適合していること。
2その産業廃棄物処理施設の設置に関する計画及び維持管理に関する
計画が当該産業廃棄物処理施設に係る周辺地域の生活環境の保全及び
環境省令で定める周辺の施設について適正な配慮がなされたものであ
ること。
3申請者の能力がその産業廃棄物処理施設の設置に関する計画及び維
持管理に関する計画に従って当該産業廃棄物処理施設の設置及び維持
管理を的確に,かつ,継続して行うに足りるものとして環境省令で定
める基準に適合するものであること。
4申請者が,第14条第5項第2号イからヘまでのいずれにも該当し
ないこと。
2項都道府県知事は,前条第1項の許可の申請に係る産業廃棄物処理施
設の設置によつて,ごみ処理施設又は産業廃棄物処理施設の過度の集中
により大気環境基準の確保が困難となると認めるときは,同項の許可を
しないことができる。
3項都道府県知事は,前条第1項の許可(略)をする場合においては,
あらかじめ,第1項第2号に掲げる事項について,生活環境の保全に関
し環境省令で定める事項について専門的知識を有する者の意見を聴かな
ければならない。
4項前条第1項の許可には,生活環境の保全上必要な条件を付すること
ができる。
(以下略)
(産業廃棄物処理施設の維持管理)
15条の2の2産業廃棄物処理施設の設置者は,環境省令で定める技術上
の基準及び当該産業廃棄物処理施設の許可に係る第15条第2項の申請
書に記載した維持管理に関する計画(略)に従い,当該産業廃棄物処理
施設の維持管理をしなければならない。
(改善命令等)
15条の2の6都道府県知事は,次の各号のいずれかに該当するときは,
産業廃棄物処理施設の設置者に対し,期限を定めて当該産業廃棄物処理
施設につき必要な改善を命じ,又は期間を定めて当該産業廃棄物処理施
設の使用の停止を命ずることができる。
1第15条第1項の許可に係る産業廃棄物処理施設の構造又はその維
持管理が第15条の2第1項第1号若しくは第15条の2の2に規定
する技術上の基準又は当該産業廃棄物処理施設の許可に係る第15条
第2項の申請書に記載した設置に関する計画若しくは維持管理に関す
る計画(略)に適合していないと認めるとき。
(以下略)
(許可の取消し)
15条の3都道府県知事は,次の各号のいずれかに該当するときは,当該
産業廃棄物処理施設に係る第15条第1項の許可を取り消さなければな
らない。
(中略)
2項都道府県知事は,前条第1号,第2号又は第4号のいずれかに該当
するときは,当該産業廃棄物処理施設に係る第15条第1項の許可を取
り消すことができる。
(2)PCB特措法
PCB特措法は,PCBが難分解性の性状を有し,かつ,人の健康及び生
活環境に係る被害を生ずるおそれがある物質であること並びに我が国におい
てPCB廃棄物が長期にわたり処分されていない状況にあることにかんがみ,
PCB廃棄物の保管,処分等について,必要な規制等を行うとともに,PC
B廃棄物の処理のための必要な体制を速やかに整備することにより,その確
実かつ適正な処理を推進し,もって国民の健康の保護及び生活環境の保全を
図ることを目的とするもので,廃棄物処理法の特別法として位置づけられて
いる(1条1項,2項)。
同法によれば,環境大臣は,PCB廃棄物の確実かつ適正な処理を総合的
かつ計画的に推進するための基本的な計画(PCB廃棄物処理基本計画)を
定めなければならず(6条),都道府県等は,PCB廃棄物処理基本計画等
に即して,その区域内におけるPCB廃棄物の確実かつ適正な処理に関する
計画(PCB廃棄物処理計画)を定めなければならず(7条),事業者及び
PCB廃棄物を処分しようとする者は,PCB廃棄物の管理,処分状況を,
都道府県知事に届け出なければならず(8条),都道府県知事は,その保管
及び処分の状況を公表することとされ(9条),また,事業者は,PCB廃
棄物を自ら処分し,又は処分を他人に委託して,同法の施行日である平成1
3年7月15日から15年(PCB特措法施行令3条)内に処分することが
義務付けられている(10条)。
(3)廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(以下「施行令」という。)
(特別管理産業廃棄物)
2条の4法第2条第5項(ダイオキシン類対策特別措置法第24条第2項
の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の政令で定める産業廃棄
物は,次のとおりとする。
(中略)
5特定有害産業廃棄物(次に掲げる廃棄物をいう。以下同じ。)
イ廃ポリ塩化ビフェニル等(廃ポリ塩化ビフェニル及びポリ塩化ビフ
ェニルを含む廃油をいう。以下同じ。)
ロポリ塩化ビフェニル汚染物(次に掲げるものをいう。以下同じ。)
(1)汚泥(略)のうち,ポリ塩化ビフェニルが染み込んだもの
(略)
(2)紙くず(略)のうち,ポリ塩化ビフェニルが塗布され,又は染
み込んだもの
(3)木くず(略)のうち,ポリ塩化ビフェニルが染み込んだもの
(4)繊維くず(略)のうち,ポリ塩化ビフェニルが染み込んだもの
(5)廃プラスチック類(略)のうち,ポリ塩化ビフェニルが付着し,
又は封入されたもの
(6)金属くず(略)のうち,ポリ塩化ビフェニルが付着し,又は封
入されたもの
(7)陶磁器くず(略)のうち,ポリ塩化ビフェニルが付着したもの
(8)工作物の新築,改築又は除去に伴つて生じたコンクリートの破
片その他これに類する不要物(略)のうち,ポリ塩化ビフェニルが
付着したもの
ハポリ塩化ビフェニル処理物(廃ポリ塩化ビフェニル等又はポリ塩化
ビフェニル汚染物を処分するために処理したもの(略)をいう。以下
同じ。)
(以下略)
(産業廃棄物処理施設)
7条法第15条第1項の政令で定める産業廃棄物の処理施設は,次のとお
りとする。
(中略)
12の2廃ポリ塩化ビフェニル等(ポリ塩化ビフェニル汚染物に塗布さ
れ,染み込み,付着し,又は封入されたポリ塩化ビフェニルを含む。)
又はポリ塩化ビフェニル処理物の分解施設
13ポリ塩化ビフェニル汚染物又はポリ塩化ビフェニル処理物の洗浄施
設又は分離施設
(以下略)
(4)廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(以下「施行規則」とい
う。)
(令第2条の4の環境省令で定める基準等)
1条の2
(中略)
4項令第2条の4第5号ハのポリ塩化ビフェニル処理物に係る環境省令
で定める基準は,廃ポリ塩化ビフェニル等又はポリ塩化ビフェニル汚染
物を処分するために処理したものについて,当該処理したものが,廃油
の場合は当該廃油に含まれるポリ塩化ビフェニルの量が試料1キログラ
ムにつき0.5ミリグラム以下であることとし,廃酸又は廃アルカリの
場合は当該廃酸又は廃アルカリに含まれるポリ塩化ビフェニルの量が試
料1リットルにつき0.03ミリグラム以下であることとし,廃プラス
チック類又は金属くずの場合は当該廃プラスチック類又は金属くずにポ
リ塩化ビフェニルが付着していない,又は封入されていないこととし,
陶磁器くずの場合は当該陶磁器くずにポリ塩化ビフェニルが付着してい
ないこととし,廃油,廃酸,廃アルカリ,廃プラスチック類,金属くず
又は陶磁器くず以外の場合は当該処理したものに含まれるポリ塩化ビフ
ェニルの量が検液1リットルにつき0.003ミリグラム以下であるこ
ととする。
(中略)
53項第2項から第6項まで……に掲げる基準は,環境大臣が定める方
法により検定した場合における検出値によるものとする。
(産業廃棄物処理施設の設置の許可の申請)
11条
1項法第15条第2項の申請書は,様式第18号によるものとする。
2項前項の申請書に法第15条第2項第6号の産業廃棄物処理施設の位
置,構造等の設置に関する計画に係る事項として記載すべきものは,次
のとおりとする。
1産業廃棄物処理施設の位置
2産業廃棄物処理施設の処理方式
3産業廃棄物処理施設の構造及び設備
4処理に伴い生ずる排ガス及び排水の量及び処理方法(略)
5設計計算上達成することができる排ガスの性状,放流水の水質その
他の生活環境への負荷に関する数値
6その他産業廃棄物処理施設の構造等に関する事項
3項第1項の申請書に法第15条第2項第7号の産業廃棄物処理施設の
維持管理に関する計画に係る事項として記載すべきものは,次のとおり
とする。
1排ガスの性状,放流水の水質等について周辺地域の生活環境の保全
のため達成することとした数値
2排ガスの性状及び放流水の水質の測定頻度に関する事項
3その他産業廃棄物処理施設の維持管理に関する事項
(以下略)
(産業廃棄物処理施設の技術上の基準)
12条法第15条の2第1項第1号(略)の規定による産業廃棄物処理施
設(略)のすべてに共通する技術上の基準は,次のとおりとする。
1自重,積載荷重その他の荷重,地震力及び温度応力に対して構造耐
力上安全であること。
2削除
3産業廃棄物,産業廃棄物の処理に伴い生ずる排ガス及び排水,施設
において使用する薬剤等による腐食を防止するために必要な措置が講
じられていること。
4産業廃棄物の飛散及び流出並びに悪臭の発散を防止するために必要
な構造のものであり,又は必要な設備が設けられていること。
5著しい騒音及び振動を発生し,周囲の生活環境を損なわないもので
あること。
6施設から排水を放流する場合は,その水質を生活環境保全上の支障
が生じないものとするために必要な排水処理設備が設けられているこ
と。
7産業廃棄物の受入設備及び処理された産業廃棄物の貯留設備は,施
設の処理能力に応じ,十分な容量を有するものであること。
12条の2法15条の2第1項第1号の規定による産業廃棄物処理施設の
技術上の基準は,前条に定めるもののほか,この条の定めるところによ
る。
(中略)
13項令第7条第12号の2に掲げる施設(ポリ塩化ビフェニル汚染物
に塗布され,染み込み,付着し,又は封入されたポリ塩化ビフェニルの
分解施設(以下「ポリ塩化ビフェニル汚染物分解施設」という。)を除
く。)の技術上の基準は,次のとおりとする。
1事故時における受入設備,反応設備等からの廃油,廃酸及び廃アル
カリの流出を防止するために必要な流出防止堤その他の設備が設けら
れ,かつ,当該施設が設置される床又は地盤面は,廃油,廃酸及び廃
アルカリが浸透しない材料で築造され,又は被覆されていること。
(中略)
5還元熱化学分解方式の設備にあつては,次によること。
イ外気と遮断された状態で,廃ポリ塩化ビフェニル等又はポリ塩化
ビフェニル処理物を反応設備に投入することができる供給設備が設
けられていること。
ロ次の要件を備えた反応設備が設けられていること。
(1)高温に耐え,かつ,腐食を防止するために必要な措置が講じ
られていること。
(中略)
(3)外気と遮断されたものであること。
(4)反応に必要な薬剤として用いられるガスの供給装置が設けら
れていること。
(5)爆発を防止するために必要な措置が講じられていること。
(6)反応設備内の温度,圧力及び反応に必要な薬剤として用いら
れるガスの供給量を連続的に測定し,かつ,記録するための装置
が設けられていること。
ハ次の要件を備えた除去設備が設けられていること。
(1)反応設備から排出された生成ガス中の粒子状の物質及び塩化
水素を除去することができるものであること。
(2)除去設備から排出された生成ガス中の主要な成分を測定し,
かつ,記録するための装置が設けられていること。
ニ事故時における反応設備からのガスの漏出を防止することができ
る設備が設けられていること。
ホ粒子状の物質を排出し,貯留することができる取出設備及び貯留
設備(粒子状の物質の飛散及び流出を防止することができるものに
限る。)が設けられていること。
(以下略)
14項令第7条第12号の2に掲げる施設(ポリ塩化ビフェニル汚染物
分解施設に限る。)の技術上の基準は,次のとおりとする。
1事故時における受入設備,反応設備等からの廃油,廃酸及び廃ア
ルカリの流出を防止するために必要な流出防止堤その他の設備が設
けられ,かつ,当該施設が設置される床又は地盤面は,廃油,廃酸
及び廃アルカリが浸透しない材料で築造され,又は被覆されている
こと。
2処理しようとするポリ塩化ビフェニル汚染物及び当該処理により
生じた産業廃棄物の性状を分析することができる設備が設けられて
いること。
(中略)
4還元熱化学分解方式の設備にあつては,次によること。
イ供給設備は,ポリ塩化ビフェニル汚染物を破砕することができ
るものであること。
ロ次の要件を備えた反応設備が設けられていること。
(1)高温に耐え,かつ,腐食を防止するために必要な措置が講
じられていること。
(中略)
(3)外気と遮断されたものであること。
(4)反応に必要な薬剤として用いられるガスの供給装置が設け
られていること。
(5)爆発を防止するために必要な措置が講じられていること。
(6)反応設備内の温度,圧力及び反応に必要な薬剤として用い
られるガスの供給量を連続的に測定し,かつ,記録するための
装置が設けられていること。
ハ次の要件を備えた除去設備が設けられていること。
(1)反応設備から排出された生成ガス中の粒子状の物質及び塩
化水素を除去することができるものであること。
(2)除去設備から排出された生成ガス中の主要な成分を測定し,
かつ,記録するための装置が設けられていること。
ニ事故時における反応設備からのガスの漏出を防止することがで
きる設備が設けられていること。
ホ粒子状の物質を排出し,貯留することができる取出設備及び貯
留設備(粒子状の物質の飛散及び流出を防止することができるも
のに限る。)が設けられていること。
(以下略)
15項令第7条第13号に掲げる施設の技術上の基準は,次のとおりと
する。
1事故時における受入設備,洗浄設備又は分離設備及び洗浄剤又は
ポリ塩化ビフェニルの回収設備からの廃油,廃酸又は廃アルカリの
流出を防止するために必要な流出防止堤その他の設備が設けられ,
かつ,当該施設が設置される床又は地盤面は,廃油,廃酸又は廃ア
ルカリが浸透しない材料で築造され,又は被覆されていること。
(中略)
3分離方式の施設にあっては,次によること。
(中略)
ロ次の要件を備えた回収設備が設けられていること。
(1)回収設備内を分離されたポリ塩化ビフェニルの回収に必要
な温度とし,かつ,これを保つことができる温度制御装置が設
けられていること。
(2)回収設備内の温度を連続的に測定し,かつ,記録するため
の装置が設けられていること。
(3)回収設備から排出される排気による生活環境保全上の支障
が生じないようにすることができる廃棄処理装置等が設けられ
ていること。
ハポリ塩化ビフェニルの分離及び回収の後に生じた産業廃棄物を,
飛散及び流出を防ぎながら排出し,貯留することができる取出設
備及び貯留設備が設けられていること。
(産業廃棄物処理施設の維持管理の技術上の基準)
12条の6法第15条の2の2の規定による産業廃棄物処理施設のすべて
に共通する維持管理の技術上の基準は,次のとおりとする。
(中略)
3産業廃棄物が施設から流出する等の異常な事態が生じたときは,直
ちに施設の運転を停止し,流出した産業廃棄物の回収その他の生活環
境の保全上必要な措置を講ずること。
4施設の正常な機能を維持するため,定期的に施設の点検及び機能検
査を行うこと。
(中略)
8施設から排水を放流する場合は,その水質を生活環境保全上の支障
が生じないものとするとともに,定期的に放流水の水質検査を行うこ
と。
9施設の維持管理に関する点検,検査その他の措置の記録を作成し,
3年間保存すること。
12条の7法第15条の2の2の規定による産業廃棄物処理施設の維持管
理の技術上の基準は,前条に定めるもののほか,この条の定めるところ
による。
(中略)
13項令第7条第12号の2に掲げる施設(ポリ塩化ビフェニル汚染物
分解施設を除く。)の維持管理の技術上の基準は,次のとおりとする。
(中略)
4還元熱化学分解方式の施設にあつては,次によること。
(中略)
ホ除去設備から排出された生成ガス中の主要な成分を測定し,かつ,
記録すること。
(中略)
ト除去設備の出口における生成ガス中の環境大臣の定める方法によ
り算出されたダイオキシン類の濃度が1立方メートル当たり0.1
ナノグラム以下となるように処理すること。
チ除去設備の出口における生成ガス中のダイオキシン類の濃度を毎
年1回以上……測定し,かつ,記録すること。
(以下略)
14項令第7条第12号の2に掲げる施設(ポリ塩化ビフェニル汚染物
分解施設に限る。)の維持管理の技術上の基準は,次のとおりとする。
(中略)
2還元熱化学分解方式の設備にあつては,次によること。
(中略)
ヘ除去設備から排出された生成ガス中の主要な成分を測定し,かつ,
記録すること。
(中略)
チ除去設備の出口における生成ガス中の環境大臣の定める方法によ
り算出されたダイオキシン類の濃度が1立方メートル当たり0.1
ナノグラム以下となるように処理すること。
リ除去設備の出口における生成ガス中のダイオキシン類の濃度を毎
年1回以上……測定し,かつ,記録すること。
(中略)
ヲポリ塩化ビフェニル汚染物の処理に伴い生じた排水を放流する場
合は,放流水中のポリ塩化ビフェニル含有量,ノルマルヘキサン抽
出物質含有量及び水素イオン濃度を6月に1回以上測定し,かつ,
記録すること。
(以下略)
(5)旧要綱
旧要綱は,事業者が廃棄物処理法の規定(当時の法15条1項又は15条
の2の4第1項)に基づいて,PCB廃棄物処理施設(PCB廃棄物の分解
施設及び洗浄施設)の設置又は変更の許可を申請する前の段階における,知
事に対するPCB廃棄物処理施設設置等計画書の提出(第7の1),知事に
よる関係市町村長への計画書の写しの送付(第7の2),住民代表への計画
書写しの送付等(第7の3,4),事業者が実施する住民説明会の開催(第
8),関係住民の意見取りまとめと関係市町村長及び知事の意見の送付(第
9),計画書の修正(第10,11),知事による計画の適否の判断と通知
(第12)等の事前手続並びに許可後の環境モニタリング(第18)等の手
続について規定していた。
(6)本件条例
(目的)
1条この条例は,廃棄物の適正な処理に関する県,事業者及び県民の責務
を明らかにするとともに,廃棄物の適正な処理を確保するために必要な
規制をすることと等により,廃棄物の適正な処理を促進し,もって県民
の生活環境の保全に資することを目的とする。
(計画内容の周知等)
9条法第8条第1項若しくは法第9条第1項の許可(略)又は法第15条
第1項若しくは法第15条の2の5第1項の許可(略)(以下「法第8
条第1項等の許可」という。)を受けようとする者は,規則で定めると
ころにより,当該許可に係る施設の設置等に伴い生活環境に影響を及ぼ
すおそれがある地域として規則で定める地域(以下「関係地域」とい
う。)内において,当該施設の設置等に係る計画の内容を周知させるた
めの説明会(以下「説明会」という。)を開催しなければならない。こ
の場合において,関係地域内に説明会を開催する適当な場所がないとき
は,関係地域以外の地域において開催することができる。
2前項に規定する者は,説明会を開催するときは,規則で定めるところ
により,説明会の開催を予定する日時及び場所その他規則で定める事項
を知事に届け出なければならない。
(7)本件条例施行規則
(説明会の開催等)
9条
3項説明会を開催する者は,説明会において,法第8条第1項等の許可
に係る施設の設置等に関する計画及び当該施設を設置すること等が周辺
地域の生活環境に及ぼす影響についての調査の結果の概要その他知事が
必要と認める事項を記載した書類を配布しなければならない。
(関係地域)
10条条例第9条第1項の規則で定める地域は,法8条第1項等の許可に
係る施設の種類ごとに知事が別に定める基準により当該施設の設置等に
伴い生活環境に影響を及ぼすおそれがあると認められる地域とする。
(8)特別管理一般廃棄物及び特別管理産業廃棄物に係る基準の検定方法(平
成4年厚生省告示第192号。以下「検定方法」という。甲19)
3規則第1条の2第4項に掲げる基準の検定方法は,廃PCB等又はPC
B汚染物を処分するために処理したものについて次のイからヘまでに掲げ
る区分に応じ,それぞれ当該イからヘまでに定める方法によるものとする。
(略)
ロ廃油(処理方法告示第7号に規定する方法により処分又は再生した場
合(トリクロロエチレン,テトラクロロエチレン又はこれらと同等以上
の洗浄力を有する洗浄液(以下「洗浄液」という。)を循環させて洗浄
した場合及び洗浄液に浸漬して洗浄した場合に限る。)における当該処
分又は再生に係る洗浄液に限る。)別表第3の第1に定める方法
3本件の争点
(1)本案前の争点−原告適格の有無
(2)本案の争点−本件各許可処分の違法性の有無
具体的には,以下の事項が争われている。
ア本件分解施設から排出されるダイオキシン類の濃度が,維持管理の技術
上の基準である1立方メートル当たり0.1ナノグラム(施行規則12条
の7第13項4号ト及び14項3号チ)を超える違法があるか否か。
イ本件分解施設におけるPCB汚染トランス処理後の生成ガス中における
PCB濃度が,日本車輌の定めた自主基準値である1立方メートル当たり
0.001ミリグラムを超える違法があるか否か。
ウ本件分解施設から排出されるダイオキシン類を常時測定,記録すべきか
否か(施行規則12条の7第13項4号ホ及び14項3号ヘ)。また,常
時測定すべきではないとしても,測定方法自体に不備があるか否か。
エ本件分解施設からの排水中のフッ素濃度が,水質汚濁防止法3条1項所
定の排水基準値(1リットル当たり15ミリグラム)を超える違法がある
か否か。また,日本車輌の自主基準値(同2ミリグラム)を超える違法が
あるか否か。
オ本件洗浄施設において使用される溶剤の洗浄力が法令の基準を満たさな
い違法があるか否か(検定方法第3ロ)。
カ本件洗浄施設を対象とする住民説明会が実施されていない違法があるか
否か(本件条例9条)。
キ本件各施設の設置許可申請につき,日本車輌が「その業務に関し不正又
は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある
者」(法15条の2第1項4号,14条5項2号イ,7条5項4号ト)に
該当するか否か。
4争点に関する当事者の主張
(1)争点(1)(本案前の争点−原告適格の有無)について
(原告らの主張)
原告らは,半田市内に居住しているところ,以下のとおり,本件各施設の
設置及び稼働によりその生活環境ひいては身体の安全や健康を害される可能
性が非常に高く,その権利を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがある
から,本件各許可処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する。この
ことは,都市計画事業の認可処分の取消しを求めた小田急高架化訴訟におい
て,原告適格を公害対策基本法や都条例に基づく環境アセスメントの対象地
域内に住む沿線住民らに認めた最高裁判決によっても裏付けられる。
ア廃棄物処理法の趣旨,目的等について
(ア)廃棄物処理法の趣旨,目的
廃棄物処理法の趣旨及び目的は,廃棄物の排出を抑制し,及び廃棄物
の適正な分別,保管,収集,運搬,再生,処分等の処理をし,並びに生
活環境を清潔にすることにより,生活環境の保全及び公衆衛生の向上を
図る点にある(1条)。
そして,廃棄物処理業が許可制であることの趣旨は,いうまでもなく,
適正な処理をさせるためであり,これが必要になるのは,不適正な処理
が環境汚染等を引き起こすからであるが,ここでいう汚染から保護され
るべき環境とは,廃棄物処理業が営なまれる土地周辺の環境を指すこと
は明らかである。
これを廃棄物処理法の規定に即して検討するに,同じ環境法令である
大気汚染防止法や水質汚濁防止法が,公共用水域や大気等の環境汚染を
防止すべく一般的な排出規制や行政の監視義務などを定め,個別具体的
な汚染に対処する規定に乏しいのに対し,廃棄物処理法は,具体的な汚
染等の問題に対し,改善命令や許可の取消しなどの規定を置いて,悪質
な汚染行為や基準違反の施設に対する個別的・具体的な対処を可能にし
ており,各種の技術上の基準等も極めて具体的である。
要するに,廃棄物処理法による周辺環境への配慮は,一般的な環境保
全という見地よりは,個別的・具体的に生じ,又は生ずるおそれがある
周辺環境への汚染に事後的又は予防的に対処することに主眼がある。
(イ)廃棄物処理法の改正点
廃棄物処理法は,廃棄物処理場周辺の生活環境破壊事例の頻発を受け
て改正が重ねられ,現在では,産業廃棄物処理施設の設置者は,当該施
設に係る周辺地域の生活環境の保全及び増進に配慮することとされ(法
15条の4による法9条の4の準用),申請書には,当該産業廃棄物処
理施設の設置による周辺地域の生活環境への影響についての調査の結果
を記載した書類を添付しなければならない(法15条3項)とされるに
至った(平成9年法律第85号)。
このことからすれば,廃棄物処理法は,廃棄物を適正に処理すること
を通じて生活環境の保全と国民の健康を図るという一般的公益のほかに,
これとは明確に区別する形で,当該処理施設の周辺地域の良好な生活環
境の確保を同地域に居住する個々人の個別的な利益として保護しようと
していることが明らかである。
イダイオキシン類等による深刻な悪影響を受ける高度な可能性について
(ア)ダイオキシン類等の毒性
ダイオキシン類は,ダイオキシン類特措法1条で「人の生命及び健康
に重大な影響を与えるおそれがある物質である」とされている。また,
平成16年11月12日の中央環境審議会の答申(「ダイオキシン類の
測定における簡易測定法導入のあり方について」。甲97)においても,
「ダイオキシン類の健康影響に関する研究が進み,現在では,以前に問
題となった発がん性や致死毒性の場合よりもさらに微量で生殖,脳,免
疫系などに対して生じ得る影響が懸念されるようになっている。このよ
うな影響は,一般的には,胎児や乳幼児において最も高いリスクになる
と考えられるため,ダイオキシン類による胎児や乳幼児への暴露によっ
て,次世代に対する悪影響が生じる可能性がある。」などと言及されて
いる。
また,PCBは,PCB特措法1条で「難分解性の性状を有し,かつ,
人の健康及び生活環境に係る被害を生ずるおそれがある物質である」と
されている。具体的には,PCBは,その安定性や脂肪への溶解性から,
いつまでも環境中に残留し,また水中のプランクトンなどの微生物に取
り込まれ,食物連鎖により生体濃縮されていく。生体内で分解されにく
く脂肪組織に蓄積されるため,人体に対し,皮膚障害(ニキビ様の吹き
出し物,色素沈着),内臓障害,手足のしびれ,黄疸,ホルモン異常
(月経異常など)などの影響を及ぼす。また,母体内に取り込まれたP
CBは,母乳中に容易に移行し,母乳を介した次世代への影響が懸念さ
れている。そのほか,動物実験では,いわゆる環境ホルモンとして,性
周期の延長や出生児の死亡率の増加,発育異常などが報告されている。
さらに,PCBは,生体内でAhレセプター(受容体)と結合して,様
々な遺伝子の発現を制御し,酵素発現やホルモン濃度などに影響を与え,
がん,奇形,免疫異常及び発育異常などを引き起こすとされている。
このように,ダイオキシン類及びPCBが猛毒の化学物質であること
は,今更議論するまでもない。
(イ)ダイオキシン類やPCBの半田市内への拡散の可能性
本件分解施設において採用される気相水素還元法は,日本で初めて取
り入れられるものであり,その安全性の根拠となるべき本件実証試験に
は,後記のとおり信頼性がないため,本件分解施設の設置・稼働によっ
て,ダイオキシン類やPCBが煙突等から排出されるおそれは非常に高
いところ,半田市付近では,夏季には三河湾から知多半島に向かって強
い風が吹く傾向にあるから,本件分解施設から排出されたダイオキシン
類やPCBは,半田市の大気に拡散し,半田市中を覆うことになる。
そして,半田市は,もともとダイオキシン類の濃度の高い地域である
ことが愛知県及び半田市の調査で明らかになっている。例えば,半田市
の衣浦排水機場屋上では,平成11年度の愛知県調査において環境基準
値(年間平均値1立方メートル当たり0.6ピコグラム−TEQ(以下,
特に必要がある場合のほか,TEQの記載は省略する。))を上回る1
立方メートル当たり1.3ピコグラムに達し,平成14年度の同調査で
は年間平均値が0.5975ピコグラムと基準値に近い水準であり,冬
季には1立方メートル当たり0.99ピコグラムに達している。
このような状況下で,本件各施設からダイオキシン類が排出されると,
半田市民は環境基準を上回るダイオキシン類の浮遊する大気の中での生
活を余儀なくされることとなる。
そうすると,本件各許可処分に基づいて本件各施設が設置,稼働され
ることによって,原告らの生活環境ひいては身体の安全や健康を危険に
さらす可能性が非常に高いというべきである。
(ウ)原告らの居住地
原告ら4名の中には,本件各施設から半径1キロメートル以内に居住
している者はおらず,半径2キロメートルに拡大しても,原告B(以下
「原告B」という。)1名が居住しているにすぎない。しかし,これを
日本車輌の敷地から測定すれば,少なくとも原告Bは半径1キロメート
ル以内に居住しているし,これを半径5キロメートルにまで拡大すれば,
原告Aを除く全員がその範囲内に居住している(甲100)。しかも,
日本車輌の作成した生活環境影響調査書の内容が信用できるとしても,
半田市では夏季において南東の風が吹走することが多く,これにいわゆ
る海風が加わると風速毎秒7メートル以上にも達する(甲101)。
このように季節や風向・風速によっては,半田市の市街地に排ガスを
まき散らすことにもなりかねず,その影響は重大である。
ウ住民説明会の対象となる関係地域について
本件条例9条は,法8条1項等の許可を受けようとする者は,規則で定
めるところにより,当該許可に係る施設の設置等に伴い生活環境に影響を
及ぼすおそれがある地域として規則で定める地域(関係地域)内において,
当該施設の設置等に係る計画の内容を周知させるための説明会を開催しな
ければならないと規定し,本件条例施行規則10条は,本件条例9条1項
の規則で定める関係地域は,法8条1項等の許可に係る施設の種類ごとに
知事が別に定める基準により当該施設の設置等に伴い生活環境に影響を及
ぼすおそれがあると認められる地域とすると定めている。
また,廃棄物の適正な処理の促進に関する条例の手引き(乙31)によ
れば,焼却施設・PCB処理施設の関係地域について,「次の廃棄物処理
施設の区分に応じ,調査事項ごとに定める調査対象地域が含まれる町又は
字の区域とする。」と定め,例えば,大気汚染を調査事項とした場合には,
調査対象地域を「①煙突排ガスによる影響:プルーム式等の大気拡散式か
ら推定される最大着地濃度出現距離を考慮して設定した地域(対象施設か
らの距離が最大着地濃度出現予想距離のおおむね2倍の地点を含む地域と
する。)とし,その設定に当たっては,地域の気象特性のほか,行政区域
や地形・土地利用の状況も勘案するものとする。②廃棄物運搬車両による
影響:車両の走行によって交通量が相当程度変化する主要搬入道路沿道の
周辺の人家等が存在する地域とし,その設定に当たっては,運搬車両台数,
現況交通量に対する寄与率,道路沿道周辺の人家等の状況を勘案するもの
とする。」としている。
これを受けて,半田市は,半田市全域が本件各施設の排ガスや廃棄物運
搬車両による影響を受けると判断し,半田市全域を関係地域として想定し,
愛知県もこの考えを受け入れ,日本車輌もこれに従って,半田市全域の住
民を対象とした住民説明会を開催した(甲95の1・2)。
以上によれば,本件条例9条等の規定は,廃棄物処理法と目的を共通に
する関係法令として,同法の趣旨及び目的を考慮する際に参酌しなければ
ならないところ,関係地域と原告適格を有する者の居住範囲とは,限りな
く一致するものであり,このような経緯で住民説明会が開催されたことは,
本件各施設の設置・稼働により,原告らの生活環境ひいては身体の安全や
健康を害される危険にさらされる可能性が非常に高いことの証左である。
エ搬入道路の生活環境悪化に伴う付近住民の悪影響について
日本車輌は,広く中部地方全体からPCB廃棄物を受け入れて,本件各
施設で処理をすることを予定しており,10年間に本件各施設で処理する
予定の約4500トンのPCB廃棄物のうち,半田市で排出される50ト
ンを除いた約4450トンは,愛知県の内外から半田市内を通って本件各
施設に運び込まれることとなる(甲76)。
そうすると,主要搬入道路(特に知多半田道路の半田中央インターチェ
ンジから本件各施設までの道路)においては,廃棄物運搬車両の走行によ
って交通量が相当程度変化し,渋滞や交通事故の発生の増加,廃棄物運搬
車両の排ガスによる大気汚染が予想される(甲104)。また,処理前の
PCB廃棄物を積んだ車両の走行により,沿道では,より強くPCB汚染
の危険が高まることになる。なお,産業廃棄物処理の現場では,しばしば
見られるように,届出をしていない廃棄物が持ち込まれる可能性も否定で
きない。
これらのことに照らすと,原告らのうち主要搬入道路の周辺住民が,生
活環境及び身体の安全や健康上の危険にさらされる可能性がより一層強ま
る。
(被告の主張)
原告らの主張は否認ないし争う。
本件各許可処分の名あて人でない原告らが,これらの取消しを求めるため
には,取消しを求めるにつき法律上の利益を有することを立証する必要があ
るところ,以下のとおり,原告らの主張する生命・健康に対する重大な悪影
響については,その内容や程度が具体的に明らかにされておらず,立証もな
いから,本件訴えは,原告適格を有しない者の提起したものとして,却下を
免れない。
ア原告らが受ける悪影響に関する個別・具体的主張の欠如について
原告らは,平成9年における廃棄物処理法の一部改正を根拠に,廃棄物
処理法が,一般公益のほかに,これと明確に区別して,当該処理施設の周
辺地域における良好な生活環境の確保を,周辺地域に居住する個々人の個
別的な利益として保護していると主張する。しかし,廃棄物処理法の各規
定が,誰のどのような利益を保護しているかは,個々の規定ごとに判断さ
れるべきであるところ,原告らは,本件各施設の稼働により個々の原告ら
がどのような影響を受ける蓋然性があるのか,個別的・具体的には明らか
にしていない。一例を挙げれば,原告らが挙示する廃棄物処理法15条の
3第1項1号,14条5項2号イ,7条5項4号トの規定が,当該施設の
近隣住民の生命・健康まで個別具体的に保護していると解されないことは,
後記のとおりである。
原告らは,結局のところ,本件各施設から一定の範囲内の距離に居住し
ているという外形的事実のみをもって,すべての取消し原因について,原
告適格を基礎づけようとしているにすぎない。仮に原告らの上記主張・立
証だけで本件の原告適格が認められるとすれば,行政事件訴訟法9条1項
が,原告適格として法律上の利益を有することを要件とした趣旨が著しく
没却されることは明白である。
イダイオキシン類の危険性に関する反論について
(ア)ダイオキシン類の耐容摂取量
原告らの主張は,一般論として,ダイオキシン類の危険性を指摘する
のみで,ダイオキシン類によって原告らが被る可能性があるという重大
な悪影響の内容や蓋然性は,何ら明らかにされていない。ダイオキシン
類との関係で原告適格を基礎づけるためには,ダイオキシン類が,通常
の大気中にも存在する以上,本件各施設から人体に影響する可能性があ
る程度の量のダイオキシン類が排出され,それが原告らに到達すること
の蓋然性が明らかにされなければならないはずである。
また,ダイオキシン類は,大気,食品,動植物中にも存在しており,
その環境基準は,「耐容一日摂取量(単位は,ピコグラム−/キTEQ
ログラム体重/日。以下同じ。)」から設定されているが,これは,生
涯にわたって摂取し続けた場合の健康影響を指標とした値であり,一時
的にこの値を多少超過したとしても健康を損なうものではない。さらに,
耐容一日摂取量4ピコグラムのうち,空気中から取り込む量は約0.0
7ピコグラムであり,食品から取り込む量の2ピコグラムの30分の1
程度にすぎないことを併せ考えると,仮に排ガスが無処理のまま排出さ
れたとしても,原告らに影響が生ずるとは考えられない。なお,ダイオ
キシン類は急性毒性が強いといわれるが,これは日常の生活の中で摂取
する量の約数十万倍の量を一時的に摂取した場合のことであり,日常生
活への影響はほとんどないといってよい。したがって,原告らが,本件
各施設から排出されるダイオキシン類による影響を受けるとはいえない。
(イ)生活環境影響調査
環境基本法16条に基づく環境基準は,「人の健康等を維持するため
の最低限度としてではなく,より積極的に維持されることが望ましい目
標として,その確保を図っていこうとするもの」であり,これを下回っ
ていれば,十分に安全性が確保されるところ,平成12年度以降,愛知
県又は半田市が実施したダイオキシン類の環境調査によれば,半田市内
の全ての調査地点で環境基準を達成しており,平成15年度には,半田
市内の5か所のうち4か所で,環境基準の半分以下の数値となっている。
一方,日本車輌は,本件各施設に関し,生活環境影響調査を実施して
いるところ,その報告書(乙32)によると,本件各施設の稼働に伴う
ダイオキシン類の影響については,排出口から南南東約460メートル
の地点が最も高くなる(最大着地濃度地点)と予測されているが,その
地点の寄与濃度も1立方メートル当たり0.00018ピコグラムと予
測されている。この値は,半田市内の現況のダイオキシン類の濃度の1
000分の1程度,環境基準の3000分の1程度と極めて小さいもの
である(乙34)。
したがって,本件各施設から排出されるダイオキシン類によって,原
告らの生活環境が影響を受けることはない。
(ウ)本件各施設の安全管理対策と排ガスの異常時拡散予測
a本件各施設により発生する生成ガスについては,直接,環境中に排
出せずに,いったんオフガスタンクに全量貯留し,PCB濃度等を複
数の機器で測定し,PCBが処理されたことを確認した後,予熱器の
燃料として利用する計画である。
また,ダイオキシン類についても,施行規則に定める維持管理の技
術上の基準に従い,定期的に測定することとしている。そして,万が
一にもオフガス中のPCB濃度等が目標値を超えた場合には,オフガ
スを全量反応器に戻してPCBを再処理し,その生成ガスをいったん
タンクに貯留し,再度,PCBが処理されたことを確認することとし
ている。そのため,PCB濃度等が目標値を超えるオフガスを燃料と
して使用することはない。ましてや,PCB濃度等が目標値を超える
オフガスが,そのまま環境中に排出されることもない。
したがって,排ガスについては,例えPCB濃度等が目標値を超え
たとしても,直接環境中に排出されず,再処理されるため,原告らが
影響を受けるとは考えられない。
bそして,万一の事故等により,排出前段階の活性炭処理装置が故障
し,PCB及びダイオキシン類を含んだ排ガスが無処理で排出された
場合の周辺環境への影響を予測した結果(「異常時拡散予測」。乙4
8)においても,ダイオキシン類の予測濃度は,住居地域に近い日本
車輌の敷地境界において,環境基準を下回っており(直近の住居地に
おけるダイオキシン類の濃度は1立方メートル当たり0.346ピコ
グラム),それ以上の距離を置いて生活している原告らが影響を受け
るとは考えられない。
c日本車輌は,運転管理を徹底し,事故等にも適正に対応できるよう,
「通常運転時の操作手順書」,「地震や停電時等に対処するための緊
急時手順書」及び「安全管理規定」を作成するとともに,不測の事態
や緊急時にも対応できる体制の整備,多重の安全対策,作業マニュア
ルの整備,作業員教育などを行い,災害やヒューマンエラーによる事
故等を防止することとしている。また,地震,火災,事故等による故
障及び異常が発生した場合は,速やかに施設を停止するなど適切に対
応できるように,緊急マニュアル,維持管理マニュアル等を整備し,
これらを用いて従業員の教育・研修等を行うこととしている。
したがって,事故等が仮に発生して施設が故障したとしても,それ
が長期間にわたって放置されることはなく,原告らに影響を及ぼすこ
ともない。
(エ)原告らの居住地域
原告Aの居住地は,本件各施設から半径6キロメートルの圏外であり,
原告C(以下「原告C」という。)の居住地は,本件各施設から約5キ
ロメートルの地点である。さらに,原告D(以下「原告D」という。)
の居住地は,本件各施設から約3.8キロメートルの地点である(甲1
00)。以上のとおり,原告らのうち3名は,いずれも本件各施設から
少なくとも約4キロメートルの地点に居住しており,上記のとおり,生
活環境影響調査において,ダイオキシン類の最大着地濃度が出現する地
点が事業予定地から460メートルの地点とされていることからすれば,
生活環境上何らの影響も受けないことが明らかである。
また,原告Bについては,訴状に記載されている住所地は,本件各施
設から約1.5キロメートルの地点である「半田市●●町●丁目●番●
号」であるが,その住民票上の住所地は,本件各施設から約3.2キロ
メートルの地点に位置する「半田市●町●丁目●番地」であって(乙6
2),本件各施設から排出される可能性のあるダイオキシン類の影響を
受ける可能性はない。そもそも原告Bの訴状記載の住所地の現況は倉庫
であって,同人がここに居住している可能性はないのであるから,原告
適格については,住民票上の住所を基準に判断すべきである。
ウ住民説明会の対象範囲に関する反論について
原告らは,本件条例9条,本件条例施行規則10条に基づく住民説明会
の開催対象が半田市全域であることを原告適格の根拠として主張する。
しかし,本件条例9条は,産業廃棄物処理施設の設置許可について,事
業者に説明会を実施させることにより手続の透明性を高め,計画の内容に
ついて住民のコンセンサスをできる限り確保するという手続上の観点から
愛知県が独自に定めた規定である。したがって,そうした住民周知の徹底
のために日本車輌が説明会の開催対象として届け出た範囲と,本件各許可
処分の取消訴訟の原告適格が認められる範囲とは視点が異なっており,両
者が直ちに一致するものではないから,このような本件条例の規定によっ
て原告適格を基礎づけること自体失当である。
上記のような本件条例の趣旨からすれば,日本車輌が説明会の対象範囲
をより広く設定することは,むしろ望ましいことでもあり,日本車輌が半
田市全域にダイオキシン類の影響が及ぶとの判断の下に説明会開催の範囲
を半田市全域として届け出たものではなく,まして被告が,そのような判
断をしたものでもない。
エ搬入道路付近住民の生活環境に関する反論について
日本車輌の計画では,PCB廃棄物の処理量は1日当たり平均2トンで
あり,4トン積みトラックで2日に1台程度の搬入計画とされている。し
たがって,PCB廃棄物運搬車両の走行によって交通量が相当程度変化し,
渋滞や交通事故の発生の増加,廃棄物運搬車両の排ガスによる大気汚染が
もたらされることはない。
また,日本車輌は,産業廃棄物保管業者及び収集運搬業者との間で,P
CB廃棄物の運搬について協議して,安全な収集運搬の計画及び態勢を整
備するとともに,収集運搬業者に対し,運転手等への「PCB廃棄物収集
・運搬ガイドライン」の遵守等の指導・周知を求め,管理に努めている。
以上から,処理予定の産業廃棄物を運搬・搬入する車両の通行によって,
原告らは何ら影響を受けないというべきであるから,かかる観点からも原
告らの原告適格を基礎づけることはできない。
オその他の違法事由に関する反論について
原告らは,ダイオキシン類や住民説明会以外にも,本件各許可処分に関
する違法事由をるる主張するが,以下のとおり,これらの事由によって,
個々の原告らがどのような影響を受ける蓋然性があるのかは何ら明らかに
されていない。
(ア)フッ素濃度に関する原告らの主張について
フッ素の濃度に関する原告らの主張は,ダイオキシン類濃度に関する
ものと同様,本件分解施設から排出されるフッ素によって,原告らにど
のような影響が及ぶのかが何ら明らかにされていない。もともと,海水
中にはフッ素が1リットル当たり約1.4ミリグラム含まれているが,
これを直接人体に摂取することは考えられず,魚介類を介しての間接的
な摂取を想定しても,これによって具体的な健康被害が生じた例は報告
されていない。したがって,本件分解施設からの排水中のフッ素が,海
水に取り込まれることによって,原告らの日常生活に影響が及ぶとは考
えられない。
また,日本車輌の計画では,フッ素を含む本件各施設からの排水は,
既設工場(衣浦製作所)の排水と一緒に,同所の総合排水処理設備で再
度凝集沈殿処理し,衣浦港に放流する計画である(乙50)。そのため,
万一,本件各施設に故障等が生じても,排水の安全性は二重に確保され
ており,排水が全く処理されずに排出されることは考えられない。
さらに,本件各施設及び衣浦製作所の両排水処理設備が故障したと仮
定しても,排出地点から200メートル程度離れると,排水中のフッ素
濃度が海水中の平均的なフッ素濃度にまで拡散されるから,原告らの生
活環境に影響が生ずるとは考えられない。
よって,この点からも原告適格は根拠づけられない。
(イ)洗浄剤に関する原告らの主張について
本件洗浄施設で用いられる溶剤の選定に関する原告らの主張について
も,それによって,原告らにどのような悪影響が生じるのかについては,
何ら明らかにされておらず,この点から原告適格を論ずることはできな
い。
(ウ)日本車輌が,「その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれ
があると認められる相当の理由がある者」に該当するとの主張について
原告らは,日本車輌が,「その業務に関し不正又は不誠実な行為をす
るおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」に該当すると主
張するが,設置者が上記の者に該当する場合には,設置許可を取り消す
ことができるとする法15条の3第1項1号は,資質や信用性等の観点
から当該産業廃棄物処理施設の設置者が適正に当該施設の管理をするこ
とができないと認められたときに許可を取り消すことによって,事業者
の適切な資質・信用を担保するという公益目的のためのものであるから,
原告適格を基礎づける性質は有していない。
(2)争点(2)ア(本件分解施設から排出されるダイオキシン類の濃度が,維持
管理の技術上の基準である1立方メートル当たり0.1ナノグラムを超える
違法があるか否か)について
(原告らの主張)
ア維持管理の技術上の基準の位置づけについて
(ア)廃棄物処理施設設置許可との関係
廃棄物処理施設の設置許可制度は,同施設の設置を一般に禁止した上
で,施設の設置に関する計画が技術上の基準に適合していること,施設
の設置及び維持管理に関する計画が周辺地域の生活環境の保全等につい
て適正な配慮をしていることなど,一定の要件を具備すると認められる
ときに限って許可されるものである(法15条の2第1項)。
そして,廃棄物処理施設の設置者は,環境省令で定める技術上の基準
(以下「維持管理の技術上の基準」という。)及び維持管理に関する計
画に従い,当該施設の維持管理をしなければならないとされている(法
15条の2の2)。
そうすると,維持管理の技術上の基準については,設置許可申請書に
維持管理に関する計画が記載されていればよいというものではなく,設
置を許可する際に,将来にわたって維持管理の技術上の基準が充足され
続けることが相当の蓋然性をもって判断されなければならない。なぜな
ら,維持管理の技術上の基準を充足しないことが予想されるにもかかわ
らず,とりあえず設置許可をして,その稼働後に改善命令等の措置をす
れば足りるという運用をするのでは,許可制が採用されている趣旨に反
するからである。
したがって,このような許可の判断に際しては,あらかじめ実施した
実験等の結果に基づいて設定した維持管理に関する計画が,法令の基準
を充足しているか否かが具体的に判断されるべきである。現に,環境省
や厚生労働省の通達(環境省通知環廃産第260号,厚生省通知衛環第
37号)によれば,設置許可に際して,維持管理の技術上の基準を充足
するか否かについても検討すべき旨記載されている。
以上によれば,産業廃棄物処理施設の維持管理の技術上の基準に違反
していることも,本件各許可処分の取消原因となると解すべきである。
(イ)ダイオキシン類濃度に関する維持管理の技術上の基準
上記のとおり,産業廃棄物処理施設の維持管理の技術上の基準も,本
件分解施設の設置許可要件となるべきところ,法15条の2の2の規定
を受けて,施行規則12条の7第13項4号ト及び第14項3号チは,
産業廃棄物処理施設の維持管理の技術上の基準として,「除去設備の出
口における生成ガス中の環境大臣の定める方法により算出されたダイオ
キシン類の濃度が1立方メートル当たり0.1ナノグラム以下となるよ
うに処理すること」と定めている。
したがって,本件分解施設における除去設備(煙突)の出口における
生成ガス中のダイオキシン類の濃度が1立方メートル当たり0.1ナノ
グラム以下となるように処理されることが本件分解施設の設置許可要件
となっているものであり,この基準値を超えることが明らかな場合は,
本件分解施設設置許可処分は,法15条の2第1項1号,施行規則12
条の7第13項4号ト及び14項3号チに違反するものとして,違法で
ある。
イ本件分解施設が維持管理の技術上の基準を満たさない根拠について
(ア)維持管理の技術上の基準への適合性に関する実験の欠如(本件実証
試験の不十分さ)
a維持管理の技術上の基準への適合性に関する実験の不可欠性
除去設備の出口における生成ガスのダイオキシン類濃度が,1立方
メートル当たり0.1ナノグラム以下に処理できるかどうかについて
は,計算結果だけでなく実験結果に基づく理論的かつ科学的根拠が必
要である。しかし,日本車輌は,本件実証試験以外,生成ガス中のP
CB濃度及びダイオキシン類濃度を測定・分析する実験を一度も行っ
ていない。しかも,本件実証試験は,気相水素還元法について国の評
価を受けるために実施されたものであって,本件分解施設に関するも
のではないのである。
したがって,本件分解施設が,維持管理の技術上の基準に定められ
た値を達成できるとする根拠は,計算上の理論にすぎないのであって,
理論的かつ科学的根拠としては不十分である。
b本件実証試験のずさんさ
そして,本件実証試験の内容も,以下のとおり,実際の本件分解施
設の規模や稼働状況を前提としたものではなく,その安全性を根拠づ
けるものではない。
⒜反応設備等の規模が大きく異なること
本件実証試験に用いられた実証試験機の規模は,廃PCBの投入
量で実用機の333分の1,反応器容積で1136分の1,固形物
用蒸発機容積で164分の1と小さく,モデル機として理想とされ
る10分の1にはるかに及ばない。したがって,スケールアップす
るのは規模が違いすぎる。
この点について,被告は,化学反応として単純であることを理由
に問題ない旨主張するが,化学反応としての単純さとシステムの単
純さはイコールではなく,例えば温度管理などは,規模の拡大によ
って熱量の維持や均等性などの問題が生ずる。つまりシステムは複
雑なものを要するのである。
⒝用いられた試料が実際の処理方法を反映していないこと
日本車輌が本件実証試験に供した低濃度PCB油,高濃度PCB
油の試料は,後者のものでもPCB原油を6パーセント程度に希釈
したものであって(甲8),実際のものと比べると極めて低濃度で
あるから,この試料を用いた本件実証試験の結果において,生成ガ
ス中のダイオキシン類の濃度が基準以下になったとしても,実際の
操業の際に妥当するとは限らない。
しかも,上記試験において収集されたデータは,施行規則におい
て定められた除去設備出口(計画施設の第2段スクラバ出口)のガ
スではなく,生成ガスタンクに貯留され平均化されたガスであり,
本件分解施設が実際に稼働した場合における排ガスの排出状況とは
異なる。
⒞基準値を超える結果が生じていること
本件実証試験の結果を見ると,PCB汚染土砂を用いて行った試
験においては,生成ガスタンクにおいて平均化された生成ガスのダ
イオキシン類濃度でさえ,維持管理の技術上の基準値である1立方
メートル当たり0.1ナノグラムをはるかに上回る1立方メートル
当たり0.29ナノグラムであって,基準値の3倍近い数値となっ
ている(甲8,134の11頁)。
このような場合,改良を加えて再度実証試験を行うべきであるに
もかかわらず,これが行われていない。被告は,固形物蒸発器やス
クラバの改良を主張するが,これらがダイオキシン類の発生抑制に
意味を持つかは疑問があり,実際の試験も行われていない。
⒟ダイオキシンが合成されていること
本件分解施設が採用している気相水素還元法は,還元反応である
から,理論上はPCBを完全に分解し,ダイオキシン類は合成され
ないはずである。しかし,本件実証試験の分析結果によれば,反応
分解前には,定量下限値未満しか存在せず,H7CDDsよりも少
量だったO8CDDが,反応分解後には,H7CDDsよりも多く
含まれていたことが判明しており,このことは,ダイオキシン類が
合成されていると考えなければ説明がつかない。
c小括
上記のとおり,本件実証試験の結果によっても,本件分解施設にお
いて生じるダイオキシン類を,維持管理の技術上の基準値である1立
方メートル当たり0.1ナノグラム以下に処理できることは何ら保証
されていないから,本件分解施設は維持管理の技術上の基準に適合し
ていないことは明らかである。したがって,実証データを検討するこ
となく,本件分解施設設置許可申請書の記載だけに基づいて,維持管
理の技術上の基準に適合しているとした本件分解施設設置許可処分は
違法である。
(イ)日本車輌による分析結果のデータの隠ぺい
a技術認定騙取の経緯
日本車輌は,島津テクノリサーチに対して,本件実証試験において
生成されたガスの採取・分析を依頼した。これを受けて,島津テクノ
リサーチは,本件実証試験において生成されたガスを採取し,PCB
及びダイオキシン類の測定結果を日本車輌に報告した(甲114の1
ないし4)。
それにもかかわらず,日本車輌は,PCB汚染トランスの分解実験
(第2回)の生成ガス中におけるPCB及びダイオキシン類の測定結
果を意図的に取り除いて,実証試験報告書(甲74)を作成し,豊川
市,愛知県に提出した上,検討評価委員会に対しても同報告書に基づ
いた実証試験成果報告書(甲106の2)を提出している。このこと
は,実証試験報告書に添付された島津テクノリサーチの分析結果報告
書に欠落部分が存在することから明らかである。
日本車輌が上記データを隠ぺいしたのは,処理運転状況が正常であ
っても,PCBとダイオキシン類濃度が目標値を達成しなかったから
と考えられる。すなわち,上記のように,汚染土砂の処理実験におい
て,運転状況が正常であったにもかかわらず,ダイオキシン類濃度が
目標値を上回って0.29ナノグラムの数値を示したことから,汚染
トランスの分析結果を隠すことになったと思われる。このため,日本
車輌は,実証試験報告書の処理目標値に対する結果の記述においても,
生成ガスの分析値について一切触れることなく,「生成ガスの燃焼排
ガス」の排出基準や分析値についての論述にすり替えている。
このように,日本車輌は,上記のデータを隠して,検討評価委員会
に提出し,廃棄物処理法の還元熱化学分解方式によるPCBの処理技
術としての認定を受けたものである。
b第4回愛知県廃棄物処理施設審査会議における嘘の報告
PCB処理を考える市民会議の一員である半田市議が,平成16年
2月12日,環境省を訪れて日本車輌への適切な指導を要請したとこ
ろ,愛知県に伝えておくとの返答を得た。そこで,原告らが,同年3
月,愛知県を訪れ,実証試験のデータに疑わしい部分があり,都合の
悪い分析結果を取り除いた可能性について指摘したが,愛知県は現在
に至るまで何らの行動もとっていない。
被告は,上記審査会議において,委員に対し,汚染トランスの生成
ガスについては採取をしていないし分析測定もしていないと説明して
いるが,上記のとおり,これは全くの嘘であり,2回目の分解実験の
際に生成ガスの採取や測定が行われなかったことについて疑問を抱く
機会はあったはずである。
(ウ)小括
上記のとおり,本件分解施設設置許可処分は,重要な試験データを一
部隠した上で作成された実証試験成果報告書の評価結果を基になされた
もので,実態は許可基準に適合していない。そして,被告は,これらに
ついて疑問を抱くことなく,日本車輌の言い分をそのまま受け入れて,
安易に上記処分を行ったものである。
(被告の主張)
原告らの主張は否認ないし争う。
ア維持管理の技術上の基準の位置づけについて
本件分解施設設置許可処分に際しての技術上の基準は,法15条の2第
1項1号の規定を受けて,施行規則12条及び12条の2に定められてい
るところ,原告らが違法事由として主張する施行規則12条の7第13項
4号ト,14項3号チは,法15条の2の2に定める廃棄物処理施設の維
持管理の技術上の基準であり,廃棄物処理施設が実際に稼働した後に問題
とされるべきものであって,設置許可に際しての技術上の基準への抵触の
問題を生じないものである。
なお,産業廃棄物処理施設の設置許可申請に際しては,法15条2項7
号により,施行規則11条3項に定める産業廃棄物処理施設の維持管理に
関する計画の記載が要求されるが,維持管理については,施行規則12条
の6及び12条の7に維持管理の技術上の基準が定められており,この維
持管理の技術上の基準に適合した維持管理に関する計画が記載されていれ
ば,法15条2項7号の要件を充足するものである。
そして,現実に産業廃棄物処理施設が稼働した後に,施行規則12条の
6及び12条の7の維持管理の技術上の基準に適合していないことが判明
したときには,改善命令等の措置が取られる(法15条の2の6)のであ
り,許可に際しての技術上の基準と維持管理の技術上の基準は,適用され
る局面が異なるから,両者を混同してはならない。
以上から,原告らの主張は,これらを看過した論理的に誤ったものとい
うほかなく,それ自体失当である。
イ本件実証試験について
(ア)原告らは,本件分解施設において維持管理の技術上の基準が達成で
きない根拠をるる主張するが,これらの原告らの指摘は,結局のところ,
本件分解施設そのものについて実証試験などの実験がなされていないと
いう点に尽きるものであるところ,そもそも,法15条1項に基づく産
業廃棄物処理施設の設置許可については,設置に関する技術上の基準,
さらには維持管理に関する技術上の基準を達成できることが,実証試験
等の実験によって裏付けられていることまで要件としていない。
本件実証試験は,PCBの除染能力を確認し,通商産業省の「難分解
性有機化合物処理技術検討評価委員会」の技術評価を受けるために行っ
たものである。
(イ)次に,原告らは,本件実証試験の結果,PCB汚染土砂の第2回目
の試験でダイオキシン類濃度が基準値の約3倍の0.29ナノグラムに
なるなど,本件実証試験を本件分解施設の安全性の根拠とするには不十
分である旨主張する。
しかし,本件分解施設設置許可申請に当たり,①本件実証試験におい
てPCB汚染土砂の処理に用いられた粒状固形物用蒸発器(ロータリー
キルン)を,プログラミングした昇温速度で温度を上げるようコントロ
ールする形式のものに変更し,②PCB分解温度を安定化させるために
過熱器を設置し,③より急速に冷却できるよう除去設備のスクラバの散
水ノズルを増設するなどの改良を加えており,本件分解施設において,
生成ガス中のダイオキシン類濃度を廃棄物処理法の定める基準値以下に
処理することができることについては,十分に科学的な合理性があると
いえるから,これらの改良点を無視し,本件実証試験の結果のみをもっ
て,本件分解施設の合理性を論ずることは失当である。
(ウ)また,実証試験機との規模の相違についても,気相水素還元法は,
触媒を使わない単純な化学反応を利用するものであるから,実用機が一
気にスケールアップされたものであるとしても,実際の検出濃度に影響
を及ぼさないという推測に十分な合理性が認められる。
(エ)さらに,原告らは,トランスオイルの処理結果中のO8CDDの濃
度(甲135の別表)を根拠に,気相水素還元法によって,ダイオキシ
ン類が合成された可能性があると主張する。
しかし,気相水素還元法は,原理の単純な還元反応であり,ダイオキ
シン類が合成されることは理論上考えられない(乙57の8頁)。本件
実証試験においては,低濃度PCB汚染油の処理に際し,市販の電気絶
縁油で希釈して試料としているが,原告らの推論は,この希釈に用いら
れた市販の電気絶縁油にもダイオキシン類が含まれていた可能性を無視
したもので非現実的である。
したがって,分析結果が,ダイオキシン類が合成されたことの根拠に
なるとは考えられない。
ウデータの隠ぺいに関する反論について
(ア)原告らは,日本車輌が,本件実証試験のデータの一部を提出しなか
ったことを捉えてデータの隠ぺいであると主張するが,日本車輌がデー
タを提出しなかった理由は以下のとおりである。
日本車輌は,当初,本件実証試験において,新品のトランスにPCB
を塗布して試験を行い,PCBの分解率を算出する計画であった。しか
し,現在入手可能な新品のトランスと,現実に処理することとなる昭和
40年代ころのトランス(以下「実トランス」という。)では構造等が
異なっており,実際の処理との乖離が生じる可能性があった。このため,
可能な限り実際の処理の実態に近づけるべく,検討評価委員会の承認も
得た上で,本件実証試験では実トランスを使用することに変更した。た
だし,実トランスの試験においては,トランス処理後の残存物中のPC
B濃度は確認できるが,試験前に実トランスに付着していたり,既に染
み込んでいるPCBの総量(絶対量)を測定することは不可能であり,
生成ガス中のPCBやダイオキシン類の濃度を測定しても分解率が評価
できないため,トランスの生成ガス中のPCBやダイオキシン類の濃度
は,有意な測定項目としては位置づけなかった。
したがって,一つの社内資料としての測定結果として扱い,報告書に
記載すべきデータとしては扱わなかったにすぎず,PCBの処理性能に
ついては,PCB汚染油の本件実証試験結果から分解率を確認すること
で,検討評価委員会の評価を得たものである(乙43)。
(イ)以上のとおり,結果的に測定したデータについて報告されていない
ものがあるものの,意図的なデータ隠しではなく,これを隠ぺいしたな
どとの原告らの主張は邪推でしかない。
ちなみに,日本車輌が保有しているトランスの生成ガス中のダイオキ
シン類濃度は,1立方メートル当たり0.0094ナノグラムにすぎず,
目標値の0.01ナノグラムを下回っているほか,これに,その後にダ
イオキシン類に含まれることになったコプラナーPCBの0.12ナノ
グラムを加え,「ダイオキシン類の濃度の算出方法」(平成12年厚生
省告示第335号)に基づいて酸素濃度による補正を行うと,ダイオキ
シン類濃度は0.0587ナノグラムであって,やはり現在の基準を下
回っている。
(3)争点(2)イ(本件分解施設におけるPCB汚染トランス処理後の生成ガス
中におけるPCB濃度が,日本車輌の定めた自主基準値である1立方メート
ル当たり0.001ミリグラムを超える違法があるか否か)について
(原告らの主張)
ア自主基準値の位置づけについて
本件分解施設の排ガス,排気中のPCBについては,法令上の具体的な
基準は存在しないが,廃棄物処理法の改正(平成9年法律第85号による
もの)に際して発せられた厚生省の各種通達に,設置者自らが設定した計
画に従って維持管理していくことが記載されている(平成9年12月17
日付け生衛1112号(甲119),平成10年5月7日付け生衛発78
0号(甲90の2の5頁),平成10年5月7日付け衛環37号(甲12
0))。
これらの通達によれば,廃棄物処分業者は,「周辺地域の生活環境保
全」のために自ら申請した維持管理基準(自主基準値)に従わなければな
らないものであって,設置計画等が処分業者自ら設定した自主基準値に違
反する場合には,知事が設置許可処分を行うことは許されないと解すべき
である。
したがって,日本車輌の定めた自主基準値が達成できないにもかかわら
ず,被告が本件分解施設設置許可処分をしたことが判明した場合には,同
処分は違法として取り消されなければならない。
イPCB濃度に関する自主基準値の達成不能の根拠について
(ア)日本車輌の自主基準値とPCBの実測濃度
日本車輌は,生成ガス中のPCB濃度について,1立方メートル中0.
001ミリグラムという自主基準値を定めている(甲142の48頁)。
ところが,本件実証試験に関する日本車輌の愛知県環境部廃棄物対策
課に対する回答書(乙43)によれば,PCB汚染トランスから生じた
生成ガス中のPCBの実測濃度として1立方メートル当たり1万700
0ナノグラムの記載があるから,これを自主基準値と同単位に換算する
と,1立方メートル当たり0.017ミリグラムとなり,同基準値の1
7倍もの数値となっている。上記のような大幅な自主基準値違反が本件
分解施設設置許可処分の取消事由に当たることは明らかである。
(イ)本件申請書におけるPCB濃度の改ざん
また,日本車輌は,前述のとおり,PCB汚染トランスに関する本件
実証試験の結果のうち,生成ガスに関する分析結果を隠ぺいしていたと
ころ,後にトランスの生成ガス中のPCB濃度が1立方メートル当たり
1万7000ナノグラムであったことが判明したものであるが,本件各
許可申請書の仕様書には,気相水素還元法の性能を示すものとして,生
成ガス中のPCB濃度を4.0ナノグラムと記載した資料集を添付した。
これはまさにデータの改ざんであって,これを前提になされた本件分
解施設設置許可処分は取り消されるべきである。
(被告の主張)
原告らの主張は争う。
ア自主基準の位置づけについて
原告らは,産業廃棄物処理施設設置計画が事業者の設定した自主基準値
に違反する場合は,被告が設置許可をすることは許されないと解すべきで
あるなどと主張するが,廃棄物処理施設に関しては,法15条の2第1項
各号のいずれにも適合していると認める場合には,その設置を許可をしな
ければならないのであって,事業者自ら定めた自主基準を達成し得ること
が許可要件になることはない。
イPCB濃度が自主基準値を超えるとの原告らの主張について
原告らの上記主張は,PCB汚染トランスに関する本件実証試験の結果
に基づくものであるが,かかる主張は,日本車輌が,本件分解施設におい
て,固形物蒸発器やスクラバを改良している点を無視したものである。日
本車輌の維持管理に関する計画は,こうした改良点を含め,審査会におい
て審査され,適正な配慮がされたものであると認められる旨の意見が報告
されたものであり,この点を看過した原告らの主張は失当である。
なお,原告らの指摘する本件各許可申請書の仕様書に添付された資料集
(PCB処理技術資料集増補版(2)資料4−8)中のPCB濃度1立方メ
ートル当たり4.0ナノグラムの記載は,生成ガスの燃焼排ガス測定結果
を誤って転記したものにすぎず,最新版のPCB処理技術ガイドブック
(改訂版)においては削除されている(乙59)。
(4)争点(2)ウ(本件分解施設から排出されるダイオキシン類を常時測定,記
録すべきか否か。また,常時測定すべきではないとしても,測定方法自体に
不備があるか否か)について
(原告らの主張)
アダイオキシン類測定に関する許可基準について
(ア)常時測定の要件
法15条の2第1項1号は,都道府県知事は,「その産業廃棄物処理
施設の設置に関する計画が環境省令で定める技術上の基準に適合してい
る」のでなければ,当該施設の設置を許可してはならないと定めている
ところ,施行規則12条の2第13項2号は,施行令7条12号の2に
掲げられた分解施設について,「処理しようとする廃ポリ塩化ビフェニ
ル等又はポリ塩化ビフェニル処理物及びこれらの処理により生じた産業
廃棄物の性状を分析することができる設備が設けられていること」と規
定し,施行規則12条の2第14項2号は,ポリ塩化ビフェニル汚染物
分解施設についても同様の定めをしている。さらに,施行規則12条の
2第13項5号ハ(2)及び14項4号ハ(2)は,気相水素還元法を含む還
元熱化学分解施設について,「除去設備から排出された生成ガス中の主
要な成分を測定し,かつ,記録するための装置が設けられていること」
と定めている。また,維持管理の技術上の基準としても,施行規則12
条の7第13項4号ホ及び14項3号ヘは,「除去設備から排出された
生成ガス中の主要な成分を測定し,かつ,記録すること」と規定してい
る。
この点について,被告は,上記「主要な成分」にダイオキシン類は含
まれていない旨主張するが,廃棄物処理法改正に先立って開催された中
央環境審議会の第2回廃棄物処理基準等専門委員会は,ダイオキシン類
をも念頭において議論している上,施行規則12条の7第13項4号ト
及び14項3号チが,除去設備の出口におけるダイオキシン類の濃度を
規制していることからすると,「主要な成分」は,水素,メタン,一酸
化炭素,二酸化炭素に限定されるものではなく,ダイオキシン類も含む
と解釈すべきであるから,上記主張は誤りである。
したがって,本件分解施設においては,除去設備から排出された生成
ガス中の主要成分であるダイオキシン類の濃度を常時測定し,かつ,記
録するための装置が設けられていることが,その設置の許可要件になっ
ているというべきである。
(イ)適切な測定方法の要件
また,法15条の2の2を受けて,施行規則12条の7第13項4号
チ及び14項3号リは,維持管理の技術上の基準として,除去設備の出
口における生成ガス中のダイオキシン類の濃度を毎年1回以上測定し記
録することを定めている。
したがって,ダイオキシン類の測定方法に不備がある場合には,本件
分解施設設置許可処分は,上記各規定に違反するものである。
イダイオキシン類測定に関する許可基準違反の根拠について
(ア)本件分解施設がダイオキシン類濃度測定装置を備えていないこと
本件分解施設は,除去設備から排出された生成ガス中のダイオキシン
類を測定し,記録する設備を設けていない。そうすると,本件分解施設
は,法の規定を満たさないものであり,その設置許可処分は取り消され
るべきである。
この点についても,被告は,外部委託のPCB濃度モニタ(型式CP
−2000P)でPCB濃度を管理し,これからダイオキシン類濃度を
類推する(甲6)から技術上の基準に合致する旨主張するが,生成ガス
中のダイオキシン類をリアルタイムで連続測定していく技術や装置が開
発されている(甲138)上,両者の相関関係を示す科学的な根拠は存
在しないから,上記の類推という手法は不可能である。
(イ)PCB濃度モニタの精度
上記のモニタについては,製造元の日立那珂エレクトロニクスからの
回答(甲147)によれば,PCBが存在するか否かを検査できる最下
限を意味する「検出下限」は1立方メートル当たり6.6マイクログラ
ム(2分)ないし1.65マイクログラム(30分)であり,その量の
多寡を計測できる最下限である「定量下限」ともに必要な測定精度を有
しておらず,到底,日本車輌が定めた運転管理値である同1マイクログ
ラムを測定することはできない。まして,きょう雑物質が混在している
ときの精度が悪化する可能性は高い。
ウ小括
よって,本件分解施設はダイオキシン類測定に関する許可基準を満たし
ていないから,本件分解施設設置許可処分は違法である。
(被告の主張)
原告らの主張は争う。
ア施行規則の定める「主要な成分」について
施行規則12条の2第13項5号ハ(2)及び14項4号ハ(2)は,除去設
備から排出された生成ガス中の主要な成分を測定し,かつ,記録するため
の装置が設けられていることを要求しているところ,ここにいう「主要な
成分」とは,水素,メタン,一酸化炭素,二酸化炭素等と解されており
(乙38),ダイオキシン類のように非常に微量にしか含有されず,高性
能の測定装置が必要な物質までも対象としているものではない。
イ本件分解施設における測定頻度・方法について
維持管理の技術上の基準である施行規則12条の7第13項4号チ及び
14項3号リは,「除去設備の出口における生成ガス中のダイオキシン類
の濃度を毎年1回以上,粒子状の物質及び塩化水素の濃度を6月に1回以
上測定し,かつ,記録すること」と規定しているところ,日本車輌は,ス
クラバ出口とオフガスタンクで6月ごとに測定することとしており,上記
基準に適合していることが明らかである。
なお,原告らが主張するように,生成ガス中のダイオキシン類濃度につ
いて,常時備え付けてリアルタイムで連続測定する装置は実用化されてい
ない。したがって,日本車輌の計画では,上記のように6月ごとにダイオ
キシン類濃度を測定するほか,普段の運転管理においては,水素,酸素,
メタン,一酸化炭素,二酸化炭素,モノクロロベンゼン,ベンゼン,PC
Bの濃度を測定し(甲6),これらを指標として,総合的な運転管理を行
うこととしているところ,その計画の合理性については,専門的知識を有
する者で構成される審査会で審査された結果,PCB濃度モニタは,ガス
クロマト質量分析計と検量しながら使えば,モニタとして使えるとの結論
が出されている。
ウ小括
したがって,本件分解施設におけるダイオキシン類測定方法等は,科学
的な合理性を有しているから,上記原告らの主張は何ら取消原因たり得な
いものであり,失当というほかない。
(5)争点(2)エ(本件分解施設からの排水中のフッ素濃度が,水質汚濁防止法
3条1項所定の排水基準値(1リットル当たり15ミリグラム)を超える違
法があるか否か。また,日本車輌の自主基準値(同2ミリグラム)を超える
違法があるか否か)について
(原告らの主張)
アフッ素濃度に関する設置許可基準について
法15条の2第1項1号は,廃棄物処理施設の設置要件として,「その
産業廃棄物処理施設の設置に関する計画が環境省令で定める技術上の基準
に適合している」ことを要求し,これを受けて,施行規則12条6号は,
技術上の基準として,「施設から排水を放流する場合は,その水質を生活
環境保全上の支障が生じないものとするために必要な排水処理設備が設け
られていること」を規定している。
そして,排水に関しては,水質汚濁防止法が排水基準を定めているとこ
ろ,同法3条1項に基づく「水質汚濁防止法第3条第1項の規定による排
水基準を定める省令」(昭和46年総理府令第35号)の別表第1によれ
ば,有害物質の種類が「ふつ素及びその化合物」の場合,許容限度は,
「海域に排出されるもの1リットルにつきふつ素15ミリグラム」と定め
られているから,本件分解施設から海域に排出される排水のフッ素濃度が
上記許容限度以下であることが,その設置許可要件となっている。
また,上記のとおり,廃棄物処分業を行おうとする者は,申請書に記載
した自主基準値に従って維持管理をしなければならなず,これに違反する
場合に設置許可することは許されない。本件において,日本車輌は,本件
分解施設設置許可申請の際,排水中のフッ素濃度を1リットル当たり2ミ
リグラム以下とする管理目標値(自主基準値)を設定しており(甲36),
日本車輌が上記値を達成することができることが許可基準となる。
以上によれば,本件分解施設からの排水中のフッ素濃度が,水質汚濁防
止法上の排水基準である1リットルにつき15ミリグラムを超える場合は
もちろんのこと,仮に,同基準を満たすとしても,自主基準値(1リット
ルにつき2ミリグラム)を達成することができない場合には,本件分解施
設設置許可処分は違法となる。
イ本件分解設備が許可基準に違反する根拠について
(ア)本件実証試験の不十分さ
被告は,本件分解施設からの排水処理が合理的であることは本件実証
試験によって根拠づけられると主張するが,本件実証試験における廃水
処理データは,スクラバ水から有害物を取り除くため,廃水を容器に採
り,そこに活性炭を入れてかくはんした結果を分析したものであって
(甲32),活性炭やスクラバ水の量については何ら説明されていない
ばかりか,本件分解施設設置許可申請に係る廃水処理設備は,本件実証
試験における設備と全く異なるものであるから,その安全性は,実験等
によって何ら根拠づけられていない。
(イ)日本車輌の処理方法の問題点
日本車輌が採用する塩化カルシウム凝集沈殿処理法による排水処理で
は,フッ素濃度を海洋への排出基準である1リットル当たり15ミリグ
ラム以下にすることは困難であるといわれており,しかもフッ素濃度が
低くなるほど処理効率が低下する傾向があることが学術的に指摘されて
いる。これより厳格な海洋以外への排出基準である1リットル当たり8
ミリグラム以下の濃度で排水するためには,樹脂吸着装置や2段凝集沈
殿装置を設置した上で,大量に発生する汚泥を処理する必要があるとこ
ろ,既にこのようなフッ素高度処理装置が開発されており,1リットル
当たり8ミリグラム以下に処理することが可能となっている。
これに対して,日本車輌は,独自の計算の結果,排水中のフッ素濃度
を1リットル当たり2ミリグラム以下に処理することができると計画し
ているが,その排水処理設備が,①1段式であり,多段式ではないこと,
②汚泥を脱水する装置がないこと,③上記のようなフッ素の高度処理を
行うものではないことに照らすと,その計画は机上の空論といわざるを
得ない。
(ウ)日本車輌のフッ素処理技術には十分な根拠がないこと
本件洗浄施設において,PCB汚染物であるトランス等を洗浄した後
の溶剤は,再度洗浄溶剤として再利用するために蒸留を行うが,その蒸
留残さにはフッ素が含まれており,かかる残留残さは,本件分解施設で
分解処理されるから,その生成ガスにもフッ化水素が含まれることとな
る。そして,フッ化水素を含む生成ガスを洗浄した後の排水は,油分除
去凝集ろ過器,凝集沈殿処理装置(凝集反応槽,沈殿槽,砂ろ過器,活
性炭吸着塔)を経て,貯留タンクに貯められることになる。
このような排水処理の過程で,蒸留残さを分解処理する限り,フッ素
(=フッ化水素)が発生するところ,日本車輌は,本件分解施設設置許
可申請書添付の資料(甲31)において,計算根拠とともに放流水のフ
ッ素濃度を1リットル当たり1.38ミリグラムとしている。しかし,
かかる数値は,上記のとおり,実証試験に基づくものではないばかりか,
以下のとおり,その算出方法にも誤りがある。
すなわち,日本車輌は,フッ化カルシウムの溶解度は0.017であ
り,これ以上のフッ化カルシウムは沈殿するので,溶解するフッ素濃度
は1リットル当たり8.27ミリグラムであるとし,他方,廃溶剤を分
解処理する時間は2時間であるところ,排水処理施設の設計値によれば
スクラバ水の排水量は1時間当たり1.5立方メートルであるから,こ
の間のスクラバ水の量は3立方メートルであるとし,これを18立方メ
ートルの貯留タンクに貯留するから6倍に希釈され,これに含まれるフ
ッ素も同様に希釈されるとの前提に立って,最終的なフッ素濃度を1リ
ットル当たり1.38ミリグラムまでに抑えて処理できるとする。
しかし,本件分解施設におけるスクラバ設備の構造上,スクラバ水は,
第1循環水タンク,第2循環水タンクと循環して,最終的に第1スクラ
バ受水タンクよりオーバーフローして排水処理設備へ流れ出ることにな
っており,排水処理装置に流れ出るのは,第1スクラバ受水タンクから
オーバーフローした液体のほかに,第1・第2スクラバ受水タンクから
遠心分離機又は自動ストレーナで除去した粒子状物質を含む排水も含ま
れている。ところで,上記各タンクの容量13.82立方メートルのう
ち8割の水量が存在していると仮定すると,11.056立方メートル
となり,これと2時間分の排水処理設備に流れ出るスクラバ水3立方メ
ートルを合わせた約14立方メートルの水にフッ素が含まれる計算とな
る。日本車輌の計算は,2時間分の排水処理設備で処理される排水3立
方メートルにしかフッ素が含まれていないこと,すなわちフッ素がスク
ラバ設備で混合されることなく,直ちにオーバーフロー水とともに流れ
出ることを前提としている点に誤りがある。
そうすると,18立方メートルの貯留タンクに貯留することになる液
体総量は3立方メートルではなく14立方メートルに,そこに含まれる
フッ素濃度も1立方メートル当たり8.27ミリグラムになるから,1
8立方メートルの貯留タンクでの希釈を考慮しても,計算上のフッ素濃
度は1リットル当たり6.43ミリグラムに達する。したがって,最終
的なフッ素濃度を1リットル当たり1.38ミリグラムまでに抑えて処
理できるとする日本車輌の説明は机上の空論にすぎない。
(エ)フッ素濃度に関する被告の主張は本件分解施設設置許可申請書に記
載されていないこと
被告は,本件分解施設のフッ素濃度が自主基準の1リットル当たり2
ミリグラム以下とすることを確認した旨主張するが,これは,原告らが
自主基準を達成することができない旨指摘した後,日本車輌に照会し,
その回答をそのまま主張したにすぎず,本件分解施設設置許可申請書か
らは到底読み取れない内容である。
しかし,本件分解施設設置許可処分は,上記許可申請書の記載を根拠
としてなされたはずであり,これと矛盾する上記回答を根拠になされた
ものではない。そうすると,被告は,法15条の2第1項1号,2号に
適合するか否かの審査を十分に行っていないことになる。
ウ小括
以上のとおり,日本車輌の排水処理技術では,排水中のフッ素濃度につ
き,1リットル当たり15ミリグラムという水質汚濁防止法上の排出基準
を達成することができず,仮にこれが可能であったとしても,1リットル
当たり2ミリグラムという自主基準値を達成することができないことは明
らかであるから,本件分解施設設置許可処分は取り消されるべきである。
(被告の主張)
原告らの主張は争う。
アフッ素の排水基準について
そもそも海域は,自然の状態においてフッ素濃度が高いため,環境基準
が設定されていない。そして,施行規則12条6号は,維持管理の技術上
の基準として,「施設から排水を放流する場合は,その水質を生活環境保
全上の支障が生じないものとするために必要な排水処理設備が設けられて
いること」と規定しているところ,具体的なフッ素の排水基準は水質汚濁
防止法3条1項の規定による「水質汚濁防止法第3条第1項の規定による
排水基準を定める省令」(昭和46年総理府令第35号)別表第1におい
て,「海域に排水されるもの1リットルにつきふつ素15ミリグラム」と
規定されており,この基準に適合すれば,生活環境保全上の支障は生じな
いものと解される。
また,法15条の2第5項の規定により,設置許可に係る産業廃棄物処
理施設については,都道府県知事の検査を受け,申請書に記載した設置に
関する計画に適合していると認められた後でなければ,これを使用しては
ならないとされているところ,被告は,排水のフッ素濃度が本件分解施設
設置許可申請書に記載された1リットル当たり2ミリグラム以下になるこ
とを検査し,上記計画に適合することを確認することとしている。
イ排水中のフッ素濃度について
本件分解施設からの排水中に含まれるフッ素の濃度は,以下のとおり排
水処理過程で6倍に希釈され,最終的に1リットル当たり2ミリグラムに
まで処理される。
(ア)PCB処理に伴い,排水にフッ素が生じるのは,フッ素を含む廃溶
剤を処理するときであり,その頻度は月1回である。
(イ)フッ素を含む廃溶剤の処理は,設備を点検するために設備を停止す
る直前の約2時間で処理する計画である。
(ウ)また,設備を停止する直前の処理のため,スクラバの運転管理を次
のように行う。
aスクラバへの工水を追加せず,各スクラバ水約6立方メートルを循
環させる。このとき,排水処理設備へのスクラバ水のオーバーフロー
はない。
bフッ素を含む廃溶剤を処理し,反応器の停止後,第1段目のスクラ
バのスクラバ水約6立方メートルのうち,まず3立方メートルを排水
処理設備で2時間かけて処理し,フッ素を含まない排水処理水15立
方メートル(10時間分)が貯まっている貯留タンクに排水する。
c次に残りのスクラバ水3立方メートルを排水処理設備で2時間かけ
て処理し,フッ素を含まない排水処理水15立方メートル(10時間
分)が貯まっている3基の貯留タンクのうち,1段目のスクラバの洗
浄水の処理水を排水していない貯留タンクに排水する。
(エ)このため,フッ素を含む排水処理水3立方メートルとフッ素を含ま
ない排水処理水15立方メートルが混合され,6倍に希釈される。
(オ)また,フッ化水素は第1段目のスクラバで除去可能であるが,念の
ため,第2段目のスクラバのスクラバ水も処理し,分析後放流する予定
である。なお,フッ素濃度を1リットル当たり2ミリグラム以下とする
技術は既に実用化されており(乙28),日本車輌はこの技術の導入を
検討している(乙60)ほか,施設の運転管理及び維持管理の徹底を図
るべくマニュアルの整備や従業員の教育を行うことにより,より一層の
環境影響の低減に努めることを計画している。
ウ小括
原告らは,日本車輌の上記計画におけるフッ素濃度の計算を誤りである
として,独自の試算結果を主張しているが,原告らは,日本車輌と異なる
前提に立った上で異なる試算結果を導いているにすぎない。
このように日本車輌の排水処理は,施行規則12条6項の技術上の基準
に適合していることは明らかであって,法15条の2第1項1号に違反す
るとの原告らの主張は失当であるから,本件分解施設設置許可処分に取り
消されるべき違法はない。
(6)争点(2)オ(本件洗浄施設において使用される溶剤の洗浄力が法令の基準
を満たさない違法があるか否か)について
(原告らの主張)
ア溶剤の洗浄力に関する許可基準について
廃棄物処理法には溶剤の洗浄力に関する規定はない。しかし,施行規則
1条の2第4項において,PCB処理物に係る環境省令で定める基準は
「……廃プラスチック類又は金属くずの場合は当該廃プラスチック類又は
金属くずにポリ塩化ビフェニルが付着していない,又は封入されていない
こと」と定められている。したがって,法の定める溶媒で洗浄したときに
洗浄液を検定して,その値が基準以下となって初めて被洗浄物である金属
くずにPCBが付着していないことが証明され,上記基準を満たすことに
なる。
ところで,検定方法第3ロの廃油については,別表第3の第1の検定方
法(洗浄液試験法)に用いる洗浄液が,トリクロロエチレン,テトラクロ
ロエチレン又はこれらと同等以上の洗浄力を有することを要求していると
ころ,第3ニの金属くず等の検定方法も上記と同じであるから,洗浄液も
同様に規定されるといわなければならない。したがって,PCB処理物を
洗浄する際の溶剤としては,トリクロロエチレン,テトラクロロエチレン
又はこれらと同等以上の洗浄力を有することが本件洗浄施設の許可基準と
なっているというべきである。すなわち,廃棄物処理法には溶剤に洗浄力
に関する規定はないが,処理ができたかどうかの検定方法に規制がある。
そうすると,本件洗浄施設において用いられる溶剤が,検定方法で定め
られた程度の性能を有していない場合には,本件洗浄施設設置許可処分は,
法15条の2第1項1号,施行令6条の5第1項2号ホ,2条の4第5号
ハ,施行規則1条の2第4項,検定方法に違反し,違法となる。
イ本件洗浄施設の溶剤が上記許可基準に違反する根拠について
(ア)日本車輌は,PCB汚染トランスを洗浄する溶剤として,旭硝子株
式会社製の「アサヒクリンAK−225」を選定した。
そこで,原告らは,アサヒクリンAK−225が,トリクロロエチレ
ン及びテトラクロロエチレンと同等以上の洗浄力を有するか否かを検討
するため,日本車輌が参照した「PCB処理技術ガイドブック」に記載
されている溶剤洗浄処理基礎試験結果を用いて,その概要をグラフに作
成した(甲23)。これによれば,アサヒクリンAK−225は,トリ
クロロエチレン及びテトラクロロエチレンと比較して油分除去率(洗浄
時間30分)が約5ないし6パーセント低く,同等以上の洗浄力を有し
ていない。
廃棄物処理法が,トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンと同
等以上の洗浄力を有していることを規定しているのは,現在の知見にお
いて,これらの溶剤が,十分にPCBを洗浄除去し,汚染物とされてい
たトランス類も汚染していないものとして排出することができると考え
ているからである。実際,三菱重工などの他の企業では,廃棄物処理法
上の基準に合致した施設,方法で処理を行うよう努力している。
しかし,日本車輌は,アサヒクリンAK−225が消防法,水質汚濁
防止法,大気汚染防止法等の関係法令の適用を受けないことから,溶剤
試験をすることなく,PCB処理技術ガイドブックの溶剤洗浄処理基礎
試験結果のみを引用して溶剤を選択したものであり,安全性が実証され
ているとはいえない。
(イ)日本車輌は,PCB処理技術ガイドブックの溶剤洗浄処理基礎試験
結果を根拠に溶剤を選定したが,同試験結果は,溶剤を満たしたビーカ
ーに試験片を入れ,超音波洗浄にかけるという方法で得られたものであ
る。
しかし,本件洗浄施設においては,洗浄容器に入れられた溶剤中にP
CB汚染トランスを浸漬し,溶剤を循環して洗浄する方法であり,超音
波によるキャビティ(空洞)の破壊の衝撃で異物を強力に剥離して表面
を洗浄する方法ではなく,狭い箇所にも洗浄液が行き渡る方法でもない。
したがって,この方法で上記ガイドブックの溶解力と同じ結果を得るこ
とは困難である。
ウ小括
被告は,上記のように日本車輌が計画している溶剤の能力や洗浄方法の
効果について何らの実証試験をさせないまま,本件洗浄施設設置許可処分
を行ったものであって,違法である。
(被告の主張)
原告らの主張は争う。
原告らは,検定方法を根拠として,洗浄液(溶剤)について,トリクロロ
エチレン,テトラクロロエチレン又はこれらと同等以上の洗浄力を有するこ
とがPCB汚染物の洗浄施設の設置許可基準であると主張する。
しかし,廃棄物処理法上,PCB洗浄施設で用いられる溶剤についての定
めはなく,日本車輌が採用したアサヒクリンAK−225に十分な洗浄能力
があることも審査会で確認されている(甲23,乙57)。
原告らの指摘する検定方法は,施行規則1条4項及び同規則1条の2第5
1項に基づき定められた基準への適合性を測定する方法を定めたものにすぎ
ず,産業廃棄物処理施設の設置許可についての技術上の基準ではない。また,
原告らの指摘する検定方法第3ロは,法15条の2第1項と無関係な「廃
油」に関するものであって,まったく見当違いというほかない。
したがって,この点に関する原告らの主張は失当である。
(7)争点(2)カ(本件洗浄施設を対象とする住民説明会が実施されていない違
法があるか否か)について
(原告らの主張)
ア説明会に関する許可基準について
本件条例9条1項は,「(廃棄物処理施設)設置者の義務として,(廃
棄物処理)計画の内容を周知させるための説明会を開催しなければならな
い」と定めているから,住民説明会を開催して産業廃棄物処理施設の周辺
住民に対して計画の内容を周知させることが許可要件となっている。
したがって,住民説明会を経ていない場合には,本件洗浄施設設置許可
処分は,法15条の2第1項2号,本件条例9条1項に違反し,違法であ
る。
イ本件洗浄施設についての説明会の欠如について
日本車輌は,当初,PCB廃棄物処理施設のうちの洗浄設備は,金属く
ず等の処理物をすべて溶剤抽出装置に搬入し,その溶剤を分析することに
より卒業判定を行うための施設であるとの前提で,分解施設設置許可のみ
を受ける計画を立案しており,平成15年3月17日に提出された本件計
画書には,本件分解施設の説明しかなく,同年8月9日,10日に開催さ
れた住民説明会でも本件分解施設についての説明しかされなかった。
しかし,日本車輌は,その後,愛知県環境部廃棄物対策課等から,上記
洗浄設備は卒業判定を行うための設備であるとしても,PCB処理物に付
着しているPCBを洗浄除去する装置であるので,施行令7条13号の洗
浄施設に該当するとの指導を受け,平成16年3月31日,本件分解施設
のみならず,本件洗浄施設についても設置許可申請をしたものである。そ
の結果,日本車輌は,本件洗浄施設については,その構造計画,維持管理
計画についての住民説明会を開催しておらず,本件条例9条1項に違反し
ていることは明らかである。
したがって,本件洗浄施設設置許可処分は違法であり,取り消されるべ
きである。
(被告の主張)
原告らの主張は争う。
ア廃棄物処理法と本件条例との関係について
産業廃棄物処理施設設置許可の手続は,本来は廃棄物処理法に基づくも
のがあるだけであるが,愛知県においては,地元市町村,住民等の意見を
尊重し,PCB廃棄物の処理施設の円滑な立地と適正処理を推進すること
によって,県民の生活環境の保全を図ることを目的として,旧要綱を独自
に制定し(平成13年1月23日施行),さらに平成15年3月25日,
本件条例を制定している(同年10月1日施行)。
原告らは,本件洗浄施設については住民説明会が開催されていないとし
て,同施設設置許可処分が本件条例に違反していると主張するが,廃棄物
処理法に定める産業廃棄物処理施設の設置許可の手続と本件条例に定める
手続は別のものであって,本件条例に定める手続上の問題点が,本件洗浄
施設設置許可処分の瑕疵となることはなく,本件条例を根拠として法15
条の2第1項2号の違反をいう原告らの主張は失当というほかない。
イ本件条例に基づく手続の適正な履践について
日本車輌による本件計画書の提出(乙5)から,平成15年8月9,1
0日の同社による住民説明会の開催までの手続は,旧要綱に則って適正に
履践された。そして,同年10月1日に本件条例及び本件条例施行規則が
施行された後は,これらの規定に基づく手続も適正に履践されている。
なお,日本車輌は,平成15年6月と同年8月に合計6回の旧要綱に基
づく説明会を開催していたが,これらは本件条例9条と同等の手続,内容,
範囲で開催されていたため,同条に基づく説明会とみなされ,本件条例上
の住民説明会としては,平成16年1月17日に開催された説明会と併せ
て,合計7回の説明会が実施されたことになる。
以上のとおり,本件条例に基づく手続も適正に履践されたものであり,
この点からも原告らの主張には理由がない。
(8)争点(2)キ(本件各施設の設置許可申請につき,日本車輌が「その業務に
関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由
がある者」に該当するか否か)について
(原告らの主張)
ア申請者に関する許可基準について
産業廃棄物処理施設の設置許可の申請者が,その業務に関し不正又は不
誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者に該
当するときには,産業廃棄物処理施設の設置を許可をしてはならないこと
とされている(法15条の2第1項4号,14条5項2号イ,同号ニ及び
7条5項4号ホ)。
したがって,上記のような事情が認められる場合には,本件各許可処分
は,上記各規定に違反し,違法である。
イ日本車輌の不正又は不誠実な行為について
日本車輌は,本件実証試験に係るデータを隠したまま,気相水素還元法
につき,検討評価委員会の技術評価を受けており,さらに,愛知県などに
対しては,PCB汚染トランスから生じた生成ガスについての測定分析を
していないなどと虚偽の回答をしている。このように,日本車輌が,本件
実証試験のデータを一部隠しながら,検討評価委員会による評価を受けて
いるから本件各施設は安全であるなどと主張することは,産業廃棄物処理
施設を管理・運営する者としては不誠実極まりないというべきである。
その他,本件各許可処分を受けるまでの態度に照らせば,日本車輌は自
己の経済的利益を優先させ,地域住民の安全確保や説明責任を果たす意思
が極めて薄弱であるというほかないから,その業務に関し不正又は不誠実
な行為をするおそれがあることは明らかである。
したがって,日本車輌は,法15条の2第1項4号,14条4項2号イ,
7条5項4号トに該当する者であるから,本件各許可処分は取り消される
べきである。
(被告の主張)
原告らの主張は争う。
日本車輌には,原告らが指摘するような,「その業務に関し不正又は不誠
実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」に該当
するような事情はなく,主張自体失当である。
この点につき,原告らは,日本車輌が本件実証試験のデータを隠ぺいした
と主張するが,事実関係は,前記(争点(2)についての被告の主張ウ)のと
おりであって,原告らの邪推というほかない(なお,仮に,原告の主張する
ような事実があったとしても,それが法15条の2第1項4号,14条5項
2号イ,7条5項4号トに該当し得るかははなはだ疑問である。)。また,
日本車輌が保有しているトランスの生成ガス中のダイオキシン類の濃度に関
する結果についても,当時のダイオキシン類の定義(コプラナーPCBを含
んでいなかった。)や酸素濃度による補正を考慮すれば,日本車輌の目標値
やダイオキシン類の濃度に関する基準との関係で特段問題のなかったことが
判明しており,何ら問題はない。
したがって,本件各許可処分は何ら違法ではない。
第3当裁判所の判断
1争点(1)(本案前の争点・原告適格の有無)について
(1)原告適格の判断手法について
行政事件訴訟法9条1項の「法律上の利益を有する者」とは,当該処分に
より自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵
害されるおそれのある者をいうところ,当該処分を定めた行政法規が,不特
定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,
それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣
旨を含むと解される場合には,このような利益もここにいう法律上保護され
た利益に当たり,当該処分により上記利益を侵害され又は必然的に侵害され
るおそれのある者は,当該処分の取消訴訟における原告適格を有すると解さ
れる。
そして,処分の相手方以外の者について法律上の利益の有無を判断するに
当たっては,同条2項が定めるとおり,当該処分の根拠となる法令の規定の
文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において
考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し,この場合において,当該法令
の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係
法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し,当該利益の内容及び性質を
考慮するに当たっては,当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場
合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び
程度をも勘案すべきものである(最高裁平成17年12月7日大法廷判決・
裁判所時報1401号2頁参照)。
以下,かかる観点から原告らの原告適格の有無について検討する。
(2)廃棄物処理法による規制について
ア廃棄物処理法の趣旨・目的について
本件各許可処分の根拠法令たる廃棄物処理法は,廃棄物の排出を抑制し,
及び廃棄物の適正な分別,保管,収集,運搬,再生,処分等の処理をし,
並びに生活環境を清潔にすることにより,生活環境の保全及び公衆衛生の
向上を図ることを目的としている(1条)。
そして,廃棄物処理法は,事業者に対しては廃棄物の適正な処理を行う
ことを,国や地方公共団体に対しては,廃棄物の適正な処理に必要,適切
な措置を講ずべきことを,一般的責務としている(3条,4条)。
イ廃棄物処理法の規制内容・手法について
(ア)廃棄物処理法は,その規制対象たる廃棄物を,一般廃棄物と産業廃
棄物(事業活動に伴って生じた廃棄物のうち一定のもの及び輸入された
廃棄物)とに大別した上,爆発性,毒性,感染性その他の人の健康又は
生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有する廃棄物のうち一
定のものを「特別管理一般廃棄物」及び「特別管理産業廃棄物」と定義
し(2条),それぞれの性質に応じた規制を加えている。
その規制内容・手法の概要を示すと,①事業者が産業廃棄物を自ら運
搬,保管,処分,委託する場合の規制,具体的には,「産業廃棄物処理
基準」,「産業廃棄物保管基準」等の遵守(12条),その対象が特別
管理産業廃棄物である場合は,「特別管理産業廃棄物処理基準」,「特
別管理産業廃棄物保管基準」等の遵守(12条の2),②産業廃棄物の
収集,運搬,処分を業として行う場合の規制,具体的には,一定の要件
充足を前提とする都道府県知事による許可制,「産業廃棄物処理基準」
の遵守,事業停止命令や許可取消しによる違反状態の是正(14条ない
し14条の3の2),その対象物が特別管理産業廃棄物である場合の同
様の規制(14条の4ないし14条の7),③産業廃棄物処理施設を設
置する場合の規制,具体的には,一定の要件充足を前提とする都道府県
知事による許可制,一定の要件充足を前提とする都道府県知事による許
可制,一定の基準に従った施設の維持管理義務(15条ないし15条の
4)等の規定となる(なお,規制に違反した場合には,25条以下によ
って罰則の対象となり得る。)。
(イ)そこで,上記③の産業廃棄物処理施設の設置許可基準としての技術
上の基準について検討する。
a産業廃棄物処理施設に共通する技術上の基準
廃棄物処理法は,産業廃棄物処理施設全般の設置につき,その地を
管轄する都道府県知事の許可を要することとし(15条1項),許可
の基準の一つとして,「その設置計画が,環境省令で定める技術上の
基準に適合していること」(15条の2第1項1号)を挙げている。
そして,同号の規定を受けて,施行規則12条は,産業廃棄物処理
施設全般に共通する技術上の基準として,①自重,積載荷重その他の
荷重,地震力及び温度応力に対して構造耐力上安全であること,②産
業廃棄物,産業廃棄物の処理に伴い生ずる排ガス及び排水,施設にお
いて使用する薬剤等による腐食を防止するために必要な措置が講じら
れていること,③産業廃棄物の飛散及び流出並びに悪臭の発散を防止
するために必要な構造のものであり,又は必要な設備が設けられてい
ること,④著しい騒音及び振動を発生し,周囲の生活環境を損なわな
いものであること,⑤施設から排水を放流する場合は,その水質を生
活環境保全上の支障が生じないものとするために必要な排水処理設備
が設けられていること,⑥産業廃棄物の受入設備及び処理された産業
廃棄物の貯留設備は,施設の処理能力に応じ,十分な容量を有するも
のであることを定めている(1号,3号ないし7号)。
bPCB分解施設及びPCB洗浄施設の技術上の基準
また,施行規則12条の2第13項ないし15項は,当該産業廃棄
物処理施設が廃PCB等又はPCB処理物の分解施設(施行令7条1
2号の2。以下「PCB分解施設」という。)及びPCB汚染物又は
PCB処理物の洗浄施設(施行令7条13号。以下「PCB洗浄施
設」という。)に当たるときは,施行規則12条の定めるaの技術上
の基準に加えて,以下のとおり,これら施設に固有の技術上の基準を
満たすことも要求している。
(a)PCB分解施設について
PCB分解施設に関する技術上の基準としては,①事故時におけ
る受入設備,反応設備等からの廃油,廃酸及び廃アルカリの流出を
防止するために必要な流出防止堤その他の設備が設けられ,かつ,
当該設備が設置される床又は地盤面は,廃油,廃酸及び廃アルカリ
が浸透しない材料で築造され,又は被覆されていること(同条13
項1号,14項1号)のほか,②反応設備において,<ア>高温に耐
え,腐食を防止するための必要な措置,<イ>外気との遮断及び<ウ>
爆発を防止するために必要な措置などが講じられていること(同条
13項5号ロ(1),(3),(5),14項4号ロ(1),(3),(5)),③除
去設備において,<ア>反応設備から排出された生成ガス中の粒子状
の物質及び塩化水素を除去することができるものであること,<イ>
除去設備から排出された生成ガス中の主要な成分を測定し,かつ,
記録するための装置が設けられていること(13項5号ハ(1),(2),
14項4号ハ(1),(2)),④事故時における反応設備からのガスの
漏出を防止することができる設備が設けられていること(13項5
号ニ,14項4号ニ),⑤粒子状の物質を排出し,貯留することが
できる取出設備及び貯留設備(粒子状の物質の飛散及び流出を防止
することができるものに限る。)が設けられていること(13項5
号ホ,14項4号ホ)などが定められている。
(b)PCB洗浄施設について
PCB洗浄施設に関する技術上の基準としては,①事故時におけ
る受入設備,洗浄設備又は分離設備及び洗浄剤又はPCBの回収設
備からの廃油,廃酸又は廃アルカリの流出を防止するために必要な
流出防止堤その他の設備が設けられ,かつ,当該設備が設置される
床又は地盤面は,廃油,廃酸又は廃アルカリが浸透しない材料で築
造され,又は被覆されていること(同条15項1号)のほか,②回
収設備において,<ア>回収設備内を分離されたPCBの回収に必要
な温度とし,かつ,これを保つことができる温度制御装置や,回収
設備内の温度を連続的に測定し,かつ,記録するための装置が設け
られていること(同項3号ロ(1),(2)),<イ>回収設備から排出さ
れる排気による生活環境保全上の支障が生じないようにすることが
できる排気処理装置等が設けられていること(同項3号ロ(3)),
③PCBの分離及び回収の後に生じた産業廃棄物を,飛散及び流出
を防ぎながら排出し,貯留することができる取出設備及び貯留設備
が設けられていること(同項3号ハ)などが定められている。
(ウ)設置許可基準としての生活環境の保全への配慮等について
また,廃棄物処理法は,上記許可の要件として,「その産業廃棄物処
理施設の設置に関する計画及び維持管理に関する計画が当該産業廃棄物
処理施設に係る周辺地域の生活環境の保全及び環境省令で定める周辺の
施設について適正な配慮がなされたものであること」を規定している
(15条の2第1項2号)。
ウ廃棄物処理法の定める許可申請手続について
都道府県知事が,上記許可要件の適合性を判断する前提となる設置許可
申請書には,処理施設の種類,廃棄物の種類,設置に関する計画及び維持
に関する計画等を記載しなければならないほか(法15条2項3号ないし
7号),この申請書には,環境省令で定めるところにより,当該処理施設
を設置することが,周辺地域の生活環境に及ぼす影響についての調査の結
果を記載した書類を添付しなければならないとされている(同条3項)。
そして,これを受けて,施行規則は,上記書類の記載事項として,①設
置しようとする産業廃棄物処理施設の種類及び規模並びに処理する産業廃
棄物の種類を勘案し,当該産業廃棄物処理施設を設置することに伴い生ず
る大気汚染,水質汚濁,騒音,振動又は悪臭に係る事項のうち,周辺地域
の生活環境に影響を及ぼすおそれがあるものとして調査を行ったもの(以
下「生活環境影響調査項目」という。),②生活環境影響調査項目の現況
及びその把握の方法,③当該産業廃棄物処理施設を設置することが周辺地
域の生活環境に及ぼす影響の程度を予測するために把握した水象,気象そ
の他自然的条件及び人口,土地利用その他社会的条件の現況並びにその把
握の方法,④当該産業廃棄物処理施設を設置することにより予測される生
活環境影響調査項目に係る変化の程度及び当該変化の及ぶ範囲並びにその
予測の方法,⑤当該産業廃棄物処理施設を設置することにより周辺地域の
生活環境に及ぼす影響の程度を分析した結果,⑥大気汚染,水質汚濁,騒
音,振動又は悪臭のうち,これらに係る事項を生活環境影響調査項目に含
めなかったもの及びその理由,⑦その他当該産業廃棄物処理施設を設置す
ることが周辺地域の生活環境に及ぼす影響についての調査に関して参考と
なる事項を記載しなければならないとしている(11条の2各号)。
また,都道府県知事は,産業廃棄物処理施設設置許可申請があった場合
には,遅滞なく,申請者名,処理施設の設置場所,処理施設の種類及び産
業廃棄物の種類,申請年月日等を告示するとともに,申請書及び上記の周
辺地域の生活環境に及ぼす影響についての調査の結果を記載した書類を一
定期間公衆の縦覧に供しなければならず(法15条4項),さらに,上記
告示の後,遅滞なく当該産業廃棄物処理施設の設置に関し,生活環境の保
全上関係がある市町村の長に通知し,その意見を聴かなければならず(同
条5項),さらに,当該廃棄物処理施設設置に利害関係を有する者は,一
定期間,当該都道府県知事に対し,生活環境の保全上の見地から意見書を
提出することができるとされている(同条6項)。
エ許可に付する条件について
都道府県知事は,廃棄物処理法15条1項の許可をするに際して,生活
環境の保全上必要な条件を付することができる(法15条の2第4項)。
そして,産業廃棄物処理施設の設置許可を受けた者(設置者)は,当該
産業廃棄物処理施設の維持管理に関する事項を記録し,これを当該施設に
備え置くとともに,当該維持管理に関し,生活環境の保全上利害関係を有
する者の求めに応じ,閲覧させなければならないこととされ(法15条の
2の3,8条の4),さらに,設置者は,当該産業廃棄物処理施設に係る
周辺地域の生活環境の保全及び増進に配慮することが求められている(法
15条の4,9条の4)。
(3)本件条例による規制について
本件条例は,愛知県として,廃棄物の適正な処理を確保するために必要な
規制をすることによって,廃棄物の適正な処理を促進し,もって県民の生活
環境の保全に資することを目的とするものであり(1条),産業廃棄物処理
施設の設置許可を受けようとする者に対し,当該許可に係る施設の設置等に
伴い生活環境に影響を及ぼすおそれがある地域として規則で定める地域を
「関係地域」として,これを対象に設置計画を周知させるための住民説明会
を開催することを義務付けている(9条1項)。
これを受けて,本件条例施行規則は,関係地域を,知事が別に定める基準
により,当該施設の設置等に伴い生活環境に影響を及ぼすおそれがあると認
められる地域と定めている(10条)ところ,廃棄物の適正な処理の促進に
関する条例の手引き(乙31)は,「関係地域」について,「次の廃棄物処
理施設の区分に応じ,調査事項ごとに定める調査対象地域が含まれる町又は
字の区域とする。」とし,例えば,大気汚染を調査事項とした場合には,調
査対象地域を「①煙突排ガスによる影響:プルーム式等の大気拡散式から推
定される最大着地濃度出現距離を考慮して設定した地域(対象施設からの距
離が最大着地濃度出現予想距離のおおむね2倍の地点を含む地域とする。)
とし,その設定に当たっては,地域の気象特性のほか,行政区域や地形・土
地利用の状況も勘案するものとする。②廃棄物運搬車両による影響:車両の
走行によって交通量が相当程度変化する主要搬入道路沿道の周辺の人家等が
存在する地域とし,その設定に当たっては,運搬車両台数,現況交通量に対
する寄与率,道路沿道周辺の人家等の状況を勘案するものとする。」と解説
している。
(4)廃棄物処理施設の周辺住民の原告適格について
ア廃棄物処理法による規制の要約
(ア)上記のとおり,本件各許可処分の根拠法令である廃棄物処理法は,
生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的として,(産業)
廃棄物の収集から処分に至るまでのあらゆる過程を対象として規制を加
えており,とりわけ,危険性が高く事業活動等に伴って継続的かつ大量
に生ずる特別管理産業廃棄物に対する規制は厳格である。
これらは,「環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し,
もつて現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとと
もに人類の福祉に貢献する」(環境基本法1条)との理念を,人間社会
の営みに必然的に伴う廃棄物の処理等の側面において,具体化するもの
と解されるところ,「国民の健康」なるものは,一般公益の性質を有す
るのみならず,つきつめれば各個人に関わる利益としての健康(の総
和)に帰着すると考えられる。
そして,廃棄物処理法は,廃棄物の収集から処分に至るまでの行為が
不適正になされた場合に生ずると予想される危険等が軽からざるもので
あって,国民の健康等に対する悪影響が軽視できないとの認識に立脚し
ていることが明らかである。
(イ)また,PCB分解施設及び同洗浄施設の設置許可要件を通覧すれば,
これらの施設自体の稼働による設備の劣化及び地震などの災害による施
設の破損・倒壊を防止し得る構造を有することを前提とした上(施行規
則12条1号,3号,12条の2第13項5号ロ(1),同条14項4号
ロ(1)),当該施設において処理することとされている廃棄物やその処
理によって生成される排ガス,排水などが,その処理の過程で外部に漏
出することを構造上防止し得ること(規則12条4号,5号,7号,1
2条の2第2項,13項5号ロ(3),ハ(1),同条14項4号ロ(3),ハ
(1),15項3号ロ(3)),その稼働に伴って生成される排ガスや,発生
する排水,悪臭,騒音,振動などについても,これらの発生等を監視・
分析し,適切に処理する設備の設置を求めることにより,その発生自体
を極力減少させることに配慮しているとともに(施行規則12条6号,
12条の2第13項2号,5号ロ(2),(6),ハ(1),(2),同条14項2
号,4号ロ(2),(6),ハ(1),(2),15項3号ハ),事故による被害が
最も拡大すると思われる火災事故,爆発事故を防止するために必要な措
置が講じられていることを許可要件とすることで,これらの事故により,
周辺地域の大規模な災害に発展する危険性を予防しており(施行規則1
2条の2第13項5号ロ(5),14項4号ロ(5)),万が一これらの事故
が発生した場合であっても,当該施設から廃油等が流出することを防止
し得る設備があることをも要件としている(施行規則12条の2第13
項1号,5号ニ,14項1号,4号ニ,15項1号)。
(ウ)さらに,手続上の設置許可要件として,施設の設置計画が施設の周
辺地域の生活環境の保全に適正に配慮されたものであることを挙げ,こ
れらの許可申請書には,環境基本法において公害の一種とされる大気汚
染を含む,生活環境影響調査項目等の記載を要することとし,申請者に
周辺地域の生活環境に対する適切な配慮を求めるとともに(施行規則1
1条の2等),設置者に当該施設の稼働状況に関する記録を備え置かせ,
生活環境の保全上利害関係を有する者の閲覧請求に応じなければならな
いこととし(法15条の2の3で準用される法8条の4),上記利害関
係者に対し,当該施設の維持管理の適切性を監視し得る地位を付与して
いる。
イ周辺住民の原告適格の有無と範囲
(ア)以上を総合すると,廃棄物処理法(施行規則,施行令を含む。この
項においては以下同じ。)は,処理の対象物であるPCB及びその処理
の過程で生成されるダイオキシン類などが高度の毒性を有することにか
んがみ,これが,施設の設備の不備,故障及び事故などによって,施設
外に放出された場合には,施設の周辺地域の生活環境に悪影響を与え,
ひいてはそこに居住する住民の生命・身体・健康に重大な被害をもたら
す危険性が高いこと等に配慮して,これらによって引き起こされる災害
の発生を未然に防止すべく,その発生と施設外への排出を抑制し,特に
被害の拡大が予想される火災や爆発などの事故にも対処し得る設備,措
置を要求したものと解される。
そして,廃棄物処理法が,施設の設置許可後も,設置者に,維持管理
事項の記録とその備え置きを義務付け,生活環境の保全上の利害関係を
有する者からの閲覧請求に応じなければならないことを規定しているの
は,維持管理上の責務の履行を設置者にのみゆだねることなく,利害関
係者などによる監視を強化し,これらの者に,都道府県知事による改善
命令(法15条の2の6)や許可の取消し(法15条の3)といった職
権発動を促す機会をも付与したものと解されるところ,ここにいう利害
関係者には,施設付近に居住する住民が含まれることは明らかというべ
きである。
そうすると,廃棄物処理法は,少なくともPCB処理施設及びPCB
洗浄施設について,その周辺に居住し,これらの施設から有害な物質が
排出された場合に直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲
の住民の生命・身体の安全や健康維持を具体的,詳細な規制を通じて実
現しようとするものであって,これらが遵守されることによって周辺地
域に居住する住民が得る利益は,単なる一般公益に解消され得る性質の
ものとは考えられないから,本件各許可処分の根拠法令である廃棄物処
理法は,これらを個々人の個別具体的な利益としても保護する趣旨を含
むと解するのが相当である(なお,参加的利益に関する最高裁平成15
年1月24日第三小法廷判決・裁判所時報1332号3頁参照)。
(イ)そして,上記のとおり,廃棄物処理法が,産業廃棄物処理施設が通
常に稼働した場合において生じ得る災害を未然の防止することはもとよ
り,その構造の強化や爆発の防止などに関する諸規定を設け,当該施設
において故障や大規模な事故が生じた場合における周辺地域の生活環境
への悪影響を防止しようとしていることからすると,上記「施設から有
害な物質が排出された場合に直接的かつ重大な被害を受けることが想定
される範囲」を画するに際しては,当該施設の通常の稼働状況や,処理
設備の一部の機能不全といった軽度の異常事態のみを想定するだけでは
足りず,広範な災害に発展し得る大規模事故の発生などの事態をも考慮
すべきものと考えられる。
さらに,その被害の及び得る範囲については,本件条例及び本件条例
施行規則が,設置計画についての住民説明会の開催を義務付けている関
係地域を定めるに際し,大気汚染に関しては,地域の気象特性,行政区
域や地形・土地利用の状況をも勘案することとし,さらに,廃棄物運搬
車両による影響をも考慮して,生活環境に影響を及ぼすおそれがあると
認められる地域を設定すべき旨規定していることが重要な資料になると
いうべきである。
(5)原告らの原告適格の有無
アそこで,原告らが原告適格を有するかについて判断するに,前記前提事
実に証拠(甲7の1,100ないし102,104,乙11,42,62,
証人E,証人F)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められ
る。
(ア)衣浦製作所の地理上の位置づけ
本件各施設の設置予定地である衣浦製作所は,半田市の南東部に位置
しており,その前面(本件各施設の事業予定地の南東側)は海(衣浦湾
奥部の衣浦港)となっている。
衣浦港を囲む一帯は,日本車輌の衣浦製作所のほか,日本金属工業衣
浦製造所や衣浦食品工業団地が所在しており,衣浦地域と称する機械工
業を中心とした工業地帯となっている。また,衣浦製作所の所在地であ
る11号地は,北側を阿久比川河口部,南側を十ヶ川河口部に挟まれ,
東端部には衣浦海底トンネルの半田市側のトンネル口があるほか,衣浦
臨海鉄道の半田埠頭駅がある。
なお,本件各施設から北西約1キロメートルの地点にはみなと公園が
あり,その西側は住宅地になっている。
(イ)半田市の風向
半田市周辺で吹く風は,冬型気圧配置時と夏型気圧配置時とでは大き
く異なっている。
冬型気圧配置時は,主として西方からの風が吹くため,本件各施設の
設置場所である衣浦製作所付近では,内陸部から衣浦港に向かう風が吹
いている。もっとも,衣浦製作所の北北東に位置する日東町付近では,
衣浦製作所の北側に位置する阿久比川に向かって(内陸方向に向かっ
て)風向が変化するものも見られる。
他方,夏型気圧配置時は,主として南東方向からの風が吹き,海側
(衣浦港)から進入する海風は,そのまま衣浦製作所の北側の阿久比川
に沿って北西方向へ進む風,衣浦製作所の北北東に位置する日東町方向
に吹き込む北東方向の風,東大矢知町方向に吹き込む北方向への風に枝
分かれする。このうち,衣浦製作所付近では,北東方向の風と北方向の
風が吹いている。
年間を通じると,衣浦製作所付近においては,全方位を16の方角に
区分したうち,北北西と北西の2方向への風が最も多く,両者の割合を
合わせると約40パーセントを占めている(前者は20パーセント超,
後者は20パーセント弱)。これに,北,西北西,西の各方向への風の
割合を加えると,1年のうち,海側から入って内陸部(市街地)方向へ
吹く風が約6割に達する結果となっている。
(ウ)原告らの居住地
原告らは,いずれも半田市の住民であり,①原告Aは,本件各施設か
ら略北西方向約6.4キロメートル地点に位置する同市●●町●丁目●
番●号に居住し,②原告Cは,本件各施設から略北方向約5キロメート
ル地点に位置する同市●●町●丁目●番地に居住し,③原告Dは,本件
各施設から略西北西方向約3.8キロメートル地点に位置する同市●●
丁目●番●号(●●ハイツ●号)に居住し,④原告Bは,本件各施設か
ら西方向やや北寄り約3.2キロメートル地点に位置する同市●町●丁
目●番地に居住している(なお,訴状に記載された原告Bの住所地は,
本件各施設から略北西方向約1.5キロメートル地点に位置する半田市
●●町●丁目●番●号とされているが,乙63,64号証によれば,上
記住所の現況は倉庫にすぎず,住民票上も上記④が住所とされているこ
とが認められる。)。
(エ)本件分解施設の処理工程
本件分解施設でのPCBの処理工程は,主として①廃PCB等を受け
入れる受入れ工程,②受け入れたPCB汚染物等を蒸発設備に投入する
前段階処理をする前処理工程,③気相水素還元法を用いて,高温下でP
CBを蒸発させ,反応設備において,850度の高温の水素雰囲気中で
還元分解する分解反応工程,④分解反応において生成されたガスを洗浄
する除去工程を含んだ6工程に区分されている。
ダイオキシン類は,気相水素還元法を用いた分解反応工程ではほとん
ど合成されることはないが,300度前後の温度帯において再合成され
やすいため,生成ガスを冷却する際に,この温度帯を通過する時間を可
能な限り短くすることで,ダイオキシン類の再合成を回避することが可
能になる。そのため,除去工程において,800度ないし850度の生
成ガスに水を噴霧して,60度付近まで急速に冷却することとしている。
しかし,このような処理をすることによっても,ダイオキシン類の完全
な除去は困難である。また,気相水素還元法を利用する反応設備におい
ては,水素の漏洩が爆発事故につながるおそれがあるため,水素検知器
を設け,万一の水素漏洩に備えている。
そして,ダイオキシン類が微量でも人体に対して種々の重篤な悪影響
を与える有害物質であることは,前記のとおりである。
イ以上の認定事実によれば,本件分解施設においては,高温の水素雰囲気
中で,PCBの蒸発ガスを分解処理する工程が含まれており,仮に同工程
において,火災あるいは爆発などの大規模な事故が発生した場合には,未
処理のPCBが施設外に放出される結果となる。また,その後の生成ガス
を冷却する除去工程において,同種の事故が発生した場合には,そこで生
成されたダイオキシン類が放出されることも予想されるのであって,この
ような事故が発生した場合には,放出される有害物質による悪影響は,衣
浦製作所付近の風向の特色に照らすと,市街地の広範な範囲に拡散される
可能性が高いと考えられる(内陸部から海洋に向かって風が吹くことの多
い冬季においても,風の一部が衣浦製作所北北東の上空で内陸向きへと風
向きを変化させる傾向が見られることから,周辺市街地に有害物質が拡散
される可能性は高いというべきである。)。
そうすると,本件各施設から最大でも約6.4キロメートルの範囲内に
ある市街地に居住している原告らは,いずれも本件各施設から有害な物質
が排出された場合に直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲
内に居住する者として,本件各許可処分の取消しを求めるにつき原告適格
を有すると判断するのが相当である。
ウこの点につき,被告は,生活環境影響調査や異常時拡散予測の結果など
から,本件各施設からダイオキシン類の最大着地濃度地点である460メ
ートル以上離れた地点に居住している原告らには,本件各施設からの排気
等による生命・身体への影響は生ずることはないなどと主張し,原告らの
原告適格を否定するところ,証拠(乙32,34,48)によれば,次の
事実が認められる。
(ア)生活環境影響調査について
日本車輌が実施した生活環境影響調査によれば,本件各施設の煙突の
高さ,予測される大気汚染物質の最大着地濃度出現距離等により,本件
における事業予定地を中心とした半径1キロメートルの円内を調査対象
地域として,二酸化窒素,浮遊粒子状物質濃度,PCB,ベンゼン及び
ダイオキシン類の年平均値(長期平均濃度)の予測結果を測定した結果,
これらの物質の最大着地濃度は,二酸化窒素について,中心煙突から南
南東約290メートルの位置,その余の物質については,南南東約46
0メートルの位置であった。
(イ)株式会社テクノ中部による異常時拡散予測
株式会社テクノ中部が実施した異常時拡散予測によれば,本件各施設
において,PCB及びダイオキシン類が未処理で排気口から放出された
場合の環境影響を試算した結果,ダイオキシン類の環境基準値である1
立方メートル当たり0.6ピコグラムを超える範囲は,排出地点から6
00メートル以内であり,直近住居地(●●町●丁目,排出地点から9
30メートル地点)への影響としては,予測濃度は1立方メートル当た
り0.186ピコグラム,これに現況濃度を加えると,1立方メートル
当たり0.346ピコグラムとなり,いずれの場合も環境基準を下回っ
た。
株式会社テクノ中部が,上記結果を基に,事故等の異常時において,
ダイオキシン類濃度が一時的に環境基準値(1立方メートル当たり0.
6ピコグラム)を上回ると予想した範囲は,半径600メートルの内側
であるが,ダイオキシン類の1時間値に関する環境基準値は存在しない
ため,年平均値である上記環境基準(1立方メートル当たり0.6ピコ
グラム)を参考としたものであり,異常時拡散値が上記基準を超えたと
しても,直ちに環境等に影響が及ぶおそれはないとも判断している。
以上の事実が認められる。しかしながら,上記生活環境影響調査は,年
間の風向,代表風速(秒速10メートルまで)の出現頻度を基に大気拡散
モデルを用いて大気汚染物質の最大着地濃度出現距離等を予測するものに
すぎず,秒速10メートルを超える場合において,最大着地濃度出現距離
以遠に居住する住民らが,本件各施設から排出される有害物質によって直
接的かつ重大な被害を受けないことまで推認させるものでないことは明ら
かであり,異常時拡散予測においても,コンデンサ解体時に活性炭処理装
置が故障して未処理のまま排気されたという事態を想定し,その場合にお
ける排気量1時間当たり4500立方メートル,ダイオキシン濃度1立方
メートル当たり18ナノグラム,排出時間1時間の数値を前提として計算
されたものであって,これを超える重大な事故が発生した場合には,上記
のような計算の前提条件が崩れる以上,上記調査・予測によって原告らの
原告適格を否定することはできない。
かえって,愛知県においては,廃棄物処理法の規定を踏まえ,本件条例
及び本件条例施行規則を制定し,産業廃棄物処理施設の設置等に伴って,
生活環境に影響を及ぼすおそれがあると認められる地域を関係地域として,
申請者に対して,関係地域を対象として住民の理解を得ることを主たる目
的とした住民説明会を開催することを義務付け(本件条例9条1項,本件
条例施行規則10条),その関係地域としては,大気汚染に関しては,煙
突排ガスの最大着地濃度出現距離を推定するほか,地域の気象特性,行政
区域や地形・土地利用の状況をも勘案することとし,さらに,廃棄物運搬
車両による影響をも考慮するものとしているところ,日本車輌は,平成1
6年1月17日,半田市全域を関係地域とする住民説明会を実施し,本件
条例施行規則12条1項に基づき,被告に対し,その状況を報告したこと
は前記のとおりである。このように,日本車輌自身が同条例上の関係地域
を半田市全域としたのは,上記のような事故による被害の拡散の可能性を
認識し,これを考慮してのものであると推測されるが,このことも,原告
らの原告適格を裏付けるというべきである。
よって,被告の上記主張は採用できない。
2争点(2)ア(本件分解施設から排出されるダイオキシン類の濃度が,維持管
理の技術上の基準である1立方メートル当たり0.1ナノグラムを超える違法
があるか否か)について
(1)法15条の2の2に規定する維持管理の技術上の基準の位置づけ
ア前記のとおり,産業廃棄物処理施設(施行令7条で定められたものに限
る。以下,同じ。)を設置しようとする者は,当該産業廃棄物処理施設を
設置しようとする地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならな
い(法15条1項)ところ,都道府県知事は,①産業廃棄物処理施設の設
置に関する計画が環境省令で定める技術上の基準に適合していること,②
産業廃棄物処理施設の設置に関する計画及び維持管理に関する計画が,当
該産業廃棄物処理施設に係る周辺地域の生活環境の保全及び環境省令で定
める周辺の施設について適正な配慮がなされたものであること,③申請者
の能力がその産業廃棄物処理施設の設置に関する計画及び維持管理に関す
る計画に従って当該産業廃棄物処理施設の設置及び維持管理を的確に,か
つ,継続して行うに足りるものとして環境省令で定める基準に適法するも
のであること,④申請者が14条5項2号イからヘまでのいずれにも該当
しないことの各要件のいずれにも適合していると認めるときでなければ,
許可をしてはならないとされている(法15条の2第1項)。
そして,①を受けて,施行規則12条,12条の2は,詳細な技術上の
基準を定めている。
イところで,原告らの援用する維持管理の技術上の基準(施行規則12条
の6,12条の7)については,産業廃棄物処理施設の設置許可要件を定
めた法15条の2によって定められているものではなく,あくまで同施設
を維持管理する上での基準として位置づけられており(法15条の2の
2),両者は異なった性格のものとして規定されている。
しかしながら,上記②のとおり,産業廃棄物処理施設の設置許可要件の
中には,産業廃棄物処理施設の維持管理に関する計画が,当該産業廃棄物
処理施設に係る周辺地域の生活環境の保全及び環境省令で定める周辺の施
設について適正な配慮がなされたものであることが定められているところ,
ここにいう維持管理に関する計画とは,単に書類の上で周辺地域の生活環
境の保全及び周辺の施設について適正な配慮がなされているかのように数
値が並べられ,記述されていれば足り,そこに記載された計画が実現可能
であることが科学的に裏付けられていることまで要しないと解するのは相
当でない。計画に従って実際に維持管理されることにより,周辺地域の生
活環境の保全が計られ得るものでなければ,事前規制としての許可要件の
意義が著しく没却されるからである。
しかして,前記のとおり,設置者は,維持管理の技術上の基準等に従っ
て当該施設を維持管理しなければならないとされているから,結局,設置
許可要件としては,維持管理の技術上の基準に従った維持管理が可能であ
ることが科学的に裏付けられ,かつこのように科学的に裏付けられた維持
管理に関する計画が策定されたことを要するというべきである。この点に
つき,被告は,維持管理の技術上の基準が設置許可要件と無関係であると
主張するが,このような解釈では,同基準を達成できない可能性がどれだ
け高くとも,設置許可を与えねばならないことになり,極めて不合理な結
果を招くことが明らかである(この不合理性は,法15条の2の6に基づ
く改善命令等や法15条の3に基づく設置許可の取消しによっても,完全
に解消されるものではない。)。
(2)本件分解施設が維持管理の技術上の基準に適合するかについて
ア施行規則12条の7第13項4号ト及び14項3号チは,維持管理の技
術上の基準として,PCB分解施設の除去設備(煙突)の出口における生
成ガス中のダイオキシン類濃度が1立方メートル当たり0.1ナノグラム
以下となるように処理されることを定めている。
ところで,上記のとおり,都道府県知事は,法15条の2第1項各号の
いずれにも適合していると認めるときでなければ,法15条1項に基づく
許可をしてはならないと定められているところ,知事は,その許可をする
については,あらかじめ,法15条の2第1項2号に掲げる事項について,
生活環境の保全に関し環境省令で定める事項について専門的知識を有する
者の意見を聴かなければならないとされている(同条3項)。
そうすると,廃棄物処理法は,同項2号に掲げる事項の基準適合性につ
いては,上記専門知識を有する者(から成る審査会)の意見を十分に尊重
して行う都道府県知事の合理的な判断にゆだねていると解されるから,現
在の科学技術水準に照らし,審査会の調査審査において用いられた具体的
審査基準に不合理な点があり,あるいは当該施設が具体的審査基準に適合
するとした審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落があ
り,都道府県知事の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には,
上記判断に不合理な点があるものとして,これに基づく許可処分は違法と
なると解すべきである(最高裁平成17年5月30日第一小法廷判決・民
集59巻4号671頁)。
しかるところ,証拠(乙22,36の1・2,57,証人E)によれば,
本件実証試験においては,一部(PCB汚染土壌を試料として行われた2
回目の試験)において上記基準値を超えるダイオキシン類濃度が検出され
たものの,他のデータには問題がない上,本件分解施設で用いられる実用
機については,上記の結果に対処すべく,種々の改良が加えられる予定で
あることなどから,化学物質についての専門家委員を含む審査会において,
安全性に特段欠けることはないとの結論に至ったことが認められる。
イこの点につき,原告らは,本件分解施設における除去設備(煙突)の出
口における生成ガス中のダイオキシン類の濃度が上記基準を超えると主張
し,その根拠として,①本件実証試験に用いられた試験機の規模が実用機
と比較して違いすぎること,②本件実証試験に用いられた試料のPCB濃
度が実際のものと比較して低いこと,③一部の試験において,基準値を超
える1立方メートル当たり0.29ナノグラムのダイオキシン類が検出さ
れたこと,④試験結果によると,ダイオキシン類が合成された可能性が高
いこと,⑤日本車輌が本件実証試験のデータの一部を隠ぺいしていたこと
などを挙げる。
そこで検討するに,まず,①については,なるほど,実証試験に用いら
れた試験機と実用機との規模が近接することは,試験値の信頼性の観点か
らは望ましいといえようが(証人F),他方で,証拠(乙41,57,証
人E)によれば,どの程度の規模が適当かは,必ずしも一概に決められる
ものではなく,その施設の内容・処理方法等によって判断すべきところ,
本件分解施設の採用した気相水素還元法は,触媒等を用いない,化学的に
単純な反応原理に基づくPCB処理法として確立され,既にカナダ,オー
ストラリアで実績を上げていることが認められ,これに照らすと,本件実
証試験における試験機の規模が不適当であって,その結果に信頼性がない
とまではいえない。
次に,②については,なるほど,証拠(甲8,乙56)によれば,本件
実証試験の試料として,PCB濃度100パーセントのPCB油は用いら
れていないことが認められるが,本件分解施設は,PCBを気化した後,
気相水素還元法によってPCBを分解,処理するものであるから,処理対
象物であるPCB油の濃度がいかなる程度のものであれ,気化されたPC
B蒸気が処理能力を超えない濃度であれば特段の不都合は生じないという
べきところ,本件分解施設においては,次に述べるように,これを適切に
コントロールできるよう設備等が改良される予定であるから,上記の点を
もって,本件実証試験の方法が不適切であったということはできない。
また,③については,本件実証試験は,前記のとおり,日本車輌が,平
成10年7月から9月にかけて,本件分解施設において採用されている気
相水素還元法の行政上の許認可を得るために実施したものであって,証拠
(乙36の1・2,57,証人E)によれば,維持管理の技術上の基準値
を超えるダイオキシン類濃度が検出された原因は,固形物蒸発器に投入さ
れたPCB汚染土壌の全体が急激に昇温し,処理能力を超えるPCBの気
化がもたらされたことにあると推測できるところ,本件分解施設は,同試
験において用いられた試験機をそのまま拡大して使用するものではなく,
上記のような事態を避けるべくPCBの気化を適切にコントロールできる
ように設備を改良,変更して用いる予定であることが認められるから,本
件実証試験の一部において,上記基準値を超えるダイオキシン類濃度が検
出されたからといって,直ちに本件分解施設における排出ガス中のダイオ
キシン類の濃度が同基準を上回るとはいえない。なお,改良が加えられる
場合,改良された試験機によって再度の実証試験を行った上で安全性を確
認すべきであるとの意見(証人F)も傾聴に値するが,上記のように,実
証試験の一部に基準値を超えるダイオキシン類濃度が出現した原因が特定
され,これを解消すべく設備等に改良が加えられる以上,試験機を作り直
して再度の実証試験を行わなかったからといって,安全性が確認されてい
ないとはいえない。
さらに,④については,証拠(甲135,乙56,証人F)によると,
ダイオキシン類の一部については,反応分解前よりも反応分解後の割合が
多くなっていたことが認められる。しかしながら,量的に増えているわけ
ではない上,その原因,機序等は必ずしも明らかでない(日本車輌は,ダ
イオキシン類の定量下限値が反応分解前のPCB油と反応分解後の生成ガ
スとで異なることによると説明する。)ところ,証拠(乙57,証人E)
によれば,気相水素還元法の内容,性格からして,ダイオキシン類が新た
に合成されることは(分解された後に冷却過程で再合成され得ることを除
いて)あり得ないと認められるから,その原因が本件実証試験機ないし気
相水素還元法そのものにあるとは考え難く,審査会が日本車輌の上記説明
の合理性を肯定したことをも考慮すると,上記現象をもって,本件分解施
設が維持管理の技術上の基準を満たさないと推認することはできない。
最後に,⑤については,なるほど,証拠(甲74,106の2,114
の1ないし4)によれば,日本車輌は,島津テクノリサーチから本件実証
試験において採取されたガス全部のPCB及びダイオキシン類濃度の測定
結果を受け取ったにもかかわらず,実証試験報告書や実証試験成果報告書
には,PCB汚染トランスの分解実験の生成ガスの測定結果を省いていた
ことが認められる。しかしながら,証拠(乙43)によれば,日本車輌は,
上記分析結果を省いた理由は,本件実証試験においては,計画時と異なっ
て,実際に長年にわたって保管されていた実トランスを試料として用いた
ところ,実トランスでは,試験前にトランスに付着したり染み込んだPC
Bの総量を測定できず,したがってPCBやダイオキシン類の分解率を算
定できないので,生成ガス中のPCB及びダイオキシン類濃度のデータを
提出しなかったにすぎなかったと説明していることが認められ,これによ
れば,日本車輌が意図的にデータ隠しをしたとまでは推認できず,実際に
も,実トランスのダイオキシン類濃度の測定結果は,維持管理の技術上の
基準値を満たしていることが認められる。
ウそうすると,本件分解施設については,施行規則12条の7第13項4号
ト及び14項3号チで定めるダイオキシン類濃度を含め,特段安全性に欠け
る点はないとした審査会の調査審査及び判断の過程に看過し難い過誤,欠落
があるとはいえないので,これに依拠した本件分解施設設置許可処分に違法
があるとの原告らの上記主張は採用できない。
3争点(2)イ(本件分解施設におけるPCB汚染トランス処理後の生成ガス中
におけるPCB濃度が,日本車輌の定めた自主基準値である1立方メートル当
たり0.001ミリグラムを超える違法があるか否か)について
(1)自主基準値の位置づけについて
原告らは,法令中には,PCB分解施設からの排ガスのPCB濃度に関す
る規制,基準は存しないものの,廃棄物処理法の改正(平成9年法律第85
号)の際,施設の設置者は自ら設定した維持管理上の計画に従って施設を維
持管理すべきことが各種通達によって明らかにされているから,上記計画上
に記載された自主基準値も本件各許可処分の許可要件になると主張するとこ
ろ,ここでいう自主基準値とは,施行規則11条3項1号において,申請書
に維持管理に関する計画(法15条2項7号)として記載すべきものとされ
ている「排ガスの性状,放流水の水質等について周辺地域の生活環境の保全
のため達成することとした数値」であると解される。
しかしながら,設置許可要件を定めた法15条の2第1項2号は,上記計
画が周辺地域の生活環境の保全等に適正に配慮されたものであることを要求
するにとどまり,申請に係る施設が現実に稼働した場合に,当該自主基準値
を満たすことを設置許可の時点で審査・判断すべきことまで求めるものでな
いと解すべきである(維持管理が上記計画に適合していないと認められた場
合に,法15条の2の6第1号,15条の3第2項に基づき,都道府県知事
から改善命令等や設置許可取消処分を受けることがあるのは別論である。)。
すなわち,自主基準値は,法令上の基準と異なり,生活環境の保全のため
にどの程度の数値が必要か,どの程度の数値であるならば達成することが可
能かといった事柄に関する申請者の認識によって異なり得るところ,このよ
うな主観的要素によって左右される自主基準値いかんにより施設の設置許可
処分が適法となったり違法となったりするのでは,不合理な結果を招くとい
わざるを得ないからである。
(2)小括
そうすると,本件実証試験の結果,トランスの処理に際して発生した生成
ガス中のPCBの実測濃度が,日本車輌の自主基準値である1立方メートル
当たり0.001ミリグラムの17倍に達したことを根拠に,本件分解施設
設置許可処分を違法とする原告らの主張は,実証試験機と実用機とが設備,
構造等において異なることを無視ないし軽視していることをさておいても,
採用できないというべきである。
4争点(2)ウ(本件分解施設から排出されるダイオキシン類を常時測定・記録
すべきか否か。また,常時測定すべきではないとしても,測定方法自体に不備
があるか否か)について
(1)ダイオキシン類濃度の測定頻度の位置づけについて
原告らは,法15条の2第1項1号の設置の技術上の基準として,施行規
則12条の2第13項5号ハ(2)及び14項4号ハ(2)が,「除去設備から排
出された生成ガス中の主要な成分を測定し,かつ,記録するための装置が設
けられていること」と規定しているところ,ここにいう「生成ガス中の主要
な成分」にはダイオキシン類が含まれているから,常時ダイオキシン類濃度
を測定し,かつ,記録するための装置が設けられていることがPCB分解施
設の設置許可の要件になっているにもかかわらず,本件分解施設にはこれが
設置されていないと主張する。
しかしながら,ダイオキシン類の濃度の測定及び記録については,法15
条の2の2の維持管理の技術上の基準として,施行規則12条の7第13項
4号チ及び同条14項3号リにおいて,「除去設備の出口における生成ガス
中のダイオキシン類の濃度を毎年1回以上(略)測定し,かつ,記録するこ
と。」と規定されていることに照らすと,常時測定され記録されることが求
められる施行規則12条の2第13項5号ハ(2)及び14項4号ハ(2)の「生
成ガス中の主要な成分」には,ダイオキシン類は含まれないと解するほかな
く,したがって,本件分解施設に常時ダイオキシン類濃度を測定し,かつ,
記録するための装置が設けられていないとしても,本件分解施設設置許可処
分が違法となるものではない。
(2)PCB濃度モニタの問題点について
また,原告らは,本件分解施設におけるダイオキシン類を常時測定すべき
ではないとしても,①日本車輌が本件分解施設において予定しているダイオ
キシン類の測定方法は,ダイオキシン類との相関関係が不明確なPCB濃度
やモノクロロベンゼンを指標として類推するものであり,正確な測定は不可
能であること,②使用を予定しているPCB測定モニタの検出下限は6.6
マイクログラムないし1.65マイクログラムであって,精度が低いことな
どを理由に,本件分解施設設置許可処分は違法であると主張する。
しかしながら,①については,証拠(乙54)及び弁論の全趣旨によれば,
日本車輌が使用する予定のPCB濃度モニタは,日常的な運転管理上の必要
から設置するものにすぎず,6か月ごとにダイオキシン類濃度を測定する際
には,外部の専門業者に委託して精密な分析を行う予定であるから,維持管
理の技術上の基準である施行規則12条の7第13項4号チ及び同条14項
3号リは十分に満たし得ると認められる。
また,原告らの上記②の主張は,要するに,日本車輌の用いるPCB濃度
モニタでは,日本車輌の策定した維持管理上の計画で示された1立方メート
ル当たり1ナノグラムの自主基準値を測定することができないというもので
あると解されるところ,前記認定・判断のとおり,当該自主基準値を満たす
ことが本件分解施設の設置許可要件になっているとは解されないので,その
精度が低いからといって(もっとも,乙57及び証人Eによれば,審査会で
の審査の結果,上記PCB濃度モニタは,精度の向上により,ガスクロマト
質量分析計と併用すれば,有分な信頼性を有するとされたことが認められ
る。),上記許可処分が違法になるとはいえない。
5争点(2)エ(本件分解施設からの排水中のフッ素濃度が,水質汚濁防止法3
条1項所定の排水基準値を超える違法があるか否か。また,日本車輌の自主基
準値を超える違法があるか否か)について
(1)排水中のフッ素濃度に関する基準の位置づけ
ア原告らは,本件分解施設設置許可処分の違法事由として,①本件分解施
設からの排水中のフッ素濃度が,水質汚濁防止法上の排出基準値(1リッ
トル当たり15ミリグラム)を超えること,②同じく,日本車輌の自主基
準値(1リットル当たり2ミリグラム)を超えることを主張する。
原告らの上記主張のうち②については,争点(2)イについて判断したと
おり,維持管理に関する計画に記載された自主基準値を満たすことがPC
B分解施設の設置許可要件であるとは解されないから,違法事由の主張と
してはそれ自体失当というほかない。
イ他方,水質汚濁防止法は,工場及び事業場から公共用水域に排出される
水の排出及び地下に浸透する水の浸透を規制するとともに,生活排水対策
の実施を推進すること等によって,公共用水域及び地下水の水質の汚濁の
防止を図ることを目的としている(同法1条)ところ,本件分解施設は,
フッ素を含有する排水を排出する施設であって,水質汚濁防止法上の「特
定施設」に該当する(同法2条2項1号,同法施行令2条25号)から,
同法による規制を受けるものである。そして,同法によれば,特定施設を
設置する工場又は事業場から公共用排水域に排出される排出水の汚染状態
の限度としては,フッ素の場合,海域に排出されるものについては1リッ
トル当たり15ミリグラム以下とされている(同法3条1項,水質汚濁防
止法第3条第1項の規定による排水基準を定める省令別表第1)。
他方,施行規則12条6号は,法15条の2第1項1号の定める許可の
ための技術上の基準の一つとして,「施設から排水を放流する場合は,そ
の水質を生活環境保全上の支障が生じないものとするために必要な排水処
理設備が設けらられていること」と規定するところ,ここでいう「水質を
生活環境保全上の支障が生じないものとする」の具体的意義は,上記水質
汚濁法の目的・趣旨に照らすと,同法の定める基準が遵守されている状態
を指すと解される。
そうすると,設けられるべき排水処理設備が,水質汚濁防止法上の排出
基準である上記フッ素濃度を満たす能力を有していることが産業廃棄物処
理施設の設置許可要件として必要となり,この要件を満たさない場合,同
許可処分は,法15条の2第1項1号,施行規則12条6号,水質汚濁防
止法3条1項に反するものとして違法となるというべきである。
(2)本件分解施設からの排水中のフッ素濃度について
アそこで,本件分解施設に設けられる排水処理設備が,水質汚濁防止法上
の排出基準であるフッ素濃度(1リットル当たり15ミリグラム)を満た
す能力を有しているか否かについて検討するに,証拠(甲21,31,3
3ないし40,79ないし83,84の1ないし3,86,乙19,27,
28,43,48,50,60)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の
事実が認められる。
(ア)本件分解施設設置許可申請書に記載された産業廃棄物処理施設の位
置,構造等の設置に関する計画によれば(別紙3−3「処理に伴い生ず
る排水の検討」),本件分解施設から排出される排水は,①スクラバ水,
建物内ピット排水などのプロセス排水,②作業員の長靴の洗浄などによ
る排水である洗浄排水,③事務所や工場からの生活排水,④PCB廃棄
物由来の排水や試薬を含む排水である分析系排水,⑤雨水などであり,
①,②及び④のうちのPCB廃棄物由来の排水は,原水タンクに貯留さ
れ,油分除去凝集ろ過処理,凝集沈殿処理,砂ろ過処理及び活性炭吸着
処理などを経て,合併洗浄槽での処理を経た③と混合の上,海水中に放
流される。
また,④のうちの試薬を含む排水の処理は,産業廃棄物処理業者に委
託され,⑤は油分分離槽での処理を経て,衣浦工場雨水経路から排出さ
れる。
(イ)原水タンクにおける排水中に含まれるフッ素の濃度は,通常1リッ
トル当たり0ミリグラムであるが,毎月1回程度,廃洗浄溶剤を処理す
る場合にのみ,1リットル当たり1万9000ミリグラムとなるところ,
排水中に含まれるフッ素は,塩化カルシウムを添加してフッ化カルシウ
ムとして処理することとされ(カルシウム添加法),最終的には1リッ
トル当たり1.38ミリグラムにまで処理され,さらに衣浦製作所の排
水とともに総合排水処理設備で処理された後に衣浦港に放流される計画
である。
その廃溶剤の処理は,施設の全停止直前の最後の処理として,2時間
で行うことが予定されており,その工程は,スクラバ工水を追加せず,
スクラバごとに約6立方メートルの水を循環させて生成ガス中の塩化水
素,フッ化水素などを除去し,廃溶剤の処理終了後,第1段目のスクラ
バの貯留水約6立方メートルの半量(約3立方メートル)を排水処理設
備で処理する。排水処理能力は1時間当たり1.5立方メートルなので,
これを2時間行うことにより,上記3立方メートルの排水を処理するこ
とが可能である。このようにして処理した3立方メートルの排水を,あ
らかじめ10時間分(15立方メートル)の処理水を貯留した貯留タン
ク(12時間分の18立方メートルを貯留することができる。)に貯め
て分析し,基準に適合することを確認してから放流することとしている。
(ウ)フッ素を含む排水の処理方法として,単純なフッ素の濃厚廃液など
に対しては,カルシウム塩を使って溶解度の低いフッ化カルシウムにし
て沈殿分離する方法(凝集沈殿処理法)が有効であり,計算上,摂氏4
0度でのフッ素濃度は1リットル当たり8.27ミリグラムとなるが,
この数値はフッ化カルシウムの溶解度によっても左右され,フッ素濃度
が低い溶液の場合(1リットルにつき100ミリグラム以下),各種の
塩やイオンが含まれているため,処理効率が悪くなる傾向がある。その
ため,フッ素濃度が1リットル当たり50ないし100ミリグラム程度
の溶液を凝集沈殿処理法のみによって同8ミリグラム以下に除去するこ
とは容易ではなく,凝集沈殿処理の後段に樹脂吸着装置や2段凝集沈殿
装置を設置するという多段処理が必要になることが指摘されている。
イ上記認定事実によれば,本件分解施設においては,タンク内の水による
希釈や施設から排出後である衣浦製作所総合排水処理設備における処理を
考慮しないとしても,排水中のフッ素濃度を,少なくとも水質汚濁防止法
上の基準(1リットル当たり15ミリグラム)以下にすることができるこ
とが明らかというべきである。このことは,原告らによる独自の計算によ
っても,排水中のフッ素濃度が1リットル当たり6.43ミリグラムとな
ることからも裏付けられる。
そうすると,本件分解施設は,法15条の2第1項1号,施行規則12
条6号,水質汚濁防止法3条1項に定める排水中のフッ素濃度の基準を満
たすものであるから,同施設の設置許可処分が違法であるとの原告らの上
記主張は採用できない。
6争点(2)オ(本件洗浄施設において使用されている溶剤の洗浄力が法令の基
準を満たすか否か)について
原告らは,PCB処理物を洗浄する際に用いられる溶剤について,施行規則
1条の2第4項,検定方法第3ロ及びニを根拠に,トリクロロエチレン,テト
ラクロロエチレン又はこれらと同等以上の洗浄力を有すること要求されており,
したがって,これと同程度の性能を有しない溶剤を用いるPCB洗浄施設の設
置許可処分は,法15条の2第1項1号,施行令6条の5第1項2号ホ,2条
の4第5号ハに反するものとして違法である旨主張する。
しかしながら,施行規則1条の2第4項は,その文言から明らかなように,
法2条5項で定義した「特別管理産業廃棄物」を具体的に列挙した施行令2条
の4のうち,特定有害産業廃棄物の一つである「ポリ塩化ビフェニル処理物」
に該当するか否かの基準を定めたものであり,検定方法は,その判定方法を具
体的に示したものにすぎない。すなわち,検定方法に示された判定方法によっ
て施行規則1条の2第4項を満たすことが明らかになった場合には,当該ポリ
塩化ビフェニル処理物は,特定有害産業廃棄物に当たらないことになり,ひい
ては特別管理産業廃棄物に関する規制の対象外とされることになるにすぎない
のであって,PCB洗浄施設の設置許可要件と無関係である。
そうすると,廃油に関する検定方法第3ロの内容が金属くずに関する同第3
ニにも妥当するか,さらにはアサヒクリンAK−225がトリクロロエチレン,
テトラクロロエチレン又はこれらと同等以上の洗浄力を有するかの問題をさて
おいても,本件洗浄施設で用いられる溶剤の洗浄力を理由に,その設置許可処
分を違法とする原告らの上記主張は,それ自体失当というべきである。
7争点(2)カ(本件洗浄施設を対象とする住民説明会が実施されていない違法
があるか否か)について
前記のとおり,本件条例は,廃棄物の適正な処理に関する県,事業者及び県
民の責務を明らかにするとともに,廃棄物の適正な処理を確保するために必要
な規制をすること等により,廃棄物の適正な処理を促進し,もって県民の生活
環境の保全に資することを目的とするものであり(1条),産業廃棄物処理施
設の設置者等の義務として,法15条1項の許可を受けようとする者は,本件
条例施行規則で定めるところにより,当該許可に係る施設の設置等に伴い,生
活環境に影響を及ぼすおそれがある地域として同規則で定める地域(関係地
域)内において,当該施設の設置等に係る計画の内容を周知させるための説明
会を開催しなければならない(9条1項)としている。これを受けて,本件条
例施行規則は,説明会を開催した者は,速やかに,説明会の開催の状況を説明
会開催状況報告書により知事に報告しなければならず(12条1項),知事は,
前項の説明会開催状況報告書が提出された場合において,関係市町村長の意見
を聴いて当該施設の設置等に係る計画の内容の周知が十分でないと認めるとき
は,当該説明会開催状況報告書を提出した者に対し,再度説明会を開催すべき
ことを指示することができる(12条2項)こととしている。
これらの規定によれば,住民説明会は,廃棄物処理施設が周辺住民の生活環
境等に影響を与え得るものであることにかんがみ,その設置に当たっては,周
辺住民に対して施設の概要や事業の内容,これらによってもたらされると予測
される生活環境への影響等を知らしめ,疑義や意見等がある場合にはこれらを
述べる機会を与えるなど,手続上の透明性を高めることにより,廃棄物の適正
な処理の促進(立地計画の円滑な進ちょくを含む。)に寄与することを目的と
したものと解される。
しかしながら,この目的・趣旨を超えて,住民説明会の開催が当該施設の設
置許可要件となっていることをうかがわせる規定は,廃棄物処理法や本件条例
のいずれにも見当たらず,これを怠った場合における罰則規定も存在しないこ
とも考慮すると,本件洗浄施設については日本車輌による住民説明会が(実質
的にも)開催されていないか否かはさておき,住民説明会の開催の欠如を理由
として本件洗浄施設設置許可処分が違法となるとの原告らの主張は,それ自体
失当というべきである。
8争点(2)キ(本件各施設の設置許可申請につき,日本車輌が「その業務に関
し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由があ
る者」に該当するか否か)について
(1)不正又は不誠実な行為をするおそれがある者の意義について
廃棄物処理法は,産業廃棄物処理施設の設置許可要件として,その申請者
がその業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足り
る相当の理由がある者に該当しないことを定めている(15条の2第1項4
号,14条5項2号イ,同号ニ及び7条5項4号ホ)ところ,原告らは,日
本車輌が,本件実証試験に係るデータを隠ぺいしたまま,検討評価委員会の
技術評価を受けたり,愛知県に測定分析していないと虚偽の回答をしたこと
などを理由に,同社が不正又は不誠実な行為をするおそれがあると主張する。
ところで,法15条の2第1項4号は,産業廃棄物処理施設の設置許可申
請者についての要件(欠格事由)を定めているところ,その準用する法14
条5項2号イないしヘ及び法7条5項4号イないしトは,上記の欠格事由の
ほか,①成年被後見人,被保佐人,復権を得ていない破産者(法7条5項4
号イ),②禁錮以上の受刑者等(同号ロ),③廃棄物処理法等の規定の違反
者等(同号ハ),④廃棄物処理業等の許可を取り消され,取消しの日から5
年を経過しない者等(同号ニ),⑤廃棄物処理業等の廃止等の届出をしてか
ら5年を経過しない者(同号ホ),⑥廃棄物処理業等の廃止等の届出をした
法人の役員等であった者で,届出から5年を経過しない者(同号ヘ),⑦暴
力団員等(法14条5項2号ロ),⑧未成年者で法定代理人が①ないし⑦の
いずれかに該当するもの(同号ハ),⑨法人で役員等が①ないし⑦のいずれ
かに該当するもの,⑩法人で暴力団員等が事業活動を支配するもの,⑪個人
でその使用人が①ないし⑦のいずれかに該当するものを挙げている。
これらを通覧すれば,法15条の2第1項4号の申請人に係る許可要件は,
産業廃棄物処理施設の設置・運営・管理が,適切に行われるか否かが周辺地
域の生活環境に重大な影響を及ぼすことに加え,設置許可要件としての明確
性をも確保するとの観点から,復権を得ない破産者のように施設運営の資力
に乏しいことが客観的に明らかな者や,未成年者,暴力団員,あるいは廃棄
物処理法や生活環境を保全すべきことを目的とする法律に違反して有罪判決
を受けた者のように,その能力や資質から,およそ産業廃棄物処理施設の適
切な運営・管理を行うことができないことが一般的に肯定される者を,設置
者から除外するために設けられた規定であると解される。
そうすると,これらの欠格事由と併記されている「その業務に関し不正又
は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」
とは,これらの者と同程度に,その資力や資質から見て産業廃棄物処理施設
の運営・管理を適切に行うことが期待できないと客観的,定型的に判断され
る者をいうと解するのが相当である。
(2)日本車輌の申請欠格事由該当性の有無について
アそこで,日本車輌が「その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそ
れがあると認めるに足りる相当の理由がある者」に該当するか否かについ
て判断するに,前記前提事実に,証拠(甲8,10,12の1,74,1
06の2,107,108,109の1・2,114の1ないし4,13
3,乙43)及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。
(ア)日本車輌は,カナダから導入した気相水素還元法について,通商産
業省が設置する検討評価委員会の評価を受けるため,実証機を用いて,
気相水素還元法によるPCB処理の実証試験を実施することを計画し,
平成10年3月付けで,豊川市に対し,本件実証試験の実施計画書を提
出し,同市によって受理された。
日本車輌は,平成10年7月28日から同年9月7日までの間,8回
にわたる本件実証試験を実施し,これによって得られた各試料を分析会
社である島津テクノリサーチに引き渡した。
(イ)島津テクノリサーチは,引き渡された全試料について分析を行い,
その結果を日本車輌に報告した。日本車輌は,その分析結果を取りまと
め,いくつかの実証試験報告書を作成した(東京貿易株式会社と日本車
輌が併記されたものとして「『気相水素還元法』実証試験成果報告書」,
平成10年12月付け「難分解性有機化合物の化学処理に関する気相水
素還元法実証試験報告書」,日本車輌のみが作成者として表記されてい
る「『気相水素還元法』実証試験成果報告書」)。
(ウ)しかし,日本車輌は,PCB汚染物であるトランスの実証試験にお
いて,実証試験計画書には測定するものと記載されている生成ガスの分
析データを,実証試験報告書に添付しなかった。日本車輌は,愛知県か
らその理由を問われたため,要旨,以下のとおり回答した。
「当初は,新品のトランスによって実証試験を実施する予定であったが,
処理の実態に合わせるため,実証試験計画を実トランスを用いるよう変
更したものの,実トランスでは実証試験前にトランスに付着していたP
CBの総量を測定することができず,分解率を算出できないため,評価
対象としてトランスの実証試験における生成ガスを測定項目から外し,
当該データを社内で保管することとして,検討評価委員会には提出しな
かった。したがって,情報を隠ぺいしたものではない。」
(エ)また,日本車輌は,平成16年6月10日に開催された第4回の審
査会において,トランスに関する(生成ガスの)測定はしなかった旨説
明したところ,日本車輌は,このような説明をした理由として,質問内
容を「モノクロロベンゼンとPCBの相関が確認できるデータはない
か。」というものであると理解したため,そのようなデータはない旨回
答したと説明した。
さらに,日本車輌は,本件実証試験において,トランスに関する生成
ガスの分析をし,その生成ガス中のPCB濃度が1立方メートル当たり
17000ナノグラムであったにもかかわらず,本件許可申請書に添付
した資料には,生成ガス中のPCB濃度を1立方メートル当たり4ナノ
グラムと記載した。日本車輛は,これについて,単なる転記ミスである
と説明した。
イ上記認定事実によれば,日本車輌は,客観的には,本件実証試験の結果
の一部を検討評価委員会に提出した報告書に記載せず,審査会において事
実と異なる説明を行い,愛知県に提出した資料中にも事実と異なる数値が
記載されていたといわざるを得ない。
しかしながら,日本車輌は,上記のいずれについても,自己に不利益な
結果を隠ぺいする意図に出たものでない旨説明しているところ,これらは
必ずしも首肯できないものではない上,そもそも,本件実証試験は気相水
素還元法についての検討評価委員会の評価を受けることを目的として実施
されたものであることなどを考慮すると,上記の事実だけでは,日本車輌
が,その資力や資質等から見て,産業廃棄物処理施設の運営・管理を適切
に行うことを期待できないことが客観的,定型的に見て明らかであるとま
では認められず,したがって,「その業務に関し不正又は不誠実な行為を
するおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」に該当するとい
うことはできない。
よって,この点に関する原告らの主張も採用できない。
9結論
以上の次第で,原告らの本訴請求は理由がないから棄却することとし,訴訟
費用の負担につき,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条,65条1項本文
を適用して,主文のとおり判決する。
名古屋地方裁判所民事第9部
加藤幸雄裁判長裁判官
舟橋恭子裁判官
片山博仁裁判官
(別紙)
処分目録
1許可の年月日平成16年8月13日
許可番号16廃対第63−1号
施設の種類及び処理す廃棄物処理法施行令第7条第12号の2に規定する
る産業廃棄物の種類廃ポリ塩化ビフェニル等(ポリ塩化ビフェニル汚染
物に塗布され,染み込み,付着し,又は封入された
ポリ塩化ビフェニルを含む。)又はポリ塩化ビフェ
ニル処理物の分解施設
廃ポリ塩化ビフェニル等(ポリ塩化ビフェニル汚染
物に塗布され,染み込み,付着し,又は封入された
ポリ塩化ビフェニルを含む。)及びポリ塩化ビフェ
ニル処理物
設置場所半田市●●号地●●番
日本車輌製造株式会社衣浦製作所内
処理能力0.144t/時,3.456t/日(24時間)
許可条件なし
2許可の年月日平成16年8月13日
許可番号16廃対第63−2号
施設の種類及び処理す廃棄物処理法施行令第7条第13号に規定するポリ
る産業廃棄物の種類塩化ビフェニル汚染物又はポリ塩化ビフェニル処理
物の洗浄施設
ポリ塩化ビフェニル処理物
設置場所半田市●●号地●●番
日本車輌製造株式会社衣浦製作所内
処理能力0.125t/時,3t/日(24時間)
許可条件なし

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◎1年目の経費無料(場所代、コピー代、ファックス代等)
◎秘書等の支援可能
◎事務所の名称は自由に選択可能
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応募方法
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残り応募人数(2019年5月1日現在)
採用は2名
独立支援は3名

連絡先
〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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71期修習生 72期修習生 求人
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ITJではアルバイトを募集しております。
職種 事務職
時給 当社規定による
勤務地 〒108-0023 東京都港区芝浦4-16-23アクアシティ芝浦9階
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応募方法
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